トマス・モア 「ユートピア」

『(略) しかし、以上のべたことだけが窃盗の多い唯一の必然的な原因ではありません。私の考えますところでは、もう一つ、あなた方イギリス人だけに特有な原因があります。』
『といわれますと、一体それは何でしょうか』と、ここで枢機卿はいわれました。
 
『他でもありません(と私は答えました)、イギリスの羊です。以前は大変おとなしい、小食の動物だったそうですが、この頃では、なんでも途方もない大喰いで、その上荒々しくなったそうで、そのため人間さえもさかんに喰殺しているとのことです。おかげで、国内いたるところの田地も家屋も都会も、みな喰い潰されて、見るもむざんな荒廃ぶりです。(略)』

トマス・モア「ユートピア」第一巻より、モアが登場人物の口を借りて主張した、16世紀イギリスの囲い込みに対する批判の部分です。土地を追われた農民たちが飢えるか盗賊として絞首台にのぼるかしかなくなっているという事態に対して、「羊が人を食う」という言い回しが使われています。

ひつじ話

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