金羊毛の正体(続き)。

ギリシア人はもともと商才にたけた民族だった。
男どもは早くから海へ乗り出して交易に従事すると同時に、各地に植民市を建設した。
わけても前750─前550年は「大植民時代」といわれるほど、おおぜいの人間が本土をはなれて、小アジア・黒海沿岸・西部地中海北岸などへと植民した。
(略)
ギリシアの交易商人たちは、じつは、彼らの活動の黎明の時期から、毛皮に対しては格別な関心を持っていたと思わせる証拠がある。
それは、あのアルゴー船の伝説である。
ギリシア神話のなかでもとくに古いと考えられているこの伝説は、イアソンがいわゆる<金羊毛>を求めて同志とともにコルキスの国へ渡ったという筋書きであることは、ご承知のところだろう。
<金羊毛>を文字通り黄金色をした羊の毛皮と解する向きもあるが、羊ではなくクロテンの毛皮だとする、はなはだ魅力的な意見も提案されている。
事実、クロテンのなかには黄褐色の被毛のなかに銀毛をまじえて、黄金色に見えるものがある。
そして、一行が出かけていったコルキスというのは、現在の黒海南東岸地方のことで、ヴォルガ川からカスピ海の水運を利用して運ばれてきたウラルからの商品が、カフカス山脈南面の陸路を越えて黒海に達する場所にあたっていた。

アポロドーロスの「ギリシア神話」アポロニオス「アルゴナウティカ」オウィディウスの「転身物語」などでお話している、ギリシア神話の金羊毛伝説。
この「金羊毛」の正体について砂金説などをご紹介しているのですが、こちらの「毛皮と人間の歴史」によると、クロテンの毛皮説というものもあるようです。

ひつじ話

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