2017年02月18日

●イザベラ・バード 「日本奥地紀行」

東京との間に蒸気船が通行しているある村のところで別の川[渡良瀬川]を渡舟で渡り終えると、あたりの風景はいっそうすばらしくなった。
(略)
動物を搾乳や運搬のために、あるいは食肉用としても利用することはないし、草地も皆無である。
それで、田園も農家の庭もこの上なく静かで、まるで死んだようである。
貧弱な一匹の犬とわずかな鶏だけが各家で飼う動物や家禽を代表しているかのようである。
私はモーモーという牛の鳴き声やメーメーという羊の鳴き声が恋しくなってくる。


(略)


道は[阿賀川の]峡谷を眼下に見ながら山裾を縫うように続いていた。
川の対岸には灰色のすばらしい崖が展開し、その先に金色の夕陽に包まれて紫色に染まる会津の巨大な峰々からなる壮大な風景が見えた。
複数の寺院の青銅の鐘の、哀調を帯びた心地よい音が静寂にたゆたい、このような牧歌的な地域に一層ふさわしいはずの牛の声と羊の声がないこと[その声を聞きたいという思い]を忘れさせてくれた。

オールコック「大君の都」アンベール「続・絵で見る幕末日本」「ゴンチャローフ日本渡航記」など、幕末の西洋人による日本見聞記をいくつかご紹介したことがあるのですが、
こちらはやや時代が進んで、明治11年の日本を旅した英国人旅行家、イザベラ・バードの「日本奥地紀行」です。
牛と羊が鳴かないと静かすぎて寂しい、というのは、わかるようなわからないような感覚です。
訳注によると、この表現は、旧約聖書サムエル記上15章にある、
「それならば、わたしの耳にはいる、この羊の声と、わたしの聞く牛の声は、いったい、なんですか」
という一文を意識したものとのことなので、あるいはキリスト教圏を遠く離れた場所を旅する寂しさなのかもしれません。

なお、ヴィクトリア朝の女性旅行家としては、バードの他にマリアンヌ・ノースをご紹介しています。ご参考にぜひ。

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2017年02月13日

●『中国昔話集』より、「ほら吹き」

昔、妻と一人娘がいるお百姓がいた。
(略)
やがて、頭のいい男に娘を嫁がせた。
この男もお百姓だったが、とてもずる賢かったし、時々人に悪ふざけがしたくなるたちでもあった。

(略)

こうして、さらに何回か婿にだまされた。
最後の場合には、婿が羊を二十頭ばかり買ってよそから帰ってきたところへお百姓が来合わせ、たくさんの羊を見て婿に訊いた。「この羊はどこから手に入れたんだい」
婿が「五つの海の龍王がくれたんですよ」と答えると、お百姓は金持ちになるために自分でも欲しくなった。
そこで婿に羊をもらいに自分と一緒に行くよう言いつけた。
二人は海辺へ行った。
今度も婿はもうある計略を練ってあった。
婿はお百姓をかめに入れ、自分は桶に入って、海に乗り出した。
そして自分は桶をたたきながら、お百姓にもかめをたたけと言った。
二人はたたきながらこう唱えた。
「桶、桶、かめ
五つの海の龍王さま
羊をちょっと分けとくれ」
さらに婿が、「お父さん、もう少し強くたたいて」と言うと、この愚か者も力いっぱいたたいたものだから、カキーンと音がしてかめが割れた。

「中国昔話集」から、もうひとつ。
以前ご紹介した、ナスレディン=ホジャバラガンサンティル・オイレンシュピーゲルの仲間のように見えますが、さて。

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2017年02月08日

●月岡芳年 「和漢獣物大合戦之図」

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月岡芳年の「和漢獣物大合戦之図」の一部分を。
幕末に描かれたこの作品では、動物になぞらえた日本軍と外国軍とおぼしきものたちが戦うさまが描かれています。その外国軍のひとりに、羊のような何者かが。

芳年の師匠にあたる歌川国芳については、時々お話しています。こちらでぜひ。

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2017年02月01日

●『中国昔話集』より、「松に住む毛の生えた娘」

さて忠庵という寺の門前には、枝葉を切ってもすぐにまた生えてくるふしぎな松があった。
ある日、老和尚は何日もこの松の葉が半分なくなったままになっているのに気づき、「何が食べているのだろう」と考えた。
その晩は眠らず、二つの目で、しっかり門の隙間から見張っていた。
真夜中になって月が出ると、ヒューヒューいう音とともに、木の上にふしぎなものが降りてきて、パクパクと松葉をしきりに食べだした。
全身、白い毛におおわれて、月に照らされた様子は綿羊そっくりだった。

「化け物だろうか、神仙だろうか」と考えて、和尚は翌晩二更の頃、熱々の生臭料理を一卓用意させて、松の下に置いた。
白い毛のものが、神仙ならまず食べないだろうが、化け物ならがつがつ食うだろうと考えた。
真夜中近く、和尚が宝剣を構えていると、白い毛のものが空から松に降りてきた。
においを嗅ぐと、よだれを垂らして松の下を見た。
四方を眺めまわし、やおらテーブルの傍らに飛び降りるや、魚をつかみ、肉をつかんでは、がつがつ口に放り込んだ。
老和尚は庵の門を開け、宝剣を振りかざして一喝した。
「おまえは何の化け物か」
白い毛のものは、手をまっすぐにして、飛び立とうとしたが飛べなかったので、ひざまずいて言った。

「化け物ではありません。邵家の嫁です」
和尚は宝剣を振りかざして、また一喝した。
「邵家の嫁なら、なぜこのような姿になったのか」
白い毛のものは恐れてぶるぶる震えながら答えた。
「邵家のふしぎな木を枯らしました。そうしたら、お姑さんが命で償え、と言ったので怖くて逃げました。
食べる物がないので松葉を食べて二月ほどしたら、体に白い毛が生えて飛べるようになりました。
山には松は少ししかないし、苦いのです。ただこの松の葉だけがとてもおいしくて、食べてもなくなりません。

「中国昔話集」から。山に入って松葉を食べて生き、空を飛べるようになった人は、普通「仙人」って呼ばれると思うんですが、このお話ではなぜか羊に。

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2017年01月25日

●「ゲセル・ハーン物語 モンゴル英雄叙事詩」

ゲセルは赤毛の神馬に乗って、魔王の城下まで来ると、城をとくと眺めて、それがいかにも高くて堅固だと知った。
彼は城門を探しあぐねて、ついに赤毛の神馬に命じた。

「赤毛の神馬よ、わしを乗せたまま城壁を飛び越して、城内へ金のシャー[羊の踝の骨を磨いて作った玩具。四面体を成し、各面に金属を流し込んであり、抛り投げて出た目を競う]をほうり投げたようにぴたりと着地せよ。
(略)

ゲセルは城外三十里の処に走り出た後、左手で馬のたてがみを手綱と共にしっかりつかみ、両足で馬の腹をきつく締め、右手で馬の尻を三回鞭打つと、大呼しながら駆け出した。
鏑矢の届くほどの近くまで来るや、“ハイドー、ハイドー! 進め、進め!”と連呼して、手綱をここぞとばかりに締めた。
すると赤毛の神馬が空中に駆け上がり、城内へ金のシャーが落ちたときのようなチャリンという音を立てて見事着地した。

モンゴルの長篇英雄叙事詩「ゲセル・ハーン物語」です。
英雄が敵地を攻略するにあたって、自らを羊の骨のサイコロにたとえる場面が。

時々お話している、羊の距骨を使った玩具(ナックルボーン、アストラガロス、シャガイ)と同じものかと思うのですが、金をあしらったりもするのでしょうか。

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2017年01月19日

●『子不語』より、「地の果て」

保定(河北省)の督標守備の李昌明がにわかに死んだ。
(略)

「わしの魂は飄々と風のまにまに東南方へ向かった。
やがて天はようやく明るくなり、砂塵もやや収まった。東北隅を見下ろすと、黄河が一筋流れている。
河岸に牧羊のものが三人いる。羊の色は白く肥え太って馬のようだ。
わしは牧羊のものに、わが家はどの辺であろうか、と聞いてみたが、答えなかった。
それからまた行くこと数十里、遠くに宮殿がぼんやりと見えて来た。
瓦はみな黄色い瑠璃でできていて、帝王の居所さながらである。

近づいてみると、二人の男が靴、帽子、袍、帯などの装束をして殿外に立っている。
世間の芝居に出てくる高力士や童貫のような出で立ちであった。
殿堂の前には黄金の扁額があって「地窮宮」の三字が書いてあった。

(略)

やや明るくなって殿内の鐘が鳴ったときには、風も霜も収まっていた。
また一人のものが出て来て言った。
「昨夜留め置いたものは原籍の地に返せ」
わしは例の二人に連れられて出かけることになった。
元のところで牧羊者にまたも出会った。男たちはわしを彼らに引き渡した。
「命によりこの者をお前らにあずける。家に連れ戻せ。我らは帰るからな」

先日「廟中の怪」をご紹介した『子不語』から、もうひとつ。なんだか楽しそうな臨死体験です。

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2017年01月12日

●『子不語』より、「廟中の怪」

一つの廟があって、関羽、張飛、劉備の三神像がまつられてあった。
廟門は長い年月鉄鎖でとざされていて、春秋の祭祀のとき鍵をあけるのである。
伝えるところでは中に怪物がいると言う。
香火を供える僧もここには敢えて住まなくなった。

ある日、陜西の客商が羊千頭を買い求めたが、日暮れてから泊まるところがないので、宿を廟中に求めた。
住民は鎖をあけてこれを入れてやり、事情を離してやった。
羊商人は腕力には自信がある。「心配ない」と行って扉をあけて入った。
群羊を廊下に放し飼いにし、自分は羊鞭を持ち、燭をとって寝についたが、心中こわくないわけはなかった。

三更になっても目が冴えて眠れない。
突如、神座の下で豁然たる音がして、何物かが躍り出た。
羊商人は蝋燭の光でこれを見た。
それは体長七、八尺、頭面は人の形をそなえ、両眼は漆黒ながら光を放ち、クルミほどの大きさである。
首より下は体じゅう緑の毛で覆われふさふさとして蓑衣のよう。
それが羊商人に向かって睨みかつ匂いを嗅ぐのであった。

以前、「糊をなめる子羊」をご紹介している、袁枚の怪談集『子不語』から、「廟中の怪」を。
お話では、羊商人は逃げきったんですが羊千頭がどうなったのか書いてないのです。気になる。

袁枚は、「随園食単」もご紹介しています。ご参考にぜひ。

ひつじnews at 20:58 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2017年01月03日

●歌川国芳「狂画水滸伝豪傑一百八人」

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「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳わたしの国貞」展カタログ

あけましておめでとうございます。今年もひつじnewsをよろしくお願い申し上げます。

さて、歌川国芳です。
梁山泊の好漢たちが集結して愉快に遊び倒す、パロディ水滸伝「狂画水滸伝豪傑一百八人」の「十番続之内 五」から。得物の槍を竹馬にしている双槍将董平の足元に、なぜか羊が。
この十番続のシリーズでは、他にも竜に乗って走りまわる入雲竜公孫勝とか、虎を手懐ける行者武松といった、キャラクターに合った動物たちとのからみがそこここに描かれているのですが、董平と羊って、なにかありましたっけ? お詳しい向きには、ご教示願います。

歌川国芳は、時々ご紹介しています。こちらで、ぜひ。

ひつじnews at 08:48 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2016年12月22日

●バルトロメオ・マンフレディ(帰属)「羊を連れた洗礼者ヨハネ」

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 「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」カタログ 

カラヴァッジョ追随者のひとり、バルトロメオ・マンフレディ作と考えられている、「羊を連れた洗礼者ヨハネ」です。
マンフレディは、以前、「イサクの犠牲」をご紹介したことが。

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2016年12月14日

●エジプト新王国のクヌム神像。

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アラバスター
高24センチ 台座:長18、幅13センチ
新王国(紀元前1200年頃)

エレファンティネ島にあると考えられたナイル川の水源の守護神として、また肥沃をもたらす毎年の洪水の発生力として、クヌム神は実際に全生物の創造者である。
彼は羊か羊頭の人間の姿で表される。

「オランダ国立ライデン古代博物館所蔵古代エジプト展」カタログ

古代エジプトの創造神クヌムの神像を。
クヌム神は、以前、同じく羊頭の小像をご紹介したことが。

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2016年12月03日

●滴翠美術館の石羊。

兵庫県芦屋市にある、滴翠美術館に行ってまいりました。

滴翠美術館は、六甲山の美しい翠巒(すいらん)を背景にした閑静な住宅街の一角に佇み、小鳥のさえずりや四季折々の草花が訪れる人を迎えます。
ここはかつて、大阪財界で活躍した山口吉郎兵衛氏の住宅でした。

この山口吉郎兵衛氏の収集品のひとつではないかと思うのですが、美術館の玄関先に石羊が置かれているのです。これは見に行かねばなりません。

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阪急芦屋川駅から、ゆるゆる歩いて十分ばかり。うろうろ道に迷いつつ、入り組んだ住宅街の奥に看板を見つけて、ほっと一息。
入り口右手の植え込みのなかに身を潜める石羊を発見して、すっかり嬉しくなってしまいました。

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背後にまわってもう一枚。
この、足を曲げて座り込んでるのがかわいくて良いですね。

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石羊は、これまでにいくつかご紹介しています。こちらでぜひ。


おまけ。阪急芦屋川駅前の「星座の広場」に、ファンシーな羊の絵が。待ち合わせに使われたりするのでしょうか。

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2016年11月22日

●「ブリューゲルとバロックの巨匠」展。

今週末まで愛知県岡崎市の岡崎市美術博物館で開催されている、「ブリューゲルとバロックの巨匠」展を、滑り込みで見てまいりました。

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岡崎市美術博物館公式HP 内 「ブリューゲルとバロックの巨匠」展

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以前ご紹介したことのある、グイド・レーニの「聖家族―エジプトへの逃避途上の休息」や、アブラハム・ブルーマールトの「羊飼いへのお告げ」などなどが展示されてまして、ヒツジ度高めです。ぜひぜひ。

こちらの展覧会は、この後、

姫路市立美術館  2017年2月8日─3月28日
山梨県立美術館  2017年4月15日─6月11日
佐賀県立美術館  2017年6月17日─7月20日
鹿児島市立美術館  2017年7月25日─9月3日

に、巡回が予定されている模様です。

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2016年11月21日

●東大寺 十二神将立像。

十二神将像などを目当てに奈良国立博物館まで行ったおりに、見られなかった東大寺の十二神将像のことが気になっていたのですが、
最近になって、未神像を含めた全12躯が載っている本の入手がかないました。

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十二神将立像

木造 彩色 像高99・0─110・7
平安時代 十一─十二世紀

頭上にいただく十二支獣の多くが造像当初のものであり、本来は別の存在である十二神将と十二支とが結合した作例として、早い時期のものといえよう。
寅神像や卯神像ほか数点の像の腹部に、獅噛(しがみ)に代えて十二支獣が表されていることも注目される。

未神像です。頭の上とお腹に、たしかになにかが。

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2016年11月15日

●不乗森神社の十二支彫刻。

愛知県安城市の、不乗森(のらずのもり)神社にお参りしてきました。
名古屋鉄道新安城駅から、北へ徒歩20分。車道から脇へ一本入ったとたんに、森閑とした森が目に入ってきます。

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当時社頭は、旧鎌倉街道に沿い「野路の宿」(現知立市八ッ橋町)と共に「宮橋の里」と称する駅次の所在地にして、古来より街道を往来する人々は、社頭通行にあたり馬に乗りし者は下馬して自ら敬虔の念をもって拝礼の上通行した。

故に駄野森山王宮と称したが、明治維新改革に際し不乗森神社となる。

鳥居をくぐると、正面に神楽殿。

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今回の目的は、こちらの神楽殿を飾る十二支彫刻です。
未……未は、たぶん西南方向だから、ええと、……あ、いたいた。

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なんだか良い表情をした見返りヒツジが。
他の彫物たちもたいへん見事でしたので、下に。

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大根をかかえたラブリーなネズミとか、

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十二支とは別の場所にいた、これは、応龍でしょうか。

神社などの十二支彫刻は、これまでにいくつかご紹介しています。

高山祭の屋台「豊明台」、大阪は勝鬘院、多宝塔の蟇股大垣まつりの「相生やま」と「榊やま」大阪天満宮表門の方位盤松島は五大堂の蟇股、東京は上野公園の旧寛永寺五重塔の蟇股など。

ご縁があれば、ぜひぜひ。

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2016年11月09日

●ジュリアン・デュプレ「羊飼いと羊の群れ」

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 「ミレーとバルビゾン派の作家たち展」カタログ 

バルビゾン派を。ジュリアン・デュプレの「羊飼いと羊の群れ」です。
デュプレは何度かご紹介したことがありますので、こちらで。

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2016年10月31日

●史記より、匈奴列伝。

匈奴は、その先祖が夏后氏の子孫である淳維である。
(略)
水と草を追って移動し、城郭とか定まった住居はなく、耕作に従事することもなかった。
しかしそれぞれの領地に分けられていた。
文書はもたず、規約や命令も口頭でなされた。
子どもは羊に乗ることができるころから、弓を引きしぼって鳥や鼠を射た。
少し大きくなると、狐や兎を射、それを食事とした。
士卒は弓を引く力があれば、[戦争の際には]すべて甲冑をつけた騎兵となった。

史記の「匈奴列伝」冒頭部分から。乗馬の訓練は、まず羊でなされるもののようです。

史記のお話は時々しております。こちらでぜひ。

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2016年10月20日

●スペイン民話 「狼にとって食べ物のあたるよい日」

「おい、子羊たちよ、わしは腹がへって死にそうなんだ。これからお前たちを食ってやる。」
羊たちは狼に答えた。
「ねえ、狼さん、私たちはあなたに食べられることを決して悲しんではいません。あなたが食べたいとおっしゃるなら、どうぞお食べ下さい。でも、あなたが私たちをお食べになる前に、この土地を分配してほしいのです。この土地をどのようにして二頭のあいだで分けたらいいのかわからないのです。」
「よし、わしが土地を分けるのを手伝ってやろう。その代わりその後で、わしに食われるのだぞ」と狼は言った。

二頭の羊は、「結構です、あなた。どうぞそこの中央の地点に立っていて下さい。私たちは両端に行きますから。」と言った。
狼は中央に立ち、羊たちは両端に行くと、そこから角を振って一斉に走り出し、狼に激突したので、狼は目を回して仰向けに倒れてしまった。

スペイン民話集から、「狼にとって食べ物のあたるよい日」を。ごちそうを食べようとしてはごちそう側からの反撃にあう、狼の失敗譚です。

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2016年09月26日

●奈良国立博物館所蔵 十二神将立像

この春にリニューアルされた奈良国立博物館の「なら仏像館」に行ってまいりました。

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こちらには、頭に十二支の動物をのせた十二神将像のすばらしいものがいくつもあると聞いて、それはもう気になっていたのです。

十二神将像は、これまでに、同じく奈良の興福寺東金堂、名古屋は鉈薬師の円空仏東京国立博物館に並ぶ曹源寺のものをご紹介しております。

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十二神将立像 未神

神奈川県横浜市金沢区に所在する太寧寺旧蔵の十二神将像。
(略)
各像はそれぞれに自由闊達なポーズを示し、変化に富んだ群像を構成する。面相には頭上にいただく十二支のイメージが投影されているように思われる。

 「なら仏像館 名品図録」 

上の館蔵品のほか、寄託品として、室生寺に伝来した13世紀の十二神将立像が頭にヒツジをのせてたたずんでました。また、今回は見られなかったのですが、東大寺の12世紀の十二神将立像も、未神がこちらに置かれている由。

さらに、なら仏像館には、同じフロアに「青銅器館」がありまして、現在、後漢の羊型灯台が展示されています。
こちらの青銅器コレクションについては、以前、羊の犠首がついた瓿(ほう)をご紹介したことが。余裕がありましたら、こちらもぜひぜひ。

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2016年09月11日

●「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」より、「東方三博士の礼拝」

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人と動物との、この並外れた集まりをあらわすにあたって画家は、彼らを思いきり異国風に描く代わりに、対照となる空間を、ただ羊だけが草を食んでいるような淋しい丘としてあらわした。
二人の羊飼いも見えているその先の町は、物語上ではベツレヘムだが、これは実は、ベリー侯の居城のおかれていた古都ブールジュである。

時々お話している「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」から、「東方三博士の礼拝」を。

時祷書関連はこちら、東方三博士はこちらをご参考に、ぜひ。

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2016年08月28日

●仙崖 「黄初平鞭羊為石画賛」

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 「出光美術館蔵品図録 仙崖」 

時々お話している黄初平図の、仙崖義梵によるものを。

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2016年08月21日

●コールリッジ 「詩章─ブロックリー谷の左斜面を登る」

何度も止まったり、振り返ったりしながら
谷の急坂を登ると、かわいい歌い手たちが
近くの木陰で野山の歌をさえずり、遠くで
閑古鳥が変わらぬ声で耳をなごませてくれる。
群からはぐれた羊たちが、せかせかと、
崖上の緑地で草をはむ仲間を追いかける。
はだが岩を無理にこじあけた深い裂け目から
イチイが生えている。それが濃緑色の大枝を広げる
                        真下に
(その緑一色の中にサンザシが白い花を交じえて
                     いるのだが)
平らで広い石が苔の褥から突き出ていて、
そこに私は休む─頂きここに極まれりだ。
おお、何と豪勢な風景が私を迎えることか!
誇らしげな教会の塔、私には馴じみの家並み、
ニレが影を落とす野原、視界を限るわたつみ!
深い吐息が孤独な心から洩れ、涙が落ちる。
魅惑の場所! ああセアラがここにいれば!

何度かご紹介しているウィリアム・ワーズワースと同時代人である、サミュエル・テイラー・コールリッジの田園詩を。

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2016年08月14日

●多胡碑の「羊」伝承(続き)。

羊は方角説・人名説・実際の動物説の三つとなる。

第一の方角説は黒板勝美博士が主で、上野国府から未の方(西南)を多胡碑となすと読む。

人名説は最も多いが、その中韓人説と羊太夫説とがある。
韓人説はこの郡に新羅人が居住した文献をたよりにして新羅の帰化人とするもので、多胡郡の大領の名であろうとするもので、尾崎喜左雄博士はその代表であろう。
しかし一方にヒツジは国語であって必ずしも韓人ではあるまいとするのは松岡静雄氏の説である。松岡氏は、ヒツジはヒト(人)ウシ(牛)からきた語で、羊の容貌が人に似ているから起こったとし、この碑文では弁官府の全文を載せていないので、羊を郡領とした意味を略記したのだとするのである。

(略)

最後の実際の羊を給わったとするのは、原田淑人博士の説で、その根拠は既記のようにこの郡内に韓人(主に新羅人)が居住しており、羊と新羅人は古くから関係が深い上に、『延喜式』を見ると隣国下野国の産物に氈が見えるので上野国でも毛織物が作成されたであろうから、建郡と共に帰化人に羊を授けられた恩典を石に刻したものであろうという。

以前お話したことのある群馬県の古碑「多胡碑」に刻された「羊」の正体について、動物説の詳細が知りたいとぼやいておりましたら、「十二支の民俗伝承」に載ってました。「氈」というのは、正倉院宝物にもあるフェルトの敷物のことでしょうか。

ところで、こちらの多胡碑ですが、昨年から公式HPができている模様。

多胡碑は、奈良時代初めの和銅4(711)年に上野国の14番目の郡として、多胡郡が建郡されたことを記念して建てられた石碑です。
建郡に際しては、「羊」という渡来人とおもわれる人物が大きな役割を果たし、初代の郡長官になったようです。碑を建てたのも、この「羊」であると考えられ、碑の後段には当時の政府首脳の名を挙げて権威付けをはかっています。

見に行きたいです。

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2016年08月09日

●ローラン・ド・ラ・イール 「笛を吹く羊飼いのいる風景」

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「ファーブル美術館所蔵 魅惑の17─19世紀フランス絵画展」カタログ

17世紀フランス、ローラン・ド・ラ・イールの「笛を吹く羊飼いのいる風景」を。

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2016年08月05日

●シリベシ山を後方羊蹄山と書くことについて。

シリベシ山は北海道後志の国から胆振の国に跨って聳ゆるマッカリヌプリの事で一に蝦夷富士と呼び昔から著名な高山である。
そこでその後方をシリヘというのはこれは誰れでも合点が行き易いがその羊蹄をシと為るのはまず一般の人々には解り憎くかろうと想像するが、それもその筈、これは実はシと称する草の名(すなわち漢名)であるからである。
すなわちシリヘの後方とシの羊蹄との合作でこの地名を作ったものである。

この事実を呑込めない古人の記述に左の如きものがある。
これは山崎美成の著した『海録』の巻の十三に引用してある牧墨僊の『一宵話』の文ですなわちそれは左の通りである。

東蝦夷地のシリベシ嶽は高山にして其絶頂に径り四五十町の湖水ありその湖の汀は皆泥なりその泥に羊の足跡ひしとありといふ奥地のシリベシ山を日本紀(斉明五年)に後方羊蹄とかゝれたると此蝦夷の山と同名にして其文の如く羊の住めるはいと怪しと蝦夷へ往来する人語りし誠に羊蹄二字を日本紀にも万葉にもシの仮字に用ゐしは故ある事ならん。

ずいぶん以前に、北海道は後方羊蹄山の名のいわれについてお話したことがあるのですが、牧野富太郎「植物記」を読んでおりましたら、すでに江戸時代には由来がわからなくなっていたと思しき話が紹介されていました。
でもこれ、牧墨僊の誤解のほうがちょっと楽しそうですね。

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2016年07月27日

●ケン・リュウ 「文字占い師」

「そのとおりだな。もうひとつ単語を選んでみないか? その文字がきみになにを知らせたいのか見てみよう」
リリーはじっと考えた。 「アメリカを表す漢字はどう? お爺さんもあそこに住んでいたんだよね?」
甘さんはうなずいた。 「良い選択だ」 彼は筆で書いた。

「これはメイだ。 “美”を表す漢字であり、アメリカを表す漢字でもある。 美国というのは、美しい国という意味だ。この字がふたつの漢字を上下に重ね合わせてできているのがわかるかい? 上半分の文字の意味は“羊”だ。雄羊の角が突き立っているのが見えるだろ? 下半分の意味は“大きい”だ。自分が大男である気になって両手両脚を広げて立っているような形なんだよ」
甘さんは立ち上がって、その様子を示した。

ケン・リュウのSF短編集から、「文字占い師」を。
1961年、台湾で暮らすアメリカ人の少女リリーは、「文字占い師」を名乗る老人甘さんと出会います。「羊」や、犠牲の「羔」、正義や主義の「義」、二・二八事件の悪夢の記憶である「群」衆といった文字を通じて、彼女は老人の過去を聞くことになるのですが……。
物語の終わりに、リリーが台湾の別称もまた「フォルモサ(美しい島)」であることを知る場面は、切なくも深いです。

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2016年07月10日

●ミレー 「納屋で羊の毛を刈る三人の男」

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 「ボストンに愛された印象派」展カタログ 

ジャン=フランソワ・ミレーの「納屋で羊の毛を刈る三人の男」を。
ミレーは数多くご紹介しておりますので、こちらでぜひ。

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2016年07月06日

●バルザック 「鞠打つ猫の店」

愛は家事の気苦労の前では何ほどのことでもないから、幸せでいるためには夫婦はお互いに相手にしっかりとした長所を見つけなくてはならない。
夫婦のうちの一方が他方よりも物知りであってはならない、なぜなら二人は何よりもお互いを理解し合わねばならないからである。
ギリシャ語を話す夫とラテン語を話す妻では、飢え死にしてしまうおそれがある。
ギヨーム氏はこうした類の諺を作り上げていたのである。
彼は身分違いの結婚を昔作られていたことのある絹と羊毛が合わせられた織物にたとえていたのだが、そうした生地は時間が経つと絹が羊毛を裂いてしまうのが常のことだったのである。

19世紀フランス、オノレ・ド・バルザックの「鞠打つ猫の店」を。
愛は価値観の違いを乗り越えられない、という残酷にもほどがある結末を容赦なく描く短編。ヒロインの父親である堅実なラシャ商人ギヨーム氏が、娘を見初めた高貴で傲慢な芸術家に対して抱く不安が、かれの職業に即したたとえによって語られます。

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2016年06月30日

●クールベ 「女羊番、サントンジュ地方の風景」

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 「クールベ展 狩人としての画家」カタログ 

19世紀フランス、ギュスターヴ・クールベの「女羊番、サントンジュ地方の風景」です。村内美術館蔵。

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2016年06月24日

●高山祭屋台会館にて展示中の豊明台。

岐阜県は飛騨高山まで行ってまいりました。

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高山祭その他、各種イベントのシーズンを外したつもりだったのですが、それでも大勢の観光客でにぎわう古都の町並みを抜けて、やってきたのは櫻山八幡宮の境内に建つ高山祭屋台会館です。

高山祭の実物屋台を常設展示している施設は、高山祭屋台会館だけです。当館で高山祭をご覧ください。

一般に高山祭といわれるのは、春(4月14日、15日)と秋(10月9日、10日)の年二回あるように思われがちですが、春と秋では、お祭を行う神社も地域も屋台も全く違います。春は日枝神社、秋は桜山八幡宮の例祭です。

古くから飛騨の国は、大和朝廷ヘ、税のかわりに匠(たくみ)を毎年送り出しました。選ばれて都ヘ出た匠たち(毎年100人─130人)は、奈良の都の宮殿や、お寺の建築に従事してその腕をふるいました。

匠が都ヘ送られた期間はおよそ600年、延べにして7、8万人の飛騨人が一年間都で働いたことになります。この人たちを総じて「飛騨の匠」と呼んでいます。

飛騨の国には、今もこの匠たちの長い伝統と、培われた技術が脈々とうけつがれていますが、中でも江戸時代後期に、大輪の牡丹のように花開いたのが高山祭の屋台(国指定重要有形文化財)です。

このたびは、こちらで展示中の屋台「豊明台」に十二支彫刻がほどこされていると知って、見学に来た次第。

まぁでも、まずはちゃんとお参りをして、御朱印もいただいて、

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しかるのち屋台会館に。こちらでは、可愛らしい巫女さんがつきっきりでガイドをしてくれます。なんとありがたい。

4台ならんだ屋台のうち、豊明台は奥からふたつめ。中段部分に、ぐるりと十二支彫刻が並んでいます。

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未は……ああ、いたいた。見返りヒツジですね。

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せっかくなので、他のも。

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豊明台の展示期間は、七月下旬までとのこと。ご縁があれば、ぜひ。

なお、祭りの山車関連では、こちらの他に、
大垣祭のやま行事近江八幡の左義長まつり名古屋市の筒井町天王祭をご紹介しています。

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2016年06月09日

●東京国立博物館のアフガニスタン展、行ってきました。

6月19日まで東京国立博物館で開催されている「黄金のアフガニスタン 守りぬかれたシルクロードの秘宝」展に、やっと行ってまいりました。

まずは前庭の石羊にご挨拶をしておきましょう。石羊の全体像は、こちらに。

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目玉展示である黄金のムフロン像以外のヒツジモチーフとしては、衣装の袖口に付けられたとおぼしき、1センチ×1.5センチの「牡羊頭部文飾板」がありました。
ムフロン像グッズも充実していましたが、悩んだ末に結局マスキングテープを購入。

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あと10日で終了です。お近くならば、ぜひ。

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2016年06月04日

●ケンペル「江戸参府旅行日記」より。

彼女たちは熊野やその近国に最も多くいるので、仏教の方の尼僧と区別するために、熊野比丘尼と呼ばれている。
彼女たちは、ほとんどが、われわれが日本を旅行していて姿を見たうちで最も美しい女性である。
善良で魅力的に見えるこれらの貧しく若い女たちは、大した苦労もせずに尼として物乞いする許可を受け、旅行者から思うままに魅惑的な容姿で大へんうまく布施をまきあげる術を身につけている。

(略)

この女たちには出家らしさも、貧しさも感じられない。
なぜなら剃った頭には黒い絹の頭巾をかぶり、一般の人と同じ着物をこざっぱりと着こなし、手には指のない手袋[手甲]をはめ、普通は幅の広い日笠をかぶって、おしろいを塗った顔を外気から守っている。
また短い旅行杖をついているので、ロマンティックな羊飼いの女を思い起させる。

17世紀末、長崎と江戸の間を旅したエンゲルベルト・ケンペルの旅行記から。比丘尼の姿で売色をする美しい女たちと街道で行き合い、その様子を田園詩の女羊飼いに見立てています。

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北八「時におめへがたのよふなうつくしい顔で、なぜ髪を剃りなさつた。ほんにそふしておくはおしいものだ
びくに「ナニわたしらが、たとへ髪が有たとて、誰も構人はおざりませぬ

絵に描かれたものがないかと、だいぶ時代は下がりますが「東海道中膝栗毛」を繰ってみましたら、ありましたありました。弥次喜多が近くを歩いている比丘尼に声をかけて、振られるシーンが。ああ、振られるんだ……。

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2016年05月29日

●カウナケスとその伝播。

前3000年紀ともなると遺跡・遺物が激増するため、時代像はにわかに鮮明となってくる。
毛皮着をまとった赤土焼(テラコッタ)や石製の彫像が王の墳墓や城砦の遺構から多数出土し、古代シュメールの服飾事情も大筋は把握できるようになったのである。
そうした出土品の数々から、前3000年紀以降、シュメールでは毛足の長い毛皮着の愛用されていたことが解明された。
前3500年頃のウルの王墓をはじめ、前3000年─前2500年頃のシュメールの遺跡からは、うろこ状に束ねられたヤギやヒツジの毛皮着─すなわち「カウナケス」─をスカート状に巻きつけた人物像が続々と発掘された。

少し時代を下ると、規則的な房毛の配列をもった類似の形式の服地が「カウナケス」として総称されるようになった。
カウナケスは、初期にはヤギやヒツジの姿をそのまま真似たものが一般であったらしく、時代を下ったカウナケスでも動物の尻尾を象徴する棒状の結び目を背にあしらったものが多かった。

(略)

カウナケスはギリシア・ローマ世界を通じて紀元後のキリスト教圏にも持ち込まれたが、そのチュニック(短袖つきのT字型衣装)が中世キリスト教社会に入って聖ヨハネひいては羊飼いのシンボルとして受け継がれたのである。

時々お話しているメソポタミアのヒツジ風衣装カウナケスについて、「毛皮と皮革の文明史」に詳細な解説がありました。キリスト教文化とつながっていくものだったとは。

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2016年05月23日

●「イエズス会日本年報」より、本能寺の首級。

明智は城内にゐては安全でないと考へ、宵の口に主城坂本に向って逃げた。
彼はほとんど単身で、世人の言ふところによれば少しく負傷してゐたが、坂本には到着せず、聖母の祝日にはどこか知れぬところに隠れてゐた。

翌日は首を斬る熱が甚しく、信長の殺された場所に最初に持参したのが千以上であった。
これは悉く同所に持参するやう命ぜられた故であって、信長を祀るためそこに並べた。
(略)
その後二日を経て、パードレ・オルガンチノと予と信長の殺された場所を通過した折、数人で三十以上の首級を携へて来たが、縄で下げて、恰も羊または犬の頭を運ぶやうにし、少しの悲しみの様子も示さなかった。

徳川家康の駿府御分物帳豊臣秀吉の大坂城と来たからには、織田信長関係でなにかヒツジ話はないかと、さらに「イエズス会日本年報」を繰っていましたら、とんでもない表現にぶつかってしまいました。
本能寺の変及び山崎合戦ののち、明智方の首級が本能寺に集められるさまを記した場面ですが、人の首がヒツジの頭にたとえられてます。日本人的には、それはそれで怖いんですが……。

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2016年05月17日

●豊臣秀吉の緋羅紗コレクション(?)

関白殿は一私人の如く案内をなし、自ら戸および窓を開き、我等を第八階まで導き、各階に納めた富を語り、汝等が見るこの室には金が満ち、この室には銀、かの室には生糸及び緞子、かの室には衣服、向ふの室には刀及び立派なる武器が一杯であると語った。

我等が通過した室の一つには新しい緋の外套Capasが十または十二絹の紐で吊してあったが、日本においては甚だ珍しいものであった。

ルイス・フロイスによるイエズス会の活動報告書を読んでおりましたら、大坂城で豊臣秀吉に拝謁したときの記録に、楽しげな場面がありました。
おそらく、以前ご紹介した木瓜桐文緋羅紗陣羽織のようなものが何枚も飾られていたのではないかと。華やかそうです。

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2016年05月11日

●「ホビット ゆきてかえりし物語」

「村のやつらが、てめえとバートに食われてえようって、いつまでもぐずぐずしてると思ってんのけえ。山を下りてきてから、てめえらで村を一つ半もたいらげちまったじゃねえか。ゼータクゆうんじゃねえ! 山にいたときにゃ、しけてやがったからよう、こんなにけっこうけだらけなヒツジがあったら涙ながして、“あんがとよ、ビル”なんて言ったところだぜ」。
こう言うと、ウィリアムは、いま炙っているヒツジの足から大きな肉のかたまりを食いちぎり、袖で口をぬぐいました。

そう、たとえ頭が一人に一つっきりしかなくっても、トロルという連中はこのように大食いなのです。
すっかり立ち聞きしてしまったビルボは、なにか行動を起こすべきでした。
そうっと引き返して、すぐそこに、険悪な気分になったかなり大ぶりのトロルが三人もいて、ヒツジに飽きあきなので、炙りドワーフか、炙り子馬の肉なら、待ってましたとばかりに飛びつくだろうと仲間たちに知らせるか、さもなくば、押入のとっておきの早業をさっそくにひろうすべきところでした。

J.R.R.トールキン、山本史郎訳の「ホビット」から、主人公ビルボのはじめての冒険、第2章「ヒツジのあぶり肉」の場面を。

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2016年05月06日

●ヘリック 「われ富めり」

われ富めり

夜のしざりゆくを告げる柱時計はなくても、
わが家の雄鶏は朝が近づけばときをつくる。
婢女のプルーデンスは幸ひよくできたをんなで、
わたしの持つともなく持つてゐる僅かな財物をつましく使ふ。
日毎に白い面長な卵を生むめん鶏は
くッくッと鳴いておのれの手柄を知らせる。
油断なく聞き耳を立てる鵞鳥は
なにか身に危険が迫れば舌を振り立てて訴へる。
食事のたべかすで飼ひ馴らした子羊は
この仔一匹を残して母親に死なれた哀れなやつ。
縦横にわが家を走り廻る猫は
鼠のこそ泥どもを平らげつつぶくぶく太る。
この他にまだトレーシーがゐる。田園に隠れたわたしの日常を
いやが上にも楽しくするのがこの毛むくぢやらの可愛い犬だ。
これら数へ上げたものは皆わたしの心をなごませる玩具と言へよう。
といふのも心労のない所では一寸した物事でも結構楽しいのだから。

森亮の訳詩による、17世紀イギリスのロバート・ヘリック『ヘリック詩鈔』より、「われ富めり」を。

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2016年04月25日

●駿府御分物帳の羊毛製品。

元和二年(1616)四月十七日に徳川家康は歿し、駿府城に残された膨大な遺産の大部分は、のちに徳川御三家と呼ばれる尾張・紀伊・水戸の三家の初代、即ち家康の九男義直、十男頼宣、十一男頼房の三人に分け与へられた。
(略)
『駿府御分物(すんぷおわけもの)帳』とは、この遺産分配に当って作成された請渡帳である。

(略)

衣服と反物

絹布類の種類は実に多種多様で、四八四項に上って計上されてゐる。
(略)
それらのうち、名称から推して南蛮渡りと思はれる品目のみを掲げてみよう。

あびと   ゑけれしま
おらんとぬの   おらんと嶋
かいき   かなきん
かりせや   ごろごろ
さらさ   しちん
しやむろ   せてん
たふしいら   ちよろけん
びろうど   へろへとらん
ほろかあと   らしや

(略)

新時代の品々

(略)
虎の皮四枚、羊之皮二枚、らつこの皮十六枚、こつひの皮十二枚、唐皮十枚が見え、敷物や武具に用ゐるためであったと思はれる。

ときどきお話している羅紗関連で。
『海外視点・日本の歴史』シリーズより「将軍の国と異邦人」所収の、「家康の遺産に見る世界の品々」から。徳川家康の遺品目録「駿府御分物帳」に記された海外産品についての解説ですが、羊毛製品がずいぶんあるようです。

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2016年04月21日

●名古屋ボストン美術館 「ルノワールの時代」展

名古屋ボストン美術館にて、「ルノワールの時代 近代ヨーロッパの光と影」展、開催中です。

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以前ご紹介した、ジャン=フランソワ・ミレーの「羊の毛刈り」や、シャルル=フランソワ・ドービニーのエッチング「牧養場の羊、朝」など、ヒツジを描いたものがいくつかありました。

会期  2016年3月19日(土)─8月21日(日)

開館時間  平日10:00─19:00、土日祝日10:00─17:00
        ※入館は閉館時間の30分前まで

休館日  月曜日(祝日・振替休日の場合はその翌日)

お近くならば、ぜひ。

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2016年04月18日

●東京国立博物館 「黄金のアフガニスタン」展

東京国立博物館にて、特別展「黄金のアフガニスタン 守りぬかれたシルクロードの秘宝」が始まりました!

「黄金のアフガニスタン 守りぬかれたシルクロードの秘宝」展

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古くから『文明の十字路』として栄え、シルクロードの拠点として発展したアフガニスタン。
その北部に点在する古代遺跡で発掘された貴重な文化財は、アフガニスタン国立博物館を代表する収蔵品となっていました。
1979年のソ連による軍事介入やそれに続く内戦により同館は甚大な被害を受け、その多くが永遠に失われてしまったとみられていました。
ところが、その貴重な文化財は、国立博物館の勇敢な職員たちにより、秘かに大統領府地下の金庫などに移され、その後14年もの間、静かに守り続けられていたことが2003年に判明します。
本展は、この秘宝の再発見を契機に、アフガニスタンの文化遺産復興を支援するために企画された古代アフガニスタンの歴史と文化を紹介する国際巡回展です。

会期  2016年4月12日(火)─6月19日(日)

開館時間  午前9時30分─午後5時
      土・日・祝日及び5月2日(月)は午後6時まで、金曜日は午後8時まで
      ※入館は閉館の30分前まで

休館日  月曜日  ※ただし、5月2日は開館

会場  東京国立博物館 表慶館(上野公園)

メイン展示品にしてマスコットキャラクターにもなっている黄金のムフロン像は、もちろん必見です。
ともあれ開催概要を。

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2016年04月06日

●愛知県美術館 「黄金伝説」展

愛知県美術館で開催中の、「黄金伝説」展に行ってまいりました。

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黄金伝説 燦然と輝く遺宝 最高峰の文明展

会期 2016年4月1日(金)─5月29日(日)

会場 愛知県美術館 (愛知芸術文化センター10階)

開館時間 10:00─18:00 金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)

休館日 毎週月曜日

最初の展示品が、プリクソスを描いたギリシャ陶器でした。
さらに進むと、以前ご紹介したドレイパーの「金の羊毛」ですとか、ギュスターヴ・モローの「アルゴー船の乗組員」といった、金羊毛伝説関連の美術品が次々と。
さらに、羊頭や距骨をモチーフにした装飾品もいくつか。
あまりのヒツジ度の高さに、かえってうろたえてしまいました。お近くならば、ぜひとも!

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2016年03月27日

●羊形硯(続き)。

羊形の考古遺物の確実な例としては、八世紀の奈良県平城京跡や三重県斎宮跡などから見つかった硯がある。
現在その出土数は10例に満たないほど少ない。
この頃の硯は焼き物で、多くは円形をした円面硯だが、ごく少量羊形や鳥形といった形象硯(けいしょうけん)が存在する。
羊形硯(ようけいけん)は円を描くように湾曲する二本の大きな角が特徴的で、四肢を折って座り込んだ羊の背中が硯になっている。
羊の頸の後ろ、硯の海にあたる部分に墨の痕が残っている例もあり、珍しく貴重なものではあるが実際に使うこともあったようである。

時々お話している羊形の硯について、「十二支になった 動物たちの考古学」に解説がありました。ちゃんと実用品だったんですね。

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2016年03月20日

●新井白石 「東雅」

(略)

我國のいにしへ凡獸をばシゝといひけり。
日本紀に獸の字讀でシゝといふ即是也。
其肉の食ふべきをやいひぬらん。
牛をウシといひ。鹿をシカといひ。羚羊をカマシゝといひ。
羊をヒツジといふが如き。
皆これ其肉の食ふべくして。
また角生ふるものども也。

新井白石による語義の研究書『東雅』の「牛」の項に、気になる一文がありました。なにか意味があるんでしょうか、「シ」つながり。

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2016年03月16日

●大黒屋光太夫と羅紗の関係。

『御府内備考』(文政12年)によれば、当時、光太夫の居宅がおかれた江戸の御薬園は九段坂脇、一番町御堀端に三ヵ所、三番町に二ヵ所、蛙ヶ原の七ヵ所にあった。
そのうち六ヵ所は火災で焼失したのを契機にして、一時は御勘定奉行持から御普請奉行持の火除植物場となり、さらに寛政七年四月十九日に奥医師渋江長伯支配の御預かり地となった。

そして、同書には「寛政六年六月十七日より、蝦夷帰り人幸太夫・磯吉といふ二人を御堀端付の御薬園中に移されて御扶助あり。又同所にて羅紗の織立等をもなさしめらるといふ」という興味ある事実が記載されている。
羅紗は羊毛でつくられた厚手の毛織物であり、光太夫たちは帰国のときに羅紗を素材にした、ロシアの外套らしき洋服をもち帰っている。

以前、漂流民大黒屋光太夫からの聞き取りによるロシア見聞記「北槎聞略」をご紹介いたしました。
この「北槎聞略」を著した桂川甫周の人となりなどを語る「桂川家の世界」を読んでおりましたら、光太夫らが羅紗の製法を持ち帰った可能性について示唆する一文がありました。

江戸の薬園のヒツジ飼育については、「羊蹄記」「資料 日本動物史」島田元旦「黄初平図」絡みのエピソードなどをご紹介しています。

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2016年02月21日

●驚異の部屋の植物羊。

赤ん坊の頭蓋骨の空間を埋めているウォーム骨は、オラウス・ウォルミウスとしても知られているオーレ・ウォームの名前から名付けられた。
しかし17世紀、彼はむしろコペンハーゲンにあるコレクションの展示室ウォーミアヌムで有名だった。
そこを訪れる人々はそれを「驚異の部屋」と呼んでいた。
ここでいちばん印象的な収蔵品は、「タタールの子羊野菜」であろう。
半ば動物で半ば植物、果実として羊が実っていた。
先史時代の巨人族の頭蓋骨や新世界から持ってきたコーヒー豆も展示されていた。

ページを繰っても繰っても悪寒が走るエピソードが山盛りの「「最悪」の医療の歴史」を読んでいたところ、ふいにほっとするような小話がはさみこまれていたので、嬉しくなってしまいました。
植物羊とコーヒー豆が同じ枠の中で語られる時代と場所があったということそのものが、驚異的でワクワクします。

植物羊のお話はよくしております。こちらでぜひ。

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2016年02月14日

●江戸期の毛織物事情。

イギリスが日本まで来て売ろうとしたのは布類だった。
アダムスはイギリスが日本へ進出する前に、すでに日本での貿易を薦める内容の書簡をイギリス側に送っている。
彼はその手紙で「そこ(日本)では布類は魅力ある商品とされている」と記す。

(略)

しかし、布類の輸出は日本では思ったほど順調には進まなかったが、それには理由があった。
まずは、流行(ファッション)の問題である。
流行という概念そのものがヨーロッパではまだまだ一般的ではなかったし、昨年は売れたものが今年は売れないという現象にイギリス人は思いきり面喰らったのである。
そのうえ、日本人特有の色彩の好みがあった。
コックスによれば、日本人が着るのは黒、赤、それに「悲しげな青類(sad blues)であり、初期に輸入した鮮やかな色彩は人気がないとしている。
(略)
素晴らしい陣羽織の多くはこうして輸入された羊毛で織られたもので、おそらくはイギリス製の羊毛も原料として使われたはずである。
結局、1620年、7年間もの努力の後、コックスはロンドンの東インド会社に手紙を書き「我々のイギリス製毛織物に関しては、日本で大量に販売することができるとは思えない」と言っているのだから可哀相な話である。

(略)

日常的な品質のものも、ペルペチュアナ(耐久性)という安価なイギリス製の毛織物が江戸時代を通じてオランダ人によって日本に輸入されつづけていた。
1800年になると、将軍家斉がオランダカピタンのワルデナルに、日本でも毛織物の生産を開始できるようにと、羊を輸入するように要請している。
もちろん、ワルデナルはこれを拒むが……。

時々お話している江戸期の羊毛製品について、さらにもう少し。
タイモン・スクリーチの「江戸の英吉利熱」から、当時の日本と羊毛製品帝国としてのイギリスの関係について語られた部分を引いてみました。
決して需要がなかったわけではないと思うんですが、なにかとかみあわなかったみたいです。

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2016年02月09日

●公冶長の説話。

公冶長にはきわめて奇妙な特技があった。
つまり、さまざまな鳥のことばを理解することができた。

(略)

貧しい公冶長は、自分の家でぶらぶらしていて、生計の道がなかった。
ある日、雀が一羽飛んできて、公冶長の家のまわりを飛びまわりながらさえずり始めた。

公冶長、公冶長
南山に虎駝羊有り
爾 肉を食い、我 腸(はらわた)を食わん
当にすみやかに之を取るべし、彷徨うこと勿れ

公冶長は、雀の言うとおり出かけ、死んだ羊をみつけて持ち帰り、雀と分け合って食べた。
その後しばらくして、羊に逃げられた人が探しながら公冶長の家までやって来ると、壁にかかっている一対の羊の角が目にはいったが、まさに逃げた羊のものであった。
そこで、自分の羊を盗んだのは公冶長だと思い込み、魯の国君に訴えた。
国君が人を送って公冶長を取り調べると、公冶長は雀のことばを聞いたのだと釈明した。
しかし、国君は人が鳥のことばを理解できることを信ぜず、でたらめなはなしをでっちあげたとみなし、公冶長を投獄した。

袁珂の「中国の神話伝説」から、孔子の高弟である公冶長のエピソードを。
のちに雀に助けられて隣国の侵犯を撃退するに功があり、名誉は回復されるのですが、……でも、落ちてる羊を拾って食べちゃってるのは良いんでしょうか。

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2016年02月06日

●『信濃奇勝録』より、「石羊」。

巻之四 諏訪郡之部

石羊

矢ヶ崎村の北に永明寺山とて高く峙(そばだち)たる松山あり
此山南面の中腹に谷ありて大なる岩石数百累々たり
其石間に洞を作し穴をなす所多し
其下滴水小流をなす
此内に異獣ありて住り
大さ鹿のことく毛色も又鹿の如し
中に黒白の斑あり
頭ハ小し惣身毛長く垂れ四足を隠す
常に出る事稀なり
炎夏暴雨の後ハ出て蚯蚓を穿るか如し
村里近しといへとも見る者少し
たまたま見し者名つけて石羊と云又毛長貉被貉(かぶりむじな)など名づく
群をなすといへとも其数二十余に過すといへり

江戸末期の地誌『信濃奇勝録』に、「石羊」と呼ばれる生き物の記録があるとの由、ak様から教えていただきました。ありがとうございます。
さて、正体はなんなのでしょうね、これ。「伊豆海島風土記」のような、野良羊または野良山羊の可能性を考えてみたいところですが。

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2016年01月30日

●各務原市、成田山貞照寺、川上貞奴の墓所。

岐阜県各務原市にあるお寺さんまで行ってまいりました。
名鉄新鵜沼駅、またはJR鵜沼駅から車で五分、徒歩だと一時間弱の場所にある、成田山貞照寺です。

成田山貞照寺公式HP

日本初の女優として知られる川上貞奴が自らの菩提寺として建立した寺院で、奥まったあたりに墓所があるのですが、なぜかこのお墓を石羊が守っているらしく、これは見に行かねばと。

というわけで、案内板にしたがって本堂の脇を抜けていくと、

teisyouji160130no1.jpg

このような場所が。

teisyouji160130no2.jpg

そして石羊が二体。貞奴の干支が未であることにちなんだものらしいのですが、なんというか、剛毅です。

teisyouji160130no3.jpg

teisyouji160130no4.jpg

石羊は、ひっそりとあちこちに点在しています。
これまでに、神戸市教育会館京都国立博物館、同じく京都の野仏庵東京国立博物館、やはり東京の根津美術館のものをご紹介しております。
ご縁があれば、ぜひ。

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2016年01月23日

●「甲子夜話三篇」より。

小鼓観世新九郎が家宝に、羊皮の鼓有り。
伝来を聞くに、台徳公より賜る所と云。

故新九郎(豊綿)語れるは、此鼓、時として不機嫌なること有り。
予問ふ。何をか不機嫌と云。
曰ふ。或とき、宮の御能の日、某脇能を打とき、調れども曾て鳴らず。
為方なく、代鼓を以て其能を打しが、不審晴ずして、御能畢ると楽屋に入て打みるに、其音亮亮として甚好し。
因て知る。此鼓不機嫌なることを。

頃日、当新九郎来る。就て復其ことを問ふに、違はず。
何にも前言の如し。又、此鼓皮黔色、尋常の鼓と異にして、見る所美ならずと。

江戸後期、松浦静山の随筆集「甲子夜話」のなかに、羊の皮の鼓のエピソードがありました。なんだかワガママな鼓ですが、皮の素材が珍しいことに関係があるのでしょうか。

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2016年01月19日

●「誹風柳多留」(続き)

ひさしふりひつじを喰ふとていし龍   (一〇篇・37)

傘をあら煮のよふに羊喰ひ   (一二二篇・4)

傘を天ぷらの氣て羊喰ひ   (一二六篇・65)

ひさしぶりに、江戸の川柳集「誹風柳多留」を広げてみました。
紙を食うイメージのとそれ以外のとで、二度ほどご紹介しているのですが、改めてもう少し。「ていし龍」というのは「国性爺合戦」の鄭芝龍のことだと思うのですが、どういう状況なんでしょう、これ。

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2016年01月13日

●古代ローマの距骨遊び。

会食者は食後に飲みはじめる。
「饗宴の王」を選び、「饗宴の王」は、勝手に会食者それぞれが飲むワインの杯数や品質を定めた。
話し好きの人たちが好んだひとときである。
温和な性格の人が「饗宴の王」となると、宵のパーティーでは、歓談や上品な娯楽(距骨遊び、大道芸人の寸劇、フルート奏者の伴奏による歌唱)を楽しむ。
(略)
しかし、「饗宴の王」が酒豪ならば、会食者は熱気に包まれる。
距骨遊びは子供の遊びと考えられていて、賽子─これは法律違反─が要求される。

※距骨遊び─羊、山羊などの距骨または、その模造品を使う、主として子供の遊び。四面に目が記された距骨を四個投げて出た目の合計を競ったり、八個の距骨を空中に投げ、手の甲で受け止めた個数を競ったりなど、種々な遊び方があった。

古代ローマ人の生活を活写した「古代ローマの日常生活」を読んでいたところ、晩餐を描いた場面に、羊の距骨を使った遊びについての説明がありましたので、引用を。
距骨遊び(アストラガロス、アストラガルス)のお話は時々しておりますので、こちらで。

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2016年01月06日

●木瓜桐文緋羅紗陣羽織

あけましておめでとうございます。今年もひつじnewsをよろしくお願い申し上げます。

さて、今年初のヒツジ話は、緋色の羅紗の陣羽織です。

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木瓜桐文緋羅紗陣羽織(伝 信長より秀吉拝領)

緋羅紗の地に白羅紗で木瓜紋と桐文とがはめ込んである。

「秀吉と桃山文化 大阪城天守閣名品展」カタログ

羊毛加工品である羅紗の羽織のお話は時々しているのですが、あまり具体例を挙げておりませんでした。この「木瓜桐文緋羅紗陣羽織」などが典型例になるでしょうか。

ひつじnews at 14:00 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2015年12月12日

●W.H.デイヴィス 「羊」

 ヰリアム・エーィチ・デーヴィス

昔、私がボルティモーアに居たとき、
ひとりの男がやつてきて叫んだ、
「来ないか、わしらは千八百頭の羊を載せて火曜日に出帆するんだが。」

「若いの、おまへが一緒に来て呉れりや五十シリングやるぜ。
千八百頭の羊をボルティモーアから
グラスゴウの町まで届けるんだ。」

かれは私に五十シリング呉れた、
私は千八百頭の羊をつれて出帆した、
船は間もなく港の口を離れ
深い大海へと乗りだした。

海の第一夜には
羊はこゝろ静かにしてゐた。
二晩目になると、かれらは恐れて啼いた、─
風の中に草の匂いがしないので。

可哀さうに、かれらは緑の野原を鼻で慕ひ
私が眠られぬほど高く啼きつゞけた、
五万シリング呉れよとまゝよ、
二度と羊と船出はせまい。

西條八十の訳詩集「白孔雀」より、ウィリアム・ヘンリー・デイヴィスの「羊」(原題「Sheep」)を。

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2015年12月04日

●ビッグホーンが家畜にならなかった理由。

「家畜化の候補となりうる」陸生の大型草食動物は148種類である。
しかし、人類の歴史を通じて、実際に家畜化されたのは、この148種類のうちの14種だけである。
残りの134種は、どうして家畜化されなかったのか。

(略)

序列性のある集団を形成しない問題

実際に家畜化された大型哺乳類は、どの種類も、つぎの三つの社会性を共有している
─群れをつくって集団で暮らす。集団内の個体の序列がはっきりしている。群れごとのなわばりを持たず、複数の群れが生活環境を一部重複しながら共有している。
(略)
ほとんどのシカやレイヨウのように群れをつくって暮らす動物の多くは、はっきりした序列を集団内で持っておらず、リーダーを本能的に刷りこみ記憶する習性がない(したがって、人間を群れのリーダーとして刷りこみ記憶するようなこともない)。
シカやレイヨウを飼いならすことはできるが、羊の群れのように飼いならされたシカやレイヨウの群れを見たことがある人はいない。
まったく同じ理由で、現在の羊の祖先にあたる中央アジアのムフロンと同属の北米産のビッグホーンも家畜化されていない。
ビッグホーンは、ムフロンと同様、家畜にはうってつけの条件をひとつだけ除いてすべて備えている。
ビッグホーンは、ムフロンとちがい、自分より序列が上と認識したメンバーに服従するという習性を、種全体として持っていないのである。

先日、横浜市立金沢動物園に行ってから、家畜化された原種とオオツノヒツジ(ビッグホーン)のような種とはなにが違ったのだろうとぼんやり考えていたのですが、『銃・病原菌・鉄』の中の一章「なぜシマウマは家畜にならなかったのか」に、ものすごくわかりやすい説明がありました。そ……そこまで明快な理由なんですか?

