第66回正倉院展

ひつじ話

平成26年10月24日(金)?11月12日(水)まで、奈良国立博物館にて開催される「第66回正倉院展」にて、以前ご紹介したことのある白石鎮子が展示される模様です。ご縁があれば、ぜひぜひ。

会 期 平成26年10月24日(金)?11月12日(水) 全20日
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 会期中無休
開館時間 午前9時?午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月24日?26日、10月31日?11月3日、7日?9日)は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで

正倉院宝物のお話はときどきしておりますので、こちらで。

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二代歌川広重 「横濱賣物圖會之内」

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横濱賣物圖會之内 
万延1 大判 錦絵揃物 37.0×73.3センチ
1859年以前の横浜は湿地に位置する一介の村にすぎなかった。
1858年の日米修好通商条約に続く英、仏、露、闌の四カ国との条約締結が、この小さな村に突然の変化をもたらした。
(略)
人種の坩堝と化した横浜は、即座に日本人の好奇心をかきたて、時代に敏感に反応した浮世絵師の中には、横浜絵の制作に積極的に乗り出す者がでてきた。
横浜絵は1860年から62年にかけて盛んに制作され、500点以上の図絵に街の景観、異人やその風俗が描かれている。

 「キヨッソーネ東洋美術館所蔵 浮世絵展」カタログ 

先日来お話している羅紗に関して、もう少し。
幕末に描かれた浮世絵の一種横浜絵に、異人の風俗として、乗馬する女性や「唐犬」とともに「ラシャメン」が描かれています。
ラシャメンとは羊の別称で、羅紗綿あるいは羅紗緬と書きます。江戸から明治にかけての日本はウール製品の国産化を目指していましたから、それを強調した呼び名ではないかと。

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ギネス記録を持つ羊。

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ヒツジ競争では、ランボルギーニと名づけられたヒツジが断トツにすごい。
2011年1月生まれ、このウールの旋風くんはハイウィカム(イギリス)のオッズ・ファーム・パークで179レース中165レースに勝った。
トラックは長さ約250m(820フィート)で、ハードルやヘアピンカーブが設けられていた。

先日、羊毛の量で世界一を目指すショーン君のお話をしたのですが、ふと世界記録を持つヒツジには他にどんな子がいるんだろうと気になりまして、「ギネス世界記録」を繰ってみたところ、「ヒツジ競争で最も勝利したヒツジ」が掲載されていました。
同じ名前の車にも名前負けしてはいないようです。

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福沢諭吉 「羊飼ふ子供狼と呼びし事」

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羊飼ふ子供狼と呼びし事
羊の番する子供ありて、或日なぐさみに同村の者を驚かさんと思ひ、「おほかみおほかみ」と呼はりて走りければ、村の人々は狼の来りて羊に掛りしことならんと心得て、忙はしくかけ出し、その場に至り見れば何事もなきゆゑ、つまらぬことなりとてこの子を叱りて銘々の家に帰りたり。
その後数日を過ぎ、現に狼いで来りて群りたる羊へ飛掛りければ、子供はあわて、村に帰りて「おほかみおほかみ」と声を限りに呼び叫べとも、村の物は落付はらひ、最早二度はだまされぬぞとて見向く者もあらず。
解説
福沢は『窮理図解』『世界国尽』『啓蒙手習之文』『学問のすゝめ』初編、『童蒙教草』(どうもうおしえぐさ)などの子供向き著作を相次いで刊行しているのであるが、どれも子供に解りやすいようにと、話し言葉の語彙を多量に取り入れた文体を用いたり、挿絵をふんだんに入れたりするなど、工夫をしながら、人として必須と思われる知識を提供したのであった。
本書に掲載した「イソップ物語 抄」は、『童蒙教草』から採ったが、『童蒙教草』の原本はスコットランドCHAMBERS社刊行の“THE MORAL CLASS-BOOK”であって、もとはイギリスの少年向け道徳書である。
したがって原文は英語で、キリシタンの宣教師たちが十六世紀に日本に伝えたイソポのファブラスとはいささか趣を異にしている。

福沢諭吉の「童蒙教草」より、イソップ寓話のいたずらな羊飼いのお話を翻訳したものを。いろんなことしてたんですね、福沢諭吉。
イソップ寓話の最古の日本語訳である「イソポのファブラス」については、「狼と羊の譬の事」をご紹介しています。

