ゴローニン 「日本幽囚記」

「西洋では何の毛で羅紗を織るか」
日本側に羊の話をすると、ムール君は牡羊を描かされ、それから山羊を描き、遂には驢馬や、騾馬や、馬車や、橇などまで描かされた。
一口に云ふと、日本側では日本に居なくて、実物を見られない物は何でも紙に描いてくれと云ふのであつた。
しかし日本側ではいつでも非常に鄭重に頼むので、ムール君もその依頼をすつかり満足させるのは退屈で辛いことではあつたが、拒む気にならなかつた。
ムール君が非常に速く、自由に絵を描けたのは、同君のために幸ひであつた。

以前、江戸期にロシアへ漂流した日本人たちの記録である「環海異聞」「北槎聞略」をご紹介したことがあるのですが、同時代に日本にとらわれたロシア人の記録もまた存在し、ヴァーシリー・ゴローニンの「日本幽囚記」として知られています。
上の引用は、抑留中に受けた尋問(と呼ぶにはあまりに楽しそうな質問)のひとつ。絵心のある部下がえらい目にあってます。

ひつじ話

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