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2015年11月23日

●ヴァリニャーノ 「日本巡察記」

国土は、ある地方では彼等の主食である米を産し、また麦もとれるが、他の地方は不毛の山岳地帯となっている。
(略)
牧畜も行われず、土地を利用するなんらの産業もなく、彼等の生活を保つ僅かの米があるのみである。

(略)

彼等の食物と調理法については、材料の点でも、味の点でも、まったくヨーロッパのものと類似するところがない。
結局、彼等の食物に慣れるまでは多くの努力と苦痛を経なければならぬ。

オールコック「大君の都」「サムライ洋食事始」の、幕末の食文化を巡るあれこれに関連して、もう少し。
もっと昔に日本にやってきた西洋人もなにか言っているのではないかと、イエズス会宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーノの「日本巡察記」を開いてみました。
牧畜が行われていないというのは、特記するようなことなんですね、やっぱり。

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2015年11月18日

●江戸期における羽織の歴史。

1616年、日本に羊毛製品を持ち込んだ英国商館員の本国への報告にあるように
「日本人は、黒、赤などの原色を好み」中間色の毛織物はほとんど売れなかった。
従来の衣生活にはなかった黒と猩々緋の染色のものが、舶来好みとして強烈に志向されたのであった。

少し時代が下がると、羽織に袖がついてくるようになった。広い短い袖である。
袖のついた羽織─つまり陣羽織は、いずれも舶来の毛織物や天鵞絨地である。主体は羅紗である。
上の者が豪華に装えば、下の者もこれに倣って豪奢の風を追う。
羅紗の羽織は一般武士も着用するようになっていった。
一見、陣羽織風ではあるが、豪華な「縫取り」模様はなくなって、やがて無地に近くなり、代わりに、背中に大きな家紋がつけられた。

(略)

羽織は道中の服であり旅行用のものであったが、広く一般に重宝がられて普及すると、道中だけでなく、室内の座敷着として、これをつけて客人と応対するようになり、江戸末期になると、これに袴を加えて一対となして、それを「羽織袴」と称するようになった。
高貴の人や主君の前では羽織は着用しなかったが、それ以外の一般の場合には、これが正装となり、また礼服となった。
布地としては、いろいろ使われたようだが、羊毛加工品は依然として衰えていなかった。

緋羅紗地丸紋付陣羽織白羊毛皮付き羽織、はたまた司馬遼太郎の「胡蝶の夢」などで、江戸期に普及した羊毛の羽織のお話をしているのですが、「羊毛の語る日本史」にわかりやすい解説がありましたのでご紹介です。

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2015年11月14日

●ヴィクトリア朝英国の羊肉料理。

さて、《名馬シルヴァー・ブレイズ》事件のテーマのひとつは事件当日の月曜日の夕食に登場した、「(アヘン入り)マトンのカレー料理 ”curried mutton”」です。
調教厩舎のあるキングズ・パイランドでは羊を飼育しているので、調教師のストレイカー宅では日曜日のディナーのメイン料理は「ロースト・マトン」であることも多いでしょう。
(略)
必ずローストした残りの肉がある月曜日に、夫のストレイカーはアヘンの味を隠すために「マトンのカレー料理」をリクエストしたのでしょう。

(略)

『ビートン夫人の家政読本』に載っている「マトンのカレー料理」の材料と作り方は、

材料: 冷肉の残り物のマトン、玉ねぎ2個、パター0.25ポンド、カレーパウダーと小麦粉を各デザートスプーン1、塩、スープ1パイント
作り方: スライスした玉ねぎをバターで炒め茶色になったら小さく切ったマトンを入れる。この中にスープをいれてカレーパウダー、小麦粉そして塩を入れてできあがり。

「サムライ洋食事始」「大君の都」をご紹介したところで、さて、ではオールコックがそこまで焦がれた羊肉料理とはなんだったんろうと、「ヴィクトリア朝英国の食卓と生活」を繰ってみましたら、
以前ご紹介したシャーロック・ホームズシリーズの一作「白銀号事件」に出てくるマトンのカレー料理について、一章がさかれていました。ちょっと美味しそうです。

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2015年11月10日

●ニザーミー・アル=アルーズィー 「四つの講話」

イスマーイールの卒中の治療

マリク・シャーの治世とサンジャルの治世の一部分にかけて、ヘラートにアディーブ・イスマーイールという哲学者がいた。
彼はきわめて優れ、学識がある完全な男であったが、生計を医師としての収入で立てていた。
彼はいくたの珍しい治療を行った。

ある時、彼が屠殺市場を通りかかると、ある屠殺人が、羊の皮を剥ぎ、時どき羊の腹に手を入れ、温かい脂肪を取り出して食べていた。
イスマーイールはこの様子を見て、向かい側にあった八百屋にむかい、
「もしあの肉屋が死んだら、埋葬する前に私に知らせてくれ」と言うと、八百屋は「承知しました」と答えた。

(略)

その時八百屋はイスマーイールが言ったことをふと思い出し、駆けて行って彼に知らせた。
するとイスマーイールは、「死ぬのがおそすぎるぐらいだ」と言って、
杖をとり、その家に行き、死人の顔から布をとり、
(脈を手にとり、「杖で死人の足の裏をたたけ」と命じ、しばらくして「もう十分だ」と言った)。
それから彼は卒中の治療にとりかかった。

12世紀のペルシア散文文学「四つの講話」から、医師に関わる逸話を。
温かい脂肪……たしかに体に悪そうです。

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2015年11月06日

●幕末と西洋料理。

開国前夜の西洋料理─ペリー主催の饗宴
アメリカ側全権の東インド艦隊司令長官マシュー・C・ペリーは日米和親条約の調印日を前にした2月29日、自分たちの主張がほぼ盛り込まれる見込みがついたとして、ポーハタン号に日本側の関係者を招いて大饗宴を催した。
(略)
コックは甲板で飼育されてきた牛、羊、鶏をはじめ、ハムなどの貯蔵肉、魚、野菜、果物などを惜しみなく使って極上の料理を用意した。
(略)
ただしどれだけの日本人が味わいながら食べていたのかは疑問である。
現にアメリカ人記者も日本人が積極的に料理を口にしたのは、旨いからというより、物珍しさや好奇心によるものと見ており、その証拠に日本人たちがテーブルに運ばれてくる料理や果物などについて一つずつ、その名前を知りたがり、全部味見をしたことからも明らかだとしている。

太平洋を渡った170名
和親条約に続き、通商条約の交渉が始まり、それが締結された後に初めて幕府の使節団が海を渡ったのである。
(略)
艦内での食事は朝8時と午後2時の2回と決められていた。
医師の村山伯元(31歳)は出港直後の食事内容を次のように記している。
「1月19日、羊肉・雉子、ジャガタラ芋煮つけ、米国の酒、飯は邦米なり、茶は砂糖を入、味殊によし」(『奉使日録』)

その後の使節団
徳川昭武が兄の将軍・慶喜の名代としてパリ万博開会式に出席するため、随員28名を伴い、横浜を発ったのは慶応3年1月11日である。
(略)
随行した渋沢篤太夫(のちの栄一)が食事内容を細かく書き留めている。
(略)
「同10時頃にいたり、朝餐を食せしむ。器械すべて陶皿へ銀匙、並銀鉾、包丁等を添へ、菓子、蜜柑、葡萄、梨子、枇杷、其の他数種、盤上に羅列し、随意に裁制し、食せしめ、又葡萄酒へ水を和して飲しめ、魚、鳥、豚、牛、牝羊等の肉を烹熟し、或は炙熟し、パンは一食に二、三片適宜に任す。」

以前、オールコックの「大君の都」で、幕末の日本にやってきて、羊肉を手に入れられずに苦しむ西洋人の様子をご紹介したのですが、では初めて羊肉料理と出会った日本人たちはどんな反応を示したのだろうと、「拙者は食えん!―サムライ洋食事始」を見てみました。
タイトル通りに「食えん!」となったエピソードも山盛りでしたが、意外に屈託のない人たちの姿も目立ちます。

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2015年10月31日

●橘南谿 「東西遊記」

又、長崎にたまたまやぎという獣あり。
其形羊に似て色黒く、毛ながきもの也。
薩州鹿児島にも是あり。
隅州の内にはやぎの牧ありて、多く育てりという。
何の用になすものにや知らず。

江戸後期における羊飼育についてご紹介したときに触れた、橘南谿の紀行「東西遊記」から、羊に関する一文を。

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2015年10月14日

●マザーグース 「いちのたつひに」

As I was going to Derby,
Upon a market day,
I met the finest ram, sir,
That ever was fed on hay.

This ram was fat behind, sir,
This ram was fat before,
This ram was ten yards high, sir,
Indeed he was no more.

The wool upon his back, sir,
Reached up unto the sky,
The eagles build their nests there,
For I heard the young ones cry.

いちのたつひに
ダービーへいくとちゅう
せかいいちのおひつじにであった
あれでもほしくさくっていたのか

うしろのほうもまるまるこえて
まえのほうだってまるまるこえて
せたけはなんと十ヤード
ほんとにかけねのないところ

せなかにはえたようもうは
そらにもとどくいきおいで
わしがそこにすをかけていた
ちゃんとひなのなくのもきこえた

ときどきご紹介しているマザーグースをもうひとつ。
「いちのたつひに」の冒頭部分です。

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2015年10月10日

●マルティヌス・ロールビー 「ローマ近郊、カンパーニャ地方の羊飼いの少年」

syounen151010.jpg

 「スコットランド国立美術館展」カタログ 

19世紀デンマーク、マルティヌス・ロールビーの「ローマ近郊、カンパーニャ地方の羊飼いの少年」です。
デンマーク黄金時代の理想化された自然の情景。

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2015年10月06日

●大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史

先日の第67回正倉院展に続いて、展覧会情報を。
以前お話したことのある、メソポタミアの謎の箱「ウルのスタンダード」。
こちらの現物を、神戸市立博物館で開催中の「大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史」で見られるようです。

会期 2015年9月20日(日)―2016年1月11日(月・祝)

会場 神戸市立博物館

開館時間 平日、日曜日 午前9:30─午後5:30(入館は午後5:00まで)
       土曜日 午前9:30─午後7:00(入館は午後6:30まで)

休館日 月曜日、10月13日(火)、11月24日(火)、12月29日(火)─2016年1月1日(金・祝)
     (ただし10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝)、2016年1月4日(月)、11日(月・祝)は開館)


ウルのスタンダード
メソポタミアの古代都市ウルで、王家の墓から見つかった「箱」。
贅沢な素材が使用され、ウルが経済的に豊かで盛んな交易を行っていたことがわかる。「スタンダード(軍旗)」と通称で呼ばれているが、用途は不明。
片面には祝宴の様子が、もう片面には戦争の様子がモザイクで描かれている。
豊かさが階級社会を生み出し、また豊かさを保つために近隣部族との覇権争いが繰り広げられたことが読み取れる。

ぜひとも。

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2015年10月03日

●第67回正倉院展

先日、正倉院宝物の毛氈が羊毛であることが証明されたとのニュースをご紹介したのですが、そのフェルトの品が次回の正倉院展にて出陳される模様です。

会期  平成27年10月24日(土)─11月9日(月) 全17日
会場  奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日  会期中無休
開館時間  午前9時─午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月24日─25日、10月30日─11月1日、3日、6日─8日)は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで

主な出陳品

花氈(かせん)
花氈は今日のフェルトと同様に獣毛を縮絨(しゅくじゅう)させて作った文様(もんよう)入りの敷物。
本品は大型の1枚で、裏面に「東大寺」印が3顆捺(お)されており、東大寺所用のものと考えられる。
近時の調査で羊毛が使用されていることや製法が明らかになった。

これは楽しみです。
正倉院宝物のお話はときどきしておりますので、こちらで。

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2015年09月30日

●気球と羊の関係。

ごく初めから気球に興味を抱いたのは、ショーマンと科学者だった。
ショーマンたちは、スリルにとんだ見世物に仕立てて、ひとやま当てようとした。
その一人がジャン・ピエール・ブランシャールという男である。

(略)

ブランシャールはイギリス海峡横断で一躍名をあげたが、その後ヨーロッパの主要都市を回って、たびたび飛行を披露した。
フランス革命が起る前の1785年11月19日には、まさに九死に一生の大冒険飛行をやってしまった。
ベルギーのケンから飛び立ったのだが、安全な上昇に必要な砂袋の重さを計算違いしたため、まるでロケットみたいに急上昇し、あっというまに3万2千フィート、つまり6マイルもの高さに昇ってしまった。
(略)
ブランシャールはこの事故にもめげず、その後も何回となく飛びつづけて、新しい技術で大衆をあっと言わせようと、小型のパラシュートで犬やその他の動物を落下させる、という感心できないアイディアを思いついた。

先日ご紹介した「ほら吹き男爵の冒険」に出てきた気球乗りの男と羊ですが、なにか元になった事実があるのではないかと「気球の歴史」を繰ってみましたら、こんなお話が載せられていました。これでしょうか、やっぱり。いやしかし、なんてことを。

なお、モンゴルフィエ兄弟の気球にも羊はのせられているのですが、こちらは、人が乗っても大丈夫かどうかを確かめるためのまっとうな実験だったらしいです。

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2015年09月28日

●アフガニスタンの放牧風景。

パシュトゥーンの牧夫たちが放牧に用いる道具は、ごく普通のものである。
まず、二メートルほどの杖。それは、ヒツジをたたいたりついたりするほか、牧夫が深い溝を飛び越えたりするときにも用いられる。
しかし、この杖のなによりも不可欠な用法は、隣近所のテント集落のイヌに襲われたときに、それを撃退することである。
多くのイヌは獰猛で、走っている車に吠えながら追いつき、体当たりするくらいである。多くの牧夫の足には、イヌに噛まれた傷跡がある。
この杖に、頭のターバンを載せて高く掲げることは、羊群には強い刺激となる。群の動きを急に止める必要があるときに用いられる。

(略)

杖や投石器以外、牧夫だけが用いる道具はない。
パシュトゥーン遊牧民の家畜群所有者も、雇われた牧夫も、質を別にすれば、同じような袖の長いチャパンという外套をはおっている。
彼らが袖に手を通すのは、冬季だけである。このチャパンが、夏の牧野の野外での寝泊りに重要なことはすでに述べた。
このチャパンについて重要なことは、これを着て両腕を横に広げると、牧夫の体が幅三倍くらいに見えることである。
当然、こうすることによって牧夫は羊群に強い視覚的な刺激を与えることができ、急に群の動きを止めることが可能になる。

松井健による、アフガニスタンのパシュトゥーン遊牧民などへの調査が非常に興味深い、「遊牧という文化」から、放牧の技法に関する章を。
チャパンというと、ハーミド・カルザイ氏が羽織ってたやつ、というイメージが強いかと思うんですが、そんな使いかたをするものだったとは。

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2015年09月18日

●「ポントルモの日記」

木曜日の朝、眩暈がして一日中続いた。
それ以来気分が悪く頭がぼんやりしていた。
木曜日の晩は旨い去勢羊のミネストラと砂糖大根のサラダ。

金曜日の晩、砂糖大根のサラダと卵の魚にした卵を二つ。

土曜日、断食。

日曜日の晩は枝の主日の晩で、夕食に茹でた去勢羊とサラダを少しずつ食べた。
それに三クァットリーノのパンを食べたはずだ。

月曜日の晩は夕食の後とても元気があって具合が良い気がした。
レタスのサラダ、旨い去勢羊のミネストラ、それに四クァットリーノのパンを食べた。

16世紀フィレンツェの画家、ヤコポ・ダ・ポントルモが最晩年につけていた日記です。おそらくは健康管理を主目的としており、そのためか食事の話が延々と続きます。……羊肉、多いですね。

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2015年09月12日

●ビュルガー編 「ほらふき男爵の冒険」

いやしかし、綺麗に金のメッキをした駕籠がですナ、円屋根の一番でかいのより更に周囲がある巨大な気球にぶらさがって、ワガハイの舟から二尋ほどのところに、落下してきたときの、ワガハイの驚きをまあ御想像下され。
駕籠には男一人と羊半匹が乗っており、羊はどうやらこんがり焼けているようす。

(略)

ま、そうはいっても目下の彼氏はです、落下のせいでよほど調子が狂ったか、ほとんど一言も口がきけないくらいでありましたが、しばらくたって回復すると、こんな報告をしてくれました。
「 (略) こいつでイギリスのコンウォール岬から飛びあがりました。羊をのっけたのは、上を見上げて口あいてる何千の見物衆の前で、空からひとつ奇術をみせてやろう、と思ったんです。
運悪く上がってからたった十分も経たないうちに風が急に変わりやがって、降りる予定のエクスターの方へ行く代わりに、海の上へ吹き流されちまい、どうやらそれっきりずっと、計測りようもない高いところを漂ったらしいです。
羊の奇術ができなかったのは、幸運てましたね。なにしろ空中飛行も三日目となると、あっしはひどく腹が減りましてね。可哀そうだが羊を殺らざるをえなかった。
その時はお月さんの上空遥かに昇ってまして、それから更に十六時間も上昇すると、遂に太陽にえらく近くなって眉毛が焦げるほどだった。
そこであっしは皮を剥いでおいた羊を、太陽が一番強くあたるところ、つまり言いかえりゃ、気球の影が落ちない所に置きましてね、このやり方で四十五分ばかりもたつと、完全な丸焼一丁あがりってわけで。この焼肉であっしはずっと生きてきました。」

ビュルガー編の『ほらふき男爵の冒険』より、「ミュンヒハウゼン男爵の海の冒険」第四話を。この「そんなバカな」感がたまりません。

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2015年08月31日

●マンデヴィル「東方旅行記」(続き)

以上の島々から海路でなん日も東へむかうと、マンシーと呼ばれる一大王国に達する。
(略〉
また、この国には、羽毛のない白い牝鶏がいて、わが国の羊みたいに、まっ白い羊毛をはやしている。

第二十二章より

こんどは、カタイの国の彼方にある国々や島嶼について話したい。
(略)
さて、この国土からさらに進むと、バカリイに達するが、そこには凶悪な人間がたくさん住んでいる。
また、国内には、まるで羊のように、羊毛を生み出す樹木があって、人々はこれで布を作る。

第二十九章より

先日の、マルコ・ポーロ「東方見聞録」(続き)から勢いづきまして、やはり昔お話をしたマンデヴィル「東方旅行記」を読みなおしてみました。
以前は植物羊関連のお話ばかりをしていたのですが、他にも少しだけヒツジに触れた箇所があるようです。羊毛牝鶏については、挿絵をご紹介したことも。

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2015年08月27日

●谷泰「牧夫の誕生」より。

草の支給量に対してもはや肉の取得量が増加しない成長期を過ぎた雄は、確実に徒食者と見なされることになる。
こうして、一歳半から二歳までの雄を殺すためだろう、動物考古学者は、残存消費遺骨のなかで、ある段階から、この年令以上の雄が減少するという一般的事実を確認している。

(略)

しかもこの消費戦略が、その後、西アジアの牧民のもとで、変わらず実施され続けられたことは、歴史的資料からも確認されている。
たとえば紀元前1000年期の新バビロニア時代の委託家畜の記録でも、家畜群の性・年齢構成において、雌に対する雄の頭数はきわめて少ない。
またシュメール時代、周辺地域から貢納としてもたらされた羊・山羊のほとんどが雄である。
そしてこのような雄が、神殿において供犠獣として用いられている。
周辺地域の牧民たちは、群れを殖やすに役立つ雌は資本財として手元に残し、間引くべき雄は流通財として貢納として出した。
そこに見られる性差に応じた財としての差異化も、再分配の中心である神殿での供犠における雄の特化も、まさにこういう初期牧畜の成立以後ずっと維持されてきた家畜経営戦略を前提することなしには成立しえなかったことと言ってよい。

しかも、この一歳を過ぎた段階で幼雄を一斉に間引くというプラクティスが、ヘブライズムでの過ぎこしの祭り、キリスト教での復活祭、またイスラムのラマダンあけの祭りで、当歳の雄を殺して食するという慣習の背景にあることはすでに指摘した。

先日の、乳加工食品の成立についての論考があまりにおもしろかったので、改めて、同著者の「牧夫の誕生」を読んでみました。引用は、羊・山羊の家畜化以後の技法的展開に関する部分。やはり刺激的です。

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2015年08月23日

●渡辺崋山 「十二支図巻」(部分)

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「渡辺崋山・椿椿山が描く花・鳥・動物の美」展カタログ

江戸後期、渡辺崋山の「十二支図巻」より、羊の部分を。愛知県、田原市博物館蔵です。

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2015年08月17日

●マルコ・ポーロ「東方見聞録」(続き)

チパング諸島に住む偶像教徒は、マンジやカタイの偶像教徒と同じ系統に属しており、その奉ずる所も同様に、牛・豚・犬・羊その他の動物の頭をした偶像である。
一頭にして四面の偶像もあれば、本来の首に加えて両肩の上にもう一つずつの首をそなえた三頭の偶像もある。
腕が四本もしくは十本・千本もある偶像すらあって、特に千手を具した偶像は最高の地位を占める。

以前、マルコ・ポーロの「東方見聞録」に出てくる巨大ヒツジのお話をしたことがあるのですが、さて、では我らがジパングについては、ヒツジ関係でなにか言ってくれてはいないものかと確認してみましたら、こんな記述がありました。

「三頭」や「千手」については千手観音などを連想すれば良いかと思うのですが、「動物の頭をした偶像」というのがわかりません。
十二生肖の像が近いような気もしますが、さて。

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2015年08月13日

●島田元旦「黄初平図」(続き)

江戸時代の羊図は、十二支図や動物図鑑として伝わったものを参考に描かれたものが少なくない。
しかし、1817年(文化14)には、巣鴨の薬園で幕府による日本初の緬羊飼育が行われたことなどから、絵師の中には実物を見たことのある者もいたと考えられる。

(略)

原本はおそらく羊飼いをテーマとした銅板だが、そのためか羊がとても可愛らしい。
江戸生まれの元旦は谷文晁の弟で、のちに島田家の養子となった。
緬羊飼育の責任者だった渋江長伯を隊長とした蝦夷地調査にも加わり、アイヌ絵を描いたことでも知られている。

江戸期のヒツジの微妙な立ち位置についてはわりとよくお話しているのですが、そちらに関連して。
以前ご紹介した島田元旦「黄初平図」ですが、実物を見て描いた可能性が示唆されています。

渋江長伯の巣鴨の薬園についてはこちら、画題の「黄初平」についてはこちらをご参考にぜひ。

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2015年08月10日

●「山海経」の脂肪尾羊。

郭璞は大月氏国には驢馬ほどもある大形の羊がおり、尾は馬の尾に似ているといっている。
カンヨウとは西アジア・中央アジアに分布していたいわゆる太尾羊のことであろう。
この種の羊は尾の付け根の両側に相当量の脂肪の塊があり、その臀部の脂肉を切り取り、それで乾肉を作るとともに、その切り口を縫合しておくと、また臀部の脂肉が旧に復するという。
カンヨウはいわば取っても取ってもいっこうに減らない脂肉の貯蔵庫だというわけである。(榎一雄「大月氏の太尾羊について」)。

銭来山麓の人びとは、セキ、つまり、厳寒時に手足に生じた皹・あかぎれなどを治すために、カンヨウの脂肉を手足に塗ったのである。

先日、「遊仙詩」をご紹介した郭璞ですが、むしろこの人物は「山海経」の注釈者としてのほうが有名なのではと気が付きまして、羊に似た怪異についてなにか言っているのではないかと解説書を開いてみましたら、ありましたありました。
以前にお話したことのある「シンヨウ」(こちらの本では「カンヨウ」になってますが、同じものかと)は、実在の脂肪尾羊と関連させて考察することが可能なようです。

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2015年08月06日

●郭璞 「遊仙詩」

京華遊俠窟    京華(けいか)は遊侠の窟、
山林隱遯棲    山林は隠遯の棲。

朱門何足榮    朱門 何ぞ栄とするに足らん、
未若託蓬萊    未だ蓬莱に託するに若かず。

臨源挹清波    源に臨んで清波を挹(く)み、
陵崗掇丹荑    崗に陵(のぼ)って丹荑(たんてい)を掇(と)る。

靈谿可潛盤    霊谿(れいけい) 潜盤(せんばん)す可し、
安事登雲梯    安んぞ雲梯に登るを事とせん。

漆園有傲吏    漆園に傲吏(ごうり)有り、
萊氏有逸妻    莱氏に逸妻有り。

進則保龍見    進めば則ち竜見を保てども、
退為觸藩羝    退いては藩(かき)に触るる羝(ひつじ)と為る。

高蹈風塵外    風塵の外に高踏し、
長揖謝夷齊    長揖して夷齊(いせい)に謝せん。

晋代の文学者郭璞による「遊仙詩」を。
世俗を捨てて仙境に隠遁したい、といった内容ですが、その中に「いったん疎んぜられたら、そのとき隠退しようとしても、もはや身動きできないのだ。」(同書解説より)という意味で、以前お話した「易経」の「触藩羝」の語が使われています。

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2015年08月04日

●オールコック 「大君の都」

牛肉と羊肉をすこしも食べないでいると、イギリス人の体質はいつか重大な支障をきたすにちがいない。
われわれは海外にきわめて多くの属領を有する小さな島国の国民であるがゆえに、当然はるかなる東洋の土に派遣されて、長いあいだ故郷とのいっさいのつながりを断たれ、流刑にも似た状態におかれるようなこともありうるというふうに考えるように育てられている。
年々何千、何万という人びとを両親のもとから巣立たせる仮借なき必然に、われわれがなんと冷静にしたがっていることか、そして知友や親戚とも離れ、社会的・知的な交際を奪われても、いかに耐え忍んでゆくことか、じつに驚くべきものがある。

ところで、読者は、何ヶ月ないし何年にもわたって牛肉や羊肉を味わえないということがどんなものであるかを、切実に感じたことがあるかどうか。
そういう目にあったことのない人びとには、このような状態のもとではとうてい健全な精神を保持することは不可能だといいたい。

先日のアンベール「続・絵で見る幕末日本」に続いて、幕末の西洋人による日本見聞記をもうひとつ。ラザフォード・オールコックの「大君の都」です。食生活が思うに任せないことについて苦しんでいるようですが、その、そこまで……?

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2015年08月01日

●19世紀フランスのファッション。

男性が刺繍、レース、羽飾り、短ズボン(キュロット)、派手な色の布地、尾錠、宝石などを財産の多少を問わずあらゆる身分の人間に入手可能なフロックコートに取り替えて節約と平等のために犠牲を払っている間、つまり長い歳月にわたって男性のいろいろな自己犠牲が進行する間、きかぬ気の我が美しき伴侶たちは明けても暮れても衣装を替えては喜んでいる。
ギリシア風からトルコ風、中国風からマリー・スチュワート風にメディチ風、あるいはワトーの絵の羊飼女風からルイ十五世時代の侯爵夫人風などと。

19世紀フランスにおける、ブルジョワジーの衣服の変遷について語る「衣服のアルケオロジー」から。「ワトーの羊飼女風」ファッションが、当時の女性たちのあいだで流行したのでしょうか。

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2015年07月27日

●京都市美術館 「ルーヴル美術館展」

京都の岡崎公園内にある京都市美術館まで、ルーヴル美術館展を見に行ってまいりました。

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地下鉄東山駅を降りてお土産物屋さんなど冷やかしつつ、てくてくと十分ほど。大きすぎないところが風景になじんで美しい、帝冠様式の建物が見えれば、それが京都市美術館です。

こちらの展覧会では、以前ご紹介したことのあるジャン・オノレ・フラゴナール「嵐」が、「《嵐》、または《ぬかるみにはまった荷車》」として展示されています。

ルーヴル美術館展 日常を描く─風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄

会期 2015年6月16日(火)─9月27日(日)
会場 京都市美術館
開館時間 AM9:00─PM5:00(ただし入場はPM4:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は開館)

また、フラゴナールのほか、ジョバンニ・パオロ・パニーニの「神殿から追い出される商人たち」などで、ヒツジが描かれている絵画を見ることができました。
ご縁があれば、京都まで、ぜひ。

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2015年07月23日

●「パリ風俗史」

昨今は、猫も杓子も、自分の毛を他人の毛で隠している。
宮廷人はむき出しの頭で君前に伺候して風邪を引いたり熱を出したりしないように、禿は脱毛症を隠すために、赤毛は自毛の色を隠すために、白癬病みは持病を隠すために。
かつらにはありとあらゆる種類がある。
丸いのもあれば、四角いの、とがったの、フランス風、マルチーズ風、羊風のもあるし、表裏使用可能なもの、一本巻き毛や二本巻き毛のもあり、なかには1000エキュもするのもある。
ヘアディザイナーのビュレは、半切サイズのかつらを考案した。

アンドレ・ヴァルノの『パリ風俗史』より、「17世紀」の章から。羊風かつら!?

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2015年07月20日

●アンベール 「続・絵で見る幕末日本」

別の所では、さまざまな動物を檻に入れて売っている。
中でも目につくのは、蝦夷の子熊とか、非常に醜いが、きわめて高価なスパニエル犬とか、芸を仕込んだ猿とか、ごくありきたりの野羊とか、といった動物がいる。

注目すべきは、日本のような国では放牧用の土地が耕作のために取られてしまい、反芻動物はすべて贅沢品となっていることである。
ただし、水牛は除外例で、これは稲田の仕事には欠くべからざるものだからである。

修好通商条約を結ぶために幕末の日本にやってきた、スイス人エメェ・アンベールの見聞記です。引用は、浅草の祭りを描いた一章から。
江戸期の見世物はヒツジが人気だったらしい、というお話はときどきしているのですが、西洋人の目にはそれがこういうふうに映ったのですね。
幕末の日本見聞記としては、ほかに「ゴンチャローフ日本渡航記」をご紹介しています。

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2015年07月16日

●「牧畜の食」としての乳加工食品

「牧畜の食」として、肉とは別に、乳加工食品がある。そして、それは搾乳を前提としている。

(略)

乳メスは、実子以外のものが乳房を吸おうとも、乳腺が開かない。ましてや、人がやにわに乳房をとらえて、しぼっても、近代の改良牛以前では、乳が出ないのである。
「牧畜の食」の重要な要素をなす乳製品は、家畜化の開始とともに、ただちにもたらされたものではない。

(略)

ところが、紀元前5000年紀を境に、消費動物遺骨のなかで、4─5歳以上の個体数が増加しはじめる。まさに乳利用対象として、メスが生かされはじめたからに違いない。

(略)

実子以外の刺激に、乳メスの乳腺は開かないのなら、まず実子をおとりにすればよい。
つまり、実子を近づけ、乳房をふくませ、乳腺が開いたところで、それを引き離し、やにわに搾乳を始めればよい。
(略)
ただこのような技法が、人間の利用のための家畜からの乳の詐取意図をもった人びとによって、ふと思いつかれたという想定には、いくつかの疑問が残る。
異種の動物の乳は臭く、はじめて飲むものには、おいしいと思われないことを、牛乳を飲む習慣のなかったわれわれは知っている。
おまけにそれまで乳を飲む習慣のなかったものが乳を飲むと、乳糖分解酵素の活性の低さから、下痢をおこす。

(略)

最初に家畜の乳を飲んだ人は、少なくとも他の必要からしぼりおかれた家畜の乳が乳酸発酵して、まさにヨーグルトとなったものをたまたま飲むことで、乳の価値をみいだしたとみるのが妥当のように思われる。
ただ、この想定のもとでは、人間の利用のための搾乳以前に、一見ありそうもない〈人の利用を前提としない搾乳〉があったという、仮定をたてなくてはならなくなる。

(略)

実は日帰り放牧がもたらした授乳・哺乳関係の不安定化を補う技法として始められた授乳・哺乳介助の特殊ケースとして、それが行われている。
このようにみてくると、人間の利用を目的とした搾乳以前、利用を前提としない搾乳が、乳メスから哺乳を受けることができない孤児のための人工哺乳として開始されたという想定は、けっして根拠のないものではない。

『講座 食の文化』シリーズの第一巻、「人類の食文化」のうち、谷泰による「牧畜民の食」がたいへんエキサイティングでしたので、要点部分を。

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2015年07月09日

●蘇東坡 「和子由踏青」

和子由踏青  子由(しゆう)の踏青(とうせい)に和す


春風陌上驚微塵   春風 陌上(はくじょう) 微塵(びじん)を驚かし
遊人初楽歳華新   遊人 初めて楽しむ 歳華(さいか)の新たなるを

人閑正好路傍飲   人は閑(かん)にして正に好し 路傍の飲(いん)
麦短未怕遊車輪   麦は短かくして未だ怕れず 遊車の輪(りん)

城中居人厭城郭   城中の居人 城郭に厭(あ)き
喧闐暁出空四隣   喧闐(けんてん)暁に出でて 四隣を空しうす

歌鼓驚山草木動   歌鼓(かこ) 山を驚かして草木動き
箪瓢散野烏鳶馴   箪瓢(たんぴょう) 野に散じて 烏鳶(うえん)馴る

何人聚衆称道人   何人か 衆を聚(あつ)めて 道人と称し
遮道売符色怒瞋   道を遮(さえぎ)り 符を売って 色 怒瞋(どしん)する

宜蚕使汝繭如瓶   蚕(さん)に宜しく 汝の繭をして瓶(かめ)の如くならしむ
宜畜使汝羊如麕   畜(ちく)に宜しく 汝の羊をして麕(きん)の如くならしむと

路人未必信此語   路人は未だ必ずしも此の語を信ぜざるも
強為買服禳新春   強いて為に買い服して 新春を禳(はら)う

道人得銭径沽酒   道人は銭を得て 径(ただ)ちに酒を沽(か)い
酔倒自謂吾符神   酔倒して自ら謂う 吾が符は神なりと


春風が町を吹いて塵が舞い上がる。
道行く人は、年の明けたのを楽しむ。
世間は静かで、野遊びには絶好の時。
麦も短く、野を行く車輪はおかまいなし。
町なかの人は町に飽き、朝からがやがやと、野原へ総出だ。
歌や太鼓が山を驚かして、草木も動きだし、酒盛りの馳走は散らばって、鳥が近づく。
誰だろう、人を集め、「わが輩は道人だ」と、道を遮ってお札を売りつけ、どなっている。
「札を買えば、蚕は上乗、まゆはでかいぞ、家畜も上乗、羊は大鹿のように太るぞ」
村人は、その言葉を信じているわけではないが、言うことを聞いて、買って新年のおはらいをする。
道人は銭を受け取ると、すぐ酒を買い、酔いつぶれて「わしのお札は霊験あらたか」とのたまう。

11世紀、北宋の蘇東坡(蘇軾)を。任地先の鳳翔府で詠われたものです。

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2015年07月03日

●柴田是真 「明治宮殿千種之間 天井画下絵」

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明治21(1888)年に竣工、昭和20(1945)年に戦火で焼失するまで皇居として用いられた「明治宮殿」。
宮殿の千種之間と呼ばれた広間の格天井を彩っていた綴織の下絵と伝えられている。

先日見に行ったヒツジグサがあんまり美しかったので、きっとこの花を描いた美術品があるはずだと探してみたところ、江戸後期から明治にかけて活躍した柴田是真による、「明治宮殿千種之間 天井画下絵」の一枚がヒツジグサでした。
天井画が焼失してしまったことが、心から惜しまれます。

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2015年06月26日

●葛飾北斎 「画本彩色通(えほんさいしきつう)」

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カピタンノ曰ク ひつしにつのある事なし
ヤギウとみあやまりしなるべし
羊ハしろしといへども 兎 鼠とハたかふ也

葛飾北斎が最晩年に出版した絵手本『画本彩色通』より、「綿羊(ひつじ)」を。角の有無が羊と山羊の見分け方だと西洋人に聞いた、ということでしょうか。どこかで誤解が重なった感じがしますが、さて。

これまでにご紹介している北斎は、こちらで。

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2015年06月18日

●クロード・ロラン 「牧歌的風景」

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 「イタリアの光 クロード・ロランと理想風景」展カタログ 

17世紀フランス及びイタリア、クロード・ロランの「牧歌的風景」です。

これまでのクロード・ロラン関連記事は、こちらで。

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2015年06月15日

●『詩経』より 「君子于役」

君子于役(くんしうえき)   [王風]

徭役に長く出ている夫を思う農婦の歌。


君子于役     君子 役(えき)に于(ゆ)く、
不知其期     其の期を知らず、
曷至哉      曷(いつ)か至らんや。
雞棲于塒     鶏 塒(ねぐら)に棲(やど)る、
日之夕矣     日の夕べ、
羊牛下來     羊牛(ようぎゅう) 下り来たる。
君子于役     君子 役に于く、
如之何勿思   之れを如何(いかん)ぞ思ふこと勿(な)からん。

(第一節) あなたは徴用されて出ていった。その期限は知らされず、いつお帰りになれることやら。ニワトリも自分のねぐらに休んだ。日が暮れて、羊や牛も山からもどって来た。あなたは徴用されて出ていった。どうしてあなたの身を案じないでいられましょう。


君子于役     君子 役に于く、
不日不月     日あらず月あらず、
曷其有佸     曷(いつ)か其(そ)れ佸(あ)うこと有らん。
雞棲于桀     鶏 桀(けつ)に棲(やど)る、
日之夕矣     日の夕べ、
羊牛下括     羊牛 下り括(いた)る。
君子于役     君子 役に于く、
苟無飢渇     苟(いやし)くも飢渇すること無かれ。

(第二節) あなたは徴用されて出ていった。月日は数えきれぬほど過ぎさり、いつまた会えることやら。ニワトリは自分の止まり木に休み、日が暮れて、羊や牛も山からもどって来た。あなたは徴用されて出ていった。かりそめにもひもじい思いをなさらないように。

召南より「羔羊」小雅より「無羊」をご紹介している、中国最古の詩編『詩経』から、もうひとつ。王風より「君子于役」です。

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2015年06月08日

●江戸後期の羊飼育。

この時期に幕府が最も力を入れたのは綿羊の牧養で、寛政12年(1800)に「幕府、羊を長崎奉行所に畜う」(物産年表)とあるのを始めとして、『大日本農政史類編』は文化年間(1804─17)に「綿羊を支那に求め、江戸巣鴨に牧養せしむ」としている。
これは幕府奥詰医師の澁江長伯の建白によるもので、「後年漸次蕃殖して三百余頭に至り、年々二次毛を剪し官に納め、官之を浜の薬園にある織殿に下し、絨布を織らしめたり」と記されている。
この巣鴨薬園の綿羊については『古今要覧稿』、『宝暦現来集』にも取り上げられている。

(略)

薩摩藩もこれより先、中国から綿羊を取り寄せて放牧を行っており、天明2年(1782)に同地を訪れた橘南谿は、『東西遊記』の中で「隅州の内にはやぎの牧ありて、多く育てりという」と記しているが、この「やぎ」はヒツジの事で、同時期薩摩を訪れた佐藤中陵は「近来唐土より来る白き羊也。惣身に白毛を出す。長さ二尺余、時々切取て羅紗毛織物の類に製成す」としている(薩州産物録)。
ただし薩摩藩の試みは成功しなかったのか、文政元年(1818)に江戸巣鴨で幕府の紡績の講習を受けている。

時々お話している江戸期の羅紗関連です。その歴史についてはいちどお話したことがあるのですが、あらためて。
平賀源内の国倫織以来、日本はウールの国産化を目指して挑戦を繰り返しています。どうしてうまくいかなかったのか、不思議なほどに。

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2015年05月23日

●オウィディウス 「祭暦」

さて、このとき、太陽にまなざしを上げれば、こう言うことができるでしょう。
「この太陽は昨日はプリクススの羊の毛皮を踏んでいた。」

穀物の種子を焼いた罪深き継母の奸計のせいで、苗が、いつもとは違い、芽をひとつも出しませんでした。
鼎のもとからたしかなお告げを聞いて帰るようひとが送られます。
不作の大地にデルピの神がどのような救いを教えるか知りたかったのです。
ところが、この使者も種子同様に腐り切っていて、ヘレと若殿プリクススの命をお告げは求めている、と伝えます。
ついには、種蒔きの時期も迫り市民とイノが王の反対を押し切って、非道な命令を認めさせました。

プリクススと妹の二人は、額を髪飾りでおおい、並んで祭壇の前に立つと分かち合う悲運を嘆きます。
これを、たまたま天から垂れ懸かっていた母親が目にし、驚愕した手でむき出しの胸を打ちました。
雲を引き連れ、大蛇から生まれた都へと飛び降りると、そこから自分の子供たちを救い出します。
そして、逃げおおせるよう、黄金の輝きまばゆい牡羊を授けます。
牡羊は二人をのせて長い海路を通ってゆきます。

ずいぶん前に、オウィディウスの「転身物語」金羊毛にかかわる物語をご紹介したことがあるのですが、こちらは同じくオウィディウスによる、日々の暦に従って万象を語る『祭暦』からの一章です。
「三月二十三日」の章に、「三月二十二日から太陽が牡羊座宮に入ったことの表現」(訳注より引用)である「プリクススの羊」の一文のあと、牡羊座のもとになった黄金の羊がプリクススとヘレの兄妹を救う伝説が語られています。

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2015年05月19日

●勝鬘院、多宝塔の蟇股。

関西の羊スポットに、もう一か所立ち寄ってまいりましょう。
大阪市は四天王寺のほど近く、地下鉄谷町線四天王寺前夕陽ヶ丘駅至近の「愛染さん」こと勝鬘院です。

愛染堂勝鬘院公式HP

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こちらの境内にたつ「多宝塔」の蟇股に十二支の動物たちが彫刻されているのです。
蟇股彫刻は、これまでに、東京は上野動物園内にある旧寛永寺五重塔と、宮城県は松島の五大堂をご紹介しています。
こちらのも、また良い風情ですね。

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十二支の並ぶ位置からすると、たぶんこれが未かと。丸みがあってかわいらしいです。
せっかくなので、他の動物たちも下に。

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ご縁があれば、ぜひ。

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2015年05月16日

●神戸市教育会館の石羊。

かつては墳墓を守っていたと思われる、石彫の羊を時々ご紹介しています。
これまでに、京都の京都国立博物館野仏庵、東京の東京国立博物館根津美術館のものについてお話をしておりますが、このたび不可思議な場所に同種の石羊がいることを知って、兵庫県は神戸市まで行ってまいりました。

JR・阪神元町駅を下車、東口から出て鯉川筋を北へ十分ほども上ったところに建つ、神戸市教育会館の外壁です。

神戸市教育会館公式HP

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上の方に、なにか……、あ、あれか!

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もとは個人宅の玄関先を守っていたものが移されてきたとのことですが、置き場所がここというのは、すごいですね。
訪問者のためには、最高の目印だと思います。ご縁があれば、ぜひ一度。

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2015年05月11日

●大垣祭のやま行事。

先々月の近江八幡左義長まつりにつづいて、岐阜県に行ってまいりました。
目的は、国の重要無形民俗文化財に指定されたばかりの「大垣祭のやま行事」。5月9、10日に岐阜県大垣市にて行われた山車行事です。

360年余の伝統を誇る大垣まつり

大垣まつりのやまの起源は、慶安元年(1648)に大垣城下町の総氏神であった八幡神社が、大垣藩主戸田氏鉄公により再建整備されたおり、城下18郷が喜びを御輿3社の寄付で表し、大垣10か町が10両のやま(出しもの)を造って曳回したのが始まりといわれています。

全十三両の「やま」のうち、「相生(あいおい)やま」と「榊(さかき)やま」に十二支の動物たちが彫刻されていると聞きまして、これは見に行かねばと。
ともあれ、まずは大垣八幡神社にお参りです。

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干支絵馬もかわいいものがありました。絵馬も少しだけ集まってまいりましたので、こちらでぜひ。

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JR大垣駅に着いたのは9日土曜のお昼どきだったのですが、やまは市街地一帯を自由巡行中との由。夕方に八幡神社に集結するまでは、目当てのやまは自力で発見せねばなりません。
案内所のテントまで行けば(あるいはスマホを持っていれば)リアルタイムで居場所確認ができるようになっているのですが、これが思いのほか難易度の高いミッションで、相生やまと榊やまに運命の出会いを果たしたのはじつに三時間後でした。

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上が相生やまのヒツジで、下のが榊やまのヒツジです。やっと会えたー!会いたかったよー!