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葛飾北斎 「麦藁細工報状」(部分)

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麦藁細工報状 版画 大判 太田記念美術館
文政三年(1820)二月に、浅草奥山で興行された麦藁細工による、見世物の内容を伝えるために版行されたものである。
この時の興行では、出し物の下絵を北斎が描いて、大評判であった。

葛飾北斎の版画を。同時代人である猿猴庵の「新卑姑射文庫」には糸細工の十二支が出てきましたが、見世物のモチーフに十二支を使うというのは、この頃によくあることだったのでしょうか。
北斎は、これまでに二、三ご紹介していますので、こちらで。

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コナン・ドイル 「白銀号事件」

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「ちかごろになって羊に何か変ったことはなかったかね?」
「へえ、大したこともございませんが、三頭だけどういうものか脚の具合が悪くなりましたんで」
ホームズは大そう満足らしかった。
にこりと笑って、しきりに両手をこすり合せていた。
「大胆な想像だよ、ワトスン君。非常に大胆な想像があたったよ。
─グレゴリーさん、羊のなかに妙な病気が流行しているのは、大いにご注意なすったらよいと思いますよ。じゃ、御者君、やってください」

少し前に「緋色の研究」のお話をして以来、個人的にシャーロック・ホームズづいていたのですが、羊の出てくる事件がもうひとつありましたので、引き続いてご紹介を。『シャーロック・ホームズの思い出』所収の「白銀号事件」です。この羊が、事件の解決に絡んでわりと重要な要素になるのですよ。

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司馬遼太郎 「胡蝶の夢」

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ついでながら、この時期から八、九年も経ったあとで、幕府はその所有する洋式陸海軍に洋式の制服を着せることになるのだが、そのころになると、服装についての社会的反撥はさほどのものでなくなっていた。
しかしいまの時期、伝習生に洋服を着させれば、かれら自身の生命が、おそらく保証されがたい結果になることはあきらかだった。
もっとも、伝習生のあいだでは、舶来の黒ラシャの生地で羽織をつくることがはやっていた。
ラシャは戦国期から日本が輸入しつづけていた生地で、かつては陣羽織に用いられた。
この時代、長崎でそれを買えば、江戸・大阪よりも安くもあり、良順も勝麟太郎も、このラシャ羽織をはおっていた。
このめだたぬ「洋化」は、「いわば陣羽織の心意気だ」という口実があったから、あまり攘夷感情を刺激せずに済んだ。

先日、羅紗の陣羽織は江戸期の武家の必需品だったというお話をしたのですが、それに関連して、ak様から司馬遼太郎の幕末小説を教えていただきました。ありがとうございます。
引用は、物語の重要な舞台のひとつである長崎海軍伝習所の風景。袴姿で歩兵訓練を受ける伝習生たちの微妙な心理が描かれています。

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南都銀行本店のレリーフ

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先日、INAXライブミュージアムに展示されている朝日生命館(旧常磐生命館)のテラコッタを見に行ったおり、建物の状態でこうした装飾を見たいと思ったのですが、そういえばまさにそういうものが、奈良市に一軒ありました。
近鉄奈良駅から南へ数分、三条通と東向商店街の交差する角に建つ、南都銀行本店です。
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登録有形文化財 南都銀行本店
1926(大正15)年建築  1997年7月15日登録
南都銀行本店は、正面にイオニア式の列柱4本を並べ、細部に装飾を施しています。
古典様式を簡潔にまとめた好例で、設計者は多くの銀行建築を手掛けた長野宇平治です。
窓枠や内装は改修されていますが、外観は当初の姿がよく保存されています。
奈良市教育委員会

南都銀行本店前案内板より

こちらの列柱の下の方に、花綱でつながれた羊の頭が。
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上の写真は三条通に面した部分ですが、東向商店街がわの壁にもこのように。
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花綱文様については、いちどお話したことがありますね。豊かな感じが銀行建築に似合ったのでしょうか。

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朝日生命館(旧常磐生命館)のテラコッタ

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先日訪れたINAXライブミュージアムですが、じつはもうひとつヒツジスポットが存在します。
「タイルが伝える物語」展が開かれている「世界のタイル博物館」そばの別館「建築陶器のはじまり館」。
こちらの屋外展示エリア「テラコッタパーク」に、ヒツジがあしらわれたテラコッタがあるのです。
せっかくなので、ちょっと回って行きましょう。
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1980年の解体まで東京日比谷にあった朝日生命館(旧常磐生命館)の外装なのですが、下の方に気になるものが。
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持ち送りが羊の頭と棕櫚で構成されてます。
建ってるときに見たかったですね、これ……。