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相生やまは近年になって復元されたものとのこと。ヒツジが丸々してヒツジらしいのはそのためでしょうか。

大垣まつりは、大垣の街中が沸き返るたいへん盛大なお祭でした。ご縁があれば、来年、ぜひぜひ。

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2015年05月07日

●愛知県陶磁美術館 「耀きの静と動 ボヘミアン・グラス」展

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16世紀から17世紀にかけてハプスブルグ家の庇護の下、プラハは「ドイツ国民の神聖ローマ帝国」の帝都としてヨーロッパ随一の文化都市に発展しました。
そうした中で、続く18世紀、無色透明のガラスに複雑なカットと精緻な彫り文様を施す加工技術で、ボヘミアン・グラスは最高級ガラス工芸品としての名声を確立します。

会期 2015年4月11日(土)─5月24日(日)
会場 愛知県陶磁美術館 本館1階
開館時間 午前9時30分─午後4時30分 (入館は閉館の30分前まで)
休館日 毎週月曜日

愛知県陶磁美術館公式HP 内 プラハ国立美術工芸博物館所蔵 耀きの静と動 ボヘミアン・グラス

愛知県陶磁美術館で開催中の「ボヘミアン・グラス」展に行ってまいりましたら、ヒツジが数頭ひそんでましたので、ご注進を。
羊のいる田園風景を彫り込んだゴブレット、金羊毛勲章を紋章とするハラフ伯爵家のゴブレット、黄道十二宮を描いた12個のビーカー一揃いなど。

こちらの展覧会は、このあと、神戸市立博物館に巡回の模様。お近くならば、ぜひ。

会期 平成27年6月6日(土)─8月30日(日)
開館時間 10時から17時まで(入館は16時30分まで)※土曜日は19時まで開館(入館は18時30分まで)
休館日 月曜日(ただし、7月20日(月・祝)は開館)、7月21日(火)

神戸市立博物館公式HP 内 プラハ国立美術工芸博物館所蔵 耀きの静と動 ボヘミアン・グラス

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2015年05月04日

●寺田寅彦 「先生への通信」

ローマへ来て累々たる廃墟の間を彷徨しています。
きょうは市街を離れてアルバノの湖からロッカディパパのほうへ古い火山の跡を見に参りました。
至るところの山腹にはオリーブの実が熟して、その下には羊の群れが遊んでいます。
山路で、大原女のように頭の上へ枯れ枝と蝙蝠傘を一度に束ねたのを載っけて、靴下をあみながら歩いて来る女に会いました。

 「寺田寅彦随筆集 第1巻」 

寺田寅彦の旅行記『先生への通信』より、「ローマから」の一章を。
「靴下をあみながら歩いて来る女」というのが、ちょっとミレーの描く少女羊飼いみたいで、想像をかきたてられます。

夏目漱石の高弟としても知られた人物なので、あるいは「先生」というのは漱石のことでしょうか。
漱石は「三四郎」を、
他の同時代の人々として、幸田露伴「羊のはなし」南方熊楠の「十二支考」和辻哲郎「イタリア古寺巡礼」をご紹介しています。

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2015年05月01日

●日本最古のフェルトは羊毛製であることが判明。

正倉院の毛氈素材は羊毛 科学的根拠で証明

宮内庁正倉院事務所(奈良市)は、正倉院所蔵の敷物「毛氈(もうせん)」(フェルト)の素材が、従来考えられていたカシミヤに似た山羊(やぎ)の毛ではなく、羊毛であることが分かったと発表した。

毛氈は、動物の毛に熱や圧力を加えて繊維をからませ、フェルト化したもの。
紀元前から、中央アジアの遊牧民が敷物や壁掛けなどとして使用していた。
正倉院に伝わる毛氈も中国などからの輸入品と考えられ、聖武天皇が愛用した華やかな文様の「花氈(かせん)」や「色氈(しきせん)」などが残っている。

今回、新たにマイクロスコープや電子顕微鏡を使い、剥落した毛を縦に切った断面図も調査。
結果、これまで「カシミヤに似た古品種の山羊毛」とみていた素材は、中央アジアや中国の羊の毛に類似していることが分かった。
実際に試作してみると、カシミヤは耐久性に乏しく、フェルト化しにくいことも確認された。

日本史に出てくる羊毛製品については、ずっと江戸期の羅紗の話ばかりをしていたのですが、このたびak様に教えていただいたこのニュースで、一気に時代をさかのぼってしまいました。ありがとうございます。
羊を描いた正倉院宝物はいろいろご紹介したことがあるのですが、素材が羊毛のものについてお話するのは初めてです。羊の姿だけが入ってきていて羊毛製品が無いというのは、どうにも落ち着かなかったので、こちらのニュースを見てなんだかほっとしました。

調査結果は、「正倉院ホームページ」にて全文閲覧可能です。ぜひ。

ひつじnews at 20:03 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2015年04月27日

●ヘンリー・ジャトサム 「橋を渡る羊のいる森の風景」

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ジャトサムは、ヴィクトリア朝の風景画家の原型のような人物であり、いかなる流派や運動にも参加せず、着実にかなりの仕事をし、立派な油彩画や水彩画を毎年展覧会に出品していた。

「バーミンガム市立美術館所蔵 イギリスの水彩1750─1900展」カタログ

19世紀イギリス、ヘンリー・ジャトサムの「橋を渡る羊のいる森の風景」です。

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2015年04月24日

●伝雪舟 「国々人物図巻」より

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雪舟が中国滞在中に目にした人々や畜獣を描いたものといわれ、王・百姓・僧・道士など、さまざまな身分の中国人や外国人、動物などが表されている。

 「没後五百年 特別展 雪舟」カタログ 

雪舟、「国々人物図巻」の部分を。雪舟が明に渡ったときに描いたものの模写本とされています。京都国立博物館蔵。

雪舟は、同じく京都国立博物館にある「倣梁楷黄初平図」をご紹介しています。

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2015年04月20日

●シモン・ヴーエ 「聖エリザベツ、幼児の姿の洗礼者聖ヨハネ、聖カタリナを伴う聖母子」

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17世紀フランス、シモン・ヴーエの「聖エリザベツ、幼児の姿の洗礼者聖ヨハネ、聖カタリナを伴う聖母子」です。左下に、聖ヨハネの子羊が。

洗礼者聖ヨハネのお話はよくしておりますので、こちらで。

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2015年04月13日

●京都国立博物館「東の庭」の石羊。

さて、せっかく京都に来たのですから、もうひとつくらい羊スポットをまわっていきましょう。
京阪七条駅から東へ徒歩十分足らず、京都国立博物館の庭園です。

墳墓表飾石造遺物

朝鮮半島では、高貴な人びとの墳墓のまわりを石彫像で装飾することが、古代より伝統的に行われてきました。
現在当館で展示しているものは、朝鮮時代(1392−1910)につくられたものです。

南門から入ってすぐ右に曲がり、少し歩いた先に、一対の石羊が置かれているのです。

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桜の花びらを背に受けて、ひっそりたたずむ羊たち。

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南側の羊と、

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北側の羊。

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ついでにアップも。


石羊は、これまでに、同じく京都の野仏庵のものと、東京国立博物館前庭のもの根津美術館のものをご紹介しています。ご縁があれば、ぜひ。

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2015年04月10日

●本法寺 長谷川等伯の大涅槃図

桜が散り始めたので、そろそろ人も少なかろうと、京都へ行ってまいりました。
目的は、本法寺の春季特別寺宝展。その目玉展示である、長谷川等伯の巨大涅槃図です。

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長谷川等伯 大涅槃図開帳

平成二十七年三月十四日(土)─四月十五日(水)
午前十時─午後四時
日蓮宗本山 京都本法寺・涅槃会館


本法寺の佛涅槃図(重要文化財)は京都三大涅槃図のひとつに数えられ、その大きさは縦約十メートル横約六メートルにおよびます。
作者は安土桃山時代から江戸初期を代表する絵師長谷川等伯(1539─1610)で、自身の家族や心を寄せた日蓮宗僧侶らの供養を目的に、六十一歳のときにこの絵を描き本法寺に奉献しました。

(略)

当山では通常、佛涅槃図の複製を展示していますが、春季特別寺宝展の一ヶ月間限定で等伯の正筆をご覧いただけます。

茶道資料館「光悦・等伯ゆかりの寺 本法寺の名宝」展図録

この「佛涅槃図」の右下に、お釈迦さまを失って悲しむ羊の姿が描きこまれているのです。
さらに、寺宝展のチラシにこっそり混じってさえいます。気にならずにおられましょうか。

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 同上チラシ 

というわけで、本法寺です。京都駅から地下鉄烏丸線に乗り換えて、鞍馬口駅下車、西へ徒歩十五分、といったところでしょうか。桜散り染める境内が美しいところでした。

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等伯正筆が見られるのはあと5日です。お近くならば、ぜひ。

なお、涅槃図は、これまでに英一蝶のもの森徹山のものをご紹介しています。

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2015年04月08日

●ワーズワース 「比いなき輝やきと美との夕べに作れる」

この光はその触れるすべてを、宝玉のごとき色をもて染める。
巧みにも清らかなる幻の内に、
牛の群は山腹をうねり、
夕日にきらめく鹿の角も見え、
黄金色に染められし羊はあらわに見ゆる。
紫の夕べよ、この静けき時は汝のもの、
されど神のごとき願い、聖なる希望が
わが心霊を活かす間は、
この壮麗はなべて汝のものなりと信ずるをえず。
この世の太陽に輝らされぬ世界より
この賜物の一部はえられたり。
英国の羊飼の辿る山地に
天の栄華が混りてひろがれり。

「マイケル」「序曲」をご紹介している、ウィリアム・ワーズワースを。「比いなき輝やきと美との夕べに作れる」からの抜粋です。

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2015年03月31日

●古代ギリシャの鏡と蓋

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紀元前350年頃  コリントス製、同地出土(?)
ブロンズ  鏡径18.5、蓋径19.0

鏡と蓋は、もともと蝶番でつながれていた。
磨かれた鏡面にはもちろん装飾はないが、蓋には外側にレリーフ、内側に線刻が施されている。
(略)
線刻の流麗な描写は、彫刻家ではなく画家の手になると考えられる。
エロスを従えたアフロディテがパンとお手玉遊び(動物の関節骨のさいころ、アストラガロス)に興じている様子をあらわしている。

 「大英博物館 芸術と人間展」カタログ 

古代ギリシャの鏡の蓋を。アストラガロス(アストラガルス)に興じる女神たちが描かれているようです。
羊の距骨を使ったこうした遊びについては時々お話しておりますので、こちらでぜひ。

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2015年03月30日

●雛屋立圃 「十二類歌合」

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江戸・寛文元年(1661)

装束をつけた十二支の動物たちが歌仙に見立てられ左右の組に分かれ、動物の名を読み込んだ発句を競います。
「十二類合戦絵巻」にヒントを得た作品です。
作者の雛屋立圃(ひなやりゅうほ)は俳画の祖といわれています。

 大阪市立美術館「十二支の動物たち」展カタログ 

先日お話した『十二類絵巻』関連で、さらにもう少し。
十二類絵巻の影響を受けて作られた「十二類歌合」です。いやしかし、このツノはいったい……。

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2015年03月25日

●ゴヤ 「狩りの装いのカルロス3世」

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18世紀スペイン、フランシスコ・デ・ゴヤの「狩りの装いのカルロス3世」です。胸元に金羊毛騎士団勲章が。

これまでにご紹介しているゴヤは、こちらで。
金羊毛騎士団勲章をつけた人々の肖像画は、こちらで、ぜひ。

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2015年03月19日

●三河国府跡出土の羊形硯。

愛知県豊川市にある、三河国分尼寺跡史跡公園に行ってきました。

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豊川市公式HP 内 三河国分尼寺跡史跡公園

こちらの公園に併設された「三河天平の里資料館」内に、なんどかお話したことのある羊形硯が展示されているのです。

この羊形硯は、三河国府国庁跡の東約200メートルの地点で出土したもので、全国で7点しか出土していないものです。
三河国府跡以外では、平城京跡(奈良県奈良市)で2点、斎宮跡(三重県明和町)、尾崎遺跡(岐阜県美濃加茂市)、正木町遺跡(名古屋市)、ハガ遺跡(岡山県岡山市)で各1点出土しています。
三河国府跡で出土したものは、平城京跡出土のものとよく似た、丁寧なつくりのものです。

 三河天平の里資料館 解説パネルより 

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後ろに、平城京跡出土品等を参考にした復元品(解説パネルより)と、正倉院宝物の羊木臈纈屏風の写真が添えられています。

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せっかくなので、もう一枚。

羊のいない国で愛用された、羊のかたちの硯。ご縁があれば、ぜひ一度ご覧くださいますよう。

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2015年03月14日

●金羊毛の正体(続き)。

ギリシア人はもともと商才にたけた民族だった。
男どもは早くから海へ乗り出して交易に従事すると同時に、各地に植民市を建設した。
わけても前750─前550年は「大植民時代」といわれるほど、おおぜいの人間が本土をはなれて、小アジア・黒海沿岸・西部地中海北岸などへと植民した。

(略)

ギリシアの交易商人たちは、じつは、彼らの活動の黎明の時期から、毛皮に対しては格別な関心を持っていたと思わせる証拠がある。
それは、あのアルゴー船の伝説である。
ギリシア神話のなかでもとくに古いと考えられているこの伝説は、イアソンがいわゆる<金羊毛>を求めて同志とともにコルキスの国へ渡ったという筋書きであることは、ご承知のところだろう。
<金羊毛>を文字通り黄金色をした羊の毛皮と解する向きもあるが、羊ではなくクロテンの毛皮だとする、はなはだ魅力的な意見も提案されている。
事実、クロテンのなかには黄褐色の被毛のなかに銀毛をまじえて、黄金色に見えるものがある。
そして、一行が出かけていったコルキスというのは、現在の黒海南東岸地方のことで、ヴォルガ川からカスピ海の水運を利用して運ばれてきたウラルからの商品が、カフカス山脈南面の陸路を越えて黒海に達する場所にあたっていた。

アポロドーロスの「ギリシア神話」アポロニオス「アルゴナウティカ」オウィディウスの「転身物語」などでお話している、ギリシア神話の金羊毛伝説。
この「金羊毛」の正体について砂金説などをご紹介しているのですが、こちらの「毛皮と人間の歴史」によると、クロテンの毛皮説というものもあるようです。

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2015年03月09日

●『夫木和歌抄』の「羊の歩み」。

『夫木和歌抄』巻二十七動物部には「羊」題は立てられていないものの、巻十九の「煙」題には「羊の歩み」が詠まれている。
この慣用句は後崇光院たちも先刻承知の表現であった。

六帖題、  光俊朝臣
もえつづくかうの煙のときうつりひつじのあゆみけふも程なし
(『夫木和歌抄』巻十九雑部一「煙」)

(略)

後崇光院たちは様々な文献を参照し、あるいは既に自らの血肉と化した素養に基づいてこの絵巻を制作しているが、『夫木和歌抄』はまさに院の身辺にあって活用された一書であった。

以前ご紹介した、『十二類絵巻』のお話の続きを。
その制作にかかわったとされる後崇光院と参照された類題集『夫木和歌抄』について論じた、こちらの「異類の歌合」に、羊の詠んだ歌と関係するとおぼしき一首が挙げられています。

「羊の歩み」というテーマについてはなんどかお話しておりますので、こちらで。

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2015年03月04日

●ハウツィンガー 「マリー・アントワネット、フランス王ルイ16世とマクシミリアン大公」

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末の息子マクシミリアン大公が、ヴェルサイユ宮殿にて、姉マリー・アントワネットおよび義兄でフランス王、ルイ16世と出会う場面を主題に制作された。
後にドイツ騎士団団長、選帝侯およびケルン大司教となるマクシミリアンは、1774年、見聞を広めるべく教養旅行に出かけ、オーストリア領ネーデルラントとフランスを訪れたのである。

 「マリア・テレジアとシェーンブルン宮殿」展カタログ 

マリア・テレジアの命を受けてヨーゼフ・ハウツィンガーによって描かれた、「マリー・アントワネット、フランス王ルイ16世とマクシミリアン大公」です。ルイ16世の胸元に金羊毛騎士団勲章が下がってます。

ルイ16世は、ジョゼフ・デュプレシの肖像画をご紹介しています。

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2015年02月16日

●ヨハン・クリスティアン・フォラート 「昼」

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フォラートは自然の中の大気の現象を綿密に観察し、色彩については17世紀のオランダの画風を手本とした。

(略)

ドレスデンでは、フォラート以後、一日の複数の時間帯をテーマにして全体として一つのまとまりとする作品群が独自に発展し、アントーン・グラフ、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ、フィーリプ・オットー・ルンゲが作品を残している。

 「ドイツ・ロマン派絵画展」カタログ 

18世紀ドイツ、ヨハン・クリスティアン・フォラートの「昼」です。引用にあるカスパー・ダーヴィト・フリードリヒについては少しだけお話しておりますので、こちらで。

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2015年02月07日

●愛知県美術館 「ロイヤル・アカデミー展」

愛知県美術館で、「華麗なる英国美術の殿堂・ターナーからラファエル前派まで ロイヤル・アカデミー展」が始まりました。
ひつじ度高めです。

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ロイヤル・アカデミー展

会期  2015年2月3日(火)~4月5日(日)
会場  愛知県美術館 [愛知芸術文化センター10階]
開館時間  10:00~18:00 金曜日は20:00まで (入館は閉館30分前まで)
休館日  毎週月曜日

以前ご紹介した、ローレンス・アルマ=タデマの「神殿への道」が展示されているほか、ゲインズバラフィリップ=ジャック・ド・ルーテルブールによる、羊のいる風景画もありました。
ご縁があれば、ぜひとも。

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2015年01月29日

●根津美術館 「動物礼讃」展

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特別展 動物礼讃
大英博物館から双羊尊がやってきた!

2015年1月10日(土)~2月22日(日)

未年にちなみ、羊をはじめとする動物モチーフを扱った絵画・工芸の作品約70件をご覧いただく特別展「動物礼讃 ―大英博物館から双羊尊がやってきた!」を開催いたします。

休館日 月曜日
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

以前、双羊尊を観に行った東京の根津美術館に、大英博物館の双羊尊がやってきて一緒に並んでるらしいです。
じっさいに観に行ってからご報告したかったのですが、会期も短いので、お知らせだけでも。お近くのかたはぜひぜひ!

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2015年01月24日

●曹源寺の十二神将立像

さて、鉈薬師の十二神将像をご紹介したところで、そういえば、先日の東京国立博物館でも立派なものを見ていたと気が付きまして、撮っておいた写真を引っぱりだしてまいりました。
横須賀市の曹源寺に伝来した十二神将が博物館に寄託されて、本館に並んでいます。

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「未」像の頭上に、ヒツジらしきなにかが。

重要文化財 十二神将立像

木造、彩色、玉眼
鎌倉時代・12~13世紀

神奈川県横須賀市の曹源寺に伝来した像。
鎌倉初期の運慶派の清新な作風をしめす。

 東京国立博物館本館解説パネルより 

東京国立博物館公式HP 内 本館11室

曹洞宗東光山曹源寺 公式HP

ご縁があれば、ぜひ。

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2015年01月23日

●円空の十二神将。

名古屋市は覚王山にある、日泰寺の縁日に行ってきました。
広い境内や参道を埋める屋台を冷やかすだけでも楽しいのですが、今回の目的は、日泰寺の少し先にある「鉈薬師」こと医王堂です。
こちらのお堂は鉈彫りの円空仏と伝えられる十二神将像などで知られており、毎月21日の縁日に一般公開が行われています。

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鉈薬師(医王堂)

明の帰化人、張振甫ゆかりの寺で正式名称は医王堂。円空鉈彫りの十二神将が有名。毎月21日の日泰寺の縁日の日だけ扉を開く。

こちらが医王堂。中は、残念ながら撮影禁止でした。上に引用した名古屋観光情報の写真に「未」も写ってますので、ご参考に。

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十二神将像は興福寺の木造十二神将立像を、円空仏は同じく名古屋の荒子観音をご紹介したことがあります。ご縁があれば、ぜひ。

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2015年01月17日

●ターナー 「南から見たソールズベリ」

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《ソールズベリ》は(略)、ターナーが手懸けた最も大規模で野心的な水彩画シリーズに属している。
この計画は版画家兼出版家のチャールズ・ヒースが考えた事業に拠っている。
すなわちヒースは1826年に、ターナーに120点の素描を依頼したが(その主題はターナー自身が選んだ)、それを版画にして、『イングランドとウェールズのピクチャレスクな景観』として出版するというのであった。

 「ターナー展」(1986年)カタログ 

ウィリアム・ターナーの水彩画「南から見たソールズベリ」です。同じシリーズで、「ヴァレ・クルージス修道院、デンビシャー」をご紹介しております。

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2015年01月13日

●東京駅丸の内駅舎の干支レリーフ。

さて、国立博物館のほかにじつはもうひとつ、東京でひつじな物件を見てきておりましたので、そちらもご報告を。

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というわけで、東京駅、丸の内口にやってきました。
保存・復原工事を終えた丸の内駅舎南北両ドームに立って天井を見上げると、十二支のうち八支の動物を描いたレリーフを確認することができます。もちろん、確認せずに通り過ぎるわけにはいきません。

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未は南西方向のはず……ああ、ありました。デザインは南北どちらのドームも同じですね。

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戦災で焼け落ちる前までは中央に換気口を配した中心飾り、放射状に延びた格天井、その先端に翼を広げた八羽の鷲、その下の八面の壁にはアーチ状の飾り、中央には秀吉の兜をモチーフにしたキーストーン、各コーナーには方位を示す八支の干支、その他鏡と剣などのレリーフで華やかに装飾されていた。
しかし、1945(昭和20)年5月25日の空襲により、ドーム屋根は焼け落ち、装飾類も炎に包まれ被災した。

 東京ステーションギャラリー「東京駅100年の記憶」展カタログ 

ドームの中を通られるときは、ぜひ少し立ち止まって上方をご覧くださいますよう。

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2015年01月10日

●伊藤忠青山アートスクエア 「羊がいっぱい! 展」

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会期  行く年(前半) 2014年12月19日(金)?28日(日)
     来る年(後半) 2015年1月5日(月)?18日(日)
開催時間  11:00?19:00 会期中無休
会場  伊藤忠青山アートスクエア (東京都港区北青山2丁目3?1シーアイプラザB1F)
入場料  無料

35歳以下の新進気鋭若手アーティスト100人が2015年の干支である「羊」を描く、大展示会です。

東京のひつじ関連美術展絡みで、K&T様からお知らせをいただきました。ありがとうございます。
ああああ、こんな楽しそうなものがあったのですね。知っていれば、きっと東博帰りに寄って行ったものを。
こちらは来週の日曜日までのようです。お近くの方はぜひとも!

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2015年01月09日

●東京国立博物館に初もうで。

東京国立博物館の新年恒例展示「博物館に初もうで」を観に行ってまいりました。

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例によって前庭の石羊にご挨拶。「新春特別公開」って札がついてましたが、この子たち、ずっとここに常駐してますよね?

特集 博物館に初もうで ひつじと吉祥

本館 特別1室 2015年1月2日(金) ? 2015年1月12日(月)

今年の「博物館に初もうで」では、I「アジアの羊」、II「十二支」、III「日本人と羊」、IV「吉祥模様」という4つの切り口から、地中海から東アジアまでの遺物を通じて、羊と人との関係を探りながら、お正月にふさわしい作品の数々をご紹介いたします。

展示品はいろいろ。殷代の青銅器後漢の緑釉羊圏など、関連品をご紹介したことがあるものも。
伝金庾信墓護石の拓本や十二類絵詞の模本なども観ることができました。

さらに本館を出たあとも別館の東洋館へ寄り道すれば、こちらには以前モノクロ写真をご紹介したきりの揺銭樹の現物が。

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などなど、ひつじを堪能し放題なのですが、「ひつじと吉祥」展じたいはあと3日で終わってしまうようです。
東京国立博物館の所蔵品ばかりなのだし、この先も逃げやしないとは思うのですが、羊たちが一堂に会するさまはやはり眼福です。ご縁があれば、ぜひ。

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2014年12月16日

●「未年計画 名古屋ひつじ物語」展

名古屋市のヤマザキマザック美術館まで、「名古屋ひつじ物語」展を観に行ってまいりました。

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ロココやアール・ヌーヴォーをメイン展示とするたいへんエレガントな美術館なのですが、そこにヒツジ(のかたちをしたパネル)が共存しているという、不思議な夢のごとき空間が展開されています。

未年計画 名古屋ひつじ物語

2014年11月14日(金)?2015年2月15日(日)まで

ひつじ年を迎える2015年の新春にあわせてヤマザキマザック美術館では、井上信太+前田真二郎による「羊飼いプロジェクト」の軌跡をご紹介します。
「羊」が描かれたパネルを森や都市などに放牧(設置)し、写真や映像に収めて公開するこの美術作品は、日本国内にとどまらず、ドイツ、ベルギー、中華人民共和国など世界各地で行われてきました。
本展では、名古屋の観光名所や味のある路地裏など、さまざまな場所での放牧記録と合わせて、世界中で展開されてきた羊飼いプロジェクトの軌跡を公開します。
国境を越えた羊と人間の触合いは、新たな美を発見させてくれるでしょう。

【開館時間】 平日:10:00?17:30(最終入館17:00) 土日祝:10:00?17:00(最終入館16:30)

【休館日】 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日休館) 12月28日?1月3日

ご縁があれば、ぜひ。

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2014年12月09日

●シャルル・ル・ブラン 「イサクの犠牲」

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「大英博物館所蔵フランス素描展」カタログ

17世紀フランス、シャルル・ル・ブランの素描「イサクの犠牲」です。左下に雄羊が。

「イサクの犠牲」モチーフについてはよくお話しておりますので、こちらで。

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2014年12月04日

●「装いの美 大名のおしゃれ」展

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白羊毛皮付き羽織
胴に毛の長い白羊の毛皮を、袖には銀糸を用いた緞子を、内側にはオランダ木綿を用いた絢爛豪華な羽織です。


「装いの美 大名のおしゃれ」展

大名とその子女が身にまとった装束・衣服のほか、化粧に関する調度品や、印籠・根付、簪などの手回り品などから、大名家の華麗な装いと美意識を紹介します。

会期 平成26年11月15日(土)─12月14日(日)
開館時間 午前10時─午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日

名古屋市の徳川美術館へ「装いの美」展を観に行ったら、たいへんな羽織が展示してありましたので、ご注進です。
羅紗の陣羽織のお話ならば少し前にしたことがありますが、これはフリースをそのまま使っているのですね。実用なのか、かぶいているのか、そもそもどうやって手に入れたのか。
こちらの展覧会は、12月14日(日)で終了のようです。日が迫っておりますが、お近くならば、ぜひ。

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2014年12月01日

●正倉院宝物 白石鎮子(続き)

このように、二体の動物が絡み合う文様は、「動物闘争文」や「動物咬噛文」と呼ばれる。
その起源については諸説あるが、紀元前七世紀頃より黒海沿岸の草原地帯を中心に活躍した遊牧騎馬民族が好んで用いた意匠とされる。
この意匠が表された遺物は広範にわたって出土しており、南ロシア一帯からアルタイ、シベリアにかけての内陸ユーラシア全域の、いわゆるスキタイ文化圏を中心に、西はドナウ川流域、東は朝鮮半島にまで及んでいる。
時代の降ったササン朝ペルシアの工芸品にも、この「動物闘争文」が取り入れられ、銀製の皿などに表されたものが見える。

(略)

なお、この宝物の名称は、明治期に行われた整理に際し、『国家珍宝帳』に「白石鎮子十六個 師(獅)子形八 牛形六 勉(兎)形二」と記されるものに比定され、命名された。
しかし、その記載品は嵯峨天皇の弘仁五年(八一四)に屏風三六帖とともに宝庫から出蔵された記録が残っている。
また、『国家珍宝帳』の注記の内容は本品を指すものとは考えがたい。
したがって、現在では別物であるという見方が有力となっており、「白石板」と呼び表す場合がある。

先月、奈良国立博物館の正倉院展に出陳されていた「白石鎮子(はくせきのちんす)」について、詳しい解説のされている本を見かけましたので、改めてもう少し。
こうしてみると、長い年月の間に混乱も多く起きているのですね。

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2014年11月20日

●ブレイク ソーントン版「ヴァージルの田園詩」

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ロバート・ソーントンが、1820年にブレイクに委嘱した木口木版画のシリーズである。

「神奈川県立近代美術館所蔵 ヨーロッパ古版画展」カタログ

以前、サミュエル・パーマーの「眠る羊飼い」をご紹介したさいに触れた、ウィリアム・ブレイクのソーントン編「ウェルギリウスの牧歌」の挿画です。これまでにご紹介しているブレイクは、こちらで。

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2014年11月10日

●法隆寺所蔵 星曼荼羅(続き)

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天界の事象と人界の出来事は関連しあっているという天人相関説は、古代思想の特色のひとつである。
星宿信仰は代表的な例だが、その密教版というべきものが星曼荼羅である。
北斗曼荼羅ともいい、延命や除災(災害を除く)を目的に修される北斗供(ほくとぐ)(星供(ほしく)ともいう)の本尊として用いられた。

 「王朝の仏画と儀礼 善をつくし美をつくす」展カタログ 

野尻抱影の「星座」と、法隆寺の所蔵品二点のうち一方をご紹介している星曼荼羅ですが、あらためてもう一点のほうを。

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2014年11月04日

●奈良国立博物館坂本コレクション 瓿(ほう)

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高27.4センチ 商後期(B.C.15?B.C.11世紀)

 「坂本コレクション 中国古代青銅器」 

時々お話している、古代中国の青銅器を。奈良国立博物館所蔵の瓿(ほう)です。肩のあたりに羊の犠首がついています。
こちらが収められている青銅器館は、現在、正倉院展期間中のため休館している模様。カタログはミュージアムショップ及び通販で購入可能です。

奈良国立博物館公式HP 内 ミュージアムショップ

これまでにお話している中国古代青銅器については、こちらで。

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2014年10月26日

●ミハーイ・ムンカーチ 「ハンガリーの軍服姿の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世」

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名門ハプスブルク家の傾きを必死に支える皇帝フランツ・ヨーゼフが着用しているのは、微妙な関係にあるハンガリー(当時はオーストリア=ハンガリー二重帝国)の軍服だ。
この上着はアッチラ服と呼ばれ、トルコ風毛皮帽とともに一世を風靡した。

中野京子の美術エッセイ集「名画に見る男のファッション」から、「ハンガリーの軍服姿の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世」の章を。重厚謹厳な老皇帝の胸元に金羊毛騎士団勲章が下がっています。
ハプスブルクのお話はときどきしておりますので、こちらで。

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2014年10月23日

●山本幸久 「展覧会いまだ準備中」

「おお、これだ、これ。今田くん」 韮山がスマートフォンの画面を弾吉に向ける。「きみ、これ、どう思う?」
そこには羊が三匹いた。本物ではない。絵だ。それも水墨画らしい。
頭を垂れて草を食む一匹を真ん中にして、左右の羊はつまらなそうにそっぽをむいていた。
背景はなく、真っ白だった。簡素だが、描写はしっかりしていた。
それでいて、ぜんたいにトボケたタッチである。見ているうちに心が和み、自然と口元が緩んでいきそうだ。
「いい絵ですね」 弾吉は率直な感想を口にした。
「おお」 韮山が姿勢を正し、身を乗りだしてきた。 「で、どうだ。価値はありそうかね」

「一匹羊」をご紹介している、山本幸久の小説「展覧会いまだ準備中」です。
下っ端学芸員の主人公が古い絵の鑑定を頼まれるところからはじまる、右往左往と夢と希望。「一匹羊」とこっそり世界がつながってるのも、嬉しいところです。

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2014年10月20日

●名古屋まつりの山車揃を見てきました。

もうずいぶん以前に、名古屋市の筒井町天王祭で曳行されるからくり山車「神皇車」をご紹介したことがあるのですが、この秋の市民まつりで、宵に提灯を点灯しての山車揃が行われると知って、見てまいりました。

例年の名古屋まつり「山車揃」に参加する山車9車が、長島町通(東照宮付近)で提灯を点灯し、本町通を練り歩いたのち、名古屋城でからくり演技を披露します。


神皇車(じんこうしゃ)

森高雅、山本梅逸ら郷土の高名な画家が下絵を手がけた十二支の水引幕は、江戸工芸美術の粋を伝えます。
また巫女から鬼面、そして龍神へと様変わりするからくりは必見です。

というわけで、夜の名古屋市役所及び県庁付近です。
きらきらとした山車がいくつも過ぎていくなかを待ち構えていると、見覚えのある山車がやってきました。

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水引幕の十二支のうち、羊はたしか後ろのほう……ええと……

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ありました!
宵闇の中で見ると、昼とはまた違った風情がありますね。

羊のあしらわれた山車といえば、なんといっても祇園祭の保昌山ですが、他にも類例がありそうです。この先、ご紹介の機会があれば良いのですが。

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2014年10月17日

●「奇想天外! 浮世絵師 歌川国芳の世界」展

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前期:10月24日(金)?11月7日(金)
後期:11月8日(土)?24日(月・振替休日)
会期中無休

開館時間:午前10時-午後8時 入館締切:各日午後7時30分

JR京都の駅ビル内にある美術館「えき」KYOTOにて、来週から歌川国芳展が開かれる模様。
以前ご紹介した「年が寄ても若い人だ」がチラシに使われていて、とても気になります。お近くならば、ぜひ。
歌川国芳については時々お話しておりますので、こちらで。

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2014年10月15日

●ジャック=レイモン・ブラカサ 「牛のいる風景」

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 「近世ヨーロッパ絵画の軌跡」展カタログ 

「海辺の羊」をご紹介している、19世紀フランスの動物画家ジャック=レイモン・ブラカサの「牛のいる風景」です。

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2014年10月13日

●「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」3月(続き)

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背景の左側から、飼葉桶をかついだ羊飼いがやってくる。
彼は羊をひき連れて、城のまわりに繁茂する草木を帯状に取り除かねばならない。
敵が身を隠すのに利用されてはならないからだ。
むき出しになった土地は、城に近づくものを容赦なく支配者の前に晒し出すのである。
だが、その一方で貪欲な羊から、隣接する畑をも守らなければならない。

以前ご紹介したことのある、「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」の3月について、政治的な視点から解説を与える「政治的風景」の一文を。

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2014年10月08日

●ルイ=ミシェル・ヴァン・ロー 「プロヴァンス伯爵の肖像」

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 「ルーヴル美術館展 フランス宮廷の美」カタログ 

18世紀フランス、ルイ=ミシェル・ヴァン・ロー の「プロヴァンス伯爵(後のルイ18世)の肖像」です。胸元に金羊毛騎士団勲章
同時代の肖像画としては、フランシスコ・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵の肖像」ジョゼフ・デュプレシ「ルイ16世」ヨーゼフ・ヒッケル「皇帝ヨーゼフ2世」をご紹介しています。
金羊毛騎士団のお話はよくしておりますので、こちらをご参考にぜひ。

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2014年10月05日

●樹下鳳凰双羊文白綾

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樹下鳳凰双羊文白綾(じゅかほうおうそうようもんしろあや)
(樹下鳥獣文様の綾)
  一片   径約五一

岩の上に立つ南国風花樹の下で向かい合う鳳凰を表した文様を中心に、その左右に樹下双羊文様を表し、それらの隙間に花卉・見返り鳥・花喰鳥・蝶・霊芝雲文様を対照的に配した文様の綾である。

(略)

この綾の用途は、形状から見ると鏡箱のうちばりか献物几(けんもつき)の褥(じょく)の類と思われる。

※ 献物几 仏に献納する品をのせる台机。宝庫には東大寺大仏などへの献納品をのせた献物几が多数伝存する。
  褥 敷物のこと。献物をする際に献物の下に敷かれた几褥や僧侶の座具として用いられたものなどが正倉院宝物として伝わっている。

 「第65回正倉院展」カタログ 

正倉院宝物つながりで、樹下鳳凰双羊文白綾です。ずいぶん前にご紹介してるのですが、全体像が載ったカタログがありましたので、改めて。

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2014年10月02日

●古代エジプトの羊のミイラ

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エジプトでは動物までもミイラにされた。
カイロに近いサッカラで発見された羊のミイラは、アモン神と同じ型の角を持っていた。
このミイラには毛や皮がなく、かわりに布が巻かれていたが、カイロの農業博物館に保存されているウールのフリースと毛糸はすでにまだらでない羊からとったと思われるものだった。
このウールは紀元前1400年頃のエジプト18王朝のファラオ、イクナートンを祀る寺院に残されていた。
同じ頃のバビロニアのウールにくらべると質はやや落ちるが、まだらでないということは、エジプトでも羊種の改良が進んでいたことを示唆している。

古代エジプトのミイラです。アモン(アメン)神については、こちらで。

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2014年09月22日

●羅紗綿(羅紗緬)の由来。

ラシャメンとは、けだし羅紗綿の意で、当時、我が国へ渡来した紅毛碧眼の人々が来ていたラシャ(ポルトガル語)に由来するのでしょう。
それの綿に目をつけたまではよかったのですが、綿と羊毛とはまったく性質の異なる繊維だったのに気がついたとき、高級感をイメージすべき羊毛が、綿布など混同されてはたまらんと、心配症の人々が知恵をしぼったあげく、もともとの羊毛が縮んで波打つようにみえるところから、そのころ輸出品としてブームを呼んでいた絹織物の縮緬(ちりめん)に名を借り、緬羊という字をつくったものなのだそうです。
しかし、こうした苦労の末につくられたせっかくの緬でしたが、結局は迷案の域をでなかったらしく、戦後の漢字制限に遇って、あえなくその姿を消してしまいました。

先日、横浜絵をご紹介したときに触れた羅紗綿(羅紗緬)関連で、さらにもう少し。
「ヒツジ」や「綿羊(緬羊)」と並立する呼称の混乱について、「干支の動物誌」に興味深い解説がありました。

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2014年09月16日

●アシモフ『黒後家蜘蛛の会』より「同音異義」

「どうするかというとですね、簡単な情況を設定して、それを同じ発音で意味の違う……ああ、つまり、同音異義の言葉で説明するんですよ。
例を挙げましょうか。ピクニックに行こうというときに、天気が快晴なら問題ありませんね。どしゃ降りの雨なら、これも話は簡単です。ところが、空はどんより曇っていて、天気予報が曇り後雨、ところにより晴れ間が出る見込み、というような場合はどうですか?」

(略)

答えが出そうもないと見て、ゴンザロは言った。「これはね、〈天気が転機(whether weather)〉だよ。天気(weather)がはっきりしなくて、ピクニックに行こうか、どうしようかと迷う。ここが判断の分かれ目(whether)だからね。分かれ目というのは、一つの転機だろう。それで、天気が転機、どうかね?」

(略)

ジェフリー・アヴァロンが七十四インチの高みからあたりを睥睨して言った。
「いいや、考えてみると結構あるものだよ。例えば、去勢した雄の羊を飼っているとするね。これが、天気のよい日は大いに活発に跳び回るけれども、雨の日はすっかりしょげ返って元気がない。じゃあ、曇りの日はどうかというと、元気があるようでもあり、ふさいでいるようでもあって、どうもはっきりしない。この羊の性質は、言ってみれば〈後天の好天はたまた荒天(whether wether weather)〉と」
一同は納得しかねて口々に不服の声を発した。
アヴァロンは言った。「つまりだね、去勢した羊(wether)だから、当然その性質は持って生まれたものではないね。すなわち後天的なものだよ。で、この羊は、天気のよい日と荒れ模様の日とで大いに気分が左右される、とこういうわけだ。ああ、そういう羊がいるのだよ。嘘だと思うなら、字引きを調べてごらん」

アイザック・アシモフのミステリシリーズ『黒後家蜘蛛の会』から、「同音異義」を。引用は、導入部兼伏線の会話です。同音異義語を使った言葉遊びが始まるのですが、その中に羊を使ったものがありました。
アシモフ自身のあとがきに、「翻訳者泣かせな作品」との一文が。さもありなん。

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2014年09月12日

●興福寺東金堂木造十二神将立像のうち頞儞羅大将

昨日、奈良の正倉院展についてお知らせしたところなのですが、もしご訪問のさいにお時間があれば、興福寺に立ち寄られることをおすすめします。
なぜかと言って、

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十二神将立像 頞儞羅(あにら)大将

 「南円堂平成大修理落慶記念 興福寺国宝展」カタログ 

この仏像があるから。

興福寺公式HP 内 木造十二神将立像

木造十二神将立像(国宝)
 
宮毘羅(くびら)、伐折羅(ばさら)、迷企羅(めきら)、安底羅(あんちら)、頞儞羅(あにら)、珊底羅(さんちら)、因達羅(いんだら)、波夷羅(ばいら)、摩虎羅(まこら)、真達羅(しんだら)、招杜羅(しょうとら)、毘羯羅(びから)の12体。
像高113.0〜 126.3cm
東金堂の須弥壇上に安置される、一具の十二神将像である。
十二神将は『薬師如来本願経』に説かれ、薬師如来とその信仰者を守護するとされる12体の夜叉である。
本一具は鎌倉時代の作で、ヒノキ材の寄木造。

十二神将はそれぞれに十二支が配当されますが、こちらの興福寺東金堂では、仏像の頭上に十二支の動物たちが載せられているのですよ。薄暗がりで遠目に見ることになるので、判別はほとんど不可能なんですが、「未」は頞儞羅(あにら)大将です。お気が向かれたら、ぜひぜひ。

奈良では、他に南都銀行本店の壁にもヒツジがいます。あわせてこちらもぜひ。

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2014年09月11日

●第66回正倉院展

平成26年10月24日(金)?11月12日(水)まで、奈良国立博物館にて開催される「第66回正倉院展」にて、以前ご紹介したことのある白石鎮子が展示される模様です。ご縁があれば、ぜひぜひ。

会 期 平成26年10月24日(金)?11月12日(水) 全20日
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 会期中無休
開館時間 午前9時?午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月24日?26日、10月31日?11月3日、7日?9日)は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで

正倉院宝物のお話はときどきしておりますので、こちらで。

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2014年09月08日

●二代歌川広重 「横濱賣物圖會之内」

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横濱賣物圖會之内 
万延1 大判 錦絵揃物 37.0×73.3センチ

1859年以前の横浜は湿地に位置する一介の村にすぎなかった。
1858年の日米修好通商条約に続く英、仏、露、闌の四カ国との条約締結が、この小さな村に突然の変化をもたらした。
(略)
人種の坩堝と化した横浜は、即座に日本人の好奇心をかきたて、時代に敏感に反応した浮世絵師の中には、横浜絵の制作に積極的に乗り出す者がでてきた。
横浜絵は1860年から62年にかけて盛んに制作され、500点以上の図絵に街の景観、異人やその風俗が描かれている。

 「キヨッソーネ東洋美術館所蔵 浮世絵展」カタログ 

先日来お話している羅紗に関して、もう少し。

幕末に描かれた浮世絵の一種横浜絵に、異人の風俗として、乗馬する女性や「唐犬」とともに「ラシャメン」が描かれています。
ラシャメンとは羊の別称で、羅紗綿あるいは羅紗緬と書きます。江戸から明治にかけての日本はウール製品の国産化を目指していましたから、それを強調した呼び名ではないかと。

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2014年09月03日

●ギネス記録を持つ羊。

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ヒツジ競争では、ランボルギーニと名づけられたヒツジが断トツにすごい。
2011年1月生まれ、このウールの旋風くんはハイウィカム(イギリス)のオッズ・ファーム・パークで179レース中165レースに勝った。
トラックは長さ約250m(820フィート)で、ハードルやヘアピンカーブが設けられていた。

先日、羊毛の量で世界一を目指すショーン君のお話をしたのですが、ふと世界記録を持つヒツジには他にどんな子がいるんだろうと気になりまして、「ギネス世界記録」を繰ってみたところ、「ヒツジ競争で最も勝利したヒツジ」が掲載されていました。
同じ名前の車にも名前負けしてはいないようです。

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2014年08月31日

●福沢諭吉 「羊飼ふ子供狼と呼びし事」

羊飼ふ子供狼と呼びし事

羊の番する子供ありて、或日なぐさみに同村の者を驚かさんと思ひ、「おほかみおほかみ」と呼はりて走りければ、村の人々は狼の来りて羊に掛りしことならんと心得て、忙はしくかけ出し、その場に至り見れば何事もなきゆゑ、つまらぬことなりとてこの子を叱りて銘々の家に帰りたり。
その後数日を過ぎ、現に狼いで来りて群りたる羊へ飛掛りければ、子供はあわて、村に帰りて「おほかみおほかみ」と声を限りに呼び叫べとも、村の物は落付はらひ、最早二度はだまされぬぞとて見向く者もあらず。


解説

福沢は『窮理図解』『世界国尽』『啓蒙手習之文』『学問のすゝめ』初編、『童蒙教草』(どうもうおしえぐさ)などの子供向き著作を相次いで刊行しているのであるが、どれも子供に解りやすいようにと、話し言葉の語彙を多量に取り入れた文体を用いたり、挿絵をふんだんに入れたりするなど、工夫をしながら、人として必須と思われる知識を提供したのであった。
本書に掲載した「イソップ物語 抄」は、『童蒙教草』から採ったが、『童蒙教草』の原本はスコットランドCHAMBERS社刊行の“THE MORAL CLASS-BOOK”であって、もとはイギリスの少年向け道徳書である。
したがって原文は英語で、キリシタンの宣教師たちが十六世紀に日本に伝えたイソポのファブラスとはいささか趣を異にしている。

福沢諭吉の「童蒙教草」より、イソップ寓話のいたずらな羊飼いのお話を翻訳したものを。いろんなことしてたんですね、福沢諭吉。

イソップ寓話の最古の日本語訳である「イソポのファブラス」については、「狼と羊の譬の事」をご紹介しています。

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2014年08月25日

●葛飾北斎 「麦藁細工報状」(部分)

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麦藁細工報状 版画 大判 太田記念美術館

文政三年(1820)二月に、浅草奥山で興行された麦藁細工による、見世物の内容を伝えるために版行されたものである。
この時の興行では、出し物の下絵を北斎が描いて、大評判であった。

葛飾北斎の版画を。同時代人である猿猴庵の「新卑姑射文庫」には糸細工の十二支が出てきましたが、見世物のモチーフに十二支を使うというのは、この頃によくあることだったのでしょうか。
北斎は、これまでに二、三ご紹介していますので、こちらで。

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2014年08月22日

●コナン・ドイル 「白銀号事件」

「ちかごろになって羊に何か変ったことはなかったかね?」
「へえ、大したこともございませんが、三頭だけどういうものか脚の具合が悪くなりましたんで」
ホームズは大そう満足らしかった。
にこりと笑って、しきりに両手をこすり合せていた。
「大胆な想像だよ、ワトスン君。非常に大胆な想像があたったよ。
─グレゴリーさん、羊のなかに妙な病気が流行しているのは、大いにご注意なすったらよいと思いますよ。じゃ、御者君、やってください」

少し前に「緋色の研究」のお話をして以来、個人的にシャーロック・ホームズづいていたのですが、羊の出てくる事件がもうひとつありましたので、引き続いてご紹介を。『シャーロック・ホームズの思い出』所収の「白銀号事件」です。この羊が、事件の解決に絡んでわりと重要な要素になるのですよ。

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2014年08月20日

●司馬遼太郎 「胡蝶の夢」

ついでながら、この時期から八、九年も経ったあとで、幕府はその所有する洋式陸海軍に洋式の制服を着せることになるのだが、そのころになると、服装についての社会的反撥はさほどのものでなくなっていた。
しかしいまの時期、伝習生に洋服を着させれば、かれら自身の生命が、おそらく保証されがたい結果になることはあきらかだった。

もっとも、伝習生のあいだでは、舶来の黒ラシャの生地で羽織をつくることがはやっていた。
ラシャは戦国期から日本が輸入しつづけていた生地で、かつては陣羽織に用いられた。
この時代、長崎でそれを買えば、江戸・大阪よりも安くもあり、良順も勝麟太郎も、このラシャ羽織をはおっていた。
このめだたぬ「洋化」は、「いわば陣羽織の心意気だ」という口実があったから、あまり攘夷感情を刺激せずに済んだ。

先日、羅紗の陣羽織は江戸期の武家の必需品だったというお話をしたのですが、それに関連して、ak様から司馬遼太郎の幕末小説を教えていただきました。ありがとうございます。
引用は、物語の重要な舞台のひとつである長崎海軍伝習所の風景。袴姿で歩兵訓練を受ける伝習生たちの微妙な心理が描かれています。

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2014年08月18日

●南都銀行本店のレリーフ

先日、INAXライブミュージアムに展示されている朝日生命館(旧常磐生命館)のテラコッタを見に行ったおり、建物の状態でこうした装飾を見たいと思ったのですが、そういえばまさにそういうものが、奈良市に一軒ありました。

近鉄奈良駅から南へ数分、三条通と東向商店街の交差する角に建つ、南都銀行本店です。

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登録有形文化財 南都銀行本店

1926(大正15)年建築  1997年7月15日登録

南都銀行本店は、正面にイオニア式の列柱4本を並べ、細部に装飾を施しています。
古典様式を簡潔にまとめた好例で、設計者は多くの銀行建築を手掛けた長野宇平治です。
窓枠や内装は改修されていますが、外観は当初の姿がよく保存されています。

奈良市教育委員会

南都銀行本店前案内板より

こちらの列柱の下の方に、花綱でつながれた羊の頭が。

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上の写真は三条通に面した部分ですが、東向商店街がわの壁にもこのように。

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花綱文様については、いちどお話したことがありますね。豊かな感じが銀行建築に似合ったのでしょうか。

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2014年08月14日

●朝日生命館(旧常磐生命館)のテラコッタ

先日訪れたINAXライブミュージアムですが、じつはもうひとつヒツジスポットが存在します。
「タイルが伝える物語」展が開かれている「世界のタイル博物館」そばの別館「建築陶器のはじまり館」。
こちらの屋外展示エリア「テラコッタパーク」に、ヒツジがあしらわれたテラコッタがあるのです。

せっかくなので、ちょっと回って行きましょう。

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1980年の解体まで東京日比谷にあった朝日生命館(旧常磐生命館)の外装なのですが、下の方に気になるものが。

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持ち送りが羊の頭と棕櫚で構成されてます。
建ってるときに見たかったですね、これ……。

テラコッタに見る装飾のモチーフ

螺旋状の勇敢な角をもった雄羊は、力強さや創造的なエネルギーを表しています。
さまざまな神とともに登場し、一般に生け贄の動物として、大地を肥沃にするとも考えられています。

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2014年08月12日

●19世紀オランダのタイル

愛知県常滑市にあるINAXライブミュージアムに行ってまいりました。

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目的は、こちらで2014年8月26日(火)まで開催中の「タイルが伝える物語?図像の謎解き」展です。
ヒツジのひそむタイルがいくつか見受けられるなか、「イサクの犠牲」モチーフとおぼしきものがありましたので、下に。タイルの下部に、「GEN」(Genesisの略。創世記の意)と出典が示されているのが特徴のようです。

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藍彩聖書画面タイル
オランダ、19世紀 390×655ミリ

イサクの犠牲のお話はときどきしておりますので、こちらで。

「タイルが伝える物語?図像の謎解き」展は、この後、LIXILギャラリー大阪に巡回が予定されているようです。2014年9月4日(木)?11月18日(火)。お近くならば、ぜひ。

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2014年08月10日

●ミレー 「ゆりかご」

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 「バルビゾンから印象派」展カタログ 

ジャン=フランソワ・ミレーの「ゆりかご」です。仔羊と仔牛に見守られて眠る、どこか神秘的な幼子の姿。
ミレーのお話はひんぱんにしておりますので、こちらで。

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2014年08月08日

●ジャック=レイモン・ブラカサ 「海辺の羊」

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ブラカサの作品は、18世紀に貴族階級からもてはやされた狩猟画とは異なり自然景観のなかでたたずむ羊や牛たちの姿を精緻にかつ情感ゆたかに描き出したところに特徴がある。
ブラカサが生み出したこうした作品は、新しいスタイルの動物画として、トロワイヨンをはじめとする次代の画家たちに大きな影響を与えた。

 「バルビゾンから印象派」展カタログ 

19世紀フランス、ジャック=レイモン・ブラカサの「海辺の羊」です。影響を与えたとされるトロワイヨンのお話はよくしておりますので、こちらでぜひ。

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2014年08月01日

●江戸期の羅紗の陣羽織

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陣羽織は、戦国時代に生まれ、桃山時代を経て江戸時代末期に至るまで、武家が常備しておくべきものとして、刀や甲冑とともに常に用意されていたものでした。

(略)

江戸時代中期から後期にかけての作品と考えられる陣羽織に用いられている生地は、表地には毛織物が用いられ、このうち羅紗が最も多く、呉絽がこれに次ぎ、ヘルヘトワンがさらにそれに次ぎます。
またフェルト(獣毛を踏みつけ絡み合わせて布状にしたもの)も多くはありませんが含まれています。
(略)
フェルトも含めてこれらの羊毛製品は、木綿製のオランダ更紗とともに、長崎のオランダ商館を通じて輸入されていたと考えられます。
長崎奉行所管理のオランダからの輸入裂の見本帳には、これらの陣羽織に使用されているものに類似する羊毛製品やオランダ更紗が貼り込まれているからです。

先日の「日本幽囚記」平賀源内の事業などでお話している江戸中後期の羅紗に関して。動物の羊には無関心なのに羊毛製品には興味があるという状況は、こうして生まれたもののようです。
引用の陣羽織は、19世紀の「緋羅紗地丸紋付陣羽織」。緋色は戦国時代以来好まれ続けた人気色です。

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2014年07月30日

●ジャン=フェルディナン・シェノー 「宵の明星」

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 「ミレーとバルビゾン派の画家たち」展カタログ 

バルビゾン派を。ジャン=フェルディナン・シェノー(シェニョー)の「宵の明星」です。
シェノーはなんどかご紹介しておりますが、なかでも「夕暮れ」が似た雰囲気ですね。

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2014年07月25日

●遠浪斎重光 「寿という獣」

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江戸後期の浮世絵師、遠浪斎重光の「寿という獣」です。十二支の動物を合成しためでたい獣「寿」、という趣向。あごひげが「未」とのこと。やっぱりヤギと混ざってるんですね、江戸の羊認識って……。
浮世絵は、これまでに歌川国芳などをご紹介しています。ご参考にぜひ。

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2014年07月23日

●「桃源遺事」

西山公、むかしより、禽獣草木の類までも、日本になき物をば、唐土より御取よせなされ、又日本の中にても、其國にありて、此國になきものをば、其國より此國へ御うつし被成候、其思し召すゑに記す、

草之類
朝鮮人參 江戸駒込の御屋敷、并水戸にても御植候   薩摩人參   闌

(略)

獣の類
麞(ノロ) 北領の山に御はなち候   豪豬(ヤマアラシ) 山林に御はなち候
羊 年々子を生、餘多になり候、   綿羊 右同斷
(以下略)

 「桃源遺事」 

西山公こと第二代水戸藩主徳川光圀の言行録である、「桃源遺事」から。
先日の「日本幽囚記」にあるように、江戸期、外来の羅紗(ウール)がそれなりに流通しつつも、日本人の羊に対する知識はとぼしいものでした。なんとか産業として成立させようとした平賀源内の例についてはお話をしておりますが、さらに時代をさかのぼって、水戸光圀公も挑戦していたようです。しかも増やしてるし。ただ、羅紗を織ったりはしていないようですね。食用かな?
それはそうと、「羊」と「綿羊」が別なのが気になります。「環海異聞」もそうでしたが、なんなんでしょう、これ。

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2014年07月21日

●ゴローニン 「日本幽囚記」

「西洋では何の毛で羅紗を織るか」

日本側に羊の話をすると、ムール君は牡羊を描かされ、それから山羊を描き、遂には驢馬や、騾馬や、馬車や、橇などまで描かされた。
一口に云ふと、日本側では日本に居なくて、実物を見られない物は何でも紙に描いてくれと云ふのであつた。
しかし日本側ではいつでも非常に鄭重に頼むので、ムール君もその依頼をすつかり満足させるのは退屈で辛いことではあつたが、拒む気にならなかつた。
ムール君が非常に速く、自由に絵を描けたのは、同君のために幸ひであつた。

以前、江戸期にロシアへ漂流した日本人たちの記録である「環海異聞」「北槎聞略」をご紹介したことがあるのですが、同時代に日本にとらわれたロシア人の記録もまた存在し、ヴァーシリー・ゴローニンの「日本幽囚記」として知られています。
上の引用は、抑留中に受けた尋問(と呼ぶにはあまりに楽しそうな質問)のひとつ。絵心のある部下がえらい目にあってます。

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2014年07月18日

●トーマス・セドン 「悪しき評議の丘から眺めたエルサレムとヨシャパテの谷」

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19世紀イギリス、ラファエル前派のひとりトーマス・セドンの「悪しき評議の丘から眺めたエルサレムとヨシャパテの谷」です。ロンドン、テート蔵。

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2014年07月15日

●ルノワール 「牛飼いの娘」

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ルノワールは、モネら印象派の仲間とともに1870年代には市民たちの憩うパリ周辺の風景に熱中していた。
しかし1880年代半ばには積極的に田舎風をめざすようになり、ブルターニュ滞在はまさにその意識の現れととらえることができる。
この作品にはほぼ同じ大きさ、同じ構図のややスケッチ的な油彩作品があり(フィッツウィリアム美術館)、そちらの方が現地で描かれ、こちらはその後翌年にかけてパリのアトリエで仕上げられたと見られる。

「ルノワール 異端児から巨匠への道1870-1892」展カタログ

以前ご紹介した、ピエール=オーギュスト・ルノワール「畑からの帰り道」の別バージョンです。

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2014年07月12日

●サルバドール・ダリ 「雄羊(雌牛の亡霊)」

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 「ダリ展 創造する多面体」カタログ 

20世紀スペイン、サルバドール・ダリの「雄羊(雌牛の亡霊)」です。

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2014年07月10日

●アレクサンドル・ドフォー 「農家の庭」

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アレクサンドル・ドフォー

1826年9月27日にベルシーに生まれる。コローの弟子である。
(略)
風景画家、動物画家として、特に農村生活の様々な場面を好み、油彩と水彩で描写。
フォンテーヌブローの森の他に、オワーズやノルマンディでも制作した。1900年、パリに没す。

 「ミレーとバルビゾン派の画家たち」展カタログ 

19世紀フランス、アレクサンドル・ドフォーの「農家の庭」です。

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2014年07月08日

●堀田善衞 「スペイン断章」

この羊なのである、カスティーリア・レオン地方などの中央部高地(メセタ)スペインを形成したものは。
従ってそれはスペイン自体を形成した、と言っても、それはほんの少しの誇張ということで許容量のなかに含まれるであろう。

スペイン・カトリックが追い詰められて南征の根拠地とした北部は山だらけの、何も生んではくれぬ土地である。
しかも、その山地から南へ打って出ても、中部高原もまた、地味の痩せた農耕不適地である。
そこで、羊を主とする牧畜が可能なほとんど唯一の生業であった。
農耕は多くの人手を必要とするが、牧畜となれば、一人で数十、数百匹くらいはまかなえるであろう。
食べさせる草がなくなればあるところに移動して行けばよろしい。
かくて、この国の歴史に大きな刻印を残すことになるメスタという制度が出来上った。

メスタとは、いわば牧羊協同組合のようなものであるが、これに入れるのは貴紳だけであって、これが王室と結んで様々な特権をもっていた。
その特権中最大のものは、羊の群れの通行権である。
百姓は農地に垣をつくってはならなかった。羊のお通りの邪魔になるからである。

(略)

この羊の大群からとれるいわゆるメリノ羊毛が、王室の収入源中最大のものであった。
しかしそれも要するに他のヨーロッパ諸国に対する原料提供というにとどまり、羊毛産業自体が成長するのはずっと後になってからのことであった。
羊毛の密輸出は死をもって罰せられた。
この羊毛の最大のお得意先は、英国とフランスであった。

堀田善衞の「スペイン断章」の中に、以前お話したスペインの移牧について触れられた章がありましたので、ご紹介を。
メリノ種については、こちらをご参考にぜひ。

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2014年07月02日

●椎名誠 「草の海―モンゴル奥地への旅」

羊鍋はまず食べる羊を選ぶところからはじまる。
羊を飼っている牧民だからあたりは羊だらけである。
アユーシが一匹を選んだ。選定基準は一番近くにいたから、のようだ。
プロレスのヘッドロックのようにしてゲルの裏の草はらに連れてくる。
前肢と頭を腕でかかえ込むと、羊は人間の進む方向へ自分の肢で歩く。
そうするしかほかにやることがないからである。

椎名誠のモンゴル大草原紀行、「草の海」です。「肉の中で羊が一番好き」(本文より)という椎名氏が、訪れた先で受けた歓待を描く一章から。

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2014年06月28日

●「刺繍九羊啓泰図軸」

名品「翠玉白菜」の到来で話題の、東京国立博物館の「台北 國立故宮博物院?神品至宝?」展に行ってまいりました。
まずはともあれ、前庭にたたずむ、朝鮮半島伝来の石羊にご挨拶を。根津美術館京都の野仏庵で見たものと似てますね。

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さて、白菜ももちろん外せませんが、行列無しで見られる他の展示品だってみごとなものばかりです。特にひつじ好きにとって白菜と並ぶ必見は、こちらの「刺繍九羊啓泰図軸」ではないでしょうか。

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絹製、刺繍   縦216.6 横63.8
元時代  十三?十四世紀

中央の太子は、気を吐く羊にまたがり、鳥籠をかけた梅枝を肩に担ぎ赤い龍袍をまとう。
君子が正月に、春を伴って訪れる様子を表したものであろう。

 「台北 國立故宮博物院?神品至宝?」展カタログ 

九羊啓泰については、こちらでお話をしたことが。

2014年6月24日(火) ? 2014年9月15日(月) 東京国立博物館

「翠玉白菜」展示期間[6月24日(火)?7月7日(月)]は無休、毎日20:00まで特別開館。
※ただし、6月30日(月)、7月7日(月)は特別展会場のみ開館し、総合文化展は閉室します。

2014年10月7日(火)〜2014年11月30日(日) 九州国立博物館

ご都合があえば、ぜひぜひ。

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2014年06月23日

●三星堆遺跡の尊(続き)

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青銅 高44.6センチ 口径42.3センチ

「三星堆 中国5000年の謎・驚異の仮面王国」展カタログ

以前三星堆遺跡出土の尊をご紹介したことがあるのですが、他の作例を見かけましたので、改めて。
古代中国の青銅器のことは、時々お話しております。こちらをご参考にぜひ。

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2014年06月20日

●葛飾北斎 「書名不詳版下絵」

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紙本墨絵3冊 各約14×21センチ

のちに刻板し、版本とすることを目的に描かれたこの版下絵は、全体の画様式や細部の筆癖、特徴的な修正方法などの手際を総合して、文政中期頃から天保4年(1823─33)頃にかけて北斎が制作したものとみられる作品である。
ただ書名、制作経緯と出版目的、全丁が完備しているのかなど、いまだ解明すべき問題の余地を多く残しているものといえる。

「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」カタログ

神戸市立博物館で2014年6月22日(日)まで開催中の「北斎」展に、「十二宮」と題された絵を含む版下絵が展示されている模様。「白羊宮」の部分が見られるようになっているかどうかはわからないのですが……。
神戸のあとは、北九州市立美術館分館、上野の森美術館に巡回するようです。お近くならば、ぜひ。

2014年4月26日(土)?6月22日(日) 神戸市立博物館

2014年7月12日(土)?8月31日(日) 北九州市立美術館分館

2014年9月13日(土)?11月9日(日) 上野の森美術館

なお、これまでにお話したことのある北斎についてはこちら、黄道十二宮関連のお話は、こちらをご参考にぜひ。

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2014年06月16日

●田中訥言 「十二支図押絵貼屏風」

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 「尾張のやまと絵 田中訥言」展図録 

江戸後期、田中訥言の「十二支図押絵貼屏風」六曲一双のうち、「未」です。
黄初平図ですが、仙人らしからぬ、少年の姿で描かれているようです。
これまでお話したことのある黄初平については、こちらで。

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2014年06月12日

●山本幸久 「一匹羊」

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大神の勤める縫製工場のまわりにはなにもない。
そこではじめての来客のために、目印として、羊の形をしたアドバルーンをあげることになっていた。
十五年前、大神がはじめてここを訪れたときもそうだった。
明日が快晴であれば、羊が空を飛んでいるので、それを目指してきてください。
詳しい道順を訊こうと庶務に電話をしたときに、そう言われたものである。
雨の日はあげることができないのだ。
ヘリウムガスなので風の強い日も無理である。
近頃はカーナビが普及しているおかげで、羊はずいぶんとご無沙汰だった。

山本幸久の短篇集「一匹羊」から、表題作を。いきなり勇気や元気がもらえるわけではないけれど、まぁ、もうちょっとだけがんばってみるか、みたいな気持ちになれる、そんなお話が詰まってます。

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2014年06月10日

●コナン・ドイル 「緋色の研究」

二、三時間もさがしまわったが、とうとうむだ骨におわったので、あきらめて帰りかけてふと頭上を見ると、ぞっとするほどうれしいものが眼にとまった。
三、四百フィート上の突き出た岩のはじに、羊のように見えて大きな角を生やした動物が立っているのである。
ロッキー羊(ビッグ・ホーン)と一般に呼んでいる動物だが、下からは見えないが、後ろにその大群がいて、一頭だけそこへ見はりに出ているらしかった。
しかもありがたいことには、見はり先生反対のほうへ向いて立っているので、猟人が下にいることには気がつかないらしいのである。

ジェファスンはすぐに腹ばいになって、銃を岩にもたせ、十分狙いをさだめてから、引き金をひいた。
動物はぴょこんと宙にとびあがったかと思うと、ちょっと崖のふちでよろめいてから、どさどさと下の谷へ落ちてきた。

獲物はおもくてとてもそのまま運べそうになかったので、ジェファスンは片股と脇腹の一部を切りとるだけで満足した。

シャーロック・ホームズシリーズの「緋色の研究」に羊が出てくることに、最近になって気が付きました。
といっても、オオツノヒツジ(ビッグホーン)ですが。第二部の半ばあたりで、荒野を逃亡する青年ジェファスンが食べるために狩っています。
以前お話したバットランドオオツノヒツジの記事でも、先住民が食用にしていたようですし、美味しいものなのでしょうか。

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2014年06月04日

●オールドノリタケの飾り皿

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手描羊飼絵飾り皿  1911─17年 径26センチ

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アントン・ムーブの「春」(メトロポリタン・ミュージアム蔵)

オールドノリタケの絵皿と、その絵付けデザインの素材になった19世紀オランダのアントン・ムーブの絵を。

ノリタケは、アンティークでもなんでもありませんが、以前子羊の置物を買いに行ったことが。
アントン・ムーブは、「羊の群れの帰還」をご紹介しています。

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2014年06月02日

●「環海異聞」

羊 バラニ  毛色は黒、白また斑もある。ちぢれた毛をかりとり、ほどくと綿のようになる。これでラシャ類の毛織を織る。また皮を丸むきにして売買する。一枚の値は甚だ高い。

綿羊 ヤマニ  毛が長くて藁蓑を着たようである。この毛をとり、太い糸に取り、粗布に織る。またなめし皮にし、種々のことに用いる。上品である。しかし毛皮は羊を最上とする。たとえばヤマニ(綿羊)の皮が二百匁であれば、バラニ(羊)の皮は五百匁である。

以前ご紹介した『北槎聞略』の大黒屋光太夫と同時代人であり、同じく漂流のためにロシアの保護を受け、しかも世界一周の末に帰国を果たした津太夫の記録である、『環海異聞』の「物産」に関する章から。
「バラニ」は『北槎聞略』の記述と同じものだと思うんですが、「ヤマニ」がわかりません。ヤギ……とか?

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2014年05月27日

●なぜナイチンゲールは夜啼くか

ウェストファーレン地方の伝説では、すべての小鳥が口をつぐむ夕暮れ時に、なぜ小夜啼鳥だけが囀り始めるのかが説明されている。

(略)

昔、羊飼いの娘が、素直で優しい羊飼いの若者と婚約を交わしていた。
しかし娘は、わがままで若者を冷たくあしらい、羊番の仕事も怠りがちで、そのくせ若者には夜遅くまで羊を草原に追いたてさせていた。
結婚の手筈も整えるわけでもなく、若者の話にも耳をかさず、娘は結婚の日どりを延ばすばかりであった。
若者の忍耐にも限度があった。度重なる延期の言葉に、たまりかねた若者は怒り狂ってこう叫んだ。
「最後の審判の日まで眠られぬよう、お前を呪ってやるぞ!」
するとたちまち娘は小夜啼鳥の姿となって夜も眠らず、嘆きつつ仕事の歌を響かせねばならなくなった。

「ドイツの民間習俗と太い根でつながっている植物や動物のいくつかを民俗学の立場から掘りおこし、ドイツ文学の理解に役立てよう」(「まえがき」より引用)との趣旨を持つこちらの『ヨーロッパの森から』より、「ナイチンゲール」の章を。
ドイツの羊伝説は、この他にグリムの「ドイツ伝説集」をご紹介しています。

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2014年05月25日

●「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」6月号

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本屋さんの語学テキストコーナーに行ったら、羊の絵の表紙と目があってしまいました。
NHKラジオの英語講座「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」の6月号です。6月16日(月)放送分のショートストーリー「In a Taxi」の中に出てくる模様。渋滞中のタクシーの中で、運転手とお客が動物を使った心理テストを始めたのですが……?

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2014年05月22日

●彦根の和風礼拝堂 「スミス記念堂」

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昭和6年、日本聖公会彦根聖愛教会の牧師で彦根高商の英語教師でもあったパーシー・アルメリン・スミス氏が両親を記念し、大工宮川庄助氏と協力して城町の堀端に建設しました。
外観は寺社建築を模しながら、梁や扉には葡萄や十字といったキリスト教の文様が刻まれた独特の和風教会堂として貴重な建築です。
1996年の道路拡幅工事で解体後、市民や滋賀大関係者たちでつくるスミス会議が建物を譲り受け、この度、平成19年3月25日に竣工式が行われました。

神社仏閣の装飾彫刻には、多くの動物や幻想動物がひそんでいます。
これまでにも、大阪天満宮の方位盤松島は五大堂の蟇股などをご紹介しているのですが、羊がもっと大きく取り扱われることはないかと思っていたら、それかと思われるものがありました。
彦根の和風教会堂「スミス記念堂」のなかにある祭壇彫刻です。羊ですね、これ。教会ですし。

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2014年05月20日

●エティエンヌ ・ ドゥローヌ 「6月」

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400点以上の作品を制作したドゥローヌは、金銀細工、メダルのためのデッサンや小品を別として、膨大な数の一連の月暦図、旧約・新約聖書、歴史や神話を題材にした作品を残している。
様々な画題をとりあげているが、この版画に見られるようにその月々に対応する労働を示す田園風の場面を挿入して新しい図像に仕上げている。

「パリ国立図書館所蔵 フランスの版画 16世紀─19世紀」展カタログ

16世紀フランスの版画家、エティエンヌ・ドゥローヌの月暦図より、「6月(かに座)」です。毛刈りの季節のようですね。
羊の毛刈りを描いた暦といえば、「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」の7月をご紹介したことがあります。

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2014年05月17日

●ジョン=ルイス・ションボーン 「羊飼い」

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ジョン=ルイス・ションボーン(1852─1931)

ハンガリーに生まれ、幼少の頃両親とアメリカに渡る。
20歳の時に絵画の修行のためにフランスに留学。多くのアトリエで学び、レオン・ボナの知己を得た。
田園風景や動物画に力量を発揮する。
健康に恵まれず、まず難聴、ついで毎年数ヶ月のアルジェリアでの制作が祟って視覚障害にみまわれる。
しかしこのアルジェリア滞在からは、晴れやかな風景画、アラブ馬の大きな習作が生まれた。

 「オリエンタリズムの絵画と写真」展カタログ 

ジョン=ルイス・ションボーンの「羊飼い」を。

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2014年05月09日

●愛知県美術館 シャガール展

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「《聖書》のための原画:過越の祭で食事するユダヤの人々」

1931年 油彩・グワッシュ、紙
マルク・シャガール国立美術館(1972年寄贈)

 「シャガール」展カタログ 

愛知県美術館にて、2014年6月8日まで、マルク・シャガールの展覧会が開かれています。
上の引用は、以前「イサクの犠牲」などをご紹介した版画「聖書」シリーズの原画のひとつ。大皿の上に子羊がのってます。
その他、「ダフニスとクロエ」のリトグラフのシリーズや、バレエ「ダフニスとクロエ」の衣装と舞台背景画、マルク・シャガール国立美術館の油彩「聖書メッセージ」連作などなど、ひつじ度高めの作品群が並んでいます。お近くならば、ぜひぜひ。

会期 2014年4月17日(木)?6月8日(日)
会場 愛知県美術館 (愛知芸術文化センター10階)
開館時間 10:00?18:00 金曜日は20時まで (入館は閉館30分前まで)

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2014年05月02日

●ゴヤ 「静物画 肉屋の店先」

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先日の「ウェリントン公爵の肖像」に続いて、フランシスコ・デ・ゴヤをもうひとつ。羊の頭部と胸肉を起き並べた静物画です。
ゴヤは、この他に「洗濯娘たち」をご紹介しています。

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2014年04月27日

●「旅人たちの食卓」

ブドウの房に灼熱の日ざしがふり注ぐのを何も妨げないように葉をむしり、ブドウが完全に熟したら、切り取って大桶に仕込む。
その中に羊か犬を入れられるだけの空間を残しておき、喉をかき切って殺した、まだぬくもりのある羊か犬を毛皮のまま丸ごと放り込む。
挽き砕いた数リーヴルのコショウ、ショウガ、月桂樹の葉といっしょに生石灰をこの上から投げ込み、残った隙間と縁から一ピエのところまでブドウを入れ桶を完全にいっぱいにする。
それから適量の水を注ぎ、混ぜ合わせたものを発酵させて泡立つままにしておくと、四、五日で中に入れた動物は完璧に消え失せ、どんな小さな骨も見つからないほどになる。
そうなったら大桶の下のほうにある栓を開け、何人かが中に入って力いっぱい足でブドウを押しつぶす。

近世ヨーロッパの旅行者たちが残した著作を検討する「旅人たちの食卓」より、18世紀初頭にヨーロッパを遍歴したフランス人司祭ラバ神父が遭遇したという、スペインの「ワインの醸造方法」です。たぶん、信じなくていいと思います……たぶん。

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2014年04月24日

●ゴヤ 「ウェリントン公爵の肖像」

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18?19世紀スペイン、フランシスコ・デ・ゴヤによる、初代ウェリントン公爵の肖像です。
胸元に金羊毛騎士団勲章が。スペイン独立戦争に功のあった公爵に対して、フェルナンド7世が授与したものと思われます。

金羊毛騎士団関連のお話はいろいろしております。このあたりでぜひ。

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2014年04月22日

●名古屋ボストン美術館 ミレー展

名古屋ボストン美術館にて、ミレー展が開幕いたしました!

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開館15周年記念 ボストン美術館 ミレー展 バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から

日本でもっとも親しまれている画家のひとり、ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875年)は、2014年に生誕200年を迎えます。
ボストン美術館はミレーの母国フランスをのぞいて随一のミレー・コレクションを誇ります。
本展では、ミレーの作品を軸に、彼の活躍の場となったバルビゾン村、フォンテーヌブローの森に集い、19世紀フランス絵画史に大きな足跡を残した20作家による64作品をご紹介します。
コロー、ルソー、モネらの作品とともに、ミレーの新たな魅力を発見してください。

2014年4月19日(土)?8月31日(日)

開館時間   火?金曜日 10:00?19:00
         土・日・祝休日 10:00?17:00
最終入館   閉館の30分前まで
休館日   月曜日(祝祭日、振替休日の場合は、その翌日)

ミレーの「杖にもたれる羊飼いの娘」ほか、トロワイヨン「羊と羊飼いのいる風景」シャルル=エミール・ジャック「羊に水を飲ませる羊飼いの娘」が展示されています。お近くならば、ぜひぜひ。

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2014年04月19日

●ジュール=ルイ・ラーム 「スコットランドの風景」

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ラームはノルマンディー地方の出身で、生来病弱だったために、絵画に親しむようになった。
最初期の作品にはミレーの影響が顕著だが、後に印象派から影響を受け、自己の作風を形成していく。
1909年にはイギリスに旅行し、この魅力的なスコットランド風景を含む数多くの油彩作品を制作した。

「フランス近代絵画の流れ」展カタログ

19世紀末から20世紀初のフランス、ジュール=ルイ・ラームの「スコットランドの風景」です。カーン美術館蔵。

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2014年04月16日

●ウォーホル 「カクテル・アワーの星占い」

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ポートフォリオ『カクテル・アワーの星占い』より

希望の牡羊座

「アンディ・ウォーホル展 from Collection of Mugrabi」カタログ

20世紀アメリカ、アンディ・ウォーホルの1959年頃の作品です。ポップアートの旗手として知られるようになる直前の時代ですね。

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2014年04月14日

●20世紀のアートタイル

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うるさいまでに室内を飾るヴィクトリア朝の趣味はすでに過去のものとなり、まるで病院のように飾り気のない部屋が好まれるようになったため、工業生産されるタイルは無地物が大半だった。

(略)

しかし、アート・タイルの伝統も細々ながら生き延びていた。
1920、30年代の英国ではバーナード・リーチが、英国中世の伝統と日本の双方から想を得てタイルの制作を続けた。

以前、ヴィクトリア朝のものをご紹介した英国のタイルですが、こちらは同じくミントン社による1930年頃のアートタイル。アール・デコの時代ですね。どのように使われたのでしょうか。

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2014年04月09日

●ジョット 「キリスト降誕」

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14世紀イタリア、「羊飼いのもとに赴くヨアキム」「ヨアキムの夢」をご紹介している、ジョット・ディ・ボンドーネスクロヴェーニ礼拝堂壁画より、「キリスト降誕」です。
ジョットについては、この他にヴァザーリの評伝などをご紹介しています。

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2014年04月06日

●エイプリルフール版ひつじ事件。

6本脚の羊の繁殖を真剣に検討中!? 英の家畜生産組合。

イングランド北西部ののどかな牧場で、先ごろ6本脚のヒツジが誕生した。
牧場主は今、そのヒツジの繁殖を真剣に試みており、世界中の専門家が関心を示しているとのこと。
食用部分が多いとはいえ、その判断は正しいのであろうかと物議を醸している。

(略)

このように、にわかには信じ難いこのニュース。ここで種明かし。
昨日4月1日は世界中のメディアで様々なエイプリルフールのためのびっくりニュースが飛び交ったが、これもその一つ。

ak様から、エイプリルフール仕様のひつじ情報を教えていただきました。ありがとうございます。
話が詳細でリアリティがあって、うっかり信じてしまいそうです。要注意?

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2014年04月01日

●大英帝国の地図

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「肖像の並んだ絵図」の伝統を意識的に用いた、才能あるヴィクトリア時代の挿絵画家、ウォルター・クレインが帝国的主題の行進を彫刻のレリーフのような様式で描いている。
クレインの美術は日本の版画やアール・ヌーヴォーの影響を受けているが、その2つの要素はここにはっきりと現れている。

19世紀末、イギリスで作られた世界地図(の部分)です。オーストラリアを示すと思われるあたりに、メリノ羊が。

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2014年03月30日

●「道教の神々」より尹喜(いんき)

報告を受けた尹喜は朝服に改めて出迎え、しばらく逗留するよう願った。
初めは素性をかくしていた老君も承知し、内外の修煉の法を伝授するためにしばらく滞在した。
別れるさいに老君は、かれの求めに応じて五千余言を書き与えるとともに、千日後に蜀の青羊という市で再会しようといい、金光をを身体から発しながら昇天していった。

(略)

老君は、天上から下界に下り、四川の李氏の家に赤ん坊として再生する一方、一匹の青竜を青色の羊にかえて、つねに身辺においていたが、ある日青羊がいなくなった。
李家では心配して小童に探しにやらせた。
たまたま四川にきた尹喜は、小童がひいている青羊をみて、これだと思って小童に帰宅後、赤ん坊に尹喜にあった旨を告げさせた。
小童が告げるや、赤ん坊は身体から白光を発する巨大な神となり、尹喜をよんで修道の完成をほめるとともに、在天の神々や神仙たちを召した。

老子に教えを請うたとされる伝説上の人物、尹喜にヒツジ絡みのエピソードがありましたので、ご紹介を。

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2014年03月27日

●ジョルジュ・サンド 「愛の妖精」

「じゃあ、そういうことにしとくわ」と、ファデットはいかにも得意そうな、いかにもうれしそうな様子で言った。
「さあ、その足で河岸に引っ返して、羊の啼き声が聞えて来るまで、河岸を下って行くのよ。そうすると、茶色の仔羊がいるから、そうすりゃ、あんたの兄さんもすぐ見つかるわ。もしあたしの言う通りにならなかったら、今の約束はなしにしてあげるわ」

(略)

そこでランドリーは「切れこみ」に跳び込んで、草薮の中へはいって行った。兄の姿はそこには見えなかった。
が、水の流れに沿って、相変わらず仔羊の啼き声を聞きながら、十歩ばかり先へ進むと、向う岸に、自分の兄が、小さな仔羊を上衣の下に抱いてすわっているのが目についたが、見ると、その仔羊は、なるほど、鼻の頭から尻尾の先まで茶色だった。

19世紀フランス、ジョルジュ・サンドの田園小説「愛の妖精」です。引用は、物語冒頭、行方不明の兄を探す主人公ランドリーが、野生児ファデットに助けられる場面。

ジョルジュ・サンドはいくつかご紹介しておりますので、こちらでぜひ。

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2014年03月25日

●フィリップ=ジャック・ド・ルーテルブール 「月光」

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ルーテルブールは自然のなかにいる動物を好んで描き、17世紀オランダ絵画の伝統を引き継いでいる。
夜の情景はこの時代大変好まれ、とかく凡庸になりがちな情景を感動的なものにしている。

「ストラスブール美術館所蔵 語りかける風景」展カタログ

18世紀フランス及びイギリス、フィリップ=ジャック・ド・ルーテルブールの「月光」です。

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2014年03月22日

●シモン・ペーテルスゾーン・フェレルスト 「羊飼いの服装をする若い婦人」

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 「バロック・ロココの巨匠 天才たちの競演」展カタログ 

17世紀、オランダ及びイギリス、シモン・ペーテルスゾーン・フェレルストの「羊飼いの服装をする若い婦人」です。

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2014年03月20日

●ジャン=バティスト=マリー・ピエール 「若い羊飼い」

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《シテール島への船出》によってヴァトーが創始した「雅宴画」というジャンルは、やがてブーシェによってひなびた田舎でのアバンチュールに変容していく。
ピエールのこの作品もまた、ブーシェの「田園詩(パストラール)」風と呼ばれる作品群に連なるものといえる。
しかしブーシェの同主題作品と比較すると、遺跡や泉などの演出的な要素が少なく、また登場する少年少女が年若く純朴そうに描かれているため、官能性は弱められている。

 「バロック・ロココの巨匠 天才たちの競演」展カタログ 

「キリストの降誕」をご紹介したことのある、18世紀フランス、ジャン=バティスト=マリー・ピエールの「若い羊飼い」を。
引用にあるヴァトーについてはこちら、ブーシェについてはこちらを、ご参考にぜひ。

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2014年03月17日

●ジャン=レオン・ジェローム 「羊の角をつけた女性の頭部」

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 「ナント美術館名品展」カタログ 

19世紀フランス、ジャン=レオン・ジェロームの「羊の角をつけた女性の頭部」です。

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2014年03月16日

●ニコラース・ベルヘム 「牧童と羊の群れのいるイタリア風景」

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「ケルン市立ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵 17世紀オランダ絵画の黄金時代展」カタログ

先日の「牧人のいる風景」に続いて、ニコラース・ベルヘムを。「牧童と羊の群れのいるイタリア風景」です。
17世紀オランダ絵画は、これまでにもいくつかご紹介しています。こちらでぜひ。

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2014年03月13日

●ニコラース・ベルヘム 「牧人のいる風景」

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「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ヨーロッパ風景画の流れ」展カタログ

17世紀オランダ、ニコラース・ベルヘムの「牧人のいる風景」です。

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2014年03月10日

●宮部みゆき 「ここはボツコニアン」

ぎりぎりセーフで再移動した先は、今度こそ地面の上であった。
但し、羊の群れのど真ん中だ。
「うわぁ?!」
「いちいちうるさいなあ。うちのヒツジちゃんたちだってば。みんな、ただいま」
白いウールを着込んだ羊たちは、ピピによく懐いているらしく、わさわさと寄ってくる。ピピは両手を広げて羊たちに取り囲まれた。
「羊? ヒツジ? どうして羊?」

宮部みゆきのゲーム&映画趣味がはじけ放題のファンタジー(たぶん)小説、「ここはボツコニアン」です。引用は、物語冒頭、ヒロインのピピの家である羊牧場にて。なぜヒツジなのかについて、ピピが「うちのおじいちゃんはグレン・フォードの大ファンだから」とか言ってるんですけど、すみません、ネタ元がわかりません……。

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2014年03月08日

●大阪天満宮表門の方位盤

さて、せっかく大阪まで来たことですし、もうひとつヒツジを見てまいりましょう。
というわけで、やってきました、大阪天満宮。

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大阪天満宮公式HP

地下鉄南森町駅かJR東西線大阪天満宮駅で降りて、すぐ南。
こちらの敷地の南にある表門の天井に、十二支をあしらった大きな方位盤が下がっていて、それはみごとなのですよ。

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門の下をくぐりながら見上げれば、

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こんな感じ。ヒツジ部分のアップも下に。

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お近くならば、ぜひ一度。

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2014年03月05日

●アブラハム・ブルーマールト 「羊飼いへの降誕の知らせ」

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 「華麗なる17世紀ヨーロッパ絵画」展カタログ 

16?17世紀オランダ、アブラハム・ブルーマールトの「羊飼いへの降誕の知らせ」です。
キリスト降誕のお告げを受ける羊飼いたちを描いたものは、ずいぶんご紹介しています。このあたりでぜひ。

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2014年03月01日

●ブルフィンチ『中世騎士物語』より、「キリッチとオルウェン」

彼らは、旅をつづけて一つの広い原のところまで来た。
そこに、その美しさはまたとなかろうと思われるような大きな城があった。
城の前へ来てみると、たくさんな羊の群がいた。
羊を番している羊飼が丘の上にいた。
毛皮衣を羽織って、そばに九歳駒より大きな尨毛の猛犬がいた。

(略)

「羊飼さん、いかがかね?」
「私同様、あなたがたも御機嫌よろしいように。」
「お前さんが番をしている羊は誰のものかね? そして、むこうに見える城は誰の城だろう?」

以前紹介した『ケルトの神話・伝説』の「キルフフとオルウェンの物語」を、ブルフィンチ著、野上弥生子訳の「中世騎士物語」バージョンであらためて。
ブルフィンチは、「ギリシア神話と英雄伝説」のお話をなんどかしています。

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2014年02月27日

●羊型鼻煙壷

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ガラス青被せ 羊型鼻煙壷
清時代末・19?20世紀
高さ3.5センチ、幅7.3センチ

鼻煙壷は嗅ぎタバコを入れるための小さな壺です。
アメリカ大陸原産のタバコが、16世紀半ばごろにヨーロッパへ伝えられ、17世紀後半ごろにはヨーロッパから中国に嗅ぎタバコの習慣が伝えられました。
(略)
乾隆帝のころから、宮廷では工芸の技法を駆使して、様々な鼻煙壷が製作されました。
鼻煙壷は単なる実用品としての容器ではなく、細密な細工が施された工芸品であり、また高価な素材を用いたステイタス的な愛玩品でもありました。

 「中国工芸の精華─鼻煙壷 沖正一郎コレクション」 

清代の鼻煙壷です。大阪市立東洋陶磁美術館蔵。

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2014年02月23日

●「民族と色の文化史」

赤色には家畜を守る役割もあります。
ネゲブ砂漠のベドウィンの習慣では、群れのなかの乳を出す雌羊は女性が所有することになっています。
女性たちはこれらの雌羊の毛を赤く染めて目立つようにします。
こうすれば自分の家畜を見分けることができ、また、悪霊たちに、家畜は怪我をしているか死んでしまっているのだと思い込ませて、群れから引き離すこともできるのです。

(略)

中近東では、油煙から得た黒インクに硫酸鉄を加えて改良していました。
顔料はきわめて細かい粉に砕かれ、インクにとろりとした質感をあたえました。
この、いわゆる「オリエント・インク」は、コーランを美しい書体で書けると重宝がられました。
マグレブ地方では、羊の尾の、とりわけ脂肪分の多い羊毛を燃やして煤のインクを作っていました。
羊毛の房を少量の塩といっしょに土製の皿にのせ、火にかけてあぶります。
こうして得た灰を、石を使って粉々にして水をかけ、ふたたび火にかけます。
できあがった塊は、冷めると硬く均一になるので、必要に応じて、小片を取って水に溶かします。
溶かす割合に応じて、黒や茶色のインクになるのです。

世界の色彩にまつわる文化を網羅した「色―世界の染料・顔料・画材 民族と色の文化史」から、羊関連の記事を。

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2014年02月20日

●ベックマン 「西洋事物起原」

シャルルマーニュは、冬に肩と胸を覆うような外套を着たが、外国の服を敵視して自国の毛皮だけを使い、ある写本の記事によると、カワウソの毛皮だけを用いた。
それなのに当時の宮廷では高価な東洋の毛皮が使われていたらしい。
というのも、シャルルマーニュは寒くて雨降りの日に従者と共に狩りに行くとき、羊の皮だけを着たが、従者のほうは、イタリアでヴェネチア人が商っていた高価な品物を知って、その外国製の布と毛皮でできた服を着ていたからである。
これらの外国製の毛皮は、十分に水を吸わせ、火で乾燥させると粉々になった。
シャルルマーニュは自分の羊の皮を乾かし、こすらせて廷臣に見せて、彼らの外国の毛皮の服を嘲笑った。

18世紀ドイツ、ヨハン・ベックマンによる技術史の古典『西洋事物起原』より、「毛皮の衣服」の章を。

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2014年02月18日

●「ウールの衣服」展

神戸ファッション美術館にて、ウールをテーマにした展覧会が開催されていると聞いて、泡を食って行ってまいりました。

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六甲アイランドのアイランドセンター駅前にある小さな美術館なのですが、中身は充実しています。古今東西の民族衣装が一堂に会する常設展示が、まず一見の価値有り。
こちらの「ウールの衣服」展では、いきなりオーストラリアメリノ羊の剥製が出迎えてくれました。びっくりしたびっくりした。

羊が人のくらしと歩みはじめて約一万年、人は豊かさを求めてウールを変化させてきました。
原毛、糸、布、民族衣装、ファッション、そしてアートへと、ウールの衣服は、身体を包むだけ でなく心を包むものにもなり、広がりを遂げてきました。
本展では、ウールの衣服の多様化、 魅力、可能性をご紹介しながら、豊かに生きるための衣服とはどのようなものか、私たちにとり 本当の豊かさとは何かを、皆様とともに考え見出してまいります。

2014年1月24日(金)?3月25日(火)
開館時間:10:00 - 18:00(入館は17:30まで)
休館日:水曜日

他にも、刈り取られたままのフリースが12種類、ずらりとエントランスに並んでいたり、糸紡ぎ体験会が開催されていたり。ひつじ天国です。時を忘れます。ぜひ。

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2014年02月12日

●プッサン 「羊飼いの礼拝」

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 「カンヴァス世界の大画家 14 プッサン」 

17世紀フランス、ニコラ・プッサンの「羊飼いの礼拝」です。
後景に、羊飼いへのお告げの場面が。ボスの「キリスト降誕」エル・グレコの「羊飼いの礼拝」と似たパターンですね。
プッサンは、これまでに「聖家族、四人」「ディアナとエンデュミオン」をご紹介しています。

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2014年02月10日

●「ニルスのふしぎな旅」

つぎの日、雄の羊はニルスを背中にのせ、小カール島を案内してまわりました。
島は、ひとつの大きな岩でできていました。まるで垂直に切り立った壁に、平らな屋根がのっている巨大な円柱形の家のようです。
羊はまずその屋根の上にあがり、そこがすばらしい牧草地であることをニルスに見せました。
ニルスも、この島はまるで羊のためにあるみたいだと思いました。島の上には、羊が好きなウシノケグサやさらさらの香草しかはえていないのです。

セルマ・ラーゲルレーヴの『ニルスのふしぎな旅』から、13章の「小カール島」を。
旅の途中、ゴットランド島沖の小カール島に住む羊の群れと知り合ったニルスたちは、彼らを襲う狐と闘うことになります。引用は、リーダー格の雄羊の背に乗って島を歩く場面。
「ニルスのふしぎな旅」については、ak様に教えていただきました。ありがとうございます。

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2014年02月08日

●「北槎聞略―大黒屋光太夫ロシア漂流記」

バランといふ。黒白斑(まだら)数種あり。毛ばかりとりて織物とし、肉を食料に充つ。
もつとも民用に利あるものなる故、家々に多く養ひおくなり。
らしやも羊の毛にて織る。羊毛を紡ぎ投梭(つきひ)にておる。
織たてたる時は常の木綿のごとくにて毛見えず、水をふき毛の剛き刷(はけ)にてすりたゝみおけば、毛起り出るとなり。

18世紀末、大黒屋光太夫のロシア見聞をもとにした地誌「北槎聞略」から、羊についての一文を。

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2014年01月25日

●鳥と羊の頭部のフィブラ

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パネンスキー・ティーネツ、ロウニ、ボヘミア、チェコ
ブロンズ、長さ10.2センチ、高さ2.6センチ、幅3.2センチ、重さ40.81グラム

おそらく紀元前4世紀第2四半世紀に北イタリアで制作され、ボヘミアにもたらされたと推定される。

 「古代ヨーロッパの至宝 ケルト美術展」カタログ 

紀元前4世紀のフィブラです。

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2014年01月22日

●カカオ豆に似たなにか。

チョコレートは、まずスペイン、それからイタリア、フランダース、そしてイギリスで飲まれるようになった。
最初はスペインの独占であった。1579年オランダの海賊船がスペイン船を捕らえたが、積んであったカカオ豆をみて、羊の糞といって、海に投げ捨てたことからも、その当時、カカオについての認識がなかったことがわかる。
しかし、17、8世紀にチョコレートの要求が高まるにつれて、フランスやオランダがその独占を崩しにかかった。

ウィキペディア内 チョコレートの歴史 及び ホット・チョコレート

季節柄というにはやや早い気もしますが、チョコレートのお話です。
ヨーロッパにおけるチョコレートの歴史は、16世紀のスペインによるメソアメリカ征服から始まりました。
薬効への期待やキリスト教聖職者たちによる愛用、王室間の結婚などによって広まっていきましたが、初期のころには、ずいぶんもったいないことが起きていたようです。なんてことを。

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2014年01月20日

●ポルトガル王宮の湯沸

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湯沸(一式)
フランソワ=トマ・ジェルマン(フランス) 1762年

ポルトガル王宮の豪華な食器セットには、形態に優れた華麗な銀製正餐用食器一式のほかに、18世紀のヨーロッパで流行したエキゾティックな飲み物(茶、コーヒー、ココア)を喫するための食器が含まれている。

 「ポルトガル―栄光の500年展」カタログ 

18世紀、ポルトガル王宮のために作られた湯沸です。スタンドの三脚部分が羊。

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2014年01月16日

●「子ヒツジかんさつノート」

スノーウィはまっ白で小さな子ヒツジだった。
おかあさんが病気にかかったせいで、予定よりはやく生まれてきたということだ。
「かわいそうに、スノーウィのおかあさんは死んでしまったんだ。だからいまは、ぼくたちの手で育ててるんだよ。ミルクは哺乳ビンを使って飲ませるんだ」
マンディは目をぎゅっとつぶっていのった。
スノーウィを見てしまったいま、ほかのどの動物よりも、この子の担当になりたい!

ルーシー・ダニエルズの児童文学「こちら動物のお医者さん」シリーズの一冊、「子ヒツジかんさつノート」です。
動物が大好きなマンディは、農園での校外学習で子ヒツジの世話をすることになるのですが……? 引用は、無邪気で愛らしい子ヒツジ「スノーウィ」との出会いの場面。
こちらの本は、ak様に教えていただきました。ありがとうございます。

ひつじnews at 20:49 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2014年01月14日

●シャルル=エミール・ジャック 「家畜小屋の羊と鶏」

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 「ミレーとバルビゾン派の世界」展カタログ 

シャルル=エミール・ジャックの「家畜小屋の羊と鶏」を。
ジャック、及びバルビゾン派はずいぶんご紹介しております。ジャックはこちら、バルビゾン派についてはこちらでぜひ。

ひつじnews at 19:47 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2014年01月09日

●トマス・ゲインズバラ 「犬と水差しと少女」

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18世紀イギリス、トマス・ゲインズバラの「犬と水差しと少女」です。
これまでにご紹介してるゲインズバラは、こちらで。

ひつじnews at 18:45 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2014年01月07日

●司馬遼太郎 「モンゴル紀行」

白い包のむれもあり、緑と茶の単調な色面のなかに、まれに胡麻をびっしり撒いたような色彩もみられる。かすかに動いているらしい。よくみると、羊群であった。
高原へは、なおのぼり傾斜なのかどうか。大地の起伏がはげしく、その一つ一つは山や谷といっていい。山は風を受ける斜面はあらあらしく赤茶けていて、一方、風の裏側の斜面は、いかにも人間をやわらかく許容する緑である。その緑の斜面へ羊群が面をなしてのぼってゆく。

(略)

「これは、何のにおいですか」
と、ツェベックマさんをふりかえった。彼女は馴れているせいか、私の質問をちょっと解しかねる表情をした。が、やがて、
「ゴビの匂いよ」
と、誇りに満ちた小さな声でいった。
人さし指ほどの丈のニラ系統の草が、足もとでごく地味な淡紫色の花をつけている。それがそのあたり一面の地を覆い、その茎と葉と花が、はるか地平線のかなたにまでひろがっているのである。
その花のにおいだった。空気が乾燥しているため花のにおいもつよいにちがいなく、要するに、一望何億という花が薫っているのである。
「羊の好物」
と、ツェベックマさんがいった。

司馬遼太郎の「モンゴル紀行」から、それぞれウランバートルとゴビ草原での一場面を。

ひつじnews at 22:46 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2014年01月05日

●ルーラント・ロッホマン 「旅人のいる山岳風景」

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銅版画家ヘンドリック・ランベルツゾーン・ロッホマンとマーリア・サーフェリーの息子。
おそらく大伯父のルーラント・サーフェリーに因んで命名されたのであろう。

 「17世紀オランダ風景画展」カタログ 

17世紀オランダ、ルーラント・ロッホマンの「旅人のいる山岳風景」を。
引用の解説にあるルーラント・サーフェリーについては、こちらでご紹介しています。

ひつじnews at 21:48 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2014年01月02日

●「ビーグル号航海記」

この牧場に滞在中、当地にいる牧羊犬を見聞したことが楽しかった。
遠乗りをすると、人家や牧童から何マイルも離れたところで、一、二匹の犬に護られた羊の大群をふつうに見かけるのだ。
ここまで堅固な信頼関係がどうやってできあがったのか、知りたくなることもしばしばだった。
犬の躾けかたは、まず子犬のうちに母親から離し、将来の仲間たちといっしょにするのが肝心である。
牝羊を一日に三、四回子犬にあてがって乳を吸わせ、羊小屋に羊毛の寝床をつくっておいてやる。
ほかの犬や家族の子どもたちとは絶対に遊ばせない。
さらに、子犬を去勢してしまうのが通常のやりかただ。
そうすると、育ったあとでほかの同類に関心をほとんど示さなくなる。
ここまで躾ければ、犬は羊の群れから離れようとしなくなる。
別の犬が主人である人間を護るのとまったく同じように、牧羊犬たちは羊を護る。
わたしが羊の群れに近づくと、犬がすぐ吠えはじめ、羊たちも最年長の一頭のまわりに集まるかのように犬のうしろにかたまる光景は、おもしろい見ものである。

あけましておめでとうございます。本年も、ひつじnewsをよろしくお願い申し上げます。

さて、ことし最初のひつじ話は、チャールズ・ダーウィンの「ビーグル号航海記」から。最近出たばかりの荒俣宏による新訳版より、「第8章 バンダ・オリエンタルとパタゴニア」の中の一場面を。

ダーウィン関連、といって良いのか微妙ですが、「世界を旅した女性たち―ヴィクトリア朝レディ・トラベラー物語」をご紹介したことがありますので、こちらもご参考にぜひ。

ひつじnews at 21:19 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年12月29日

●フランソワ・ブーシェ 「田園生活の魅力」

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18世紀フランス、フランソワ・ブーシェの「田園生活の魅力」です。ツヴァイクの「マリー・アントワネット」で描かれた、青いリボンをつけた羊のいる小トリアノン宮殿とは、こんな世界だったのでしょうか。
これまでにご紹介しているブーシェは、こちらで。

ひつじnews at 20:05 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年12月25日

●セガンティーニ 「羊のいる風景」

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「アルプスの画家 セガンティーニ ─光と山─」展カタログ

19世紀イタリア、ジョヴァンニ・セガンティーニの「羊のいる風景」を。羊の列によって強調される奥行きがみごとです。
これまでにご紹介しているセガンティーニは、こちらで。

ひつじnews at 18:02 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年12月22日

●サン・サヴァンの壁画より「ノアの箱舟」

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フランスはサン=サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会内部の壁画群から、ノアの箱舟を描いたものを。三階建の最下層におさまっている動物が、たぶん羊だと思うのですが。
ノア関連の記事については、こちらで。

ひつじnews at 17:34 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年12月17日

●小川芋銭 「石羊」

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 「小川芋銭展」カタログ 

「黄初平」をご紹介したことのある、小川芋銭の「石羊」です。こちらもやはり黄初平図ですね。
仙人黄初平のお話は時々しておりますので、こちらでぜひ。

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2013年12月12日

●ベネデット・カスティリオーネ 「アブラハムとメルキゼデクの出会い」

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濃厚な色彩と油彩の特性を生かしたこの作品は、1655年より少し後に描かれ、ジェノヴァで数多く収集されていたフランドルの絵から学んだ動物画家としてのカスティリオーネの才能と、無生物の描写に寄せる彼の関心を余すところなく伝えている。

17世紀イタリア、ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリオーネによる「アブラハムとメルキゼデクの出会い」です。創世記からとられたテーマは後景に退いており、手前の動物たちや道具類こそが画家の描きたかったものであるようです。

ひつじnews at 17:54 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年12月09日

●サン・ジョヴァンニ洗礼堂のコンクール〈追加)

カリマーラは当初大商人、ビジネスマンの組合だったが、経済の発展とともに、銀行家、絹織物業者、そして羊毛製造業者は別の組合を作ることになったので、15世紀には主に織物を扱う商人の組合となっていた。(略)
さて長い間の懸案であった、洗礼堂の第二のブロンズ扉の制作を決定したカリマーラ組合は、誰に制作を依頼すればよいか思案することになった。
フィレンツェにはブロンズ鋳造の伝統がなかったからである。

(略)

ギベルティが勝利した理由については、クラウトハイマーという学者の古典的研究がほぼ受け入れられている。
つまり、技術的にギベルティのほうが優れていたというのだ。
ブルネッレスキの浮彫は全体の重さが25.5キログラムだが、基盤の厚さは5ミリメートルしかない。
一方、ギベルティのそれは全体が18.5キログラムで、基盤の厚さは9ミリメートルある。
さらに、ブルネッレスキは四つの部分を合わせて一枚のパネルにしているが、ギベルティは全体を一つに作り、イサクの像だけを後から加える形をとっている。
つまりギベルティの作品は技術的にしっかりできており、全体の費用も40パーセント近く安い。

以前お話した、「古代以来最初の美術コンクール」(上記「フィレンツェの世紀」より)における、ブルネレスキとギベルティの「イサクの犠牲」その審査基準について、詳しい解説書を見かけましたので、あらためて。

ひつじnews at 21:33 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年12月02日

●ジャン=フランソワ・ミレー 「帰途につく羊飼い」

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 「ミレー展 人と自然へのあたたかなまなざし」カタログ 

ジャン=フランソワ・ミレーの「帰途につく羊飼い」です。
ミレーは数多くご紹介しておりますが、なかでも、「群れを連れ帰る羊飼い」「家路につく羊飼い」などが近い雰囲気を持っているように思います。

ひつじnews at 20:32 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年11月30日

●パウル・ブリル 「洗礼者ヨハネのいる風景」

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パウル・ブリル
1554(アントワープ)─1626(ローマ)

17世紀初頭の風景画の大家。オランダとイタリアとの間の重要な橋渡しをする。
(略)
マニエリストの巧みな資質に恵まれ、アンニーバレ・カラッチのしっかり構成された様式を熟知したことや、とりわけ1610年代にローマで出会ったエルスハイマーのおかげで自然の魅力に開眼したことが、彼を絵画的に心地よく釣り合いのとれた田園風景画の一様式へと導き、それが17世紀に彼に大きな成功をもたらした。
また光の表現における彼の感覚と繊細さはクロード・ロランの傑作に先駆けている。

パウル・ブリルの「洗礼者ヨハネのいる風景」を。
上の引用で影響関係が示唆されているカラッチについては「エジプトへの逃避」を、エルスハイマーは「洗礼者聖ヨハネ」及び「洗礼者ヨハネと天使たちのいる聖家族」をご紹介しています。クロード・ロランについては、まとめてこちらで。
また、洗礼者ヨハネを描いたものを数多くご紹介しておりますので、こちらでぜひ。

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2013年11月28日

●シャルル=エミール・ジャック 「池畔で羊の番をする牧童」

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 「ミレーとバルビゾン派の世界」展カタログ 

シャルル=エミール・ジャックの「池畔で羊の番をする牧童」です。水辺でこっちを見ている子羊がたまりません。
これまでにご紹介したジャックは、こちらで。

ひつじnews at 22:10 | Category : ひつじ話 | 関連書籍? | コメント [0]

2013年11月21日

●アルベルト・カイプ 「川の風景」

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17世紀オランダ、アルベルト・カイプの「川の風景」です。
これまでにご紹介しているカイプは、こちらで。

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2013年11月19日

●アレクサンドル・アンティーニャ 「羊飼いの女」

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産業革命が拍車をかけた社会の貧困に心を痛めたアンティーニャは、貧しくそして勤勉な大衆の姿を、忠実に断固たる姿勢で描いた。
(略)
1858年、ジョルジュ・サンドが特に好んだ、クルーズ県、ガルジレスに滞在する。
これは、画家が社会問題や田園地方に強い関心を抱いていたことと無関係ではない。

 「ブザンソン美術館展」カタログ 

19世紀フランス、ジャン=ピエール=アレクサンドル・アンティーニャの「羊飼いの女」です。ジョルジュ・サンドの「ジャンヌ」「魔の沼」のヒロインたちは、絵にすればこのような感じなのでしょうか。

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2013年11月17日

●装飾写本の中のフィリップ善良公

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都市の生活
『エノー年代記』より  ロワゼ・リーデット制作
1461年頃 ブラッセル、王立図書館 蔵