テラコッタに見る装飾のモチーフ
螺旋状の勇敢な角をもった雄羊は、力強さや創造的なエネルギーを表しています。
さまざまな神とともに登場し、一般に生け贄の動物として、大地を肥沃にするとも考えられています。

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19世紀オランダのタイル

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愛知県常滑市にあるINAXライブミュージアムに行ってまいりました。
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目的は、こちらで2014年8月26日(火)まで開催中の「タイルが伝える物語?図像の謎解き」展です。
ヒツジのひそむタイルがいくつか見受けられるなか、「イサクの犠牲」モチーフとおぼしきものがありましたので、下に。タイルの下部に、「GEN」(Genesisの略。創世記の意)と出典が示されているのが特徴のようです。

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藍彩聖書画面タイル
オランダ、19世紀 390×655ミリ

イサクの犠牲のお話はときどきしておりますので、こちらで。
「タイルが伝える物語?図像の謎解き」展は、この後、LIXILギャラリー大阪に巡回が予定されているようです。2014年9月4日(木)?11月18日(火)。お近くならば、ぜひ。

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ミレー 「ゆりかご」

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 「バルビゾンから印象派」展カタログ 

ジャン=フランソワ・ミレーの「ゆりかご」です。仔羊と仔牛に見守られて眠る、どこか神秘的な幼子の姿。
ミレーのお話はひんぱんにしておりますので、こちらで。

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ジャック=レイモン・ブラカサ 「海辺の羊」

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ブラカサの作品は、18世紀に貴族階級からもてはやされた狩猟画とは異なり自然景観のなかでたたずむ羊や牛たちの姿を精緻にかつ情感ゆたかに描き出したところに特徴がある。
ブラカサが生み出したこうした作品は、新しいスタイルの動物画として、トロワイヨンをはじめとする次代の画家たちに大きな影響を与えた。

 「バルビゾンから印象派」展カタログ 

19世紀フランス、ジャック=レイモン・ブラカサの「海辺の羊」です。影響を与えたとされるトロワイヨンのお話はよくしておりますので、こちらでぜひ。

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江戸期の羅紗の陣羽織

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陣羽織は、戦国時代に生まれ、桃山時代を経て江戸時代末期に至るまで、武家が常備しておくべきものとして、刀や甲冑とともに常に用意されていたものでした。
(略)
江戸時代中期から後期にかけての作品と考えられる陣羽織に用いられている生地は、表地には毛織物が用いられ、このうち羅紗が最も多く、呉絽がこれに次ぎ、ヘルヘトワンがさらにそれに次ぎます。
またフェルト(獣毛を踏みつけ絡み合わせて布状にしたもの)も多くはありませんが含まれています。
(略)
フェルトも含めてこれらの羊毛製品は、木綿製のオランダ更紗とともに、長崎のオランダ商館を通じて輸入されていたと考えられます。
長崎奉行所管理のオランダからの輸入裂の見本帳には、これらの陣羽織に使用されているものに類似する羊毛製品やオランダ更紗が貼り込まれているからです。

先日の「日本幽囚記」平賀源内の事業などでお話している江戸中後期の羅紗に関して。動物の羊には無関心なのに羊毛製品には興味があるという状況は、こうして生まれたもののようです。
引用の陣羽織は、19世紀の「緋羅紗地丸紋付陣羽織」。緋色は戦国時代以来好まれ続けた人気色です。

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ジャン=フェルディナン・シェノー 「宵の明星」

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 「ミレーとバルビゾン派の画家たち」展カタログ 

バルビゾン派を。ジャン=フェルディナン・シェノー(シェニョー)の「宵の明星」です。
シェノーはなんどかご紹介しておりますが、なかでも「夕暮れ」が似た雰囲気ですね。

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遠浪斎重光 「寿という獣」

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江戸後期の浮世絵師、遠浪斎重光の「寿という獣」です。十二支の動物を合成しためでたい獣「寿」、という趣向。あごひげが「未」とのこと。やっぱりヤギと混ざってるんですね、江戸の羊認識って……。
浮世絵は、これまでに歌川国芳などをご紹介しています。ご参考にぜひ。

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