ブルゴーニュ侯の宮廷は元来、フランス中部の都市ディジョンに置かれていたのだが、候領の一部であったフランドルの商業経済の発展とともにブリュッセル(現ベルギー)へと移っていく。
全盛期のブルゴーニュ候国は商業立国としての性格を強く持つに至っていたのである。
それ故都市の活況を描写する絵画がフランス本国に先がけて発展した。
これがすなわち、後のフランドル風俗画の源流である。

15世紀フランドルの装飾写本です。中央に金羊毛騎士団勲章をつけたフィリップ善良公が。
善良公は、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの肖像画をご紹介しています。
金羊毛騎士団のお話はずいぶんしておりますので、こちらで。

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2013年11月14日

●「鏡の国のアリス」(続き)

編み物をする羊

このとき、かたわらでしわがれた笑い声が聞こえたので、白のクイーンがどうかしてしまったのかとふり返って見てみると、白のクイーンではなく、ヒツジ肉がイスにすわっているのでした。
「わたしはここよ!」テーブル用のふた付きのスープ入れからさけび声がして、アリスがふり向くと、白のクイーンの人のよさそうな大きな顔がちょうどそのスープ入れのはしからニヤニヤッと笑うのがちらりと見えて、スーとスープのなかへ消えてしまいました。

先日、長浜のフィギュアミュージアムに展示されているティーカップにつかった「編み物をする羊」をご紹介したのですが、このフィギュアについて、ak様から、上に引用した場面との関連についてご指摘をいただきました。……おお! そういえば、編み物ヒツジは白の女王が変化した姿でした。
なお、フィギュアの元絵であるジョン・テニエルの挿絵をまだご紹介しておりませんでしたので、改めまして、こちらも一緒に。

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2013年11月12日

●「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」 3月

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三月、畑の耕作と葡萄の樹の手入れ
『ベリー侯の豪華時祷書』より
ランブール兄弟制作 1411─16年頃
シャンティイ、コンデ美術館 蔵

ベリー侯の豪華時祷書中の三月のカレンダーである。
天球には太陽の馬車が見え、星々のなかには、双魚宮(ピスケス、魚座)と白羊宮(アリエス、雄羊座)のしるしが見える。
(略)
左上の牧草地では二人の羊飼いと牧羊犬とが羊の群にたっぷりと草を食べさせている。

二月七月をご紹介したことのある、ベリー公のいとも豪華なる時祷書の暦から、三月を。
時祷書のお話は時々しておりますので、こちらで。

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2013年11月08日

●グリム『ドイツ伝説集』より「大口マルガレーテ・マウルタッシュ」

チロル地方やケルンテン地方の人々は、マルガレーテ・マウルタッシュの幽霊の話をよく聞かせてくれる。
マルガレーテは遠い昔この国の領主だった。
たいそう大きな口をしていたので大口(マウルタッシュ)という綽名を頂戴していた。

(略)

オスターヴィッツの城からほど遠からぬところに一つの廃墟がある。
その傍らの草地で羊に草を食べさせていた羊飼で、ぼんやりしていて廃墟に近づいてしまい、鞭の一撃を食らった者は何人もいる。
そのためそこにはそれとわかる目印が立てられており、そこから先へは誰も羊を追って行くことはない。
羊の方も、何も知らない羊飼が目印を無視して追って行っても、そこに生えているよく茂った美味しそうな草を食べようとはしない。

先日の「人狼岩」につづいて、グリムの『ドイツ伝説集』から。14世紀のチロル女伯マルガレーテ・マウルタッシュにかかわる伝説です。

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2013年11月07日

●フランシスコ・コリャンテス 「町の見える風景」

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この画家の他の多くの風景と共に国王フェリーペ四世のために制作され、新築されたブエン・レティーロ離宮を飾ったものである。
(略)
また画面にはのどかで牧歌的な詩情が流れている。
それは、静穏かつ清澄な地誌的環境の描写を共通の特徴とする17世紀イタリア絵画の精神を何らかの形で継承した結果であろう。

 「16・17世紀スペイン絵画 エル・グレコ、ベラスケスの時代」展カタログ 

17世紀スペイン、フランシスコ・コリャンテスの「町の見える風景」です。

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2013年11月05日

●老女の小彫像

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ギリシャ、ヘレニズム時代後期、
紀元前1世紀 ブロンズ 高さ12.6センチ

かつてその手に持っていた物は現在失われているが、このひ弱そうな老女のポーズは、彼女が羊毛を紡いでいるところであることを示唆している。
(略)
さまざまな年齢や階級の人物をいろいろなポーズで表現することには、ヘレニズム時代(前323─30)に大きな関心が寄せられている。

古代ギリシャの彫像です。いっそ近代的と言いたいような現実味がありますね。

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2013年11月01日

●ジョルジュ・サンド 「魔の沼」

「ジェルマンさんにうちの娘を連れていってもらえれば」
「一体どこへ? フルシュにですかな?」
「いいえ。フルシュじゃなく、レ・ゾルモまでですよ。そちらに今年いっぱいいることになったものだから」
「なんとまあ!」とモーリスのおかみさんが言った。「娘さんを手離しなさるとでも?」
「奉公に出て、いくらかでも稼いでもらわなきゃなりません。
(略)
レ・ゾルモの農家で羊飼いのいい働き口が見つかりましてね。先日、その農家の主人が市の帰りにここを通りなさって、村の共同牧場で三匹の羊の番をしている娘のマリを見かけて、『娘さん、ずいぶんと暇そうだね。一人の羊飼いに羊が三匹とはね。ところで百匹の羊の番をする気はないかね? あんたを連れて行ってあげよう。なに、うちで働いていた羊飼いの娘っこが病気になって、親もとへ帰ることになったのさ。一週間以内にうちに来てくれるならば、来年のサン=ジャンの祝日までということで、五十フラン払うとしよう』と言ったそうですよ。」

「ジャンヌ」「フランス田園伝説集」をご紹介しているジョルジュ・サンドの小説をもうひとつ。若くして妻を亡くした農夫ジェルマンと、純真無垢な羊飼いの娘マリの純愛を描く「魔の沼」です。引用は、物語冒頭、二人が連れ立って短い旅をすることになる場面。

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2013年10月29日

●グリム『ドイツ伝説集』より「人狼岩」

遠い遠い昔のこと、以前はハッケル山とハールツ山地とつながっていたブランツレーベンの森の縁に、どこから来たのかも何者なのかも分らない一人の男が住みついていた。
爺さんという名で皆に知られ、別に騒がれもせずよく村々にやって来ては助力を申し出、引き受けた仕事は人々の満足いくようにやってのけた。
仕事は特に羊の番をすることが多かった。

さてナインドルフの羊飼いメレのところの羊の群れで、一匹の可愛らしいまだらの子羊が生れた。
するとこの誰なのか分らない男は、羊飼いメレにその子羊をくれるようにしつこく頼んだ。
メレは子羊を手放すつもりはなかった。
だが羊刈りの日メレは爺さんが必要になり力を貸してもらった。
帰ってきてみると、なるほどすべてがきちんとしており仕事もやってあったが、爺さんも子羊も見当たらなかった。

それからずいぶん長い間、爺さんがどうなったか誰にも分らなかったが、とうとうある時、カッテンの谷で羊に草を食わしているメレの前に突然姿を現し、嘲るように「今日はメレさんよ、あんたのまだらの子羊がよろしくとのことだぜ」と叫んだ。
激怒した羊飼いは牧杖をつかむと、仕返しをしてやろうと思った。
と突如、誰か分らぬこの男は姿を変え、人狼となりメレに飛びかかってきた。

グリム兄弟による『ドイツ伝説集』より、羊飼いが退治した人狼の墓標とされる大岩についての一章「人狼岩」を。
グリム兄弟は、グリム童話「子羊と小ざかな」をご紹介しています。

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2013年10月17日

●ドービニー 「オワーズ川岸に昇る月」

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ドービニーのオワーズ村への愛着は晩年さらに深まり、昼間の情景の他、夕暮れ、月明かりの情景を何点も描いた。
その手法と暗い緑、褐色の色調は、バルビゾン派、つまり17世紀オランダ風景画の伝統に基づく自然主義に野外での写生を導入した画家たちの、一般的傾向を反映している。

 「カルメン・コレクション展 風景画の輝き─印象派を中心に」カタログ 

バルビゾン派の巨匠、シャルル=フランソワ・ドービニーの「オワーズ川岸に昇る月」です。
これまでにご紹介しているドービニーは、こちらで。

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2013年10月14日

●ジョルジュ・サンド 「ジャンヌ」

マリは、ジャンヌの頑固さを深く悲しみはしたが、それでも感嘆せずにはいられなかった。
そして、心の中でジャンヌ・ダルクと比べていた。
洗練さとはほど遠い田舎の言葉に、羊飼いの杖を棄てて剣を手にする前の〈オルレアンの乙女〉の姿を見、その声を聞いたように思われた。
混じり合った優しさと毅然、天使のような穏やかさと抑えられた情熱がヴォークルールのヒロインの特徴だったにちがいない。
そしてブロッス侯の夢想好きの後裔は、美しき〈羊飼いの娘〉の魂が、力強さと栄光の苦しみにみちた輝きの中で再び姿を見せ変容を遂げるまで、ジャンヌの中に生きつづけ、地味で平和な暮らしのつらい仕事の疲れを癒すために休息していると想像していた。

「フランス田園伝説集」をご紹介したことのある、ジョルジュ・サンドの小説「ジャンヌ」です。
引用は、天使のように清らかで頑なな心と美貌を持つ羊飼いの娘ジャンヌに対して、深い友情で結ばれた令嬢が、彼女への心情を吐露する場面。

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2013年09月30日

●バロック真珠の雄羊

バロック真珠

バロック真珠のペンダント「雄羊」

1590年ごろ。2個のバロック真珠(いびつな真珠)で雄羊が表現されている。母貝はおそらくクロチョウガイ。37×65ミリ(ミキモト真珠島蔵)

大航海時代は大小さまざまな真珠が知られるようになったが、バロック真珠はバロック真珠で、ヨーロッパの金銀細工師たちの創造力を刺激した。
ゆがんだ真珠のユニークな形状をどのように使うかが、彼らの腕の見せどころだった。

ミキモト真珠島所蔵の、バロック真珠のペンダントです。

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2013年09月27日

●ヤン・ブリューゲル(父) 「ノアの方舟」

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 「ヴィクトリア&アルバート美術館展」カタログ 

16世紀末から17世紀初のフランドル、ヤン・ブリューゲル (父)による「ノアの方舟」です。
ヤン・ブリューゲルは、「花と果実の輪にかこまれた聖家族」をご紹介したきりですね。父にあたるピーテル・ブリューゲルのお話はずいぶんしているのですが。
なお、ノアの方舟をテーマにしたものについては、こちらで。

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2013年09月25日

●フランソワ・ブーシェ 「左に古代遺跡の見える、道端で休む農民のいる風景」

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 「カルメン・コレクション展 風景画の輝き─印象派を中心に」カタログ 

18世紀フランス、フランソワ・ブーシェの「左に古代遺跡の見える、道端で休む農民のいる風景」です。眠る女羊飼いと、彼女に花かごを贈る青年。
ブーシェはこれまでにずいぶんご紹介しておりますので、こちらで。

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2013年09月20日

●スルバラン 「荒野の洗礼者聖ヨハネ」

「荒野の洗礼者聖ヨハネ」

「16・17世紀スペイン絵画 エル・グレコ、ベラスケスの時代」展カタログ

17世紀スペイン、フランシスコ・デ・スルバランの「荒野の洗礼者聖ヨハネ」です。
スルバランは、これまでに「幼児洗者聖ヨハネのいる聖母子像」「神の仔羊」をご紹介しています。
洗礼者聖ヨハネに関するものについては、こちらでまとめてぜひ。

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2013年09月15日

●フラゴナール 「羊飼いたちの礼拝」

「羊飼いたちの礼拝」

「羊飼いたちの礼拝」(部分)

18世紀フランス、ロココ美術の巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールの数少ない宗教画、「羊飼いたちの礼拝」です。

これまでにご紹介しているフラゴナールは、こちらで。
羊飼いの礼拝をテーマとしたものとしては、クリスピン・ファン・デン・ブルックエル・グレコジャン=バティスト=マリー・ピエールロレンツォ・ロットヤコポ・バッサーノホアン・バウティスタ・マイーノジョルジュ・ド・ラ・トゥールムリーリョギルランダイオをご紹介しています。

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2013年09月13日

●トレイシー・シュヴァリエ 「貴婦人と一角獣」

ぼくはまた顔をしかめた。「千花文を描くときには、いつもお父さんを手伝うのさ。菜園を作っていて、植物のことならなんでもよく知っている。つかいみちもね。下絵にかかったら、アリエノールに相談しよう。さて、千花文のなかに、なにか動物を入れたいね」。
しゃべりながら、スケッチをした。「忠実を表す犬もいいかな。貴婦人が一角獣を捕らえようとしていることをしめす猟鳥も使えそうだ。貴婦人の足もとに子羊を添えて、イエスと聖母を連想させる手もある。もちろん兎を一、二羽入れておこう。前足を顔に添える兎は、ジョルジュの署名代わりなんだ」
素描をすませてから、絵とスケッチを並べて、見くらべてみた。「もう一息だな」とぼくは言った。

(略)

「だいぶよくなったな」。ぼくが描き終えると、ニコラが言った。驚いたような声だった。「でも、注文主の了承なしで、こんなに手直しをしてもいいのかい?」
「葉叢模様の一部だからね」。ぼくは応えた。「背景の植物と動物の図案は織師に委ねられている。ぼくらが手をつけられないのは、人物だけだ。」

先日お話した、現在大阪・国立国際美術館にて展示中の「貴婦人と一角獣」をモチーフとする、トレイシー・シュヴァリエの歴史小説です。
引用は、図案を描いた絵師と、それをタペストリーのサイズに引き伸ばす下絵描きの青年ふたりの会話。実際にも、こんなふうに作られたのでしょうか。

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2013年09月09日

●ドラクロワ 「ヤコブと天使の闘い」

「ヤコブと天使の闘い」

「ヤコブと天使の闘い」(部分)

右手にはヤコブが兄エサウのもとに贈り物として運ぶための家畜の群れと、それを追う人の姿が見えるが、その隊列は次第に遠ざかっていこうとしている。
その傍らで、神によって選ばれた人ヤコブの、人智を超えた存在との闘いはいつ果てることもなく続いていく。

19世紀フランス、ウジェーヌ・ドラクロワの晩年の傑作、「ヤコブと天使の闘い」です。
テーマは創世記から取られています。該当部分を下に。

ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだって使者をつかわした。
すなわちそれに命じて言った、「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』」。

(略)

彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。
すなわち彼らを導いて川を渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。
ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。
ところでその人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。
その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。

 旧約聖書創世記第三十二章 

なお、ヤコブの関わるお話はときどきしておりますので、こちらで。

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2013年09月06日

●貴婦人と一角獣展(大阪・国立国際美術館)

「味覚」

会期  2013年7月27日(土)─10月20日(日)
休館日 毎週月曜日(ただし9月16日(月)、9月23日(月)、10月14日(月)は開館。9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)は休館)
開館時間  午前10時─午後5時 金曜日は午後7時まで(入場は閉館の30分前まで)

大阪は国立国際美術館で開催中の、「貴婦人と一角獣展」を見てまいりました!
「貴婦人と一角獣」は、フランス国立クリュニー中世美術館所蔵の、六枚連作のタペストリーです。背景に多くの動物達が描きこまれており、六枚のうち四枚には子羊もひそんでいます。

子羊部分だけがあしらわれたグッズも販売されておりましたので、いそいそと買ってまいりました。マグネットと、ソーイングセットです。あとシールも。

「貴婦人と一角獣」展

ご縁があれば、子羊を探しに、ぜひ大阪に。子羊のほか、ウサギや犬たちもかわいいですよ。

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2013年09月04日

●キヤノン「EOS 70D」のTVCM

「REMOTE篇」

遠隔操作でシャッターが切れるEOS 70D

「これがイチガンREMOTE」

K&T様から、キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 70D」のTVCMにムフロンが出ているとのこと、お知らせいただきました。ありがとうございます。見つめ合ってますね、カメラとムフロン。
ムフロンのお話は、このあたりでしております。

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2013年09月02日

●アールベルト・カイプ 「馬を降りて休息する人と羊の群れとレーネンの眺め」

「レーネンの眺め」

「レーネンの眺め」(部分)

 「17世紀オランダ風景画展」カタログ 

17世紀オランダ、アルベルト・カイプの「馬を降りて休息する人と羊の群れとレーネンの眺め」です。
カイプは、「平原の眺め」をご紹介しています。

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2013年08月30日

●竜の口から帰還するイアソン

ドゥリスの杯

文学の方の伝承では、メディアは呪文を唱えながら竜に近づき、香りの高い魔薬をふりかけ、さらに呪文を唱えながら竜の頭に薬を塗ると竜が眠り、イアソンが金毛羊皮を手に入れた、と伝えている。
が、ヴァティカン美術館にある紀元前5世紀の陶画(ドゥリスの杯)には竜の口からでるイアソンの前にアテナが立っている場面が描かれている。文学と違った伝承があったに違いない。

先日、アポロドーロスの「ギリシア神話」でお話した金羊毛神話について、もう少し。
金羊毛を得るまでの英雄イアソンの冒険については、オウィディウスの「転身物語」でお話したことがあるのですが、まったく違うストーリーが別にあったのですね。

なお、イアソンを描いた美術や文学作品は、これまでにずいぶんご紹介しておりますので、こちらでぜひ。

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2013年08月26日

●サーフェリーとその工房 「動物のいる廃墟のある風景」

「動物のいる廃墟のある風景」

「動物のいる廃墟のある風景」(部分)

サーフェリーが、プラハ宮廷での10年に及ぶ滞在を終えてアムステルダムに戻ったとき、動物は彼の作品の中でますます重要性を増していた。
プラハでの彼は、皇帝の取り計らいで、たくさんの異国の動物を写生することができた。
彼に様々な動物を描写するよい口実を与えたのは、兄でもあり師でもあるヤーコプ・サーフェリーに倣って取り上げた聖書や神話の、「地上の楽園」や「オルフェウスと動物たち」といった主題である。

 「17世紀オランダ風景画展」カタログ 

先日に引き続いて、動物たちのいる風景画を。ルーラント・サーフェリーとその工房による、「動物のいる廃墟のある風景」です。
サーフェリーは、「楽園」「音楽で動物を魅了するオルフェウス」「廃墟に群れる家畜」をご紹介しています。

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2013年08月24日

●ドンデクーテル 「箱舟から下りた動物たち」

「箱舟から下りた動物たち」

美しい風景画と動物画の一体化─17世紀オランダの画家メルキオール・ドンデクーテルはこのジャンルにおけるサヴェリーの最良の後継者である。
主題であるべき箱舟ははるか遠方の丘に霞むように描かれ、画面の大半を下船した動物たちが埋めつくす。

「絵画のなかの動物たち」からもうひとつ、17世紀オランダ、ドンデクーテルの「箱舟から下りた動物たち」を。
上の引用で触れられているサヴェリーについては、「楽園」「音楽で動物を魅了するオルフェウス」などがご参考になるかと。
箱舟と動物たちを描いたものは、ヤコポ・バッサーノの「ノアの箱船に乗り込む動物たち」エドワード・ヒックス「ノアの箱舟」などをご紹介しています。

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2013年08月22日

●エドワード・ヒックス 「平和な王国」

「平和な王国」

「平和な王国」(部分)

「狼は子羊と共に宿り、豹は子山羊と共に伏す。子牛は若いライオンと共に育ち、小さい子供がそれらを導く。牛も馬も共に草を食み、その子らは共に伏し、ライオンも牛もひとしく干し草を食らう。乳飲み子は毒蛇の穴に戯れ、幼子はマムシの巣に手を入れる」(イザヤ書)。

(略)

彼はクエーカー教の説教師として知られた存在となったが、一方で1820年代から40年代の晩年にいたるまで、上記のイザヤ書にもとづく「平和な王国」を繰り返し描き続け、その多くは友人たちに贈られたものだった。

19世紀アメリカ、エドワード・ヒックスの「平和な王国」のうち、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー収蔵バージョンです。
ヒックスは、「コーネル農場」「ノアの箱舟」をご紹介しています。

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2013年08月20日

●ポンペイの羊飼い像

羊飼い像

大理石 1世紀中頃 スタビア 66.5×16.5センチ

えり巻きのように小型のヤギをかつぐ牧夫は、羊の毛皮をトゥニカとして着用している。
右手に生まれたばかりのヤギと思われる動物をぶらさげ、左腕には麦の穂や果物があふれだしているカゴをさげている。
写実的な表現と、なめらかな表面処理から紀元1世紀中ごろの作と考えられる。

「世界遺産ポンペイ展 ポンペイとポンペイに暮す人びと」カタログ

古代ローマの羊飼い像です。「善き羊飼い」のポーズですね。
このモチーフについてはずいぶんお話をしておりますので、こちらで。
また、ポンペイ関連の記事は、こちらでぜひ。

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2013年08月15日

●歌川国芳 「艶姿十六女仙 初平」

「艶姿十六女仙 初平」

「艶姿十六女仙 初平」(部分)

右上の「コマ絵」、つまり小さな枠の中の絵は、中国の仙人、黄初平
白い石を数万頭の羊に変えたというエピソードの持ち主である。
それとは縁もゆかりもない江戸時代の女性の姿を重ね合わせるという、浮世絵にはよくある趣向だが、黄初平の意のままになる羊と、わが道をゆく猫が対照的である。

ネコ好きで知られる浮世絵師歌川国芳の連作「艶姿十六女仙」のうち、「初平」です。
これまでにご紹介したことのある国芳関連の記事はこちらで、
また、黄初平関連はこちらで、ぜひ。

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2013年08月09日

●ダッドソン 「揺りかご(降誕)」

「揺りかご」

「揺りかご」(部分)

サラ・パクストン・ボール・ダッドソン (1847─1906)

サラ・パクストン・ボール・ダッドソンは、19世紀のアカデミーの形式に多く負っており、古典的な題材や聖書の題材を描いた。
フィラデルフィアに生まれ、同地で美術教育を受けたが、1873年以降は国外で活動する。パリで修行を続け、最終的には1891年にイギリスのブライトンに定住した。

名古屋ボストン美術館で開催中の「アートに生きた女たち」展にて、夢のように美しい降誕図を見かけましたので、ご報告です。キリスト降誕と明言されてるわけではないのですが、まぁおそらく。画面下部に、羊たち。

こちらの展覧会は、2013年9月29日(日)まで開かれているようです。お近くならば、ぜひ。

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2013年08月06日

●アポロドーロス「ギリシア神話」の金毛の羊

アタマースはデルポイに使者を送ってこの不作から遁れる方法を問うた。
イーノーは使者に、もしもプリクソスをゼウスに犠牲にすれば不作はやむであろうと神託があったと言うようにと説き伏せた。
これを聞いてアタマースは土地の住民に強制されてプリクソスを祭壇に連れて行ったが、ネペレーは娘とともに彼を奪って、ヘルメースから授かった金毛の羊を彼らに与え、彼らは羊の背にのって空中を飛んで地を横ぎり海を渡った。
シーゲイオンとケロネーソスとの間にある海の上に来た時に、ヘレーは深海に滑り落ちて、そこで溺れ死んだので、その海は彼女の名をとってヘレースポントスと呼ばれた。
しかしプリクソスはコルキス人の地に来た。
太陽神とペルセーイスの子アイエーテースが彼らの王であった。
彼はまたキルケーと、ミーノースが妻としたパーシパエーの兄弟である。
彼はプリクソスを客とし、娘の中の一人カルキオペーを与えた。
そしてプリクソスは金毛の羊を厄除けの神としてのゼウスに捧げ、その皮をアイエーテースに与えた。
アイエーテースは皮をアレースの杜の中にある樫の木に打ちつけた。

金羊毛騎士団勲章をつけた人々の肖像画をさんざんご紹介しているわりに、当の金毛の羊がどこから現れたのかについては、オウィディウスの「転身物語」で触れた程度になってしまっておりました。ので、アポロドーロスの「ギリシア神話」であらためて。

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2013年08月02日

●セガンティーニ 「十字架への接吻」

「十字架への接吻」

19世紀イタリア、ジョヴァンニ・セガンティーニの「十字架への接吻」です。
セガンティーニのお話はいくどかしておりますので、こちらで。

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2013年07月31日

●11世紀の聖遺物箱

聖遺物箱

聖遺物箱 11世紀中葉 イングランド

セイウチの牙に透かし細工が施されているこの箱の底には、中央の円に神の子羊、十字架の各端には4人の福音書記者を表す形象が刻まれている。
(略)
環で吊り下げられるこの外箱は、聖遺物、おそらくは聖十字架の破片を納める金製の小箱を収めるためにつくられたものと思われる。

11世紀の聖遺物箱です。セイウチの牙製といえば、クロイスターズの十字架をご紹介したことがありますね。
「神の子羊」モチーフについても何度かお話したことがありますので、こちらで。

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2013年07月29日

●ハンス・フォン・アーヘン 「神聖ローマ皇帝ルドルフ2世」

「ルドルフ2世」

「ルドルフ二世」(部分)

 「ウィーン美術史美術館名品展」カタログ 

先日、「楽園」をご紹介したルーラント・サーフェリーが仕えた神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の肖像を。胸元に、金羊毛騎士団勲章がさがっています。おなじくルドルフ2世につかえたハンス・フォン・アーヘンによるもの。この勲章を身につけた人々の肖像画は、これまでにずいぶんご紹介していますので、こちらで。

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2013年07月26日

●「天路歴程」

さて、この山の巓には羊飼が羊を養つてゐて、その人たちは公道の側に立つてゐた。
巡禮はそれで、その人たちのところへ行き、(疲れた巡禮が道のべの人に話をする時によくするやうに)杖に身を凭せかけて、尋ねた。
これは誰の歡樂山であるか、彼等に養はれてゐる羊は誰のものであるか、と。

羊飼  これらの山はイマヌエルの國で、お二人はその都の見えるところにゐられます。羊も亦その方のものです。これらのもののためにその命を棄てられたのです。
クリスチァン  これは天の都へ行く道ですか。
羊飼  ちやうどその道にゐられます。
クリスチァン  そこまでの道程はどれほどありますか。
羊飼  本當にそこへ行き着く人人以外の者にはとても達することが出來ません。

17世紀イギリス、ジョン・バニヤンの寓意物語「天路歴程」から。
天の都を目指す主人公が立ち寄る「歡樂山」での一場面です。

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2013年07月24日

●アンドレア・ディ・レオーネ 「カナンへ旅立つヤコブ」

「カナンへ旅立つヤコブ」

旧約聖書(創世記27章41─28章22)によると、イサクとその妻リベカにはエサウとヤコブという二人の息子があった。
(略)
ヤコブは母の計らいでメソポタミアの伯父ラバンのところに身を寄せ、長年仕えることになった。
やがて、ヤコブはラバンの娘レアとラケルの姉妹を妻に迎え、沢山の子をもうけ、伯父の財産をもとに次第に裕福となった。
しかし、ラバンの他の子供たちがこれを良く思わなかったため、神はヤコブに父の国カナンへ帰るように命じた。

 「ウィーン美術史美術館名品展」カタログ 

17世紀イタリア、アンドレア・ディ・レオーネの「カナンへ旅立つヤコブ」です。
ヤコブのお話は、これまでにいくどかしておりますので、こちらでぜひ。

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2013年07月22日

●ベニン王国の仮面

仮面

胸または腰につける仮面 16世紀 ベニン

雄羊の頸部をかたどった仮面で、襟飾りは組紐で質感をだしてある。
端のモチーフは種子のような形で、先端に輪がついている。
デザインの象徴体系にのっとって、こうした雄羊の頭はおそらく地位の象徴として用いられるか、あるいは宮廷での特定の役割か儀式を示していた。

16世紀、現在のナイジェリアにあったベニン王国の仮面です。

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2013年07月18日

●ルーラント・サーフェリー 「楽園」

「楽園」

「楽園」(部分)

「プラハ国立美術館所蔵ブリューゲルとネーデルラント風景画」展カタログ

先日のウィレム・ファン・ニューラント「カンパーニャ地方の羊飼い」で触れたルーラント・サーフェリーを。精密に描かれた多くの動物たちであふれかえる、「楽園」です。

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2013年07月16日

●ウィレム・ファン・ニューラント 「カンパーニャ地方の羊飼い」

「カンパーニャ地方の羊飼い」

「カンパーニャ地方の羊飼い」(部分)

ウィレム・ファン・ニューラント (1584年頃─1635年)

最初、風景画家ルーラント・サフェリーの兄ヤーコプのもとで修行を積んだ。
ヤーコプの死後、イタリアにおいてパウル・ブリルに学んだ。
数年後、南ネーデルラントへ戻り、1605年、アントウェルペンの画家組合に加わった。

「プラハ国立美術館所蔵ブリューゲルとネーデルラント風景画」展カタログ

17世紀ネーデルラント、ウィレム・ファン・ニューラントの「カンパーニャ地方の羊飼い」です。
同時代のルーラント・サーフェリーについては、「音楽で動物を魅了するオルフェウス」「廃墟に群れる家畜」をご紹介しておりますので、ご参考にぜひ。

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2013年07月13日

●オーネー=ド=サントンジュ、サン=ピエール教会浮彫

動物たち

羊の司祭

フランス西部の町、オーネー=ド=サントンジュに位置するサン=ピエール教会の小規模な南入口の上方で円弧をなす四重のアーキヴォルトの帯に目を向けるならば、外側の帯では、四足獣の脚、鳥の鈎爪、鳥獣の爪、人間らしき爪先、爬虫類のぬめぬめした腹など、多種多様な脚を持つ動物たちが、つかみあい、噛みあいながら、中央から東西に向けて奇妙な隊列を組んで行進している。

ロマネスク教会の扉口彫刻を。雄羊の司教と、本を手にした羊の助祭がむかいあっているようです。

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2013年07月01日

●「シェットランドのちいさなニット」

「シェットランドのちいさなニット」

ラーウィックの街から少し離れれば、島のそこここで放牧されて気ままに草を食んでいる羊たちにお目にかかります。
石のフェンスを乗り越えどこへでも行くので、ほとんど野生生活を送っているように見えるほどですが、そんなタフな彼らのアンダーコート(下毛)が、シェットランドヤーンの原毛になるのです。

季節外れにもほどがあるのは承知ながら、たいへん美しい編み物本を見かけたので、ご紹介です。
シェットランドの編み込みニットについて、その歴史や風景とともに丁寧な解説がなされています。秋になったら挑戦したいですね。

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2013年06月24日

●シャルル=エミール・ジャック 「丘の上の羊飼いの少女と羊の群れ」

「丘の上の羊飼いの少女と羊の群れ」
 「山寺後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展」カタログ 

これまでにも数多くご紹介している、シャルル=エミール・ジャックを。「丘の上の羊飼いの少女と羊の群れ」です。

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2013年06月21日

●セバスティアン・ブールドン 「犠牲をささげるノア」

「犠牲をささげるノア」

「犠牲をささげるノア」(部分)

愛知県美術館にて6月23日まで開催中の「プーシキン美術館展」を、ギリギリ駆け込みで見て参りました。

こちらは、17世紀フランス、セバスティアン・ブールドンの「犠牲をささげるノア」。同じテーマでは、シャガールの「ノアの犠牲」ラファエロミケランジェロの天井画をご紹介したことがあります。

こちらの展覧会では、この他、クロード・ロランの風景画などに羊がひそんでいるのを見られます。この後、横浜と神戸を巡回するようですので、ご縁があれば、ぜひ。

愛知県美術館  2013年4月26日(金)?6月23日(日)
横浜美術館  2013年7月6日(土)?9月16日(月・祝)
神戸市立博物館  2013年9月28日(土)?12月8日(日)

 
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2013年06月19日

●ハギスの作り方と、バーンズの「ハギスのために」

ハギスのために

正直なおまえの笑顔に幸いあれ!
腸詰一族の偉大な王よ、
おまえはその連中の上にどっかと腰をおろしている、
     胃袋や腸や内臓の上に。
おまえはおれの長い腕くらい
     長ったらしい食前の祈りにふさわしい立派な食べ物だ。

「哀れなメイリーのエレジー」をご紹介したロバート・バーンズの詩を、もうひとつ。
以前、少しだけお話した、スコットランドの名物料理ハギスに捧げる讃歌です。
作り方が丁寧に紹介されているガイドブックがありましたので、そちらの引用を、下に。

バーンズの誕生日の1月25日前後になると、スコットランド人はこの日を祝うが、そのとき大皿にのったハギスが、バグパイプの音に先導されてみなの待つ席につき、「ハギスに寄せる」の詩が朗々と暗誦されるのだ。

(略)

材料

1 羊の胃袋を一つ  2 乾燥オートミールを1ポンド(約450グラム)  3 羊の腎臓の堅い脂肪を1ポンド  4 子羊の肝臓(または子羊の赤身)1ポンド  5 ミート・ストック(または固形スープ)2分の1カップ  6 タマネギのざく切りを一個分  7 カイエン・ペッパー、ジャマイカン・ペッパー、ブラック・ペッパー、塩を各小さじに半分。

作り方

1 肝臓または赤身の肉をゆでる。  2 タマネギは半ゆでにしておく。  3 1と2を一緒にして細かく刻む。  4 オートミールを軽く煎り、他の材料も加えて3と混ぜる。  5 混ぜたものをすべて胃袋に詰めて押し込み、空気を抜く。  6 しっかりと詰め口を縫う。  7 胃袋の外から数か所をつついておくと、破れない。  8 煮立ったお湯の中にハギスを入れて、弱火にして四時間から五時間煮る。  9 ゆでたハギスは、12人分にちょうどいい分量になる。

…………どうしろと……。

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2013年06月17日

●ロバート・バーンズ 「哀れなメイリーのエレジー」

町の中、メイリーはどこでも詩人のそばに従い、
半マイルの遠方からでも、彼を見つけることができた。
彼を見つけると、彼女はやさしくメーと鳴き声をあげて、
     大急ぎで走ってきた。
詩人の近くには、これほど忠実な友人はいなかった、
     死んだメイリーほとには。

(略)

メイリーは、毛が固く絡み合い、尻のあたりが毛むくじゃらの
田舎育ちの羊の子孫ではなかった。
彼女の先祖は船で運ばれてきたのだから、
     トウィード川のずっと向こうから。
もっと美しい羊毛がハサミで刈られたことはなかった
     死んだメイリーのものよりも。

18世紀のスコットランド詩人、ロバート・バーンズの「哀れなメイリーのエレジー」から抜粋を。

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2013年06月15日

●ワーズワース 「序曲」

どちらからでも鶴首して待つ馬車は来るはず、
そのどちらかは不確かながら。わたしは
丘の頂上へと登った。その日は
風吹きすさぶ、荒れ模様の日で、草に座った
わたしは、むき出しの壁の蔭にかくまわれていた。
右手には一匹の羊がいて、
左手には風でヒュウヒュウと鳴る山査子、
羊や山査子の傍らでわたしは
視線を凝らして見つめた、折しも
靄が眼下の森と野原を
見え隠れさせていた。帰宅中のことだった、
あの物憂い季節のこと、家に帰って
十日になるかならないかのころ、父が逝った。

「マイケル」をご紹介したことのある、ウィリアム・ワーズワースの自伝的叙事詩「序曲」から。父親の死をめぐる少年期の思い出が語られます。

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2013年06月13日

●ジャン=フランソワ・ミレー 「羊飼いの少女、バルビゾンの平原」

「羊飼いの少女、バルビゾンの平原」
「奇跡のクラーク・コレクション─ルノワールとフランス絵画の傑作」展カタログ

兵庫県立美術館で始まった「奇跡のクラーク・コレクション」展に、ミレーの「羊飼いの少女、バルビゾンの平原」が来ています!

奇跡のクラーク・コレクション─ルノワールとフランス絵画の傑作

2013年6月8日(土)─9月1日(日)

休館日  月曜日(ただし、7月15日は開館し、翌16日は休館)
開館時間  午前10時?午後6時(金・土曜日は午後8時まで) 入場は閉館30分前まで

お近くならば、ぜひ。
なお、これまでにご紹介しているミレーは、こちらで。

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2013年06月10日

●「神使になった動物たち―神使像図鑑」

「神使になった動物たち」

全国各地の神社やお寺の境内には、ネズミ、ウシ、トラ・・・イノシシといった十二支の動物をはじめ、タコ、ナマズ、ネコといったものまで実に多種多様な動物(架空動物も含む)の像が置かれています。

これらの動物像は、神仏のお使いで、「神使」と呼ばれています。
氏子、檀家、信者、講中、神社などによって奉納されたものです。
(略)
この書では、神社や寺社の境内にある動物(神使)像を撮影・収録して、これらの動物が「なぜ神使とよばれるようになったのか」、その由縁などを付記しました。

以前、京都の野仏庵で羊の石彫を見ていらい、似たものが他にもあるはずだと思って気にしていたのですが、このたび、あつらえたような案内本を手に入れることがかないました。
さっそく「羊」の項目を見てみると、野仏庵はもちろん、東京都の玉川大師や五島美術館庭園、茨城県笠間市の大日堂、仙台市の柳町大日堂等々、はじめて知る石彫羊スポットが八カ所も!
たいへんなことになってしまいましたが、いずれ踏破してご報告できればと思っております。

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2013年06月07日

●フランチェスコ・ズッカレッリ 「田園の情景」

「田園の情景」

「田園の情景」(部分)

この作品は、貴族たちに好まれたロココ風の田園風景画の典型といえる作品である。
スケッチ風のタッチを残したデリケートな描法が、ズッカレッリの魅力の源泉だといえよう。

 「華麗なる18世紀イタリア ヴィネツィア絵画展」カタログ 

「アルカディア的風景」をご紹介している、18世紀イタリアのフランチェスコ・ズッカレッリによる「田園の情景」です。

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2013年06月05日

●ハインリヒ・ベル 「黒羊」

ぼくは、黒羊(グループの中の異分子、変わり者の意)の系統がぼくの代になって切れてしまうことがないように、選ばれたのに違いない。
誰かいなければいけない。そして、それがぼくなのだ。
誰も、以前にはぼくのことをそんな風に考えた者はいなかったろう。
しかし、だからといって、事実は変えようがない。それがぼくなのだ。
うちの家族の中の悧巧な人たちの説によれば、ぼくがオットー叔父さんから受けた影響がよくなかったのだという。
オットー叔父さんは、先代の黒羊で、ぼくの名付け親だ。
ともかく誰かいなければいけない。そして、それが叔父さんだったのだ。
もっとも、叔父さんが名付け親に選ばれたのは、叔父さんがだめになってしまうことがまだわからなかった時のことだ。
そして、このぼくも親戚の男の子の名付け親をつとめたことがあって、ぼくが黒羊だと思われるようになってからというもの、みんなは、びくびくしながら、この男の子をぼくから遠ざけている。

20世紀ドイツ、ハインリヒ・ベルの短編「黒羊」の冒頭部分です。
関連記事(似たニュアンスでこの言葉を使っている小説など)は、こちらで。

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2013年06月03日

●ホセ・デ・リベラ 「洗礼者ヨハネ」

「洗礼者ヨハネ」

はじめカラヴァッジオや、北ヨーロッパ出身でローマに滞在していたその弟子達から主として影響を受けた。そのことは強い明暗の使用からも明らかである。
そして後にはベラスケス(1630年に面識を得た)や16世紀ヴェネツィアの画家、とりわけティツィアーノの画風に近づいた。

 「ヴィクトリア&アルバート美術館展」カタログ 

17世紀、バロック期の画家ホセ・デ・リベーラによる「洗礼者ヨハネ」です。
これまでにご紹介しているカラヴァッジオはこちら、ベラスケスはこちら、ティツィアーノはこちらで。

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2013年06月01日

●ジョン・エヴァレット・ミレイ 「盲目の少女」

「盲目の少女」 「盲目の少女」(部分)

先日に続いて、ということでもありませんが、遠景にこっそり羊な絵を。
「両親の家のキリスト」をご紹介したことのある、ジョン・エヴァレット・ミレイの「盲目の少女」です。

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2013年05月30日

●ヒエロニムス・ボス 「キリスト降誕」

「キリスト降誕」 「キリスト降誕」(部分)

ヒエロニムス・ボスの「キリスト降誕」を。
後景に羊飼いへのお告げの場面が小さく描かれているようです。以前、エル・グレコ「羊飼いの礼拝」等でお話したパターンですね。
これまでにご紹介したボスについては、こちらで。

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2013年05月23日

●江戸中期の蒔絵硯箱

硯箱 硯箱(部分)

硯箱の蓋に方位を意匠し、真中に磁石を置くなど、それほどの意味をなすとは思えない。
おそらく趣味の所産だ。
このように動く磁石を意匠として使ったところが、江戸人おそらく十八世紀あたりの粋人の遊び心である。

蒔絵を中心として日本の工芸意匠を平易に解説する「日本の意匠」から、蓋に磁石を入れ、方位を示す十二支の動物を描いた硯箱についての一章を。

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2013年05月16日

●三星堆遺跡出土 尊

全国を巡回中の「中国 王朝の至宝」展で、三星堆遺跡出土の尊を見てまいりました!

尊

青銅  高41.6、肩経28.8  殷・前13─前11世紀
1986年、四川省広漢市三星堆遺跡2号祭祀坑出土
四川広漢三星堆博物館

尊は、中原地域に発達した祭祀儀礼用の酒器の一種で、三星堆遺跡からは8点が出土している。
(略)
ややいびつな器形やゆがみのある文様などには、この種の器物の制作にあまり熟達していない、地域的な作風をうかがうことができよう。

酒器の肩のあたりになんだかむっちりした羊頭がついています。
古代中国の青銅器のことは時々お話しているのですが、こちらも非常に魅力的です。

「中国 王朝の至宝」展は、現在、名古屋市博物館で開催中。2013年6月23日(日)まで。
その後は、九州国立博物館にて、7月9日(火)?9月16日(月・祝)までの開催が予定されているようです。

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2013年05月13日

●後藤祐乗 二疋羊図二所物

二疋羊図二所物 二疋羊図二所物(部分)

初代・祐乗

刀装具の様式美を確立し、それまで外装の「部品」でしかなかったそれらの地位を精緻な工芸品の域にまで高め、金工の一分野を開拓した名工として知られる。

(略)

二疋が連れ立った構図で、先行する羊が振り向いている。
その面相や姿態に古さが感じられる。
特に目貫は豊かな高肉で、鏨運びが力強い。

 「鏨の魔術?金工の名門・後藤家と刀装の美?」展カタログ 

室町中期の金工師、後藤祐乗二所物(目貫、笄)です。

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2013年05月11日

●エドウィン・ランシア 「老羊飼いの喪主」

「老羊飼いの喪主」

有名な《老羊飼いの喪主》(1837年)もスコットランド高地の風俗に取材した作品である。
老いた羊飼いが孤独のうちに亡くなる。
わずかな知り合いたちは、遺骸を棺に収め手短な儀式を挙げるが、すでに皆家に帰ってしまったので、いまや一番の親友だったシェパード以外に誰一人、後を見守る者もいない。

先日、「家畜市場での別れ」をご紹介したエドウィン・ランシアの代表作、「老羊飼いの喪主」を。画面に羊はいないのですが、まぁ。
引用の『ヴィクトリア朝万華鏡』では、ランシアについて、「女王陛下の動物画家」とのタイトルで一章がさかれています。

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2013年05月09日

●ミレー 「群れを連れ帰る羊飼い」

群れを連れ帰る羊飼い」
 「フランスの美しい風景」展カタログ 

名古屋市のヤマザキマザック美術館で、バルビゾン派メインの風景画展が開かれています。
ひつじ度高め。上の、ジャン=フランソワ・ミレー「群れを連れ帰る羊飼い」などが見られます。

フランスの美しい風景 ?ロココからバルビゾン派、印象派へ

2013年4月27日(土)から2013年7月15日(月)まで

開館時間:10時?17時(最終入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日(ただし祝日の場合は開館し翌日休館)、年末年始、展示替え期間

お近くならば、ぜひ。
バルビゾン派はこれまでずいぶんご紹介しておりますので、こちらで。

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2013年05月06日

●フェリクス=サチュルナン・ブリッソ・ド・ワルヴィル 「放牧」

「放牧」

 「ミレーとバルビゾン派の画家たち」展カタログ 

19世紀フランス、フェリクス=サチュルナン・ブリッソ・ド・ワルヴィルの「放牧」です。アミアン、ピカルディ美術館蔵。

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2013年05月04日

●ローザ・ボヌール 「ハイランドの羊飼い」

「ハイランドの羊飼い」

《ハイランドの羊飼い》は、格子縞の肩掛けとキルトのスカートを身につけたスコットランド高地人を表しており、頭にはタモ・シャンターという房つきのベレー帽を被り、長い角のある羊の群れを率いて高地を歩いている。

 「ターナーから印象派へ」展カタログ 

先日の、エドウィン・ランシア「家畜市場での別れ」に続いて、ハイランドの羊をもうひとつ。
19世紀フランス、マリー=ロザリー・ボヌール(通称ローザ・ボヌール)の水彩画、「ハイランドの羊飼い」です。

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2013年04月29日

●エドウィン・ランシア 「家畜市場での別れ」

「家畜市場での別れ」 「家畜市場での別れ」(部分)

この有名な絵画は、六世ベドフォード公爵が注文し、1835年のロイヤル・アカデミー展に出品された。
その絵の主題は、もうすでになくなった伝統的な習慣、冷蔵庫のない時代に消費者に新鮮な肉を届ける必要から、ハイランドの家畜や羊を南のイングランドの市場へと大挙追って移動させたという事実からきている。

「ヴィクトリア&アルバート美術館展 ヴィクトリア朝の栄光」カタログ

19世紀英国、エドウィン・ランシアの「家畜市場での別れ─グランピアン地方の一情景─」です。

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2013年04月26日

●ジャン=フェルディナン・シェノー 「母羊と子羊」

「母羊と子羊」

 「ミレーとバルビゾン派の画家たち」展カタログ 

バルビゾン派の羊画家、ジャン=フェルディナン・シェノー(シェニョーとも)の「母羊と子羊」です。

これまでにご紹介しているシェノーは、こちらで。

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2013年04月22日

●クリスピン・ファン・デン・ブルック 「羊飼いの礼拝」

「羊飼いの礼拝」

「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」展カタログ

16世紀フランドルのクリスピン・ファン・デン・ブルックによる、「羊飼いの礼拝」を。右端に立つ老羊飼いが、子羊を抱えています。

これまでにご紹介している、幼児キリストへの羊飼いの礼拝を描いたものは、このあたりで。

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2013年04月20日

●ローレンス・アルマ=タデマ 「神殿への道」

「神殿への道」

イギリス、ヴィクトリア朝のローレンス・アルマ=タデマによる、「神殿への道」です。
神殿の入口で小像を売る女性の足もとに、なんだか豪快な敷物が。

アルマ=タデマ関連としては、同時代人であるフレデリック・レイトンの「お手玉遊び」をご紹介したことがあります。

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2013年04月17日

●メソポタミアの象嵌装飾板

象嵌装飾板

前2600?前2350頃
マリ(テル・ハリーリー) シャマシュ神殿址出土
真珠貝、象牙、石灰岩、粘板岩
高さ:17.1センチ 幅:25.7センチ (復元)
ダマスカス博物館

ビチュメンで留めたラピスラズリや粘板岩を背景に、そのなかに真珠貝や象牙で作った人物・動物像などを象嵌した装飾板は、初期王朝期のメソポタミアの多くの遺跡から発見されている。
その用途は神殿の壁面を飾ったり楽器の共鳴板として用いられたりと様々だが、いずれも暗色の背景に白い像がシルエット風に浮かび上がる印象的な場面を創出している。

 「古代シリア文明展」カタログ 

古代メソポタミアの神殿で発見された、犠牲獣の奉献を描いた象嵌装飾板です。

同時代のものとしては、カウナケスをまとったエビフ・イルの像や、ウルの牡羊像ウルのスタンダードなどをご紹介しています。

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2013年04月07日

●クラナッハ 「ヨアキムへのお告げ」

「ヨアキムへのお告げ」

「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」展カタログ

16世紀ドイツ、ルーカス・クラナッハ(又はクラナハ、クラーナハ)による「ヨアキムへのお告げ」です。
聖母マリアの父ヨアキムを描いたものとしては、ジョットの「ヨアキムの夢」「羊飼いのもとに赴くヨアキム」、及びギルランダイオの「神殿から追い出されるヨアキム」をご紹介しています。

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2013年04月04日

●フラゴナール 「丘を下る羊の群れ」

「丘を下る羊の群れ」 「丘を下る羊の群れ」(部分)

18世紀フランス、ジャン・オノレ・フラゴナールの「丘を下る羊の群れ」です。国立西洋美術館蔵。

これまでにご紹介しているフラゴナールは、こちらで。

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2013年03月30日

●「NHKテレビ おとなの基礎英語 2013年4月号」

「おとなの基礎英語」表紙

人気番組の第2弾。昨年に続き、主人公の美佳が、ニュージーランドなど3か国を英語で旅します。

2013年4月1日から始まる「おとなの基礎英語」に、「ニュージーランドでファームステイをする」という設定のミニドラマがあるとのこと、SO様からお知らせいただきました。ありがとうございます。

本屋さんで買ってきたテキストをめくっていると、なんか、「How many sheep do you have?」ってタイトルの章まであるんですが……。これは、来月から「おとなの基礎英語」を見るしかない、ということでしょうか。

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2013年03月26日

●ジョゼフ・デュプレシ 「ルイ16世」

「ルイ16世」 「ルイ16世」(部分)

王国全体における敬愛の対象として、また外交上の贈り物として、こうした肖像画は君主の容貌を広く伝える目的をもっていた。
(略)
仰々しいこれらの勲章とポーズからうかがえる善良な人柄との対比こそが、この肖像画の成功の要因である。

 「華麗なる宮廷ヴェルサイユ展」カタログ 

18世紀フランスの肖像画家、ジョゼフ=シフレ・デュプレシによる、「ルイ16世」です。ボタンホールに金羊毛騎士団勲章が。
この勲章を下げた人々の肖像画は、これまにずいぶんご紹介しております。こちらでぜひ。

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2013年03月25日

●『鳥の物語』より、「鷹の話」

「あんたラバンとこ訪ねてきたかね。なに? ベエルシバから。遠いとこよくきたね」
「ラバンさん達者ですかね」
「はあ、達者だよ。おお、あすけ羊つれてくるなラバンとこの娘っ子だよ、ラケルちゅう」
むこうから好いたらしい娘が羊をつれてなにか小声に歌ってくる。日はまだ高い。彼らはこうして皆の羊の群が集るのを待ちあわせ井戸の口を塞いである石をのけて水かうことになっていた。彼女は見るから健康そうにびちびちとして、若さと愛くるしさが衣をとおして迸り出そうにみえる。ラケルはきた。そして旅人のいるのに気がついて歌をやめた。ヤコブはやおら井戸の口の石を転がして伯父ラバンの羊に水かった。

中勘助『鳥の物語』から、もう一話。
「トマス・マンも大作を書いた、『旧約聖書』の「ヨゼフとその兄弟」に取材した」(解説より)、「鷹の話」より、ヤコブのラケルの出会いの場面を。

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2013年03月23日

●中勘助 「鳥の物語」

「だが善い爺さんにゃちがいない。まだ一度も私らに弓をひいたことがない」
そんな噂をしながら見てるうちに羊の群の先に立ってとぼとぼと足を運んでた老人は急によろよろしたかと思うとばたりとうつ伏せに倒れてしまった。雁たちは思わず クワーッ と声をあげた。いつまでたっても起き上がらない。
「どうしたんだろう」
「いってみてやろうか」
「よしなさいよ。不意に立って射つけるなぞはよくある手だ」
と年寄の雁がいった。で、彼らは暫く躊躇してたがどうもおかしいので、なかで気の強いすばしっこいものだけがぱっと舞いあがっていって老人のうえに用心深く輪をかきながら様子を見た。本当らしい。そこでだんだん低く飛んでいよいよ息も絶えてることを確めてから老人のそば近く降り立った。羊の群はきょときょととしてそのへんをさまよっている。親切な雁たちは今は我身の危険も忘れてんでに老人の耳もとに嘴をさしつけて一所懸命呼び生けようとした。

中勘助の大人のための童話集『鳥の物語』から、第一話の「雁の話」を。
蘇武牧羊に材をとったお話が、天子のもとに蘇武の手紙を届けた雁の視点で語られます。
これまでの蘇武関連の記事は、こちらでぜひ。

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2013年03月20日

●趙孟頫 「二胡羊図」

「二胡羊図」

趙孟頫(ちょうもうふ)に「蘇李泣別図」という作品があったことが、十七世紀の『好古堂書画記』などにしるされている。
現在は亡佚しているが、記述によれば、蘇武の衣を羊がくわえている図で、気韻生動の名品であるという。
李陵は奮戦もむなしく匈奴に降り、匈奴に重用された漢の将軍である。
蘇武は匈奴に使して抑留されること十九年、降伏をすすめられたが、最後まで漢の節を守った人物である。
李陵はかつて抑留地のバイカル湖畔に羊を牧していた蘇武を訪ね、自分のように降伏することをすすめたが拒絶された。
そのときの別れのさまを描いた大作だが、ひょっとすると、二胡羊図はそれの副産物だったかもしれないという説がある。
近人の李鋳晋氏は「羊の誇らしげなようすは蘇武の精神を象徴し、山羊の卑屈さは李陵のそれである」と述べている。
だが、まるまると肥っている潤筆の羊が降伏した李陵で、下からにらみあげている渇筆のアンゴラ山羊のほうが蘇武であるかもしれない。
趙孟頫自身は元に仕えたのだから、いわば李陵的人物である。
その彼が幻の名作「蘇李泣別図」を描いたのは、みずからの苦衷を表現したのであろうか。

陳舜臣の「中国画人伝」より、元初の趙孟頫による「二胡羊図」の章を。
以前お話したことのある蘇武牧羊のエピソードと絡んだ解説が、たいへん興味深いです。

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2013年03月18日

●ルーベンス工房 「アッシジの聖フランチェスコ」

「アッシジの聖フランチェスコ」

本作品は、現在ダブリンのアイルランド国立美術館に所蔵される作品に基づいて、おそらくはルーベンス工房が制作した模写(レプリカ)であると考えられる。
ダブリンの作品は、同美術館に所蔵される《聖ドミニクス》と対を成していて、板に描かれ、様式的にルーベンスが工房の画家と1630年代中頃に制作した作である。

「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展カタログ

2013年4月21日(日)まで、東京渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されている「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展に、工房作の「アッシジの聖フランチェスコ」が展示されています。
他にも、「聖母子と聖エリザベツ、幼い洗礼者ヨハネ」等、羊のいる絵画が数点見られます。東京展のあとは、北九州市立美術館と新潟県立近代美術館に巡回予定の模様。お近くならば、ぜひ。

Bunkamura ザ・ミュージアム

2013年3月9日─4月21日 開催期間中無休
10:00─19:00 (入館は18:30まで) 毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)

北九州市立美術館

2013年4月28日─6月16日
9:30─17:30 (入館は17:00まで)
月曜日休館(但し月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌火曜が休館)

新潟県立近代美術館

2013年6月29日─8月11日

なお、これまでにご紹介しているルーベンスについては、こちらで。


ところで。
現在、東京ではもうひとつ、羊のいる美術作品の大物が見られる展覧会が開かれています。
上野の国立西洋美術館で、6月2日まで開催されるラファエロ展にて展示中の、ラファエロ「聖家族と仔羊」がそれ。カタログの解説を読んでいて知ったのですが、レオナルド・ダ・ヴィンチの「聖母子と聖アンナ」のもとになった素描を参考にしている可能性があるのだそうですね。
こちらも、ぜひぜひ。

国立西洋美術館 「ラファエロ」展

2013年3月2日─6月2日

午前9時30分?午後5時30分
毎週金曜日は午前9時30分?午後8時
入館は閉館の30分前まで

月曜日休館(ただし、4月29日、5月6日は開館。5月7日は休館)

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2013年03月14日

●中世ヨーロッパのモノクロの流行

灰色の流行についてはドゥヴィーズの世界にも証言がある。
『騎馬試合の書』を著したアンジュー公ルネは、黒と灰色と白の三色を自らのドゥヴィーズとし、1437年のシャルル七世のパリ入市に際し、この三色を着た従者をしたがえて行列に加わったことが伝えられている。

1449年に彼は南フランスのタラスコンで「羊飼い女の武芸試合」を開催しているが、参加した20人の騎士のうち12人までが、黒か灰色か白、あるいはこの三色をドゥヴィーズの色としたと伝えられている。
試合は羊飼いの娘とのたわいない恋を歌った抒情詩、パストゥーレルに取材されたというから、灰色への好みは牧歌的なものへの憧れが源泉のひとつとしてあったのだろう。

以前お話したフランチェスコ会修道士のウールの服に見られるように、中世ヨーロッパにおいて清貧を象徴する色でしかなかった灰色は、15世紀以降に流行色となりました。その理由のひとつとして、先日ご紹介した「羊飼い女の武芸試合」の様子などを根拠に、牧歌的世界への憧れが挙げられるようです。
ドゥヴィーズについては、同じく「色で読む中世ヨーロッパ」から以下に引用を。

14世紀から15世紀の王侯貴族は、いわゆる家紋とは別に個人的な、多分に遊戯的なドゥヴィーズdeviseと呼ばれる紋章をもっていた。
(略)
いくらでも変更できるものだったし、複数の文様を使い分けることも可能で、武芸試合などの祝祭に合わせてそれをつくり、そこに心情的なものを込めることもあった。

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2013年03月12日

●ポール・ユエ 「アルク・ラ・バタイユの城のある風景」

「アルク・ラ・バタイユの城のある風景」 「アルク・ラ・バタイユの城のある風景」(部分)

19世紀フランス、ロマン主義的風景画の代表的画家。
自然から受ける印象を、大気の様子や光と影のコントラストで表現することを探求して、バルビゾン派や印象派の先駆者的存在となった。

「近世ヨーロッパ絵画の軌跡」展カタログ

19世紀フランス、ポール・ユエの「アルク・ラ・バタイユの城のある風景」です。荒涼とした平原の手前に、風景にまぎれてしまいそうな羊の群れが。

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2013年03月08日

●トロワイヨン 「トックの谷」

「トックの谷」 「トックの谷」(部分)

1847年のトロワイヨンのオランダとベルギーへの旅行は彼の画業の転機となった。
オランダの17世紀の動物画家の例に倣うことで、彼は自然風景の中の家畜を描く画家のスペシャリストとなり、1860年までにはヨーロッパ随一の動物画家と見なされるに至った。

 「アイルランド国立美術館所蔵19─20世紀フランス近代絵画展」カタログ 

19世紀フランス、コンスタン・トロワイヨンの「トックの谷」です。
これまでにご紹介しているトロワイヨンは、こちらで。影響を受けたオランダの動物画家については、「小さな群れ」をご紹介したときに触れたことがありますので、ご参考にぜひ。

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2013年02月25日

●コロー 「納屋の内部」

「納屋の内部」

この納屋の内部は彼がめったに扱わない主題であったが、農民の生活を描いていながら、その静けさと安らかさは夢幻的でさえある。
実地のメモによると、晴れてはいるが冷え込む秋の日も、彼はこっそり座って、形態にあたっった光の効果を研究し続けることを許されていたようだ。

「アイルランド国立美術館所蔵19─20世紀フランス近代絵画展」カタログ

ジャン=バティスト・コロー、最晩年の作品である「納屋の内部」です。

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2013年02月22日

●ブルフィンチ『ギリシア神話と英雄伝説』より、「エロースとプシューケー」

翌朝、アプロディーテーがプシューケーを呼び出して、こう言った。
「あの川辺に広がる小さな森をご覧なさい。
あそこでは羊たちが羊飼いもいないのに草を食んでいるわ。
その体には山吹色に輝く毛がついているのがわかるでしょう。
お前はそこに行って一頭ずつ、毛を刈り取り、その高価な羊毛のサンプルを私に持ってきなさい」
プシューケーは素直に川岸に赴き、最善を尽くしてこの命令を実行しようと心掛けるのだった。
しかし、川の神が周辺に群生している葦に霊気を吹き込んで、リズミカルに囁くような声を発しており、その声はこんな風に言っているようであった。
「まあ、厳しい目にあっているお嬢さま、ここの危険な川を渡ったり、向う岸にいる恐ろしい牡羊の群れに入ってはいけません。
あの羊たちは昇る朝日の光を体に浴びていると、残忍なほど怒り狂って、その鋭い角や荒い歯で人間を殺します。
けれど、真昼の太陽が輝く頃は、木陰に追われて、おだやかな川の精が羊たちに休息を与えてくれます。

ブルフィンチのギリシア神話から。
美神アプロディーテーに憎まれた美女プシューケーは、女神からいくつかの試練を与えられます。引用はそのひとつ、凶暴な羊から毛を手に入れるというもので……?

ブルフィンチからの引用は二度ほどしておりますので、こちらでご参考にぜひ。

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2013年02月20日

●アッシリアの浮彫

アスタルトゥの制圧 アスタルトゥの制圧(部分)

紀元前730─727年頃
縦 190.0、 横 195.0、 厚 16.0

(略)

都市が陥落して、その住民たちが連行されていくところが描かれている。
棍棒を持ったアッシリアの兵士が四人の捕虜を追い立てており、捕虜たちは財産を入れた麻袋を肩にかついでいる。
(略)
画面上部では、別のアッシリア兵が尾の太い羊を追い立てている。

「大英博物館 アッシリア大文明展─芸術と帝国」カタログ

アッシリアニムルド遺跡出土の、宮殿の壁面を飾る浮彫です。

ひつじnews at 21:18 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月18日

●フランス・ブーテル 「キリストへの天使の贈物」

「キリストへの天使の贈物」 「キリストへの天使の贈物」(部分)

1634年にルーベンスの門に入り、同年アントワープの聖ルカ組合に親方として認められた。
当時権勢が強大であったルーベンスの影響とバン・ダイクの影響が、はっきりとこの作品にあらわれている。

 「黄金の17世紀フランドル絵画展」カタログ 

17世紀フランドルのフランス・ブーテルによる「キリストへの天使の贈物」です。
影響を与えたとされるルーベンスについては何度かお話しておりますので、こちらで。
他にフランドルの同時代人としては、ヨルダーンスの「聖アンナ、若い洗礼者ヨハネおよびその両親といる聖家族」などをご紹介しています。

ひつじnews at 16:36 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月15日

●ゲーテ 「ファウスト」

泉が湧き出で、集まって小川となり流れおちる。
山峡や山腹や草地はもう緑になっている。
断続する平野の幾多の丘のうえには、
羊が散らばって進むのが見えましょう。

(略)

静かな木陰には生温かい母乳が湧いて
子供や子羊の飲むのを待っているし、
平地の熟した食物である果実も手近にある。
また洞になった木の幹からは蜂蜜が滴る。

ゲーテ「ファウスト」第二部第三幕から。
ファウストが理想の美女ヘーレナを得て、楽園アルカディアにひとときを過ごす場面です。

ゲーテのお話は何度かしておりますので、こちらでぜひ。

ひつじnews at 21:14 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月13日

●ヴァントリーズ 「聖書の絵師」

「腐蹄病?」 彼女は持ってきた四半期の台帳を繰った。
「タールの支払いがありませんね」
荘園執事は体重をもう片方の足に移しかえた。「羊飼いの報告が遅くて、感染した羊の足を治療するためのタールを買う暇が─」
「あなたは荘園執事でしょう。責任は羊飼いのジョンではなく、あなたにあります。第一、感染が広がる前に治療できるだけのタールを、つねに備えておくべきでしたよ。何頭の羊が死んだんです?」
シンプソンはまた大きな体を動かし、左手をぴくぴくさせた。「八……十頭です」
キャスリンは背筋を伸ばした。 「どっちです、シンプソン? 八頭、それとも十頭?」
荘園執事は何度か左手を開いたり閉じたりして、つぶやいた。「十頭です」
二百五十ポンドの羊毛が失われた! あてにしていた二百五十ポンドが。

十四世紀イングランド、ワット・タイラーの乱前夜の重苦しい時代を舞台にした歴史ロマン、「聖書の絵師」から。小説の冒頭、ヒロインの女領主キャスリンと敵役の執事との、胃にこたえる会話です。

ひつじnews at 22:56 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月10日

●小川一水 「天冥の標 6 宿怨 PART3」

次にブレイドはメララの隣のヒツジに目をやった。
「それは一体? 家の中で粗相をされると困るんだが」
するとそのとき、メエ、メエエエ、と喉を慣らすように鳴いてから、ヒツジがひずんだ声で答えた。
「ブ─ブレイド・ヴァンディ、君たちがヒツジの落とし物を忌々しく思っていることは、ザリーカの時代からよく知ってる。ちゃんと砂箱で用を足すから心配はいらないよ。ひとまずぼくたちと手を結んでくれないか」

毎回、新刊を待ちかねて読む小川一水の大河SF「天冥の標」シリーズが、第六巻(分冊の巻があるので九冊目ですが)にしてついに中盤戦を終えたようです。
五百年に渡る宿怨、人類社会の危機、共存を求めてなおあがく人々。そしてヒツジ(いえほんとに)。

ひつじnews at 19:00 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月07日

●古代エジプトの木棺

木棺 木棺(部分)

テーベ出土の木棺  2世紀  大英博物館

古代エジプトの棺です。大きく描かれた天の女神ヌトの周囲に、黄道十二星座が。
黄道十二宮を描いたものは、これまでにずいぶんご紹介しておりますので、まとめてこちらで。

ひつじnews at 19:52 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月05日

●カレル・チャペック 「オランダ絵図」

「オランダ絵図」

オランダ、すなわち水。オランダ、すなわち花壇。オランダ、すなわち牧草地。

(略)

運河と運河間の緑の干拓地とその上の、白い羊たち、緑の牧草の天国にある巻毛の正しき魂たち。

カレル・チャペックの旅行記『オランダ絵図』から、「田園地帯 真のオランダ」の章を。

ひつじnews at 22:01 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月03日

●リーベラーリス 『メタモルフォーシス』より、「ヘーロポス」

エウグノートスの子エウメーロスはボイオーティアー地方のテーバイに住んでいた。
彼にはボトレースという名の息子がいた。
このエウメーロスはアポローン神を大いに崇拝していた。

ある時、彼がアポローンに犠牲を捧げていると、息子ボトレースがそばにやってきて、羊を祭壇に捧げる前に、その脳みそを食べてしまった。
このことを知ってエウメーロスは憤り、祭壇から松明を取り、息子の頭をこれで打ちたたいた。
子供は血を流して倒れ、身体は死に瀕して痙攣していた。

母親はこれを見て、父親エウメーロスや召し使い共々、大きな悲しみに打たれた。
アポローンは憐れんで、というのもエウメーロスがアポローンを崇拝していたからであったが、子供をハチクイドリに変えた。
この鳥は今もなお、地中に卵を産み、常にせわしなく飛びまわっているのである。

2?3世紀のローマにいたと思われるアントーニーヌス・リーベラーリスの変身物語集から、「ヘーロポス(ハチクイドリ)」の章を。
同じ変身物語集ながら、オウィディウスのほうはこれまでに何度かお話をしておりますので、まとめてこちらで。

ひつじnews at 21:15 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年02月01日

●『クルイロフ寓話集』より、「狼と子羊」

「それじゃ、名付け親か親戚の者、つまり、おまえの身内の誰かだ。
おまえたちも、番犬も、羊飼いも、みんなおれの不幸を望んでいる。
だから、折あらばおれに危害を加えようとしているのだ。
しかし、やつらの罪はおまえで埋め合わせてやる。」
「わたしが、どんな悪いことをしたのでしょうか?」
「だまれ! おれは聞きあきた。
おれにおまえの罪を調べているひまがあるか、青二才!
おれが食いたいという理由でおまえは罪があるんだ。」
そう言うと、暗い森の中へ子羊を引きずって行った。

19世紀ロシアのイヴァン・アンドレーヴィチ・クルィロフの寓話集から。
以前お話したことのある、イソップラ・フォンテーヌの同名の寓話が下敷きになっているようです。「強者の理屈はつねに通る」という教訓のためのお話なのですが、クルイロフ版は、またとくに怖いですね……。

ひつじnews at 22:10 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年01月30日

●ルネ・ダンジューの武術試合

ルネ・ダンジュー(1409─80年)は、学者、詩人、芸術家、建築家で、愛の作法の実践者であり、かつ武芸に秀でた勇者で、輝かしく影響力のある宮廷を主宰していた。
そしてかつて馬上武術試合の儀式について著されたもっとも細心な論文、『騎馬試合の形式と手順について』の著者であったばかりでなく、またいくつもの風変わりな武術演技の主人役を務めた。

(略)

さらにもっと驚くべきものが、1449年にタラスコンで催された「女羊飼いの武術試合」である。
ルネの宮廷における、ひなびたさまを理想化し称揚する文学趣味を反映して、このときはギャラリーが草葺きの四阿であった。
試合場の一端には、「かわいらしい羊飼いの少女」がおり、「小さい唐鍬」を持って木の下で「羊」の番をしていた。
そして木の上には、二人の挑戦者の持つ黒と白の楯が架けられていたが、これは陰鬱と歓喜を表している。
もちろん挑戦者は、「二人の牧人ふうの高貴なる騎士」にかしずかれた羊飼いよろしく盛装して到着した。

ヨーロッパの王侯貴族が作り上げた祝祭空間について語る「ルネサンスの祝祭」から、ルネ・ダンジューのユニークな武術試合を。

ひつじnews at 22:11 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年01月28日

●古代ギリシアのヘルメス像

ヘルメス

ヘルメスは古代ギリシア神話では牧人の神でもあった。左腕で雄羊をかかえている。

ボストン美術館蔵のヘルメスをかたどった彫像です。
ヘルメス関連では、これまでに、「ヘルメース讃歌」「善き羊飼い」モチーフの解説「転身物語」のアルグス殺害のエピソードなどをご紹介しています。

ひつじnews at 11:54 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年01月23日

●ブーテル 「遠方を見渡すインディアン」

「遠方を見渡すインディアン」

「遠方を見渡すインディアン」(部分)

ブーテルの描く誇り高いインディアンは、わずかに残る手つかずの自然の中に立ち、進行する白人による開拓を示す教会、柵で囲われた羊や牛のいる農場、航行する帆船のある風景を眺めている。

 「ドラマチック大陸 ─風景画でたどるアメリカ」展カタログ 

名古屋ボストン美術館で開催中の「ドラマチック大陸」展で展示されている、19世紀アメリカのデ・ウィット・クリントン・ブーテルによる「遠方を見渡すインディアン」が、見応えがあって素敵なので、ご紹介です。
左下に小さく羊の群れが描かれているのですが、こうした視点で見られる羊というものもあるのですね。それらを見下ろす孤高の男は、ブラックホーク酋長をイメージしたものとのこと。

展覧会の概要は、下に。

会期   2013年1月12日(土)?5月6日(月・祝)

開館時間   火?金曜日 10:00?19:00
         土・日・祝休日 10:00?17:00
         最終入館 閉館の30分前まで

休館日   月曜日(祝祭日、振替休日の場合は、その翌日)

ひつじnews at 17:15 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年01月22日

●「ギリシア・ローマ抒情詩選」

夕星(ゆうずつ)は、
かがやく朝が(八方に)散らしたものを
みな(もとへ)連れかへす。

羊をかへし、
山羊をかへし、
幼な子をまた 母の手に
連れかへす。

呉茂一訳の『ギリシア・ローマ抒情詩選』の「さっぽお」の章から。

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2013年01月17日

●オー・ヘンリー 「千ドル」

「ブライソン老人。君も説教さえしようとしなければ」とジリアンはほとんど眉ひとつ動かさないで言った、
「みんなから好かれるかもしれないがね。ぼくは君に教えてくれと頼んだんだよ。千ドルでぼくになにができるかと」
「君が?」とブライソンは穏やかに微笑して言った。
「それなら、ボビー・ジリアン、論理的に考えて君にできることはひとつしかないね。これからすぐその金でミス・ロッタ・ローリアにダイヤモンドのペンダントを買ってやって、君自身はアイダホ州に行って、牧場の厄介者になることだよ。それも羊の牧場がいいだろうな。ぼくは羊がとくに嫌いだからね」

(略)

ジリアンは千ドルの使途について報告書をつぎのように書いた。

厄介者(ブラックシープ)のロバート・ジリアンは、天に代って永遠の幸福のため、この世でもっとも善良でもっとも親愛な女性に千ドルを支払った。

オー・ヘンリーの短編、「千ドル」です。
遊び人のジリアン青年は、富豪の叔父の遺言で、弁護士へ使途を報告することを条件に、千ドルという多くも少なくもない微妙な金を受け取ります。そこには叔父の深謀遠慮がひそんでいたのですが、青年はそれに気づかないまま、結果的に不遇な女性を助けることになるのでした。
引用は、物語の冒頭で青年が友人に相談をする場面と、彼が出した結論。対応してますよね、これ。

ひつじnews at 22:03 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2013年01月15日

●アイスキュロス 「アガメムノーン」

男をたおす剣を研ぎながら、祈りの言葉で刃を研いでいる、
わたしをここに連れてきた、その償いを死と血で払わせる、と。

それなのに、わたしを嘲りわらう、これや、これを、なぜこの身に
つけている 予言者の杖も、羊の毛の首飾りも?

おまえなど、わたしの寿命のつきるまえに、ほろぼしてやろう。
みな砕け散ってしまえ。地面に落ちたらもういちど、こうして、仕返しをして
くれよう。

わたしのかわりに、べつの女に破滅の花を咲かせておやり。
ご覧なさい、アポローンご自身の手が、わたしの身から
巫女の衣装をはぎとって、そして、このような飾りをつけていても、
さんざん嘲い者になっていた、わたしをご覧になられて

アイスキュロスのギリシア悲劇、「アガメムノーン」から。
トロイア戦争から凱旋した王アガメムノーンは、その妻による暗殺という運命に迎えられます。
引用は、王とともに殺される自らの運命をも見てしまった、アポローンの予言者にしてアガメムノーンの戦利品、トロイア王女カッサンドラーの嘆きの場面。アポローンの巫女の印として、羊の毛の首飾りをつけているようです。
アポローンの印が羊の毛というのは、「イリアス」冒頭にもでてきます。どんな形のものなのでしょうね?

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2013年01月13日

●ウィリアム・ホガース 「残酷の四段階」

「残酷の四段階」

18世紀イギリス、ウィリアム・ホガースによる連作『残酷の四段階』の「第二段階」を。馬や牛、ロバ、羊などが虐待を受けている様子が、これでもかと描かれています。

ホガースの作品は、「誤った遠近法」をご紹介しています。

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2013年01月11日

●『イディッシュの民話』より、「羊とバスケットと杖」

彼らは彼に羊を一頭与えると、言った。
「この雄羊に『わたしに仕えろ』と命令すれば、おまえのほしいものは何でも手に入る。」
男は羊を家に持ち帰ると、子供たちに言った。
「さあ、みんな食卓につくのだ。」
子供たちが坐ると、男は羊に命令した。
「われわれに食事を用意せよ。」
すると、彼らの食べたいものが食卓に並び、みな腹いっぱいに食べた。

ビアトリス・S・ヴァインライヒ編による、『イディッシュの民話』から「羊とバスケットと杖」を。
子沢山の貧しい男は、森の男たちから魔法の品々(というか羊)を与えられますが、悪い兄弟にうばわれてしまいます。どうやって取り返したかというと……?

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2013年01月09日

●アルチャーティ 「エンブレム集」

「正しい復讐」

キュクロプスはアーチ状の洞窟の入口に座り、
従順な羊たちの間で自分に対して歌った。
おまえたちは草を食べ、俺はギリシア人の仲間たちを喰らう。
そして最後に、俺の腹は「誰でもない」を運ぶだろう。
イタカの者はこれを聞いて、キュクロプスの光を奪った。
見よ、この張本人が自ら罰を受けるのを。


一般的に言えば、エンブレムとはモットー・図像(狭義のエンブレム)・エピグラムという三つ組から構成され、主として道徳的な訓戒を総合的に表現する、特異な文学─美術的ジャンルである。
そして、アルチャーティの『エンブレム集』が、このジャンルの範例として長く尊重されてきた。

16世紀イタリア、アンドレア・アルチャーティによるエンブレム・ブックから、「正しい復讐」を。
「エンブレム集」には1531年アウクスブルク版と1534年パリ版があり、二種の図像はそれぞれの版のものとのこと。
エピグラムにあるイタカの者云々というのは、オデュッセウスキュクロプスとの闘争のことでしょうか。

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2013年01月07日

●ピサロ 「羊飼いと羊の群れ」

「「羊飼いと羊の群れ」

これらは主題的にはミレーの有名な《羊飼いの少女》その他を連想させるが、ピサロに言わせればミレーはあまりにもセンチメンタルであり、ロマンティックであり過ぎた。
ピサロはこの種の主題を描くに際し、ミレーと比較され、その影響を云々されるのを嫌い、あらかじめこれを回避するかのように、ミレーとは明らかに異なる、“甘さ”をおさえたアプローチを試みている。

「印象派の巨匠とピサロ家の画家たち ピサロ展」カタログ

19世紀フランス、カミーユ・ピサロの「羊飼いと羊の群れ」です。

引用文内で挙げられているミレーの「羊飼いの少女」というのは、こちらのことかと。

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2013年01月02日

●「十六羅漢図」より、羅怙羅尊者に花を捧げるなにか。

あけましておめでとうございます。今年もひつじnewsをよろしくお願い申し上げます。
年始めの記事は、「十六羅漢図」です。

十六羅漢図

ワシントンのフリアー・ギャラリー所蔵の十六羅漢図で画上に「平安城東山三聖護国寺常住」と墨書する作品がある。

(略)

第十一羅怙羅尊者は右手に数珠を持つだけの素朴な形であるが、口に花を銜え、供花する山羊か羊かと見える動物は、横向きながら、角が三本見える。
『山海経』「西次三経」に土螻なる動物を録している。

土螻というのは、以前お話したことのある多角の羊のようななにかです。

東京国立博物館の所蔵品(滋賀県大津市の聖衆来迎寺旧蔵)にも、よく似たものがあります。類例がありそうですね。

e国宝 内 囉怙羅尊者

羅漢さんと羊の組み合わせは、以前、川越喜多院の五百羅漢をご紹介しています。

あと、ひょっとするとなんですけれども、五年前に宿題にしたまま放置している、歌川国芳「武勇見立十二支 関羽 未」の疑問を解く手がかりになるような気がするんですが、どうでしょう。

ひつじnews at 16:07 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年12月28日

●「イリアス」の宴会シーンと、古代ギリシアの焼き串台

焼き串台

肉の焼き串台 (クレタ出土、ミノア時代)


アキレウスは大きな肉切台を炉の火のあかりのさす辺りに持ち出し、羊と肥えた山羊の背肉と、肥えて脂のよくのった豚の腰肉を置き、アウトメドンにそれを抑えさせて、自分でそれを大切りに切ってゆく。
さらにまた念入りに細かく切り、串に刺す。
神にも見まごうメノイティオスの子が、赤々と火を燃やし、燃え尽きて焔も弱まった頃を見はからい、おきを敷き並べてその上に串を置き、串の両端を串台に支えて、聖なる塩を振りかける。

食を通じて古代ギリシアの文化を語る「食べるギリシア人」より、「イリアス」の英雄たちの肉好きっぷりに関する一章から。
引用は、「イリアス」第九歌の、アガメムノンがアキレウスの陣屋へオデュッセウスらを使者としてさしむけ、アキレウスがそれを歓待する場面。参考写真の焼き串台がかわいらしいです。

これまでにご紹介している「イリアス」関連記事は、こちらで。

ひつじnews at 23:07 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年12月26日

●ジャン善王のムートン・ドール貨

ムートン・ドール

中世フランス、ジャン2世(1350─64)の頃に造られた、「ムートン・ドール(金の羊)」と呼ばれる金貨です。表の面に、過ぎ越しの子羊が。

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2012年12月24日

●「人間救済の鑑」の受胎告知とその予型

予型論

13世紀中葉の南ドイツ、あるいはオーストリアにおいて、旧約聖書と新約聖書の予型論的関係を図解する聖書が成立した。
予型論(Typology)とは、旧約聖書に登場する人物やそこで起こった出来事を、新約聖書で語られているキリストの行為を予表するものとして解釈する方法であり、それを豊富なイメージを添えて具体的に示したこの聖書は『貧者の聖書』(Biblia pauperum)として名高い。
ただし、この名称自体は、このような類型の聖書に対して後代の学者がつけたものである。

(略)

『貧者の聖書』からほどなくして(1300頃)、別のタイプの図版入りの書物が制作された。
これは『人間救済の鑑』(Speculum humanae salvationis)と呼ばれているもので、『貧者の聖書』と同様に、予型論に基づく書物であるが、ただし、旧約聖書からの予型は三つの場面に増やされており、それぞれの場面には詳しい説明が施されている。
図は1470年頃にオランダで刊行された木版本の一葉である。
『人間救済の鑑』は明らかに『貧者の聖書』の影響下に制作されているが、異なる箇所も見られる。

15世紀オランダ、聖母マリアへの受胎告知と、その予型である三つの場面を描いた木版画を。
左上が「受胎告知」。右上が「燃える柴」、左下が「ギデオンの羊毛」、右下が「リベカとアブラハムの従僕」を描いたもの。燃えつつも燃え尽きない柴や露の降りた羊毛が、聖霊によって身ごもった乙女に相当するようです。

ひつじnews at 20:57 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年12月21日

●エル・グレコ 「洗礼者聖ヨハネ」

「洗礼者聖ヨハネ」

大阪の国立国際美術館で開催中の「エル・グレコ」展が、今月24日で最終日を迎えようとしています。
大阪のあとは、1月から東京都美術館へ巡回する模様。
上の「洗礼者聖ヨハネ」など、エル・グレコをまとめて鑑賞できる貴重な機会です。ぜひぜひ。

大阪展

会期  2012 年10月16日(火)? 12月24日(月・休)
会場  国立国際美術館
開館時間  10:00?17:00(金曜は19:00) 入館は閉館30分前まで
        ※ 国立国際美術館(大阪・中之島)で、開催中の「エル・グレコ展」は、ご好評につき、会期末の3日間、12月22日(土)、23日(日)、24日(月・休)の開館時間を午後7時まで延長いたします(入館は閉館の30分前まで)。
休館日  月曜日(ただし12月24日(月・休)は開館)


東京展

会期  2013年1月19日(土)? 4月7日(日)
会場  東京都美術館 企画展示室
開室時間  9:30?17:30(金曜は20:00) 入室は閉室30分前まで
閉室日  月曜日(ただし2月11日は開室、12日は閉室)

展覧会では、以前ご紹介したことのある、コルプス・クリスティ学院の「羊飼いの礼拝」も展示されていました。眼福です。

ひつじnews at 14:45 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年12月19日

●ウジェーヌ・カリエール 「羊飼いと羊の群れ」

「羊飼いと羊の群れ」
 「田園讃歌 近代絵画に見る自然と人間」展カタログ 

19世紀後半のフランス、ウジェーヌ・カリエールの「羊飼いと羊の群れ」です。褐色を基調とする、静けさに満ちた世界。新潟市美術館蔵。

ひつじnews at 17:42 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年12月16日

●トルヴァルセン 「金羊毛をもつイアソン」

「金羊毛をもつイアソン」

1803?28年 大理石 高さ242センチ コペンハーゲン トルヴァルセン美術館

18世紀末から19世紀、デンマーク出身のベルテル・トルヴァルセンによる「金羊毛をもつイアソン」です。

これまでにご紹介しているイアソンを描いたものは、こちらで。
金羊毛の伝説については、こちらをご参考にぜひ。

ひつじnews at 20:08 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年12月14日

●リーメンシュナイダーの洗礼者ヨハネ像

リーメンシュナイダー

1490年頃、 ハスフルト、聖キリアン・コロナート・トートナン教区教会

15世紀末から16世紀初のドイツ、ティルマン・リーメンシュナイダーによる、洗礼者ヨハネの彫刻です。

これまでにお話している洗礼者ヨハネについては、こちらで。

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2012年12月11日

●林十江 「十二支図」

「十二支図」

動物画をよくした江戸後期の画家、林十江の「十二支図」から。

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2012年12月10日

●大英図書館蔵 「ド・ライル詩篇」

「ド・ライル詩篇」  「ド・ライル詩篇」(部分)

『ド・ライル詩篇』 キリストの生涯からの場面
イングランド、14世紀

中世イングランドの写本を。羊飼いへのお告げが描かれた場面があるようです。

この場面を描いたものは、これまでにもご紹介したことがありますので、こちらをご参考にぜひ。

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2012年12月08日

●トロワイヨン 「河辺の道」

「河辺の道」
 「田園讃歌 近代絵画に見る自然と人間」展カタログ 

バルビゾン派の巨匠、コンスタン・トロワイヨンの「河辺の道」です。千葉県立美術館蔵。

これまでにご紹介しているトロワイヨンは、こちらでぜひ。

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2012年12月07日

●フランソワ・ブーシェ 「泉のほとりの休息」

¥「泉のほとりの休息」 「泉のほとりの休息」(部分)

18世紀フランス、フランソワ・ブーシェの初期作品を。アルテ・ピナコテーク蔵です。

これまでにご紹介しているブーシェは、こちらで。

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2012年12月02日

●聖ザビエル天主堂

愛知県犬山市にある、博物館明治村に行って参りました。

明治時代は、我が国が門戸を世界に開いて 欧米の文物と制度を取り入れ、それを同化して近代日本の基盤を築いた時代で、飛鳥・奈良と並んで、我が国の文化史上極めて重要な位置を占めている。

明治建築も従って江戸時代から継承した 優れた木造建築の伝統と蓄積の上に、新たに欧米の様式・技術・材料を取り入れ、石造・煉瓦造の洋風建築を導入し、産業革命の進行に伴って 鉄・セメント・ガラスを用いる 近代建築の素地を築いた。

これらの建築のうち、芸術上、歴史上価値あるものも、震災・戦災などで多く失われ、ことに戦後の産業の 高度成長によって生じた、大小の公私開発事業により、少なからず姿を消していった。

(略)

明治村では解体されていく建造物の中から 価値あるものを選び順次移築復原を行った。

今回観てきたのは、かつて京都河原町に建っていた教会である、「聖ザビエル天主堂」です。

天主堂

公式HP内「聖ザビエル天主堂」

フランシスコ・ザビエルの宣教を記念して建てられたゴシック様式の建築物ですが、こちらの内陣に並ぶ九体の聖像のなかに、洗礼者ヨハネがいるのですよ。

とりあえず、中に。クリスマスシーズンのためか、大きなリースが下がっています。

天主堂内部

奥に進むと、むかって左奥に聖ヨハネが。足もとの子羊でそれとわかります。

洗礼者ヨハネ

ということで、足もとのアップも。

ヨハネ足もと

聖像も見ていて飽きませんが、そのほか、ステンドグラスなどが夢のようにみごとな建物です。お近くならば、ぜひ一度。

なお、洗礼者ヨハネのお話はずいぶんしておりますので、まとめてこちらで。

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2012年11月25日

●「バウドリーノ」

ピグミーにちがいないと思われる部族を一行は見た。
(略)
獲物は、長い棒に吊るされていたが、彼らはその棒を運ぶのに、両端にふたりずつ、四人がかりだった。
ピグミーのほうが鶴よりも背が低かったので、獲物は地面をこすることになった。
そのため、首のほうが棒にくくりつけられ、土ぼこりのうえには、鶴の足で長い線が引かれていた。

(略)

一行が最後に見たのは、背丈がヌビア兵の頭をはるかに超える巨人族だった。
彼らは巨人であり、また一つ目でもあった。
髪がぼさぼさで服装はだらしなく、ガヴァガイの言うところでは、岩の住居の建設か、あるいは、羊や牛の飼育にたずさわっていたが、この点にかんして巨人族の右に出る者はいなかった。
なぜなら、牡牛の角をつかんで引きずり倒すこともできたし、牡羊が群から離れれば、犬も必要とせず、片手を伸ばして羊の毛をつかみ、元の群に連れ戻したからである。

先日お話した「東方の驚異」関連で、もう少し。

ウンベルト・エーコの小説『バウドリーノ』です。
時は12世紀、稀代のホラ吹きを自称するバウドリーノが、実際に目の当たりにしてきたという驚異の数々を語る、虚実が激しくいりまじる一代記。
引用は、司祭ヨハネの国を目指すバウドリーノと友人たちが、異形の種族が行きかう市にたどり着く、「バウドリーノはプンダペッツィムに到着する」から。以前ご紹介したことのある小人族が、天敵の鶴を持ち込んでいるようです。

ひつじnews at 19:56 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月21日

●鹽竈神社、飾燈籠

もう少し、旅ばなしを続けさせていただきます。

さて、松島まで来たからには、鹽竈神社にお参りせねばなりません。
こちらでは、境内にある飾燈籠が、たいへん巨大かつ豪華で目を引きます。

飾燈籠

学生社の神社シリーズを引いてみますと、

文化四年(1807)九代藩主周宗(かねむね)公が、蝦夷地鎮定の凱旋記念に奉納されたもので、銅鉄合製の動物、花鳥をはめこみ、精巧をきわめていかにも文化文政的な時代趣向を反映したものであり、竿の部分に藩儒田辺匡敕が奉献の由来を漢文で刻している。

とのこと。

はめこまれた動物は、下の白澤のような瑞獣然としたものが多かったように思うのですが、

白澤

それらに何食わぬ顔で混じっているこれは、いったいなんなんでしょう。

ひつじ……?

このあたりのなにかと似てるようにも見えるのですが、見当もつきません。
背景にヤシのような植物が描かれているあたり、むしろもっと遠方との関連も想像できそうな気もしますし。
そもそもヒツジじゃないような気もしてきました。
お詳しいかたがおられましたら、ご教示願えると光栄です。

ひつじnews at 20:06 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月19日

●松島、五大堂蟇股十二支彫刻

良きもの、とくに遠方の良きものとの出会いはご縁に従うというのは、ひつじnewsの個人的な主義なのですが、
そして宮城県の松島などはその大きなひとつだったのですが、
先般の震災で、いずれ縁があれば行けると思っているうちに失われるものがあるのだという、いまさらな事実と向き合うことになりました。

というわけで、行って参りましたよ、遅ればせながら、宮城まで。

松島絶景

五大堂

松島は、震災の傷跡をそこここに残しながら、なおかつ美しいところでした。
主目的は、五大堂です。というか、十二支の動物を刻んだ、蟇股の彫刻を見たかったのですよ。
なんといっても、上の写真のような立地ですから、どうなっているものかと思ったのですが、

五大堂

だいじょうぶでした。ありがたいことです。ほんとうに。

十二支彫刻のうち、未です。

未

せっかくなので、他の動物も。

巳

卯

ご縁があれば、ぜひ。(……あれ?)

ひつじnews at 18:46 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月14日

●東方の驚異としての「司祭ヨハネの手紙」

それから別のところにある私どもの地方では、ただ胡椒のみ茂り、それは刈り取られると、小麦・糧食・毛皮・生地と交換されます。
さらにこの地方は、柳に類似した樹木が森を成し、いたるところに蛇がいます。
これらの蛇は大きく、二つの頭をもち、牡羊のような角、そしてランプのように光る眼をもっています。

胡椒が成熟するや、近隣地方のすべての民衆が、籾殻、藁、よく乾いた木を両手に携えてやって来て、それらを用いて、森全体をあらゆる方向からとり囲むのです。
そして風邪が激しく吹くときに、蛇が森の外に出てゆくことができないよう、森の内外に火を付けると、自分の洞窟に逃げ帰った蛇をのぞいて、蛇はことごとく、強く熱せられた火の中で死滅するのです。

「皇帝の閑暇」をご紹介している『西洋中世奇譚集成』シリーズからもう一冊、「東方の驚異」を。プレスター・ジョンの伝説として知られる「司祭ヨハネの手紙」が収録されているのですが、その中に昨日お話した「胡椒を守る蛇」が出てきます。

ひつじnews at 09:37 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月13日

●東方の驚異としての「胡椒を守る蛇」

胡椒を守る蛇

『東方の驚異』
1025年頃 ロンドン、大英図書館

蛇は「雄羊のような角をもち、コルシアスと呼ばれており」、胡椒の木を守っている。
「人が胡椒を集める時は、火を持って近づき、それによって蛇は地下にもぐり、胡椒は黒くなる」。

中世ヨーロッパの人々が未知の世界に対してふくらませた想像の数々については、これまでに植物羊「北方民族文化誌」などのお話をしているのですが、その類型である角のある蛇が描かれた写本の一部です。
なんとなくゴネストロップの大釜を思い出すのですが、どこかでつながっている可能性はあるのでしょうか。

ひつじnews at 20:18 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月12日

●皇女コンスタンティナの石棺

コンスタンティナの石棺 コンスタンティナの石棺(部分)

4世紀半ば 紫斑岩 160×235×157センチ
ヴァティカーノ美術館

この石棺は、ノメンターナ街道のサンタニェーゼ・フォリ・レ・ムーラ聖堂に付属するコンスタンティヌス帝の娘コンスタンティナ(354年没)の霊廟、サンタ・コンスタンツァ聖堂に置かれていたものである。

なんどかお話している、初期キリスト教美術関連でひとつ。
プットーがブドウの収穫をする画面の下端を、羊が歩いてます。

ひつじnews at 18:27 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月10日

●ルイ11世を助けたバルカンの羊たち

ブルガリアでは、チーズやヨーグルトは食生活に欠かせない食べ物であるだけでなく、古代トラキア人にかかわる重要な文化遺産の一部ともみなされている。
2006年に設立されたヨーグルト博物館では、「ルイ11世の機密文書より」というパネルのなかで興味深い歴史が紹介されている。
それによると、胃腸病にかかったルイ11世を助けるために、コンスタンチノープルの医師が羊の群れをパリまで連れていき、そのミルクを発酵させてフランス王に食べさせつづけた結果、病気が完治したという。
事実かどうかわからないが、バルカンの羊たちはルイ11世の命の恩人なのかもしれない。

国立民族学博物館の広報誌『月刊みんぱく』の連載、「生きもの博物誌」シリーズをもとにまとめられた『食べられる生きものたち』の一章、「フランス史に痕跡を残したバルカンの羊たち」から。おいしいのでしょうね、羊乳ヨーグルト。食べてみたいです。

ひつじnews at 19:50 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年11月02日

●クロード=ジョゼフ・ヴェルネ 「アルプスの女羊飼い」

「アルプスの女羊飼い」
「17世紀─19世紀・名作でつづるフランス絵画 トゥール美術館展」

18世紀フランスの風景画家、クロード=ジョゼフ・ヴェルネの「アルプスの女羊飼い」です。
ヴェルネはローマに長く滞在し、クロード・ロランなどから影響を受けています。
クロード・ロランはいくつかご紹介しておりますので、こちらで。

ひつじnews at 17:56 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月31日

●『皇帝の閑暇』より、「「貞潔羊」と呼ばれる樹」

「貞潔羊」と呼ばれる樹がございます。
もし眠り人の頭の下に、その枝を一本敷けば、眠っているあいだ中、幽霊の幻を夢見ることはないでありましょう。
ですから伝承によりますと、アブラハムが祭壇を建てたモリア山で、犠牲に供された獣たちの皮にくるまって眠っていたレベッカが、双生児が彼女の胎内でたがいにぶつかりあっていると主に相談したときに頭の下に敷いたのは、この樹の一本の枝であるということです。

12、3世紀のヨーロッパ、ティルベリのゲルウァシウスによって蒐集・編纂された驚異譚集、「皇帝の閑暇」から。
なにがどう貞潔で羊なのかわかりません。わかりませんが、なにかこう。

レベッカというのは、創世記に出てくるエサウとヤコブの母リベカのことですね。聖書の該当部分を下に。

主はその願いを聞かれ、妻リベカはみごもった。
ところがその子らが胎内で押し合ったので、リベカは言った、
「こんなことでは、わたしはどうなるでしょう」。
彼女は行って主に尋ねた。

 旧約聖書 創世記第二十五章 
ひつじnews at 18:37 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月23日

●ジャン=フェルディナン・シェノー 「羊の群れ」

「羊の群れ」

ジャン=フェルディナン・シェニョー
1830、ボルドー ─ 1906、バルビゾン

1858年、バルビゾン村に移居、フォンテーヌブローの森の風景を描く。
シャルル・ジャックに技法上の影響を受け、また主題も同様に、羊の群れを好んで描く。
1870年にはバルビゾン村に家を持ち、そのアトリエからは直接に羊の群れを見ることができた。

 「印象派とフランス近代絵画の系譜」カタログ 

19世紀フランス、ジャン=フェルディナン・シェノーの「羊の群れ」です。
シェノーは何度かご紹介しておりますので、こちらで。
また、影響を与えたシャルル=エミール・ジャックもご参考にこちらでぜひ。

ひつじnews at 16:16 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月21日

●シュメルの論争詩 「羊と麦」

シュメルの詩の一分野に「論争詩」と呼ばれるものがある。
『鳥と魚』「鷺と亀』『夏と冬』『羊と麦』などなど、題名を見るとまるでイソップ寓話の先祖が勢揃いしたかのようだ。
イソップの『北風と太陽』のようにシュメルの詩でも鳥や魚、夏や冬が擬人化され、各対決者がそれぞれ自分の利点をあげ連ね、相手の欠点をあげつらう。
たとえばドゥムジとエンキムドゥにも似た論争詩『羊と麦』のあらすじは次のようである。

(略)

エンキ神とエンリル神の計らいで、人類が神々の聖なる食卓のために創造された羊と麦の世話をすることになった。
あるとき、立派になった羊と麦姉妹は葡萄酒やビールを痛飲した挙げ句に口論をはじめた。
「羊というものは、肉も乳も毛も腸さえも有用なものだし、その皮は水の革袋やサンダルにもなるのよ」と羊が自慢すれば、麦も負けずに
「麦ならパンはもちろんのこと、ビール製造に欠かせないふすま(マッシュ)にもなり、そのうえ羊を飼育さえするのよ」と応酬する。

そこでエンキ神が調停に乗り出し「まあまあ、姉妹なんだから、そう突っかからずに。とはいえ、ここは麦の勝利ではなかろうか。なんとなれば、人類は金銀宝石や羊なしでも生きられるが、麦なしには生活できないのだから」とエンリル神にお伺いを立てた。

(略)

『羊と麦』では「麦の勝利」ということになっている。
イナンナ女神が夫として農夫を選ぼうとしたのも、そうした価値基準を踏まえているとも考えられる。

以前お話した、牧畜と農耕の対立を描くシュメル神話「ドゥムジ神とエンキムドゥ神」に関連して、「羊と麦」を。擬人化された「羊」と「麦」の論争によって、両者が比較されています。
シュメル文明のお話は時々しておりますので、こちらで。

ひつじnews at 17:21 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月16日

●「アンドロイドの夢の羊」

「残念だがそれほど単純な話ではないのだよ、長官」
ナーフ=ウィン=ゲタグは身を乗りだし、ブリーフケースからタブレット端末を取り出すと、それをヘファーのデスクに置いた。
「どんな羊でもいいわけではない。ある特定の品種、それもきわめて希有な品種の羊でなければならない。実をいうと、アウフ=ゲタグ氏族が権力の座についたときに特別に開発された品種なのだ─毛の色にきわだった特徴がある」
ヘファーは手をのばしてタブレット端末を受け取った。
エレクトリックブルーの毛におおわれた一頭の羊の写真が表示されていた。
「〈アンドロイドの夢〉と呼ばれる品種だ」

ジョン・スコルジーの小説です。あとがきに「フィリップ・K・ディックが墓のなかで嘆いていなければいいのだが。」とかありましたが、なんというか、バカSFです。でも、ディックへのオマージュとして読むことは充分可能。

トカゲ似のエイリアンとの外交交渉のために希少な羊を探すことになった、戦争の英雄にして凄腕ハッカーの主人公。見つかった羊の正体がまた、色々とこう。

ひつじnews at 22:54 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月10日

●ポラジンスカ 「白いひつじ」

そのひつじは、ほかのひつじたちと、どこかちがっていました。
まるで雪をふりかけたように、まっ白で美しいそのひつじは、いつも先頭にたって、むれをみちびいていました。
そしてヤーネクがふえをふきはじめると、どんなにとおくはなれていても、ヤーネクのそばへかけよって、じっとふえの音にききいるのでした。
ヤーネクも、その白いひつじがかわいくてたまりませんでした。
白いひつじがいるので、みなしごのくらしも、まえのようにつらくはありませんでした。

ヤニーナ・ポラジンスカ文、ミーハウ・ブィリーナ絵、内田莉莎子訳のポーランド民話集『千びきのうさぎと牧童』より、「白いひつじ」です。
やとわれ羊飼いのヤーネクと美しい白いひつじは、しあわせな日々を過ごしていました。しかしある日牧場主が、子羊を産まない役立たずの白いひつじを処分しようと言い出して……。

ひつじnews at 18:40 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月08日

●『中世の秋』より「牧歌ふうの生のイメージ」

田園詩(パストラル)は、一個の文学ジャンル以上のものであることを、その本来の意義とする。
素朴、自然の喜びに明け暮れる羊飼いの生活を、たんに描写するのみではない。
それを追体験しようとする志向がそこにはあった。
つまり、これは「模倣(イミタティオ)」なのだ。
羊飼いの生活にこそ、愛本然の姿がそのままに実現されている、これはひとつのフィクションであった。
ひとは、このフィクションにそって、羊飼いの世界に逃げこもうとした。

(略)

けれども、後期中世は、なお、極度に貴族主義的な時代であり、美の幻想に対しては、まったく無抵抗であったのだから、美しく飾ることをしない自然のままの生活を求める気持ちも、強力なリアリズムにまではついにいたらず、ただ、技巧をこらして宮廷風俗を飾るにとどまったのであった。
十五世紀の貴族は、たしかに羊飼い、羊飼いの女役を演じはした。
けれども、その演技の内容たるべき、真実、自然への尊敬、質朴と労働への讃嘆は、なお、きわめて微弱だったのである。

三世紀ののち、マリー・アントワネットは、ヴェルサイユ宮庭園内の小トリアノン館で、乳をしぼり、バターを作った。
すでにそのころには、重農主義者の本気の願いが、この理想にこめられていたのである。
自然と労働とは、この時代、眠れる大神たちであったのだ。
だが、なお、貴族主義的文化は、これを遊びと化してしまったのであった。

テオクリトスの時代から延々と続く、牧歌(田園詩、パストラル)の文化について、ホイジンガ『中世の秋』の一章、「牧歌ふうの生のイメージ」より。

牧歌的情景に関する記事は、ずいぶんご紹介しておりますので、まとめてこちらで。

この貴族主義的文化に対しては、すでに古代ローマにおいてホラティウス「農村讃歌」が皮肉な見方を示しているようです。
また、マリー・アントワネットの田園趣味については、ツヴァイクの評伝をご紹介しています。

『中世の秋』についても、少しだけお話したことがありますので、こちらを。

ひつじnews at 17:00 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年10月02日

●ロシア民話 「とりかえっこ」

百姓はとりかえて、牛の角をひっぱっていった。
すると羊の群れがいた。その牧童が百姓にこうたずねた。
「やあ、お百姓、どこへ行ってきたんだね」
「王さまのところさ、ゼリーをもってね」
「王さまから何をもらったんだい」
「金の山鳥だよ」
「その山鳥はどこにいるんだ」
「馬とかえたよ」
「その馬はどこだい」
「牛ととりかえたのさ」
「その牛と羊をとりかえっこしようじゃないか」
百姓が羊を追っていくと、豚の群れがいた。
牧童が百姓にこう言った。
「やあ、お百姓、どこへ行ってきたんだい」

先日の、「姉アリョーヌシカと弟イワーヌシカ」に続いて、アファナーシェフのロシア民話集からもうひとつ。

王さまにゼリーを献上して金の山鳥をもらったお百姓が、帰り道でとりかえっこを繰り返し、家に着いて女房に手ひどくぶたれるまでの一部始終。

ひつじnews at 17:29 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年09月30日

●トロワイヨン 「小さな群れ」

「小さな群れ」

1840年以降はフォンテーヌブローの森でバルビゾンの画家グループと頻繁に合流した。
そこでトロワイヨンはバルビゾンの農場で選んだ動物をモティーフに描くようになり、動物画というジャンルの直接的で総合的な写実主義に心を奪われるようになった。
1847年にオランダに旅行したことは重要な意味をもち、その際に17世紀オランダの画家の動物画、とりわけカイプとポッテルの作品に開眼したことで、トロワイヨンの動物への傾倒はさらに強まった。

「ルーヴル美術館展 19世紀フランス絵画─新古典主義からロマン主義へ」

19世紀フランス、コンスタン・トロワイヨンの「小さな群れ」を。

影響を受けたオランダの動物画家のうち、カイプについては「平原の眺め」を、ポッテルは「休息する家畜の群れ」「若い牡牛」をご紹介しています。
また、トロワイヨンがその主要な一人とされるバルビゾン派については、まとめてこちらで。

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2012年09月27日

●ハーバート・ドレイパー 「金の羊毛」

「金の羊毛」 「金の羊毛」(部分)

この絵は1904年のロイヤル・アカデミーに出品されたもので、「タイムズ」紙に「ひときわ高い人気を博した作品群」と書かれたものの1点である。
(略)
彼らはイアソンの仲間、アルゴー船の勇士たちと共に、ギリシアへ帰る旅に出た。
しかしながら、王は彼らを追いかけてきた。
そこでメディアは、自分の弟アブシュルトスを海に投げ込むよう指図した。
そこでアイエテスは彼を救わんとして仕方なく追跡をやめ、おかげでイアソンは逃げおおせたのだった。
ドレイパーが描いているのはこの場面である。

「バーン=ジョーンズと後期ラファエル前派展」カタログ

19世紀末?20世紀初頭イギリス、ハーバート・ジェイムズ・ドレイパーの「金の羊毛」です。

金羊毛の神話についてはこちら、関連記事はこちらで。
また、同時代のラファエル前派についてもいくらかご紹介しておりますので、こちらで。

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2012年09月25日

●ロシア民話 「姉アリョーヌシカと弟イワーヌシカ」

アリョーヌシカがイワーヌシカの名を呼ぶと、イワーヌシカのかわりに白い子羊が姉のあとから駆けてきた。
アリョーヌシカはわけを察してさめざめと涙を流し、干草の山のかげにすわって泣いていたが、子羊はそのわきの草の上を跳ねまわっていた。
ちょうどそこへ一人の貴族が馬車で通りかかり、馬を止めてたずねた。
「美しい娘さん、どうして泣いているのかね」
アリョーヌシカがわが身の不幸を話して聞かせると、貴族は言った。
「わたしについてきなさい。おまえに美しい衣装を着せて銀のかざりもつけてあげよう。子羊もけっして見捨てはしないから。おまえが行くところどこへでも連れていくがいい」

アレクサンドル・アファナーシェフのロシア民話集から、「姉アリョーヌシカと弟イワーヌシカ」を。
子羊の姿に変えられた弟を連れて貴族の奥方になった姉は、彼女に化けた魔女によって水に沈められてしまいます。残された弟の子羊も魔女に食べられそうになるのですが……?

アファナーシェフの民話は、これまでにいくつかご紹介しています。こちらでぜひ。

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2012年09月24日

●ケン・フォレット 「大聖堂」

「わたしたちは、なにか仕事をしなければならないの。仕事をして食い扶持をかぜぎ、お金をかせぎ、あなたにふさわしいりっぱな馬を買わなければならないのよ」
「ということは、ぼくに職人の徒弟になれっていうの?」
アリエナはかぶりを振る。「あなたは騎士になるのよ、大工じゃないわ。わたしたち、手にこれといった職もないのに、人に使われず暮らしを立てている人に会わなかったかしら?」
「会ったよ」と、リチャードがだしぬけにいった。「ウィンチェスターのメグだ」
そのとおりである。メグは徒弟奉公をしたわけではないのに、りっぱに羊毛商を営んでいる。だが、メグは市場に出し店をもっているのだ。
ちょうど、さっき道を教えてくれた赤毛の農夫の家のまえを通りかかった。
すでに毛を刈られた四頭の羊が、草地の草を食んでいる。
農夫は刈った四頭分の羊毛を、葦の縄でくくっているところである。
通りかかった姉弟に気づくと、手をふってみせた。
彼のような人びとが、羊毛を町にはこんでゆき、羊毛商人に売るのである。
商人は当然、その商いのための店を構えていなければならないが……
当然、だろうか?
アリエナの頭に閃くものがあった。

十二世紀のイングランドを舞台にした、ケン・フォレットの大河小説「大聖堂」より。
ヒロインのひとりである没落貴族アリエナが、のちに羊毛商人として大成するにいたる、その転機となる場面です。

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2012年09月21日

●プトレマイオスの天文学著作集

プトレマイオス プトレマイオス(部分)

コンスタンティノープル、813─820年
羊皮紙、95葉
28×20センチ
ヴァチカン図書館

(略)

この写本は、2世紀中頃アレクサンドリアで活躍した、ギリシャの天文学者、地理学者クラウデオス・プトレマイオスの天文学書を編集した、250年頃の写本に基づいて制作されたのである。

「ヴァチカン美術館特別展 古代ギリシャからルネッサンス、バロックまで」

9世紀の写本の挿絵です。中央の太陽神を、時間と12ヶ月の擬人像、さらに黄道十二宮が取り巻いています。
これまでにご紹介している十二宮関係の記事は、こちらで。

ひつじnews at 21:18 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年09月19日

●カーレン・ブリクセン 「指輪」

美しい七月の朝だった。
空には軽いひつじ雲が漂い、大気は甘い香りに満ちている。
リーセは白いモスリン・ドレスとイタリア製の大きな麦藁帽という装い。
夫妻は庭を曲がりくねっているロマンチックな小道をたどった。
それは野道になって、牧場を越え、高い木立ちを抜け、小川を越え、小さな森の脇を通って羊囲いまで続いている。
シギスムンは今日、リーセに羊を見せることになっていた。
だから彼女も、今回にかぎって白い小型犬のビジュを家に置いてきた。
子羊に吠えついたり、牧羊犬と喧嘩になるといけないから。
荘園の羊は特にシギスムンの自慢の種だった。
彼はメクレンブルクとイングランドで羊の飼育を学んだことがあり、自分のデンマーク種の羊を品種改良するため、コッツウォルド種やドイツ種の雄羊を持ち帰っていた。
その計画には大きな可能性と幾多の困難が待ち受けていることを、道々妻に説いて聞かせた。
妻は思った。「何て賢いこと! いろんなことを知っているわ!」それと同時に考えた。
「羊といると、小僧っ子じゃないの! 赤ちゃんよ! わたしのほうが百歳年上だわ」

カーレン・ブリクセンの短篇集『運命綺譚』より、「指輪」の冒頭部です。幸福な新妻と、羊泥棒によって象徴されるこの世の罪業や悲哀との邂逅。

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2012年09月18日

●ペルセポリスの羊頭の装飾品

装飾品

宮廷に使えた職人たちは美しい装飾品を作り出した。
羊の頭をかたどった装飾品は、職杖などに使われたと思われる。

 「ナショナルジオグラフィック日本版2008年8月号」 

イランのペルセポリス出土の装飾品です。

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2012年09月15日

●オデュッセウスの描かれたクラテル

牡羊の腹にしがみつくオデュッセウス

サッフォーの画家、クラーテル、BC500年頃

牡羊と共に食人鬼から逃れるオデュッセウス神話にも、犠牲と死との邂逅およびそれからの脱出が凝縮された形で見られる。
古層の伝承では逃亡は犠牲にされた牡羊の皮に潜り込んでなされたのだった。

ヴァルター・ブルケルトの「ホモ・ネカーンス」に、オデュッセウス神話の考察にからんで、オデュッセウスがキュクロープスから逃れる場面が描かれたクラテルの写真が添えられていました。

羊の描かれたクラテルは、少しだけご紹介したことがあります。こちらでぜひ。

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2012年09月10日

●カプセルラ・アフリカーナ

カプセルラ・アフリカーナ

5世紀末─6世紀初頭

縦16.3センチ/横7.5センチ/高10.7センチ
ヴァチカン図書館(宗教美術館)

(略)

打ち出し技法および彫銀技法による、この聖遺物匣は1884年に、アルジェリアの初期キリスト教時代の教会堂遺跡で発見されたために、「アフリカの小匣」と呼ばれているのである。
その制作地については、北アフリカ説と北イタリア説が提唱されている。

「ヴァチカン美術館特別展 古代ギリシャからルネッサンス、バロックまで」

初期キリスト教の銀器です。側面に、十字架を背負った神の子羊が。
「神の子羊」モチーフ関係の記事はこちらで、初期キリスト教美術関連はこちらでぜひ。

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2012年09月08日

●アルベルト・カイプ 「平原の眺め」

「平原の眺め」
「ダリッチ美術館所蔵 ルーベンスとバロック絵画の巨匠たち」展カタログ

17世紀オランダのアルベルト・カイプによる「平原の眺め」です。

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2012年09月02日

●チベット仏教のセテル儀礼

セテル儀礼

[1] さきほどゲルの外側で待機していた羊を、B氏は香と水で清め始める。
(略)
[2] その間に僧侶は読経する。しばらくしてから、ザラム(リボン)の用意を命じる。5色が必要だという。
(略)
[3] 僧侶は今度は水を要求する。(略) 僧侶は、女性がもってきた水の入った椀の中に、ゆっくりと米粒を入れる。度胸は続く。
[4] しばらくしてから僧侶は、羊をゲルの中に連れてくるようにB氏に命じる。それを聞いて女性は、すぐ小さな絨毯をすばやく僧侶の近くに敷いた。B氏はゲルの外で待機していた羊を、ゲルの中に連れて入ってくる。そこで、僧侶はさらに、バターを要求する。僧侶はまず、ザラムを羊の首に結びつける。それから女性がもってきたバターを、羊の額、鼻、両耳、四肢、背中、尾まで塗っておくように、B氏に命じる。
(略)
[5] 「では、これで、いい」と僧侶は言う。読経は終了した。「このセテルに名前をあげよう。立派な名前を」と僧侶は言う。そこで、B氏は、前から用意していたかのように、即答する。「では、バヤンサンという名前にしましょう」。僧侶は答える。「よし、バヤンサンとしよう」。それから僧侶は祈る。「バヤンサンという白いセテルは、多くのケシゲを呼び寄せるように」。

ずいぶん以前にお話したことのある、チベット仏教系の牧畜地域で行われる家畜の聖別儀礼「セテル」について、「人と動物、駆け引きの民族誌」に式次第が報告されていました。
家庭に不幸があったときなどに任意に行なうもので、セテルすることでケシゲ(福)を呼べるのだそうです。日本人でいうと、厄年に氏神様でお祓いをするような感覚でしょうか?
ちなみにバヤンサンは、その後普通に群れに戻されたようです。売ったり屠ったりしないのはもちろんですが、ペットにするわけでもないのですね。

ひつじnews at 17:24 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月31日

●デューラー『黙示録』より「子羊のような二本の角を持つ獣」

「二本の角を持つ獣」
 「ドイツルネサンス版画の最高峰 デューラー版画展」カタログ 

アルブレヒト・デューラーの木版画シリーズ『黙示録』より、「子羊のような二本の角を持つ獣」です。
「ヨハネの黙示録」第十三章にある、「わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た。それには子羊のような角が二つあって、龍のように物を言った」のくだりを描いたものかと。

これまでにご紹介しているデューラーは、こちらで。

ひつじnews at 17:41 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月29日

●羊毛めんどり(続き)

羊毛めんどり

《羊毛の皮を着た雌鳥》、マンデヴィル

先日お話した「中世の妖怪、悪魔、奇跡」に、以前、ジョン・アシュトンの「奇怪動物百科」をご紹介したときに触れた「羊毛めんどり」の絵がおさめられていましたので、あらためて。

ひつじnews at 09:40 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月27日

●人狼譚としての「迷い羊」

カナダではほかに「迷い羊」が好んで人狼譚として語られる。
夜遅く家路を急いでいると羊が一頭道ばたにはぐれている。
そのあたりの農園の羊が迷ってしまったのだろうが、このままでは狼の餌食になる。
かついでいって、あしたになったら近所の家で心当たりがないかどうか聞いてみよう。
そこで肩にかついでゆくと、はじめは軽かったのがだんだん重くなる。
やがて家がすぐそこというところまで来ると、かついでもらってありがとうといって逃げてゆく。
近くの農園の男が羊に化けて「ただ乗り」をしたのだ。

人狼にかかわる伝承を大量におさめた「人狼変身譚」に、なんだか愉快なお話が混じってました。
人狼というか、おんぶおばけというか、しかも正体はご近所さんって……ありがとうって……。

ひつじnews at 21:51 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月24日

●レオン・フレデリック 「アッシジの聖フランチェスコ」

「アッシジの聖フランチェスコ」 「アッシジの聖フランチェスコ」(部分)

アッシジの聖フランチェスコは、フレデリックが生涯繰り返し描いたテーマである。
(略)
描かれている自然は、イタリアのアッシジではなく、フレデリックが生涯愛した、ベルギー南部ワロニーのアルデンヌ地方の風景と考えられている。

何の気なしに岐阜県美術館の「象徴派」展を訪れてみると、羊の絵と遭遇してしまいましたので、泡を食ってご報告です。
レオン・フレデリックによる「アッシジの聖フランチェスコ」、姫路市立美術館所蔵。
2012年8月26日までの開催です。あさってでおしまいなのですが、ご縁がおありでしたら、ぜひ。

岐阜県美術館のあとは、2012年9月8日?10月21日の期間に新潟県立近代美術館、2012年11月3日?12月16日は姫路市立美術館を巡回するようです。

なお、聖フランチェスコを描いたものは、以前、フランシスコ・リバルタの「奏楽の天使に慰められる聖フランチェスコ」をご紹介したことがあります。

ひつじnews at 18:33 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月22日

●ピロストラトス 「英雄が語るトロイア戦争」

大アイアスの霊のこと

家畜の群れに生じる災害は全てアイアスが原因だと人々は言っています。
たぶん彼の狂気に関する話のせいでしょう。
彼は家畜たちに襲いかかって略奪し、あたかも武器の裁定のことでギリシア人たちを殺害しようとするような振舞いに及んだわけですから。
また彼の墓の周りで放牧する者もいません。
そこに生え出る草は有害で、家畜を養うのにはよくないということで、その草を恐れているのです。

こんな話があります。
トロイアの羊飼いたちが、家畜に病が生じたとき、アイアスを侮辱するため墓の周りに立って、この英雄はヘクトルの敵だ、トロイアとその家畜の敵だと叫び、ある者は、彼は狂人だったと、またある者は、今でも狂っていると口走りました。
さらに別のいちばん不敵な羊飼いが、彼に向かって叙事詩の句を

 アイアスはもうとどまらなかった

という箇所までそらんじて、彼を臆病者とそしったところ、墓の中から彼が、

 いや、俺はとどまった

と、恐ろしいはっきりした声で叫び返したのです。

3世紀のギリシア人ピロストラトスによる、トロイア戦争で死んだ英雄がよみがえって戦の真相を語る物語「英雄が語るトロイア戦争」から、以前、ソポクレスの悲劇「アイアス」でお話した大アイアスにまつわる一章を。

ひつじnews at 20:25 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月20日

●マンデヴィル『東方旅行記』より「羊を産む木とガチョウを産む木」

羊とがちょうの交換 羊とがちょうの交換(部分)

マンデヴィルはこの話を取り上げて、次のような結論を下す。

「だが私は、彼らにそれは大した奇跡だとは思わないと言った。
なぜなら、我々の国のある種の木は、鳥が出てくる実をつけ、しかもその実は、非常においしいからだ。
この場合、地上に落ちた鳥はまもなく死んでしまう」

オドリックと同様マンデヴィルも、一つの奇跡を正当化するために別の奇跡を使う。
というより、二人はともに、植物性の羊の奇跡があるのはアイルランドにガチョウを産む木があるからだと考えている……。

ときどきお話している植物羊関係でひとつ。
マンデヴィル「東方旅行記」の中で、植物羊と、それに対応するとされるアイルランドのガチョウのなる木の伝説を説明する挿画です。

ひつじnews at 20:56 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月17日

●『ホメーロスの諸神讃歌』より「ヘルメース讃歌」

そこで一匹の亀を見つけたが、これは大層な宝を手に入れたというもの、
ヘルメースこそが、最初に亀を歌奏でる具としたのだから。

(略)

葦の茎をそれぞれ程よい長さに切ると、
亀の甲羅を差し貫いてしっかり取りつけた。
その上から巧みをこらして牛の皮を張りまわし、
腕木を造りつけ、横木を渡して固くとめ、
よく鳴り響く羊腸の弦を七本そろえて張った。
さて、神はこうして愛らしい玩具を仕上げると、
それを手にとって、撥で弦を順番に試してみた。
すると竪琴は神の手の下で、驚嘆すべき音を立てた。

ヴァイキングの笛に続いて、羊素材つながりでもうひとつ。
「ヘルメースを讃め歌え、キューレーネーと羊多いアルカディアを統べる神」とのフレーズではじまる、古代ギリシアのホメーロス風讃歌「ヘルメース讃歌」から、ヘルメースによる竪琴の発明を語るエピソードです。

ひつじnews at 23:20 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月15日

●ヴァイキングの笛

ヴァイキングの笛

先日のブリューゲルの「子どもの遊戯」距骨のサイコロについてなど、羊の骨をつかった遊びについてはなんどかお話しているのですが、娯楽つながりということでもうひとつ。スウェーデン出土のヴァイキングの笛のようです。

ひつじnews at 12:00 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月11日

●ヴァザーリ『芸術家列伝』より「レオナルド・ダ・ヴィンチ」

彼はしばしば羊の小腸を念入りに脱脂し、洗い浄めてたいへん薄いものにし、手のひらに納まるようにした。
それから隣の部屋に鍛冶屋が使うふいごを置き、腸の先をこれにつけて空気を吹き入れた。
するとそれは、たいへん大きなレオナルドの部屋いっぱいにふくらみ、居合わせた人々は隅の方に押しやられ、小さくならなければならなかった。
そして彼は、初めは小さかったのに大きな空間をしめることになった透明で空気のいっぱい詰まったこの腸を示し、徳もまたこれと同じことだと言った。

以前、ジョットの評伝をご紹介したジョルジョ・ヴァザーリによる、レオナルド・ダ・ヴィンチについてのエピソードです。
他にも、友人たちを驚かすためにおそろしげな装飾をつけた蜥蜴を飼っていたとか、部屋に資料として持ち込んだ動物の死骸の悪臭に気が付かなかったとか、はた迷惑そうなお話が満載されてます。ほんとにこんな人だったんでしょうか。

ひつじnews at 19:38 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月10日

●ブーシェ 「羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン」

「羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン」 「羊飼いの娘イセに神であることを明かすアポロン」(部分)

先日ご紹介した「変身物語」にあるアラクネのお話のなかで、一行だけの挿話として記されるイセとアポロンのエピソードが、フランソワ・ブーシェによる華やかな神話画になっていました。
まず、この挿話をもとにしたオペラが存在し、それにあわせた装飾画であるとのことなのですが、いやでも、どうやってあれがこれに……。

これまでのブーシェは、こちらで。

ひつじnews at 09:15 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月07日

●『変身物語』より「アラクネ」

アラクネは、織り進む。
ユピテルが、こんどはサテュロスに身をやつして、美しいアンティオペに双生児を見ごもらせたこと、(略)羊飼いとなってムネモシュネを、まだらの蛇となってプロセルピナをだましたこと─そんな場面が加えられてゆく。

海神ネプトゥーヌスも、あらあらしい雄牛に変じて、アイオロスの娘を籠絡し、河神エニペウスの姿でアロエウスの妻を身ごもらせ、雄羊となってビサルテスの娘をたぶらかした。
(略)

そこには、アポロンも登場する。
野人の姿をしているかとおもうと、隼の翼に包まれたり、獅子の皮をかぶったりもしている。
マカレウスの娘イッセをだましたときは、羊飼いに化けてもいた。

オウィディウス『変身物語』から、アラクネとミネルウァ女神の機織り勝負の物語を。
神々の非行を描いたタペストリーを織り上げ、女神に懲罰を受ける織手アラクネのお話ですが、どうも神々は悪事をはたらくときに羊飼いに化けがちのようです。
ネプトゥーヌスとビサルテスの娘のお話は、以前触れたことがありますね。

ひつじnews at 22:12 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月05日

●ソポクレス 「オイディプス王」

オイディプス  ここにいるこの男のことだ。会ったおぼえがあるか?
羊飼いの男  はて、すぐには思い出せませぬが。
使者  無理もございませぬ、王さま。それではこのわたくしめが、わかりかねているこの男に、はっきりと思い出させるようにいたしましょう。あのころのことを、どうしてこの男が、まったく忘れてしまったはずがありましょう。

─そのころわたしどもはキタイロンの山間で、この男は二群れの羊たちの番をし、わたくしは一群れの羊に草を食ませながら、共に日を送ったものでございます。春からはじまって、アルクトゥロスの星が、暁の空に瞬きはじめる秋がやって来るまで、たっぷり半年のあいだを、わたくしはそのようにして、彼といっしょに三度びもくりかえし過ごしました。そして、やがて冬になると、わたしくは自分の羊たちを追って故郷の羊舎へ、この男はこの男で、ライオスさまのところの囲いの中へ、それぞれ連れ帰るならわしになっておりました。
[羊飼いの男に]そうであったな? それともわしは、ありもしなかったことを申しておるか?

羊飼いの男  たしかにお前の言うとおりだ。遠いむかしのことではあるが─。
使者  さあそれでは、いまこそ答えてくれ。あのころお前は、ひとりの赤子をわしに渡したのを、覚えているであろうな─これをわが子同様に、育ててくれと申して?

ソポクレスの悲劇「オイディプス王」を。
自らの出生の秘密を明らかにすることで、それと知らず破滅へと近づくオイディプス王と、真実を知りながら告白をためらう羊飼いの男とのやりとりです。

ソポクレスについては、以前、「アイアス」をご紹介しています。

ひつじnews at 20:02 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月03日

●ルーベンス 「虹のある風景」

「虹のある風景」

ピーテル・パウル・ルーベンスのエルミタージュ美術館所蔵「虹のある風景」が、現在、日本を巡回中です!

会期  2012年7月28日(土)?9月30日(日)
開館時間  午前9時30分?午後5時、金曜日は午後8時まで。(入場は閉館の30分前まで)
休館日  毎週月曜日(ただし9月17日(月・祝)開館、9月18日(火)休館)
特別開館  8月13日(月)、9月24日(月)

10月10日(水)?12月6日(木)
午前9時から午後5時まで(入場は午後4時30分まで)
*10月26日(金)?10月28日(日)は午後8時まで開館(入場は午後7時30分まで)
休館日 月曜日

お近くならば、ぜひぜひ。

展覧会カタログには、オウィディウス『変身物語』における「黄金時代」のイメージを描いたものであるとの解説がありましたので、相当すると思われる部分の引用を下に。

常春の季節がつづくのだった。
そよと吹く西風が、なまあたたかいその息吹で、種もなしに自生した花々を愛撫していた。
やがて、大地は、耕されもしないのに、穀物をさえもたらすのであった。
田畑は、掘り返されないでも、豊かな穂先で白く光っていた。
乳の河が流れるかとおもえば、甘露(ネクタル)の流れが走り、青々したひいらぎからは、黄金色の蜜がしたたっていた。

なお、これまでにご紹介しているルーベンスについては、こちらで。

ひつじnews at 16:28 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年08月02日

●中世日本のなぞなぞ

ひとつかうじを とゝりかうとる     ひつじ

(略)一つきりしかない柑子(こうじ)を、取ったり置いたり、大切がってなかなか食べようとはしないとの意。
(略)解は、ヒトツカウジからト・カウを取ると、ヒツジ。

 なそたて 

ひつじ 何ぞ     馬の尾

羊に対して馬を置いたのが、働き。解、十二支の未は午のあと。

 寒川入道筆記 

16,7世紀頃に作られたなぞなぞ集録本を網羅した「中世なぞなぞ集」から、ひつじの出てくるものを。

ひつじnews at 18:00 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月31日

●ブリューゲル 「十字架を担うキリスト」

「十字架を担うキリスト」 「十字架を担うキリスト」(部分)

昨日に引き続いて、ピーテル・ブリューゲルを。ウィーン美術史美術館所蔵の「十字架を担うキリスト」です。左前景、兵士たちに連行されるキレネ人のシモンの足元に羊が。

ひつじnews at 17:26 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月30日

●ブリューゲル 「子どもの遊戯」(続き)

「子どもの遊戯」 「子どもの遊戯」(部分)

「指骨遊び」は豚、牛、羊などの指骨の一部(基節骨)を壁面に沿って一列に並べ、一定の距離から投げ当てるという一種のボーリング遊びである。

ピーテル・ブリューゲルの「子どもの遊戯」から、画面中央奥の建物の壁際で遊んでいる子どもたちについて。
こちらの絵は、以前、「お手玉遊び」の部分をご紹介しているのですが、あらためてこちらも。
また、これまでにご紹介しているブリューゲルについては、こちらで。

ひつじnews at 17:05 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月28日

●アイソーポスの肖像

アイソーポスの肖像

寓話集などをなんどかご紹介しているイソップ(アイソーポス)の姿を描いた、15世紀末の版画を。醜い外見をしていたと言われているのでそのように描かれていますが、にぎやかな背景のほうがむしろ気になります。
これまでのイソップ関連記事は、こちらで。

ひつじnews at 16:04 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月25日

●サミュエル・パーマー 「眠る羊飼い」

「眠る羊飼い」

パーマーはウェルギリウス作『牧歌』の新版(1821年刊行)にウィリアム・ブレイクが寄せた一連の木版画について、「濃密な詩情の精妙な調子を見事に表した」ものと評したが、稠密で暗い細密表現の影響はパーマー自身の描いた田園風景、たとえばこの《眠る羊飼い》にも認めることができる。

「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」カタログ

19世紀英国のサミュエル・パーマーによる「眠る羊飼い」を。
パーマーは、ウィリアム・ブレイクに強い影響を受けています。これまでご紹介したブレイクは、こちらに。ウェルギリウス『牧歌』については、こちらで触れたことがあります。

ひつじnews at 21:19 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月22日

●シュトルム 「雨姫」

シュティーネは紡ぎ車をおいて立ちあがると、がっくりしおれていいました。
「やっぱりそうだった。マーレン、あんた、アンドレースの背中にしょってるものが見えなくって? またヒツジが一匹、かつえ死にしたんだよ。」
まもなく、わかいお百姓のアンドレースが部屋にはいってきて、死んだヒツジをどさりと、母親とマーレンの目の前におきました。
「ごらんよ。」
アンドレースはしずんだ声でいって、かっかとほてるひたいの汗を、手でぬぐいました。
ふたりの女は、ヒツジの死がいよりもアンドレースの顔を、じっと見やりました。
「あんまりくよくよしないでね、アンドレース。」 マーレンはいいました。 「あたしたち、雨姫さまを起こすつもりなの。そしたらまた、なにもかもよくなるわ。」

テオドール・シュトルムの童話集『たるの中から生まれた話』より、「雨姫」を。
日照りの続く夏のさかり、雨をつかさどる女神を目覚めさせようと旅に出る少年少女の物語です。

ひつじnews at 23:28 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月19日

●ビアス 「ぼくの快心の殺人」

伯父のウィリアムはその界隈全域で喧嘩早いので有名な雄羊を一匹所有していました。
その雄羊は慢性的に、気質的に、憤怒の状態にあったのです。
生れたての頃なにか深い失望を経験し、そのため気質が大変難しくなり、全世界に向かって宣戦を布告していたのです。
近づけるものにならなににでも頭からぶつかっていくと言うのは、その羊の軍事活動の性質と範囲をほんの控え目に表現しただけにすぎません。
それは空中に跳びあがって天使か悪魔のように戦うのです。
鳥のように空気を切り、抛物線を描いて、自分の速度と体重を最も有効に生かす落下角度からそのいけにえにぶつかるのです。

アンブローズ・ビアスの短篇集から、「ぼくの快心の殺人」を。
引用部分は、伯父を殺した主人公の悪党が、自分の使った快心の凶器について説明する場面です。つまり、哀れなウィリアム伯父を木に吊るしておいて、そこに頭突き羊をおびきよせてこう……。

ひつじnews at 17:09 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年07月13日

●ロシア民話 「暁、夕べ、夜ふけ」

勇士たちは旅に出た。
ひと月、二月、三月と馬をすすめていき、広々とした荒野にさしかかった。
その荒野を超えると深い森があり、森のはずれに一軒の百姓家が立っていた。
窓をたたいても返事がないのではいってみると、家の中にはだれもいなかった。
「それではしばらくここに泊って、旅の疲れを休めるとしよう」
そこで着物をぬぎ、神さまにお祈りをしてから横になって寝た。
あくる朝、末の弟の暁が長兄の夕べに言った。
「おれたち二人で狩に出るから、兄さんはうちにのこって食事のしたくをしてくれ」
上の兄は承知した。
家のそばに羊がいっぱいいる家畜小屋があったので、夕べは深く考えもせず、とびきり上等な雄羊を選び出すとそれを殺して皮をはぎ、食事に出すために焙りはじめた。
すっかり用意をすませてから、ベンチに横になって休んでいた。
そこへ突然どんどんと戸をたたく音、ごろごろと雷が鳴るような音がして、戸がぱっとあいた。

「羊飼いの娘」「動物たちの冬ごもり」をご紹介いている、アファナーシェフ編纂のロシア民話をもう少し。
暁と夕べと夜ふけに生まれ、そのとおりの名をつけられた三人の兄弟が、三人の王女を手に入れるまでの冒険譚(というか……)。

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2012年07月04日

●プリニウス「博物誌」植物篇

農業に由来する姓や言葉

(略)

「財産」(ペクニア)という言葉も「家畜」(ペクス)に由来するし、さらには、今日でも監察官の文書においては、国家の財源を「牧場」(パスクア)と呼んでいる。
長い間、牧場は唯一の国庫収入の財源であったからである。
罰金もまた、ヒツジやウシの支払いだけで定められていた。
(略)
セルウィウス王(ローマ第六代目の半伝説的王)が初めて、銅貨にヒツジとウシの像を刻印した。

ラセルピキウム

これらのすぐ次には、重要な植物としてよく知られているラセルピキウムを語るのがよいであろう。
それはキュレナイカ属州で発見され、ギリシア人たちはこれをシルフィオンと呼んでいる。
この汁はラセルと呼ばれ、薬用としてとても有益で、同じ重さのデナリウス銀貨で取り引きされた。
だがその地で最近しばらくラセルピキウムは見つかっていない。
かつてそこを牧場として貸借した収税役人たちが、もっと儲けがあると考え、家畜の飼料にして荒らしてしまったからである。
われわれが記憶している限りでは、茎が一本だけ発見されてネロ皇帝のもとに送られた。
もし家畜が生え出しそうなラセルピキウムを見つけたとき、それは次の様子でわかるであろう。
すなわち、ヒツジはそれを食べるとすぐに眠ってしまうし、ヤギはくしゃみをすることによって。

何度かご紹介している、プリニウスの「博物誌」の植物篇からもう少し。

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2012年06月29日

●ホラティウス 「農村讃歌」

テルミヌスの宴の最中に
家路を辿る羊らを
見るのは楽しい光景だ。

疲れた牛はのそのそと
背中に逆にのせられた
鋤を運んで戻って行く。

燃える囲炉裏を囲んでいる
家で育った召使は
金持の家族と同様だ」。

こういったから金貸しの
アルフィウスは、百姓に
なるかと思えば、満月の

月の半ばに貸した金を
取り立て、次の月初めに
またその金を貸し出すのだ。

ホラティウスの『エポドン』より、「農村讃歌」を。
古代ローマの田園志向のお話はしたことがあるのですが、それに対する皮肉な見方もまたあったのですね。

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2012年06月25日

●ジュリアン・デュプレ 「羊飼い」

「羊飼い」

ジュリアン・デュプレは、働く農民の姿を画題にした画家たちの第2世代にあたる。
本作品は1883年のサロン(官展)に出品したものである。

 「田園讃歌 近代絵画に見る自然と人間」展カタログ 

「羊飼いの女」「羊飼いの女と羊の群れ」をご紹介している、ジュリアン・デュプレの「羊飼い」です。地母神のように堂々とした美しい農婦を描く画家、みたいなイメージがあったんですが、この男性羊飼いと牧羊犬のコンビも良いですね。
新潟県立近代美術館・万代島美術館所蔵。

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2012年06月23日

●ヨーロッパの羊伝説

穀物霊としての動物

穀物に棲む動物霊をネコ、ウサギ、ヤギ、ウシ、ウマ、オオカミなどで現す地域が多い。
(略)
フランスのギエンヌでは最後の穀物が刈り取られると、一頭の去勢ヒツジを畠中引き回す。
それは“畑のヒツジ”と呼ばれ、角は花輪や穀物の穂で、頭や体は花束や色紐で飾る。
刈り手は皆このヒツジの後について歌いながら行進し、最後に畑で屠殺する。
最後の刈り束を“去勢ヒツジ”という。


生贄、替罪羊など

ギリシア、ローマの儀式の規則では、殺す前に生贄の頭に焼いた穀物と塩の混合物をふりかけ、頭に特別な花冠を被せ、牡ウシ、ヒツジ、ヤギの角は金色に塗った。
生贄を捧げる人も頭に花冠をつけた。

動物にまつわるヨーロッパの伝説を集めた本から、ヒツジ関連のものを。

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2012年06月19日

●エル・グレコ 「羊飼いの礼拝」(続き)

「羊飼いの礼拝」 「羊飼いの礼拝」(部分)
 「エル・グレコ展」カタログ 

先日来、マイスター・フランケ「キリスト降誕」シント・ヤンス「キリストの降誕」など、後景に羊飼いへのお告げが描かれた絵画作品をご紹介しているのですが、他に似たものはないかと探したところ、ずいぶん以前にお話したエル・グレコ「羊飼いの礼拝」がまさにそれでした。ので、改めて。

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2012年06月17日

●串田孫一版ギリシア神話

イアソンはその竜を踏み越えて、遂に金毛の羊皮を木からはずし取ることに成功した。
三人は急いで森をぬけ、羊皮を捧げ持って船へ戻った。
メディアは、自分はもう殺される身だが、急いで船を出して逃げるようにと言った。
イアソンはここまで世話になり、助けてもらったメディアを残して行くこともできず、結婚の約束をして船に乗せて行くことにした。弟も一緒に乗せた。
船は手早く用意をして、パシス川を下り、金毛の美しい皮を柱にかかげて走り出した。
オルペウスは勝利の曲を奏でると、勇士たちは漕ぐ手を早めた。

「雲」などをご紹介している串田孫一によるギリシア神話から、「いかにしてイアソンは金毛の羊皮を取ることができたか」の章を。
イアソンと金毛の羊関連の記事は、こちらでまとめてぜひ。

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2012年06月13日

●「動物農場」の羊の冗談

『動物農場』での羊の読み書き能力はかなり低いもので、かれらも〈七戎〉を覚えられず、「よつあしいい、ふたつあしだめー!」のスローガンを与えられる。
(略)
ところが、第十章で、〈七戎〉の第一条と第二条を破って、ブタたちが二本足で歩き出す場面で、羊たちはとつぜん正反対のスローガン、「よつあしいい、ふたつあしめーっぽういい」と唱え出す。
事前にナポレオンが仕込んだとはいえ、ずいぶん安直に逆のスローガンに移れたものだね。
(略)
そう、ぼくの訳文にも仕掛けがある。ふたつならべてくらべてみよう。

よつあしいい、ふたつあしだめー! (Four legs good, two legs bad.)
よつあしいい、ふたつあしめーっぽういい! (Four legs good, two legs better!)

そうそのとおり。羊の鳴き声をしゃれにして訳しているわけだ。
英語原文でいうと、badとbetterのbの音のしゃれだ。
前提になっているのは、英語では羊は「バア、バア baa baa」と鳴くということだね。
マザー・グースの羊が出てくる歌(「バア、バア、ブラック・シープ」など)、またルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』で女王様がbetterという語の発音を引き金にして「バア、バア」と言いながら羊に変身してしまうくだりに見られるように、おとぎばなしのなかではおなじみの「語彙」なんだ。

先日ご紹介したジョージ・オーウェル「動物農場」の、翻訳者による解説書から。こちらの本では、また、オーウェル自身による「笑うに値する冗談には、かならずある思想がひそんでいる。それはたいてい破壊的な思想である」との箴言が紹介されています。

なお、『鏡の国のアリス』の原文が未紹介でしたので、下に。

“Then I hope your finger is better now?”
Alice said very politely, as she crossed the little brook after the Queen.


“Oh, much better!” cried the Queen, her voice rising into a squeak as she went on.
“Much be-etter! Be-etter! Be-e-e-etter! Be-e-ehh!”
The last word ended in a long bleat, so like a sheep that Alice quite started.

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2012年06月11日

●マイスター・フランケ 「キリスト降誕」

「キリスト降誕」 「キリスト降誕」(部分)

15世紀ハンブルクの画僧、マイスター・フランケによる、聖トマス・ア・ベケットの祭壇画より「キリスト降誕」です。遠くに羊飼いへのお告げの場面が。

羊飼いへのお告げ関連では、先日のシント・ヤンス「キリストの降誕」や、サン・イシドロ聖堂天井画等々をご紹介しています。

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2012年06月09日

●杉山平一 「機械」

詩集〈夜学生〉から

機械

古代の羊飼ひが夜空に散乱する星々を蒐めて巨大な星座と伝説を組みたてゝ行つたやうに  いま分解された百千のねぢ釘と部品が噛み合ひ組み合はされ  巨大な機械にまで結晶するのを見るとき  僕は僕の苛だち錯乱せる感情の片々が一つの希望にまで建築されゆくのを感ずる

杉山平一の詩を。

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2012年06月07日

●シント・ヤンス 「キリストの降誕」

「キリストの降誕」 「キリストの降誕」(部分)

トート・シント・ヤンスの《キリストの降誕》は、十七世紀フランスのジョルジュ・ド・ラトゥールに通じる夜景表現で有名だが、人形のような人物表現も大きな魅力になっている。

「荒野の洗礼者ヨハネ」をご紹介している、ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの「キリストの降誕」です。後景に天使のお告げを受ける羊飼いたちが。
比較に挙げられているラトゥールについては、こちらをご参考にぜひ。

ひつじnews at 11:31 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年06月06日

●ヨーロッパ史における羊と呪術

ゲルマン民族においては羊は収穫の際の生贄として用いられ、一八〇二年にもまだチューリンゲンで行われており、収穫の際に羊が一匹殺され捧げられた。
今日でもマルクグレーニンゲンでは八月二十四日に刈り畠で乙女たちが裸足で一匹の羊を追いかける行事が行われている。
羊の形をしたパンはかつての生贄と供物の残滓であるが、それは今でも各地に見られる。
それは繁殖力のシンボルであり、羊や子山羊の形をした雲からきたものと見なされている。

死者の軍勢と呼ばれる死者の行列の中にも羊が走っていることが伝えられている。
シュレージェンでは精霊降誕節の行列のあと焙られて皆で食された羊の骨を、翌日日が昇る前に畠に刺しておくと種子の発芽がよいといわれていた。
三角形の鎖骨は愛の魔術にしばしば用いられていた。

阿部謹也『「世間」への旅」』に収められた一章、「ヨーロッパ史の中の羊のイメージ」から、呪術における羊の役割の重要性についての部分を。

ひつじnews at 18:13 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年06月02日

●「鏡の国のアリス」

「じゃあ、もうお指はだいじょうぶなんですね?」
アリスがとてもていねいに言って、クイーンを追って小川をまたいだ、そのときです─

「ああ、ずっといいの」と、さけんだクイーンの声が、こんなふうに変わっていきました。
「めっちゃええわ! めぇえーちゃええー! めぇえーええー! めえええー!」
最後の言葉はヒツジのような長い鳴き声になったので、アリスはたいそうびっくりしました。
クイーンを見てみると、とつぜんウールでからだをくるんだように見えました。
アリスは目をこすって、もう一度見てみました。
いったいどうなってしまったのか、さっぱりわかりませんでした。
ここはお店のなかでしょうか?
それに、そこにいるのはほんとうに─カウンターの向こう側にすわっているのは、ほんとうにヒツジ?
どんなに目をこすってみても、それ以上のことはわかりません。
アリスは暗い部屋にいて、カウンターにひじをついてもたれかかっていて、向かいには年とったヒツジがひじかけイスにすわって編み物をし、ときおり手を休めては大きなメガネごしにアリスを見ているのです。

大昔に海洋堂フィギュアの「編み物をする羊」をご紹介したきり、なぜかお話しそこねていた「鏡の国のアリス」を。引用は、河合祥一郎訳の角川文庫版です。

ひつじnews at 23:18 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月31日

●古代キリスト教美術の誕生

カタコンベ壁画に旧約聖書や新約聖書場面が登場するのは三世紀半ば以降であるが、二世紀末から三世紀初めにはキリスト教徒は、既存のローマ異教葬礼美術の図像レパートリーの中から、キリスト教の文脈でも利用できる図像を巧妙に選んで墓を飾っていたとみなすのが、今日、一般的な見解となっている。

(略)

異教、キリスト教を問わず三世紀後半の石棺浮彫りやカタコンベ壁画にも頻繁に登場する奏楽や読書、擬人像表現による四季の営み、さらには狩猟の情景、羊飼いと羊や山羊の群れの牧歌的田園情景は、死者に手向けられた理想的な死後世界の表現である。
そして同時にそれはローマ社会の上流階層の教養人たちが、海辺や田園の別荘(ヴィッラ)に求めた精神的世界そのものの表現でもあった。
(略)
三世紀後半はローマ社会の混乱期ではあったが、キリスト教会にとっては非常に重要な時期で、財力もあり教養もある多くの人々が入信した時期でもあった。
彼らが田園の別荘生活に求め、実践した精神的生活が、キリスト教への改宗をより容易にしたともいえる。
そしてシドニウス・アポリナーリスをはじめとする四?五世紀の文人たちも伝えるように、ローマ社会の伝統的な貴族階級の者たちはキリスト教徒となったのちも、田園のオティウムの世界で獲得した古典的教養の世界を決して捨てることはなかった。

ヴァチカン美術館所蔵の石棺カタコンベ天井のフレスコ画ゴールドサンドイッチガラスなどについてお話している、初期キリスト教美術のそのはじまりについて、わかりやすい解説書がありましたのでご紹介を。

ひつじnews at 20:59 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月30日

●ターナー 「クリューズ渓谷の小針峰、フランス」

「クリューズ渓谷の小針峰、フランス」

「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」カタログ

愛知県岡崎市の岡崎市美術博物館にて、18、19世紀英国の風景画を中心とした、「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」が開かれています。ひつじ度高いです。
以前、「ヴァレ・クルージス修道院、デンビシャー」をご紹介したことのあるターナーほか、 「めえめえ仔羊」をご紹介のブラウン「両親の家のキリスト」ミレイなどによる羊が目白押しです。

岡崎市美術博物館での開催は、2012年6月24日(日)まで。その後、

2012年7月14日(土)?9月24日(月) 島根県立石見美術館
2012年10月20日(土)?12月9日(日) Bunkamura ザ・ミュージアム
2012年12月18日(火)?2013年3月10日(日) 新潟県立万代島美術館

こちらに、巡回が予定されているようです。ご縁がありましたら、ぜひぜひ。

ひつじnews at 10:08 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月28日

●饅頭起源説話

次に「曼頭」(饅頭)は後世まで盛行して、我が国にも製法が輸入されているので、その形状品質は周知の通りであるが、その原始的なる物は中の餡に獣肉を用いたのである。
これに関して宋の高承の『事物起源』巻九に奇怪なる起源説が語られている。
即ち蜀の諸葛孔明が孟獲を征した時、人の勧めにより蛮神を祭って加護を祈ったが、蛮俗では人を殺してその首を供える風習であったのを、孔明は羊と豚の肉を麺に包んで人頭に象ったものを作ってこれに代えた、饅頭はこれから始まったのだという。
更に明の郎瑛の『七修類稿』巻四十一には、最初これを「蛮頭」といったが、後に訛って「饅頭」としたのだと補足している。
しかしこれはむしろその反対に、「曼」と「蛮」と字音が相通ずるところから、右のような奇怪な縁起説が起ったのであろう。

三国志演義などで饅頭の起源説話をご存知のかたも多くいらっしゃると思うのですが、青木正児の「華国風味」を読んでおりましたら、この説話が奇怪呼ばわりされてました。いや奇怪ですけども、たしかに。

青木正児の著書は、「随園食単」訳注「中華飲酒詩選」などをご紹介しています。

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2012年05月26日

●ドービニーのエッチングとクリシェ=ヴェール

「羊の柵囲い」

クリシェ=ヴェールは、1800年代中頃に写真技術発達の過程で派生的に誕生した技法である。
皮膜で覆ったガラス板をニードルなどで引っかいて絵を描く。
このように線の部分のみ光を透過するようにした原版を、印画紙に重ねて感光することで図柄を得る。
フランスやイギリス、アメリカで流行したが、とりわけバルビゾン派の画家たちは1850年代から60年代にかけて数多くの作品を試みている。

 「絵画と写真の交差 印象派誕生の軌跡」展カタログ 

「夕日」などをご紹介している、シャルル=フランソワ・ドービニーのエッチング「羊の柵囲い」及びクリシェ=ヴェール「羊のいる囲場」です。同じ原画から作られたものとのことですが、技法によって雰囲気が違ってくるものですね。

ひつじnews at 22:13 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月24日

●ジョット 「羊飼いのもとに赴くヨアキム」

「羊飼いのもとに赴くヨアキム」

1304?05年 フレスコ 200×185センチ
パドヴァ、スクロヴェーニ礼拝堂

(略)

深い思索にふけるヨアキム、主人が来たので喜ぶ犬、怪訝そうに見つめる二人の羊飼い。
書き割りのような背景の山と木は素朴だが、ヨアキムの沈んだ気分を暗示しているかにみえる。
聖なる物語が、このような人間的ドラマとして表現されたことは、それまでにはなかった。

ジョット・ディ・ボンドーネのスクロヴェーニ礼拝堂壁画、「羊飼いのもとに赴くヨアキム」を。以前ご紹介した「ヨアキムの夢」と同じ壁面に並ぶ、「ヨアキム伝」の一場面です。

ヨアキムを描いたものは、他に、ギルランダイオの「神殿から追い出されるヨアキム」をご紹介したことがあります。

ひつじnews at 19:44 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月22日

●ドストエフスキー 「死の家の記録」

わたしは、しかし、煉瓦運びを愛したのは、この作業で体力がつくからだけではなかった。
さらに、この作業がイルトゥイシ河畔で行われたからである。
わたしがしばしばこの河畔のことを言うのは、他に理由はない、ただそこからは神の世界が見えたからである。

(略)

わたしにとって、そこにあるすべてのものが貴く、そしていとおしかった。
果てしない紺碧の大空に輝く明るい熱い太陽も、遠い対岸キルギスから流れてくるキルギスの歌声も。
長いことじっと目をこらしていると、そのうちに、遊牧民の粗末な、煤煙で黒ずんだ天幕らしいものが見えてくる。
天幕から小さな一すじの煙がのぼり、キルギス女が一人忙しそうに二頭の羊の世話をしている。
それらはすべて貧しく、粗野ではあるが、しかし自由である。

フョードル・ドストエフスキーによる、シベリアへの流刑体験に基づく「死の家の記録」から。

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2012年05月19日

●赤像式クラテル(続き)

クラテル

紀元前425年頃
ギリシア、アテネ出土
高42.3センチ、直径47センチ

このクラテルに描かれている場面から、古代アテネ人の宗教的慣習について多くのことを知ることができる。
垂れ下がった花冠と花輪で飾られた雄牛の頭蓋骨から、聖域で儀式が行われていることが分かる。
儀式に参加している男性は皆、丈の長い衣装と葉冠を身につけている。
左側では、若い男性が生贄とされる羊を導いており、その後ろで一人の男性が2本の管楽器、アウロスを奏でている。

 「古代地中海世界の美術」展カタログ 

先日の、ペリアスの死を描いたものに続いて、クラテルをもうひとつ。羊を使った動物供犠の場面のようです。

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2012年05月17日

●アドリアン・デ・フリース 「ルドルフ二世像」

ルドルフ二世

アルチンボルド関係などで何度かお話しているハプスブルク家の神聖ローマ皇帝ルドルフ二世ですが、画像をご紹介したことがありませんでしたので、あらためて。胸に金羊毛騎士団勲章をさげた、アドリアン・デ・フリースによる胸像です。

金羊毛騎士団勲章のお話はずいぶんしておりますので、こちらでまとめてぜひ。

ひつじnews at 20:42 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月15日

●羊飼いと羊図ゴールド・サンドウィッチ・グラス坏残欠

ゴールド・サンドウィッチ・グラス

3世紀─4世紀 イタリア 径9.7センチ

コップの底や側面に金箔を熔着し、文様をエッチングして再加熱、その上に透明ガラスを被せかけて作ったゴールド・サンドウィッチ・グラスは、多くローマのカタコンベで発見され、キリスト教の図像が描かれているのが通例である。

 「世界ガラス美術全集1 古代・中世」 

初期キリスト教のゴールドサンドイッチガラスです。アメリカ、コーニング・ガラス美術館所蔵。

ひつじnews at 18:05 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年05月13日

●赤像式柱形クラテル

赤像式柱形クラテル

伝 アエギスタスの画家作
ギリシア、初期クラシック時代、紀元前470年頃
陶器
ギリシア、アテネ出土
高37センチ、直径33センチ(口部分)

このクラテルは、ワインを混ぜるための堂々とした容器で、イオールコスの王位を奪ったペリアースの死というギリシア神話の中の大変面白い場面が描かれている。

 「古代地中海世界の美術」展カタログ 

以前お話した、『転身物語』より「ペリアス」の一場面を描いた、古代ギリシアのクラテルです。右にメデア、左に娘に手を引かれたペリアス。そして中央の大釜で羊が煮られているようです。

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2012年05月11日

●『美味礼讃』より、「コーヒーについて」

コーヒーの木は最初アラビアで発見された。
その後ほうぼうに移植されたけれども、最良のコーヒーは今でもやはりアラビアから来る。
古くからの言い伝えによるとコーヒーは羊飼いに発見された。
かれは、羊どもがコーヒーの木の漿果を食べた時はいつも興奮してはしゃぎだすのを見たのである。
こういう昔話はさることながら、発見者たるの名誉はこれを全部くだんの羊飼いに帰するわけにはいくまい。
半分は何といっても最初にこのコーヒー豆を炒ることを思いついた者に与えなければならない。

ブリア=サヴァランの『美味礼讃』から、「コーヒーについて その起源」の章を。

コーヒーの起源を説明するカルディ伝説は、普通はヤギの話として語られてるように思うのですが、こちらの本では「羊」になってるので、とりあえず。サヴァランの原文でも羊なんでしょうか、これ。

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2012年05月09日

●ヴァチカン美術館所蔵、3世紀末の石棺

石棺 石棺(部分)

初期キリスト教の定番モチーフである善き羊飼いが彫られた石棺です。
石棺はいくつかご紹介したことがありますので、こちらでぜひ。

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2012年05月07日

●ラ・フォンテーヌ『寓話』より、「狼と子羊」

『寓話』より「狼と子羊」

強者の理屈はつねに通る。
すぐにその証明をするとしよう。

一匹の子羊が澄んだ流れで
喉のかわきをいやしていた。
そこへすきっぱらの狼、何かいい獲物はないかと現れた、
ひもじさにこの場所に誘われて。
「いつからこんなに厚かましくなった、おれの水を濁すとは」

原典のイソップ寓話「狼と仔羊」と、江戸時代の翻訳である『伊曾保物語』の「狼と羊との事」に対応する、ラ・フォンテーヌ『寓話』バージョンの「狼と子羊」です。引用は現代教養文庫版からなのですが、ギュスターヴ・ドレの挿絵をまとめて眺められるのが高ポイントです。

これまでにご紹介したラ・フォンテーヌの寓話は、こちらで。

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2012年05月05日

●「アフリカ農場物語」

遠く、コピの向こうで、息子のウォルドーが羊の番をしていた。
埃まみれの雌羊と仔羊の小さな群れだった。
ウォルドーは、赤い砂を頭のてっぺんから足の先までかぶり、ぼろの上着をまとい、なめしていない皮の靴からはつま先がのぞいていた。
帽子は大きすぎて目の上までずり落ち、黒く柔らかい巻き毛は、すっぽりとその中に隠れていた。
小さな奇妙な姿だった。
羊の群は、ほとんど何も問題を起こさなかった。
あまりの暑さに羊も遠くへは行かず、日陰を求めて小さなミルクブッシュの茂みの一つ一つに群がり、かたまってじっと立っていた。

19世紀南アフリカの女性作家オリーヴ・シュライナーの小説「アフリカ農場物語」を。作者の実体験に基づいた風景の描写が、物語に彩りをそえています。羊、多そうですね。

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2012年05月02日

●サン・イシドロ聖堂扉口彫刻

扉口彫刻のイサクの犠牲

父親アブラハムが中央軸を占め、右手に持つナイフで、自分の息子イサクを刺そうとしている。
彼の左手は、息子イサクの髪をつかんでいる。
彼らの左側には、神の大きな手が出てきて、犠牲の子羊を、代りに差し出している。
(略)
扉口で一番重要な場所とも言える半円のティンパヌムに、旧約聖書の物語が表現されるのは珍しい。
ここでは、《イサクの犠牲》を表現することにより、上部にある神の子キリストの象徴たる子羊の犠牲を、予示しているのである。

先日ご紹介した王家墓廟天井画に続いて、もうひとつ、レオンのサン・イシドロ聖堂を。聖堂扉口のティンパヌム部分にある、イサクの犠牲をモチーフにした彫刻です。
イサクの犠牲テーマについては、こちらでまとめてぜひ。

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2012年04月30日

●前涼の玉の臥羊

臥羊

前涼(314─376)
長15センチ

(略)
羊は遊牧民族の生活には欠かせぬ家畜であり、ここでは誇張した表現もなく、脚を揃えて臥した羊が親しみ深く表される。
玉は古来漢民族がことのほか愛玩したものであり、従って五胡十六国時代の玉器の出土は極めて稀であるが、これも前涼の張氏が漢族出身のためであったろうか。

 「中国 美の十字路展」カタログ 

甘粛省出土の、五胡十六国時代の玉器です。甘粛省博物館蔵。
玉の羊は、台北の故宮博物院のものをご紹介したことがあります。

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2012年04月27日

●ティツィアーノ 「聖愛と俗愛」

「聖愛と俗愛」 「聖愛と俗愛」(部分)

ティツィアーノの「聖愛と俗愛」です。遠景にこっそり羊の群れが。「ノリ・メ・タンゲレ」もこんな感じでしたね。ボルゲーゼ美術館所蔵。
これまでのティツィアーノは、こちらでぜひ。

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2012年04月24日

●レオン、サン・イシドロ聖堂天井画

「羊飼いへのお告げ」

明快なデッサンで形づくられた個々の形態は、いずれも軽妙で、生命感にあふれている。
構図と色彩、形態表現が相まって、全体に伸びやかで生き生きとした「牧歌的情景」を現出させたこの作は、スペイン・ロマネスクの成熟と洗練をありありと物語っている。

スペインはレオンのサン・イシドロ聖堂、王家墓廟の天井画のひとつである「羊飼いへのお告げ」です。

羊飼いへのお告げを描いたものは、時祷書をいくつかと、ブレイクレンブラントヤコポ・バッサーノなどをご紹介しています。

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2012年04月22日

●MOA美術館所蔵 「洋人奏楽図屏風」

洋人奏楽図屏風(部分)

貴族たちの田園での遊楽シーンはジョルジョーネの「田園の奏楽」を例にするまでもなく、文学でも古代ローマ時代からの主題であり、十六世紀には西欧各国で類似した文学作品も生れている。
(略)
そういうものに当時の日本人が親しむ機会があったとしたら興味ぶかいことであるし、そうでなくてもこのような主題は、日本画の「花下楽園図」「高雄観楓図」などとも共通する田園遊楽図として受入れられたと思われる。

ずいぶん以前になんどか触れたままになっている、日本画の小さな羊のお話をあらためて。MOA美術館所蔵の、桃山時代の屏風です。六曲一双のうち右隻の前景に、ミニサイズの羊たちがわらわらしてます。

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2012年04月19日

●ハンス・メムリンクの三連祭壇画

三連祭壇画 三連祭壇画(部分)

「聖カタリナの神秘の結婚」をご紹介したことのあるハンス・メムリンクの、ウィーン美術史美術館所蔵の三連祭壇画です。左側にいるのは洗礼者ヨハネですね。洗礼者ヨハネのお話はずいぶんしておりますので、まとめてこちらでぜひ。

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2012年04月17日

●略奪美術品としてのヘント祭壇画

その頃、ゲントの祭壇画やバウツの「最後の晩餐」を含む約2万点の絵画が消失しようとしていた。
戦争開始時にルーヴル美術館やその他の美術館の学芸員によって先導された美術品隠しのいたちごっこの大ゲームに影響されて、ドイツ軍は美術品保護の秘密の貯蔵庫を作った。
ゲントの祭壇画は、これらの中で最も大きかったザルツブルクの南東約75マイルにあるアルト・アウスゼーという小さなオーストリアの町の北方にある岩塩坑に隠されていた。
山中に1マイル以上入ったところにあるアルト・アウスゼーは、1年を通じて気温と湿度が低いために選ばれた。

(略)

1945年の春、連合軍がオーストリアに進攻したとき、地方のドイツ軍はアルト・アウスゼーの坑道に「大理石─落とすな」と書かれた梱包用の8つの箱を人知れず持ち込んだ。
その中には、実際には連合国の手に美術品が落ちることを防ぐために爆発させる予定だった爆弾が入っていた。

何度かお話をしているヘント(またはゲント)の祭壇画に関して。
いくども略奪や盗難の対象となったこの祭壇画の最後の災難は、ナチスドイツの略奪を受け、その敗北にともなっておそらくは処分されかけたことでした。よく無事でと思って見れば、感慨もひとしおです。

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2012年04月15日

●ダン・シモンズ 「エンディミオン」

とはいえ、〈教える者〉の年代記において、かつて彼女にいちばん近しかった使徒として名を記すには、やはり“羊飼い”の呼称がふさわしいにちがいない。
“羊飼い”ということばは、この年代記にバイブル的な趣きをもたらしてくれるだろう。
この呼び名に異存はない。だが、この物語において、ぼくは羊の群れではなく、かけがえのない大事な大事な一頭の羊だけを守護する羊飼いとして描かれるはずだ。
しかも、ちゃんと見張ることより見失うことの多い羊飼いとして。

以前ご紹介した、ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」の続編です。
タイトルロールであるエンディミオンの名前はジョン・キーツの同名の詩に由来しており、むやみに人生経験豊富な本編の主人公も、遊牧民出身者という一面を持っています。

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2012年04月13日

●中世ヨーロッパの羊のごちそう

家禽類や肉や魚を切ったり準備したり盛りつけたりすることにかんして、おびただしい決まりとさまざまな専門用語がありました。
(略)
仔鹿や仔山羊や仔羊の腎臓は一番初めに供されるご馳走で、そのときだけ、あばら骨一本を添えます。

(略)

レバーや砂嚢や咽や腸や心臓のような臓物は、それらを取り出した元の動物の中に詰めものとして入れる材料となりました。
豚や羊や魚から取り出された胃には肉や卵やスパイスが詰められて、近代のソーセージをしのばせるようなそれだけで独立した料理になりました。

(略)

また飾り用に工夫したアーモンドは、細かく切って羊の胃袋をとげだらけにして“やまあらし”や“針ねずみ”に似せて作るのに使いました。

『ガウェイン卿と緑の騎士』『カンタベリー物語』などを引きつつ、中世ヨーロッパの宴席を活写する『中世の饗宴』から、羊の出てくる部分を。

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2012年04月10日

●エドワード・ヒックス 「コーネル農場」

「コーネル農場」 「コーネル農場」(部分)

この作品は、「ペンシルヴェニア州バックス郡ノーサンプトンにあるコーネル農場の小春日和の日の光景。1848年10月12日、農業協会の報酬を得る。69歳のヒックス描く」という表題のついたヒックスの最高傑作の一点である。

(略)

前景の青々とした草と、クエーカー教徒の納屋の赤い屋根は、この素朴派の画家の平板なパターンに整えられた世界に、アクセントを与えている。
繁栄と調和の時を描いたこの作品は、ある意味で、楽観主義の頂点を迎えた、当時のアメリカの繁栄と幸福を象徴しているとも考えられる。

「ノアの箱舟」をご紹介したことのある、エドワード・ヒックスの「コーネル農場」を。

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2012年04月09日

●サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂のモザイク

栄光のキリストと聖母

ローマはサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂にある、12世紀のアプシス・モザイク、「栄光のキリストと聖母」です。

モザイク画は、ラヴェンナのものなどをご紹介したことがありますので、こちらでぜひ。

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2012年04月06日

●「皇帝マクシミリアン?世とその家族」

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デューラーの肖像画をご紹介したことのある神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世ですが、宮廷画家ベルンハルト・シュトリーゲルによる集団肖像画をあらためて。
左端がマクシミリアン1世、中央が以前ティツィアーノの肖像画をご紹介しているカール5世。ともに胸元に金羊毛騎士団勲章が下がっています。

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2012年04月03日

●「シレジウス瞑想詩集」

第一章 152 あなた自身が神の仔羊でなければならない。
キリスト者よ、あなた自身が神の仔羊にならねば、神が仔羊であることは何の役にも立たなくなってしまう。

第二章 95 仔羊にしてしかもライオン。
あらゆることを避け、あらゆることに立派に耐えている人は、その本質においては、仔羊であってしかもライオンであるにちがいない。

第三章 9 羊飼いたちに。
よき人々よ、あなたが馬小屋に入って神の子を見たとき、震える舌でいったい何を歌ったのか、神が子供になったのを見たのか、答えてくれ。幼児イエスが羊飼いの歌でもって、わたしからも讃美されますように。

第五章 164 神は仔羊だけを受け入れる。
神はすべての者が神の子になることを望んでいる。だがそれにもかかわらず、神に受け入れられるのは仔羊たちだけだ。

17世紀のキリスト教詩人、アンゲルス・シレジウスの「瞑想詩集」より、羊の出てくるいくつかを。

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2012年03月30日

●アントン・モーブ 「羊の群れの帰還」

「羊の群れの帰還」

モーブの作品の主題は、この《羊の群れの帰還》のような穏やかな田園的風景が中心で、羊の描き方などは、バルビゾン派の画家トロワイヨンの作風を思わせる。

19世紀オランダ、ハーグ派の風景画家アントン・モーブの「羊の群れの帰還」です。フィラデルフィア美術館所蔵。引用にあるトロワイヨンの絵は、これまでに多数ご紹介していますので、こちらでまとめてぜひ。

モーブは、フィンセント・ファン・ゴッホの遠縁かつ初期の師匠としても知られています。ゴッホは、ミレーの模写である「羊の番をする女」などをご紹介していますので、ご参考にどうぞ。

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2012年03月28日

●ヴァランタン・ド・ブーローニュ 「泉に寄る洗礼者ヨハネ」

「泉に寄る洗礼者ヨハネ」
「カラヴァッジョ 光と影の巨匠─バロック絵画の先駆者たち」

「エルミニアと羊飼い」をご紹介したことのある、17世紀フランスのカラヴァッジョ追随者、ヴァランタン・ド・ブーローニュの「泉に寄る洗礼者ヨハネ」です。

カラヴァッジョの洗礼者ヨハネは、これまでに、ボルゲーゼ美術館のものと、バーゼル美術館のものカピトリーノ美術館のものその追加記事などをご紹介しています。ご参考にぜひ。

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2012年03月25日

●ヒエロニムス・ボス 「東方三博士の礼拝」(メトロポリタン美術館)

「東方三博士の礼拝」 「東方三博士の礼拝」(部分)

ボスは何点かの《東方三博士の礼拝》を描いており、おそらくこの主題のもつ異国的性質が彼の怪奇趣味をそそったのであろう。
これは最も初期の作品とされ、人物描写にはまだぎこちない部分が見られるが、風景は後年に描かれたプラド美術館所蔵のより大型の祭壇画《東方三博士の礼拝》中央パネルの背景と類似している。

ヒエロニムス・ボスは、以前プラド美術館の「東方三博士の礼拝」のお話をしたことがあるのですが、こちらはメトロポリタン美術館の別バージョンです。
三博士を描いたものは、この他、ドメニコ・ヴェネツィアーノの「東方三博士の礼拝」をご紹介しています。

ひつじnews at 21:46 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月23日

●ジョージ・オーウェル 「動物農場」

スノーボールは、〈七戒〉がけっきょくはひとつの格言、つまり「よつあしいい、ふたつあしだめ」に要約できるのだと宣言しました。
かれが言うには、これは〈動物主義〉の根本原理をふくんでいるのであり、これを徹底して把握していれば、人間の影響を受けずにすむのだそうです。

(略)

ひつじはこの格言をひとたびおぼえてしまうと、たいへん気に入って、原っぱに寝そべるときなど、みんなして「よつあしいい、ふたつあしだめー! よつあしいい、ふたつあしだめー!」ととなえはじめ、何時間もえんえんとこれをつづけて、けっしてあきるということがありませんでした。

ジョージ・オーウェルによる、スターリニズム批判を目的とした動物寓話「動物農場」を。羊たちも出てきますが、スローガンを唱えて騒いでは議事を妨害する集団という、ちょっとあれな役回りです。

ひつじnews at 14:59 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月21日

●ジョヴァンニ・ベッリーニ 「聖母と祝福する幼な子キリスト」

「聖母と祝福する幼な子キリスト」 「聖母と祝福する幼な子キリスト」(部分)

15世紀イタリア、ヴェネツィア派の巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニの「聖母と祝福する幼な子キリスト」です。ブレラ美術館蔵。
ヴェネツィア派関連では、これまでに、ティツィアーノを多数、ヤコポ・バッサーノをいくつか、パオロ・ヴェロネーゼ「聖カタリナの神秘の結婚」ロレンツォ・ロット「羊飼いたちの礼拝」パルマ・イル・ヴェッキオ「聖家族と聖ヨハネ、聖女マグダラのマリア」などをご紹介しています。

ひつじnews at 21:03 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月18日

●『イソポのハブラス』より、「狼と羊の譬の事」

ある川ばたにおおかめも羊も水を飲むに、狼(おおかめ)は川かみに居、羊の子は川裾にゐたところで、
かの狼この羊を喰(くら)はばやとおもひ、羊のそばに近づいていふは、
「其方(そち)はなぜに水を濁らいてわが口をば汚(けが)いたぞ」といかつたれば、
羊のいふは、「われは水すそにゐたれば、なぜに川のかみをば濁さうぞ」と。

(略)

その時おおかめ「所詮問答は無?(むやく)ぢや、なんであらうともままよ、ぜひに汝(おのれ)をば、わが夕めしにせうずる」というた。
これをなんぞといふに、道理をそだてぬ惡人にたいしては、善人の道理とそのへりくだりも役にたたず、ただ權柄ばかりを用ようずる儀ぢや。

イソップ寓話のもっとも古い邦訳を。先日ご紹介した『万治絵入本 伊曾保物語』から、さらに少し時期をさかのぼった1593年、九州天草でイエズス会によって作られた『イソポのハブラス』より、『伊曾保物語』と同じく「狼と羊の譬の事」を引いてみました。
これまでのイソップ寓話関連は、こちらで。

ひつじnews at 21:36 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月16日

●古代オリエントの玉座肘掛け装飾部品(?)

玉座肘掛け装飾部品(?)

古代オリエントの玉座肘掛け装飾部品(?)

西アジア様式
クラスノダル地方クバン川流域ケレルメス第3号墳
紀元前7世紀
金・琥珀 鍛金 彫金 金粒細工 象嵌 19.2センチ

 「エルミタージュ美術館名品展 ─生きる喜び─」カタログ 

エルミタージュ所蔵のスキタイ美術を。
スキタイの黄金美術は、トヴスタ=モヒーラ古墳の胸飾りなどをご紹介しています。

ひつじnews at 20:50 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月14日

●アンリ・ルソー 「ピンクの服の少女」

「ピンクの服の少女」 「ピンクの服の少女」(部分)
 「アサヒグラフ別冊 美術特集 西洋編1 ルソー」 

19世紀フランス、アンリ・ルソーの「ピンクの服の少女」です。少女の両脇に、白黒一対の羊か山羊とおぼしき動物が。

ひつじnews at 16:34 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月12日

●ドメニコ・ヴェネツィアーノ 「東方三博士の礼拝」

「東方三博士の礼拝」 「東方三博士の礼拝」(部分)

風景に広汎に見られる細部描写と、それを際立たせている自然主義と狩猟への特別な嗜好は、とりわけピサネッロを通じてドメニコに及ぼされた北方絵画の影響である。
にもかかわらず、人物の造形性や確固たる姿勢、豊かな遠近法的知識に基づく形態や構図は、この作品がルネサンス芸術に属していることを示している。

15世紀イタリアのドメニコ・ヴェネツィアーノによる「東方三博士の礼拝」です。ベルリン美術館蔵。

ひつじnews at 19:41 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年03月09日

●完全無欠の羊は、パンダ顔

世界の生活情報サイト「ima」に記事を寄せておられる東畑様から、色柄がかわいい羊の品種「ケリーヒル」について教えていただきました。ありがとうございます。

ケリーヒル

羊なんだけど 目と鼻の周り、耳、足の先っぽがパンダのように黒なんです。
ケリーヒル(Kerry Hill) という品種で、ウェールズのケリーという村に起源をもちます。

丈夫で多産で高品質なウールがとれる、すばらしい品種とのこと。日本では今のところ扱われていないのですね。残念。

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2012年03月02日

●流行とカリカチュア

帝政下の帽子の流行 帝政下の帽子の流行(部分)

ヨーロッパの風刺画を集めた「諷刺図像のヨーロッパ史」から、フランス帝政下の帽子の流行に対するカリカチュア、「顔を見せない」を。
シンプルなシュミーズドレスに大きなボンネットを合わせるのが、当時の流行だったのでしょうか。羊の群れが雨宿りできそうなほどに。

ひつじnews at 17:36 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年02月29日

●『イソップ寓話集』より、「狼と羊」

お腹がいっぱいになった狼が、地面に羊の伸びているのを見つけたが、自分が恐ろしくて倒れたのだと知ると、側へ行き、安心させて、本当のことを三つ語ったなら逃がしてやる、と言った。
羊が口を切って言うには、まず第一に狼に出くわしたくなかった、次に、どうしても出くわす運命であったのなら、目の見えぬ狼であってほしかった、そして第三に、
「お前たち狼はみな、悪人相応にひどい死に方をすればよい。私たちから何も害を受けていないのに、ひどい戦いを仕かけてくるのだから」
狼は羊に嘘偽りはないと認めて、逃がしてやった。
真実はしばしば敵の中でも力をもつ、ということをこの話は解き明かしている。

イソップ寓話集から、「狼と羊」です。
これまでにご紹介しているイソップ寓話関連記事は、こちらで。

ひつじnews at 22:03 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年02月23日

●『万治絵入本 伊曾保物語』より、「狼と羊との事」

ある川の辺(ほとり)に、狼と羊と水を飲むことありけり。
狼は上(かみ)にあり、羊は川裾にあり。
狼、羊を見て、かの傍に歩み近付き、羊に申しけるは、「汝、何の故にか、我が飲む水を濁しけるぞ」といふ。
羊、答へて云く、「我、川裾にて濁すとて、いかで、川上の障りとならんや」と申しければ、
狼、又云く、「汝が父、六ヶ月以前に、川上に来て水を濁すによつて、汝が親の咎を汝にかくるぞ」といへり。
羊、答へて云く、「我、胎内にして、父母の咎を知る事なし。御免あれ」と申しければ、
狼、怒つて云く、「それのみにあらず。我が野山の草を恣(ほしいまま)に損ざす事、奇怪なり」と申しければ、
羊、答へて云く、「いとけなき身にして、草を損ざす事なし」といふ。
狼、申しけるは、「汝、何の故に悪口(あくこう)しける」と怒りければ、
羊、重ねて申しけるは、「我、悪口をいふにあらず。その理(ことわり)をこそ述べ候へ」といひければ、
狼の云く、「詮ずる所、問答を止めて、汝を服せん」といひける。

その如く、理非を知らぬ悪人には、是非を論じて栓なし。
只、権威と堪忍とをもつて、むかふべし。

イソップ寓話のお話をもう少し。
日本にこれほどイソップ物語が浸透しているのは、江戸初期という非常に早い段階でその翻訳が普及したことが、大きな要因であろうと思われます。
こちらは、その翻訳である「伊曾保物語」から、「狼と羊との事」を。以前ご紹介した「狼と仔羊」に対応するお話ですが、内容教訓ともに、少し手が加えられているようです。

ひつじnews at 21:36 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年02月22日

●『イソップ寓話集』より、「羊飼の悪戯」

羊飼が羊の群を村から遠く追って行きながら、いつもこんな悪さをした。
大声で村の人に助けを求めては、狼が羊を襲いに来た、と言ったのだ。
二度三度は村人たちも慌てて飛び出して来て、やがて笑いものにされて戻って行ったが、とうとう本当に狼が来てしまった。
羊の群が分断され、羊飼は助けを求めて叫んだが、村人はまたいつもの悪さだと思って、気にもかけなかった。
こうして羊飼は羊を失ってしまった。
嘘つきが得るものは、本当のことを言った時にも信じてもらえぬこと、ということをこの話は解き明かしている。

先日の、星新一「オオカミがきた」のフォロー記事を。元ネタのイソップ寓話、「羊飼の悪戯」です。

イソップ寓話は、これまでにもいくつかご紹介しておりますので、こちらで。

ひつじnews at 20:15 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年02月18日

●「モンタイユー」

ピエールもその仲間も、たえず長旅をしていて、妻子も家も持たない。
動産(貨幣・羊群……)については、比較的に豊かであるが、多くの家財を買いためるわけにいかない。
足手まといの財産も定住者なら身辺に集めるが、羊飼いは移動しなければならないから限度がある。
ピエールはいつも「ものを持ち運びできるぎりぎりの範囲で」動いており、品物を集めず、むしろわずかを望むだけで、自分の欲望なり「消費志向」を他の形の「豊かさ」─これが家庭の代用となる─に変える道を選んだ。
すなわち、高原の放牧場や居酒屋での愛人とのかりそめの出会い、生れながらの兄弟や義兄弟、あい親、純粋の友情、仲間の結成に基づくゆたかな人間関係の網が心をたのしませる。
完全に心を開いて運命を受け入れた─そもそも、これが恩寵の定義ではなかっただろうか─からこそ成立つ、このような生活様式は善き羊飼いの気にいっている。
運命とは、目的地である。
彼にとって、自由とは羊のことなのだ。

(略)

この自由とは、気が向けば、異端審問が衣服に縫いつけさせた黄色の十字架を、高地の斜面の藪に投げ捨てることでもある。
ピエールには閑暇があるし、時には持場も離れる。
病気、寒気、苦しい旅など、みじめな日常を理想視するわけにはゆかないが、しかし羊群にも、自分や仲間にも、いつでも食物は見つかる。
乳、肉、チーズなど、蛋白質が不足することはない。

多くのカタリ派帰依者を出し、異端審問の悲劇を味わった、14世紀ピレネーの小村モンタイユー。しかしながらその審問記録は、過剰なほど尋問を重視した異端審問官ジャック・フルニエによって、結果的に社会史の貴重な史料ともなりました。
引用は、異端として記録に残されたモンタイユーの人々のうち、羊飼いのピエール・モリの生活を語る「羊飼いの気質」の章から。魅力的な人物とその人生観は、本書のなかで、ある種の救いとして描かれているように思われます。

ひつじnews at 21:06 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年02月17日

●シャルル=エミール・ジャック 「羊に水を飲ませる羊飼いの女」

「羊に水を飲ませる羊飼いの女」
 「ドラクロワからムンクまで 19世紀ヨーロッパ絵画の視点」 

シャルル=エミール・ジャックの「羊に水を飲ませる羊飼いの女」を。ボストン美術館所蔵。
これまでのジャックはこちらで。かぶってません……よね?

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2012年02月14日

●セガンティーニ 「11月の寒い日」

「11月の寒い日」

セガンティーニの初期の絵画は、しばしばフランスの画家、ジャン=フランソワ・ミレー(1814─75)の作品と比較される。
しかしながら、ミレーは、農民たちの苦労の多い日常生活をより無愛想に記録し、自らの作品を社会批判と結びつけようとした。
(略)
しかしミレーとは異なって、セガンティーニは、物語的(ナラティヴ)な和やかさを保っていて、その描写によって同情的な感情よりも哀愁の感情を呼び起こしている。

 「アルプスの画家 セガンティーニ ─光と山─」展カタログ 

19世紀イタリア、ジョヴァンニ・セガンティーニの「11月の寒い日」を。これまでにご紹介したセガンティーニはこちらで。
ミレーのこれまで分も、ご参考にこちらでぜひ。

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2012年02月09日

●フランソワ・ブーシェ 「水飼い場」

「水飼い場」
 「ブーシェ、フラゴナール展」カタログ 

フランソワ・ブーシェの「水飼い場」です。
これまでのブーシェはこちらで。

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2012年02月08日

●景泰藍の羊形尊

羊形尊

羊形尊 12.7センチ

七宝焼きに似た中国の工芸品、景泰藍の器です。明の景泰帝の頃に最盛期を迎えたことから、作品の時代を問わずこのように呼ばれるとのこと。

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2012年02月06日

●敦煌出土仏伝図断片(諸獣誕生)

諸獣誕生

絹本着色
上部 縦18.0 横19.0  下部 縦24.0 横20.0
中唐?晩唐
大英博物館

悉達多太子が誕生した日に五百の諸獣が同時に誕生した物語を表す仏伝図幡の断片である。
この主題を表す作例としては、第十七窟(蔵経洞)将来の作品中、唯一のものである。

 「砂漠の美術館─永遠なる敦煌」展カタログ 

敦煌莫高窟の出土品です。上段に羊の母子が。

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2012年02月02日

●アントニオ・マリネッティ 「少年と羊」

「少年と羊」

全国六都市を巡回中の「世界遺産ヴェネツィア展」を見に出かけたところ、思わぬ羊に出会ってしまいましたので、ご注進です。18世紀、アントニオ・マリネッティによる「少年と羊」、コッレール美術館所蔵。

こちらの展覧会は、このあと、2012年3月4日(日)まで名古屋市博物館、3月17日(土)?5月13日(日)宮城県美術館、5月26日(土)?7月16日(月・祝)愛媛県美術館、7月28日(土)?9月23日(日)京都文化博物館、10月6日(土)?11月25日(日)広島県立美術館を巡回するようです。

ひつじnews at 18:34 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年01月29日

●ディルク・ファン・ベルヘン 「農家の生活」

「農家の生活」 「農家の生活」(部分)
 「オランダ絵画─栄光の17世紀」展カタログ 

17世紀のオランダ、ハールレムの風景・動物画家ディルク・ファン・ベルヘンの「農家の生活」です。牛や馬、山羊などとともに、手前に羊も。シュベリン国立美術館所蔵。

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2012年01月27日

●ツツジと羊と羊躑躅

植物名の多くを中国から借用している事実があるにもかかわらず、万葉植物の考証過程で中国本草学の記述は詳細に検討されることはなく、とりわけ近代の考証家にその傾向は著しい。
古代日本が邦産植物に漢名を充てようとしたのは、東アジア文化圏において漢名が現在の学名(ラテン名)に相当する機能をもっていたからにほかならない。

(略)

『本草経集注』(陶弘景)にある「花苗、鹿葱に似て、羊其の葉を誤食すれば、躑躅(てきちょく)して死す。故に以て名と為す」という記述はきわめて有力な情報を与えてくれる。
躑躅(てきちょく)は「たちもとおる、ゆきもどりつする」という意味であるから、羊が葉を食べると、足が麻痺、萎えて竦むことを示唆し、羊躑躅という名もこれに由来するというのである。

(略)

中国では躑躅花は羊躑躅(トウレンゲツツジ)の花であり、(略)邦産ツツジ類で躑躅花の代用となり得るのは、トウレンゲツツジの変種であり、形態が酷似して有毒であるレンゲツツジをおいてほかはない。
(略)
ツツジのすべてに毒性があるわけでなく、ほとんど無毒のツツジも少なからずあり、中には山菜のように消費されるものがある。
(略)
ツツジの花冠を食べる習慣がかなり古くから始まったことを示唆する間接的な証拠なら、室町時代に成立した『塵添壒嚢鈔』巻九に見ることができる。
それによれば、「羊ノ性ハ至孝行ナレハ此花ノ赤キ莟(つぼみ)ヲ見テ母ノ乳ト思テ躑躅シテ膝ヲ折リテ之ヲ飲ム故ニ云」とあり、これは羊躑躅の語源を説明したものであるが、「赤キ莟」とあるから花冠は赤色であり、また中毒を起こすとは一言も触れていないから、レンゲツツジのことでないことは明らかである。
この『陶景注』と似て非なる語源説は、赤い花冠のツツジすなわちヤマツツジやサツキを食べても安全であることをいわんとしているように見え、漢籍の記述を大きく変質させていることから、日本で発生した俗話であることはまちがいない。
現在の日本では、躑躅は広くツツジ科ツツジ属種を表すが、中国ではトウレンゲツツジとその近縁種だけを指し、そのほかのツツジにこの字を用いることはない。
有毒なツツジ類とそうでないのを区別しているからであろう。

「一休、あて字を訓み給ふ事」モチツツジと羊の関係「和漢三才図会」などをご紹介しつつもいまひとつすっきりしない、「躑躅」の語源のお話をもう少し。万葉植物の考証事典に混乱の原因について明快な説明がありましたので、引用を。

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2012年01月25日

●シャルル=エミール・ジャック 「森の中の羊飼いと羊の群れ」(山寺後藤美術館)

「森の中の羊飼いと羊の群れ」 「森の中の羊飼いと羊の群れ」(部分)
 「山寺後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展」 

これまで数多くご紹介しているシャルル=エミール・ジャックをもうひとつ。
ジャックの羊は姿かたちに愛嬌があって大好きなのですが、構図タイトルが似過ぎていて、ご紹介済みかもしれないと毎回不安になるのがいかんともしがたい感じです。

ひつじnews at 20:55 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2012年01月22日

●『ジャータカ』より「羊問答」

羊と犬は、
「さて、われわれはどうして生きていったらよいものか」
と生きるすべを考えた。そして、羊が言った。
「もしわれわれが協力して暮らしていければ、いい考えがあるよ」
「それを話してみてよ」
「お友だちさん、きみはこれから象小屋へ行きなさいよ。
『犬は草なんか食べない』と[思って]象番はきみに疑いをかけることはないだろう。
きみはぼくが[食べる]草をもってくる。
ぼくは[王の]台所へ入って行く。
『羊は肉なんか食べない』と[たかをくくって]、料理番はぼくを疑わない。
ぼくはきみが[食べる]肉をもってこよう」

(略)

王はかれらがなかよくしているのを見て、考えた。
「ああ、わしは、いままで見たことのない光景を見てしまった。
羊と犬はたがいに敵であるのに、なかよく暮らしている。
このことを取りあげて難問とし、賢者たちにたずねてみよう。
この難問を解けなければ国外追放としよう。

仏教の本生譚『ジャータカ』の「大トンネル前生物語」より、「羊問答」を。
世尊の前世である賢者マホーサダが仕える王様がもちだす、理不尽な難問のひとつです。

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2012年01月20日

●串田孫一 「雲」

雲が羊の眞似をしているうちに
眞似が上手になり過ぎて
ちょっと厄介なことになりましたね
あなたが
あの羊の一匹を撫でたいというのなら
こちらへ呼んでみることも
出來ましょうが
私は呼び方に
自信があるわけではありませんから
群れたまんま
押し寄せて來るかも知れません
北の國の廣い草原を
そこに小徑があってもなくても
一列二列になって
殆どあたりを見廻すこともなく
宿命に從って歩いて來るあの羊たちとは
少し違っていることに
早く氣が附いて下さい

先日の「羊飼の星」に続いて、串田孫一をもうひとつ。もとは放送台本とのことですので、音読すると楽しいかもしれません。

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2012年01月17日

●星新一 「オオカミがきた」

そしてまもなく、ついに本物のオオカミがあらわれた。
オオカミの群れは、少年とヒツジとどちらがうまそうか、見くらべて舌なめずりをしている。
少年はそれに気づき、瞬間的に考えた。
前述のごとく、彼の頭は悪くない。村人たちが「もう演習にはあきた」と話しあい、だれもかけつけてくれないだろうと想像した。
そこで、少年は大声でこう叫んだ。

星新一版イソップ物語、「いそっぷ村の繁栄」より、「オオカミがきた」を。毒気のあるオチと教訓がこのあとに続きます。……なんて叫んだと思います?

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2012年01月15日

●串田孫一 「羊飼の星」

戦争の末期、一九四五年の夏、厄介になっていた農家の隅で、ひと目を気にしながら殆ど隠れるようにして読んでいたフォントネルの本の中に、金星のことを「羊飼の星」と呼んでいるところがあった。
後に大きな百科事典を使えるような状態になってから確かめてみると、「羊飼の星」という項目があって、羊飼は山にいて、宵に夜明けに出る金星を安易に見られるから、という説明があった。
それ以来、金星を見れば同時に「羊飼の星」という呼び方を想い出すし、そのためにこの星が一段と身近なものになって来たのだった。
人々が時計を持つ時代になっても、羊の群と共に過ごす山上の生活者にはそれは不要である。
というのは、時を知る時計があれば、時に合わせて開き、また時が来れば閉じる花がある。
それを誰が名附けたとも知れず「羊飼の時計」と呼んでいる。
金星にこんないい名前を附けたのは、いつ頃のどんな人であったのかは、誰も知らないが、羊飼自身でなかったことは確かであろう。

串田孫一の随筆「羊飼の星」から。

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2012年01月13日

●『和漢三才図会』より、「羊躑躅」

羊躑躅(れんげつつじ)

黄躑躅(こうてきちょく) 老虎花(ろうこか) 黄杜鵑(こうとけん) 驚羊花 玉枝 羊不食草 鬧羊花(どうようか)

(略)

『本草綱目』(草部毒草類羊躑躅[集解])に次のようにいう。
羊躑躅(ようてきちょく ツツジ科)は集落近くの諸山にはみな生えている。
小樹で高さ二尺。葉は桃の葉に似ていて、三、四月に花を開く。
黄色で凌霄花(りょうしょうか 蔓草類紫葳)に似て五弁、蕊・弁はみな黄色で、気味はみな悪い。
花[辛、温、大毒がある] 羊はこの葉を食べると、足をばたばたさせ地を蹴って死ぬ。

 思うに、羊躑躅[和名は以波豆豆之(いはつつじ)、また毛知豆豆之(もちつつじ)ともいう]は、『本草綱目』の諸説に拠ると、今いう蓮華躑躅(れんげつつじ)である。

モチツツジのお話の続きです。以前、「羊」の項目をご紹介した「和漢三才図会」より、「羊躑躅」の項を。
典拠が中国の「本草綱目」なので、レンゲツツジを説明するものになっているようです。

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2012年01月10日

●ネパール移牧社会の民族誌

出産直後の仔羊は森林の中で迷いやすいため、母羊の放牧中も群れから隔離する。
羊飼いは群れを放牧に出す時間になると、総出で仔羊を母羊のもとからとりあげる。
彼らは宿営地のまわりで仔羊を1カ所にまとめ、その上からグムラーリという毛布を1枚かけて身動きができないようにする。

(略)

放牧から帰った羊飼いが最初にするのが隔離した仔羊を母羊のもとへ連れてゆくことである。
この時に頼りになるのが羊の名称である。
たとえば、彼らはカーギー・ジブリー・ハーシー(耳の長い・首筋に黒い模様のある・白い羊)の仔はスッドゥー・ハーシー・パティ(全身白い・メスの仔羊)という具合に、出産した仔羊と母羊の名を一緒に覚えている。

ネパールの牧畜社会を精細にたどった民族誌から、仔羊の育成に関する章を。
基本の色柄、そのバリエーション、ツノや耳の状態などを組み合わせた名前をつけることで個体識別をしており、新人牧夫の最初の仕事は羊たちの名前を覚えることなのだとか。たいへんそうです。すごく。

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2012年01月06日

●14世紀フィレンツェの十字架

十字架 十字架(部分)

裏側は、表のキリスト像の光輪に当たる場所に神秘の子羊が表され、その周囲に四福音書記者の象徴、すなわち聖ルカの牡牛、聖ヨハネの鷲、聖マルコのライオン、聖マタイの天使が配されている。

 「フィレンツェ─芸術都市の誕生」展カタログ 

14世紀中頃のフィレンツェで作られたと考えられている金工美術品です。裏側に神の子羊。
神の子羊があしらわれた工芸品というと、バーゼルの聖体顕示台や、クロイスターズ美術館蔵の十字架などをご紹介したことがあります。

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2012年01月04日

●モチツツジ(続き)

「羊」も「餅」もともに神に捧げるものであったことが注目される。
羊が犠牲獣となった背景には諸説あるが、そのおとなしい性格(殺される時にすら羊は従順である)も一つの理由である。まるで植物のように。

(略)

また「羊躑躅」と「もちつつじ」の結びつきはモチツツジの毛茸(もうじょう、細かい毛)の多い葉にあるかもしれない。毛茸は羊の毛を連想させる。

先日の、「一休、あて字を訓み給ふ事」で謎を残してしまった「モチツツジ」と「羊」の関係について、西川照子『神々の赤い花』の一章、「羊躑躅─羊は植物だった」より。
ちなみに、中国では「羊躑躅」はトウレンゲツツジに相当するようで、こちらについては、その有毒性のために「誤って食べた羊が躑躅(てきちょく)として死ぬ」との語源説が与えられています。
なお、おとなしい犠牲獣としての羊については、馬琴の「烹雑の記」で触れたことがあります。

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2011年12月31日

●ダニエル・リッジウェイ・ナイト 「ロルポワーズの羊飼いの女」

「ロルボワーズの羊飼いの女」
 「ブルックリン美術館所蔵 バルビゾン派の画家たち展」カタログ 

大晦日ですね。静かな心持ちになれそうな、「ロルボワーズの羊飼いの女」を。19世紀アメリカ、のちフランスに移住した、ダニエル・リッジウェイ・ナイトによるものです。

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2011年12月28日

●ヘシオドス 「仕事と日」

獣らは身震いして尾を股の間に入れる、
柔毛がその皮を覆っている獣でもな。
胸毛の厚い獣をすら、氷のごとき寒風は吹き通すのだ。
北風は牛の皮も吹き通す、その皮も風を防ぐことはできぬ。
また毛長の山羊も吹き抜けるが、ただ羊のみは、
その豊かな毛のゆえに、さすがに強い北風も決して吹き通すことはない。

「神統記」冒頭をご紹介したことのある、ヘシオドス(ヘーシオドス)「仕事と日」を。農事暦のなかに、真冬の家畜たちの様子を描いた一文が。

ひつじnews at 18:41 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2011年12月26日

●『シャー・ナーメ』より、「火の祭りサデ」

「火の祭りサデ」 「火の祭りサデ」(部分)

『シャー・ナーメ』からの一枚で、初期サファヴィー朝時代の代表的なペルシア人画家スルタン・ムハンマドが描いた「火の祭りサデ」を見てみよう。
伝説のペルシア王フーシャングが、突然現れた大蛇を殺そうと石を投げると、蛇は逃げたが、石が岩に当たって火花が散った。
王はこうして火を作る方法を発見し、神に感謝を捧げ、家臣や動物を集めて宴会を開いた。
これが、後にサデと呼ばれるようになった火の祭りの起こりであり、スルタン・ムハンマドの細密画はこの宴会の様子を描いたものだ。

そして夜がくると、山のように高々と火を燃やし、王は臣民とともに火を囲み、この夜を祝って酒をのんだ。
あかあかと燃えるこの夜に王のあたえた名が「サデの祭」。その祭がフーシャング王を記念して今もなお残っている。
(略)
彼はまた神よりあたえられた力と王権によって、牛・ロバ・羊を手におえぬ野生ロバや鹿から分け、生活に役立ちうるものを活用した。

イランの叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』を描いた、サファヴィー朝のころの細密画と、「王書」の相当部分を。同時代のものとして、「子羊をかつぐモーゼ」をご紹介しています。

ひつじnews at 17:38 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2011年12月23日

●ルイス・F・デイのキャビネット

キャビネット キャビネット(部分)

アーツ・アンド・クラフツ展協会の1888年の第1回展で展示された、約12点の家具の一つ。
(略)
デイ(1845─1910)は刺繍に特別熱心だったが、テキスタイル、陶芸、壁紙などのデザイナー、あるいはアーツ・アンド・クラフツ運動の思想家としての方が有名である。

イギリス/1888年頃
ヴィクトリア&アルバート美術館

19世紀イギリス、アーツ・アンド・クラフツの家具を。ルイス・F・デイによる、黄道十二宮の装飾がついた刺繍用キャビネットです。白羊宮の部分に、棒馬ならぬ棒羊で遊ぶ子どもの絵が。

ひつじnews at 21:16 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2011年12月20日

●『マビノギオン』より、「エヴラウクの子ペレドゥル」

そこでペレドゥルは馬を進め、苦患の王の子らの宮殿にたどりついた。
入っていくと、出迎えるのは女ばかりである。みな立ち上がって、彼を歓迎した。
物語をするうちに、鞍をおいた軍馬がもどってきたが、鞍には死骸が横たえてあった。
ひとりの女が立っていって、鞍から死骸を下ろし、扉の下にあった湯の器をもってきて清め、高価な香油を身体に塗りつけた。
すると男はよみがえって、起きあがり、ペレドゥルのそばに来て、挨拶し、嬉しそうな顔をした。
(略)
翌朝、若者たちは起き出して出かけてゆき、ペレドゥルは、かれらの愛する女人のためにも、同行させてくれるよう頼んだが、断られた。
「あなたがここで殺されても、よみがえらせるものがありませぬ」
みなはそう言ってでかけ、ペレドゥルはあとについていった。

(略)

やがて川の流れる谷があり、そのへりには木々が茂っており、川の両岸には平らな草地があった。
こちら岸には白い羊が、向こう岸には黒い羊の群れがいた。
白い羊のどれかがメエと鳴くと、黒い羊の一頭が川を渡ってきて、白い羊になった。
黒い羊がメエと鳴くと、白い羊が川を渡ってきて、黒くなった。

以前触れたマビノギオンに出てくる羊のお話をあらためて。独特の生命観の例として挙げられていたものですが、羊の谷を通って化け物退治へ向かうまでの経過が、また不可思議です。

ひつじnews at 18:42 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2011年12月14日

●ラリックのカーマスコット 「雄羊の頭」

カーマスコット

雄羊の頭 1928年

マスコットはスカットル(ボンネットと車室をつなぐ部分)かラジエーターキャップ部分に装着されました。
価格は当時大きな作品で約7ポンド、小さな作品は約3ポンドでした。
今現在の価格に換算すると10万?20万円くらいに相当するのではないかと考えられます。

交通機関の発達と伴に旅行やスポーツが社交生活に取り入れられた1920年代の後半から30年代にかけて、ラリックは自動車のボンネットを飾るカーマスコットや豪華列車、大西洋横断豪華客船の内装など交通関係の仕事を手掛けました。
当時の自動車はラジエーター・グリルがフロントに露出していて、冷却水を注ぎ入れる注ぎ口のキャップの上に車種を象徴するマスコットをつけることが流行りました。
ラリックのマスコットはガラス製で特定の車種を想定したものではなく、オーナーの好みによってどんな車にもつけられる個性的なアイテムでした。

先日、牡羊のランプをご紹介したルネ・ラリックの作品をもうひとつ。
トヨタ博物館に常設展示されているコレクションを見学に行ってきたのですが、猪や馬のマスコットと同じケースに飾られてました。ので、おそらく猪突猛進のイメージで作られたものではないかと。

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2011年12月12日

●「富岡恋山開」(続き)

「富岡恋山開」舞台上の羊

大切な品物や密書、証文の類を鳥や犬が銜えていったり、破ってしまったりするのは歌舞伎の類型だが、その役を紙を食べる習性の羊にさせたところに斬新さがあり、観客は喜んだ。
賑やかな辻打の合方を使い、猥雑な雰囲気を舞台一杯に醸し出す見世物小屋のシーンは、次なる文化文政期に四代目鶴屋南北が得意としたところである。
上方から下った五瓶が、時代の観客の好みを素早く掬み上げ、彼らを喜ばせるコツを熟知していたことが、見世物小屋の道具を飾って羊を働かせた写実の趣向に表れている。

 松竹歌舞伎会 月刊会報誌「ほうおう」2006年4月号 

羊が活躍する唯一の歌舞伎、「富岡恋山開」について教えてくださった「Mary & Wool」のしつじ様から、さらに追加情報をいただきました。ありがとうございます。

歌舞伎会の会報2006年4月号に「歌舞伎博物館 動物篇 第27回 羊 文・服部幸雄」と題された記事があり、平成12年12月国立劇場にて上演された「富岡恋山開」のひつじ写真が掲載されているとのこと。ふさふさしてて、かわいいです。

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2011年12月10日

●『閲微草堂筆記』より、「牧童と大蛇」

一人の牧童が羊を飼っていた。
ところが毎日、一匹か二匹はいなくなってしまうので、主人からひどく叱られた。
そこでよく注意しながら様子を見ていると、二匹の大蛇が山の襞から出て来て羊を吸いこみ、食ってしまうのである。
大きさは甕ほどもあって、とても立ち向える相手ではなかった。
牧童はひどく口惜しがり、父親と相談して、山の襞に大きな刀を立てておいた。
すると計略どおり、一匹の蛇が腹を裂かれて死んでしまった。

中国清代、紀昀による怪異譚『閲微草堂筆記』より、「牧童と大蛇」を。
二匹の大蛇のいっぽうを退治した牧童と父親は、しばらくはもう一匹を警戒していました。半年たってもうよかろうと放牧地に戻ってきたところ……?

同時代の怪談集に、袁枚の『子不語』があります。ご参考にぜひ。

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2011年12月04日

●『続一休咄』より、「一休、あて字を訓み給ふ事」

「いったいこの鳥羊と申しますものは、いまだかつて承ったことがありません。薬材にでもあるのでしょうか、あるいはひょっとすると菓子の類ではないでしょうか。よくよくお考えください」と言うので、
一休和尚も少しの間考えをめぐらされて言うことには、
「なんともまあ思いも寄らないあて字であることよ、ちょっと判読しかねたのも当然だ。これは鳥刺に用いる鳥黐(とりもち)のことだ」とおっしゃった。
しかし、その男は不審そうな表情で、「鳥羊と書いて黐と読みましょうか」と言うと、
「そうは読めない字を宛てるから宛字というのだ。
そもそもあのつつじということ、まだ花開かぬつつじのつぼみが乳頭に似ているので、これをみた羊が転がるように近づいていくとか言う。
だから『羊躑躅(ようてきちょく、羊が伏しつ転びつする)』と書いて、『もちつつじ』と訓読する。
その人は何かの字尽(じづくし)の一紙に『羊躑躅』に『もちつつじ』と仮名がついているのを見て、『羊』という文字は『もち』と読むものと理解して、鳥と言う文字と羊という文字で『黐』の意味に用いたのではと思いついたのだ」とおっしゃった。

一休宗純を主人公とし、現在に続く「とんちの一休さん」のイメージのもとともなった江戸期の読み物のひとつである、『続一休咄』より、「一休、あて字を訓み給ふ事」です。
判読できないなあて字をされた注文書を受け取った人物が、和尚に相談に来る場面です。これは「黐(とりもち)」を送ってくれということだろう、辞書に載っていた「羊躑躅(もちつつじ)」の読みについて誤解したのだ、との推理が披露されています。
「もち」と「羊」がどこでつながるのかについてが判然としないのですが、モチツツジの鳥もちのような粘着性、つぼみが乳頭に似ていることによる「タルルチチ」語源説、和漢三才図会にある礼を知る子羊の話などが参考になるかと思われます。

この記事は、ak様から情報をいただきました。ありがとうございます。

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2011年12月02日

●ギデオンの羊毛

ギデオンは神に言った、
「あなたがかつて言われたように、わたしの手によってイスラエルを救おうとされるならば、わたしは羊の毛一頭分を打ち場に置きますから、露がその羊の毛の上にだけあって、地がすべてかわいているようにしてください。これによってわたしは、あなたがかつて言われたように、わたしの手によってイスラエルをお救いになることを知るでしょう」。
すなわちそのようになった。
彼が翌朝早く起きて、羊の毛をかき寄せ、その毛から露を絞ると、鉢に満ちるほどの水が出た。
ギデオンは神に言った、
「わたしをお怒りにならないように願います。わたしにもう一度だけ言わせてください。どうぞ、もう一度だけ羊の毛をもってためさせてください。どうぞ、羊の毛だけをかわかして、地にはことごとく露があるようにしてください」。
神はその夜、そうされた。すなわち羊の毛だけかわいて、地にはすべて露があった。

 旧約聖書 士師記第六章 

旧約聖書の士師記より、自覚の乏しいままに指導者となるべく召命を受けてしまったギデオンが、神を試す場面を。

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2011年11月30日

●12世紀装飾写本の「ノアの箱舟」

「ノアの箱舟」 「ノアの箱舟」(部分)

ウンベルト・エーコ「芸術の蒐集」から、12世紀装飾写本の「ノアの箱舟」を。どうも納得のいかない生き物がまざってる気がしますが、羊は普通に羊のようです。

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2011年11月28日

●時祷書 「羊飼いへのお告げ」

「羊飼いのお告げ」

時節柄ということで、「羊飼いへのお告げ」を描いた、15世紀スペインの時祷書です。

時祷書は、「ベリー侯の豪華時祷書」「ワーンクリフの時祷書」などで、羊飼いへのお告げを描いたものをご紹介しています。

ひつじnews at 22:06 | Category : ひつじ話 | 関連書籍?

2011年11月27日

●「赤い羊は肉を喰う」

「いいことでもあったのか?」
「まあね」
電話口から、理香子の可愛らしい笑い声が漏れてくる。
「─ねえ、赤い羊って見たことある?」
突然、理香子はそう訊いた。
「赤い羊?」
どういうわけか、偲は背筋がぞくっとした。いるわけがない動物の存在を、さらりと口にした理香子。彼女の中では、その存在に違和感がない証拠だ。
「そうよ。あたし、今日見ちゃった」

五條瑛の小説を。ジャンルとしては、サスペンスでしょうか。冒頭、主人公の女友達が謎めいた言葉を残して失踪する直前の場面です。

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2011年11月26日

●『転身物語』より「カエサルの昇天」

いたるところで地獄の鳥である梟が、不吉な予兆を告げた。
多くの場所では、象牙の神像が涙をながし、神聖な杜では、哀泣の声やおそろしげな叫びが聞えたといわれる。
いくら犠牲をささげても、よい兆しはあらわれず、その臓腑は、大きな変事が近いことを予示し、なかでも肝臓の先端は、剣のために切りつぶされていた。

先日ご紹介した、エトルリアの肝臓占いについて、もう少し。オウィディウスの「転身物語(変身物語)」より、ユリウス・カエサルの暗殺が描かれる「カエサルの昇天」を。
その大きさによって吉凶を判断するべき部分が切りつぶされていることが、大凶のしるしとなっているようです。

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2011年11月22日

●ラリックのランプ「牡羊」

ランプ「牡羊」

1931年
マントルピース用ランプ、ニッケルメッキを施した金属製オリジナル台付

 「アール・デコ光の造形 ルネ・ラリック美術館ガラス・コレクション選集」 

ルネ・ラリックのガラスのランプを。

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2011年11月18日

●エトルリアの肝臓占い(続き)

「ピアツェンツアの肝臓」の名で知られるこのブロンズ製の羊の肝臓は、表面が四十の区画に分かれていて、それぞれが天界の区分に相応し、その主である神の名前が記されている。
卜占師にとって右側が吉兆の部分、左側が凶兆の部分となっていて、突起部から落ちる日の影によって占ったらしい。

(略)

肝臓は左右の葉に分かれ、さらに葉間切痕と呼ばれる裂け目によって多くの肝葉に分かれる。
とくにその一つである尾状葉を「頭」と見て、卜占が行われたのであった。
ローマの卜占官にもなった政治家キケロは、あらゆる角度から丹念に熟慮し、この「頭」が見つからないときは、これ以上悲惨なことが起こることはない、と判断したと伝える。

ローマと長いこと敵対していた民族に対して意外な措置に見えるかもしれないが、征服後ただちに元老院は天変地異に関してローマ国家の必要に応えうる、エトルリアの臓卜師団を組織した。
(略)
キケロ(『占いについて』第一巻九二)とウァレリウス・マクシムス(第一巻一章)は、ローマがトスカーナ全都市の名門一族に対し、青年を臓卜師として養成するよう求めたことを明記している。
(略)
臓卜師の成功は公式宗教の分野だけにとどまらなかった。
私営の臓卜師が続々と登場し、見料をとって大衆に助言を与えた。
後四世紀末のカルタゴで、のちの聖アウグスティヌスは当時まだ学生だったときに臓卜師に助言を求めた(『告白』第四巻二章)。

ピアツェンツァの肝臓肝臓をもつ人物像をご紹介しているエトルリアの肝臓占いについて、概説書からいろいろと。

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2011年11月16日

●「富岡恋山開(とみがおかこいのやまびらき)」

木戸  エエ、それじゃア、あなたが聞き及びました三十間堀の、玉屋の新兵衛さんでござりますか。
新兵  アイ、わしゃア新兵衛でござるが、こなさんは、この神明や浅草でよく見る顔じゃが、内の金太郎と何を争っていなさるのだ。
木戸  な