パウル・ブリル 「洗礼者ヨハネのいる風景」

ひつじ話

senreisya131130.jpg
senreisya131130bubun.jpg
パウル・ブリル
1554(アントワープ)─1626(ローマ)
17世紀初頭の風景画の大家。オランダとイタリアとの間の重要な橋渡しをする。
(略)
マニエリストの巧みな資質に恵まれ、アンニーバレ・カラッチのしっかり構成された様式を熟知したことや、とりわけ1610年代にローマで出会ったエルスハイマーのおかげで自然の魅力に開眼したことが、彼を絵画的に心地よく釣り合いのとれた田園風景画の一様式へと導き、それが17世紀に彼に大きな成功をもたらした。
また光の表現における彼の感覚と繊細さはクロード・ロランの傑作に先駆けている。

パウル・ブリルの「洗礼者ヨハネのいる風景」を。
上の引用で影響関係が示唆されているカラッチについては「エジプトへの逃避」を、エルスハイマーは「洗礼者聖ヨハネ」及び「洗礼者ヨハネと天使たちのいる聖家族」をご紹介しています。クロード・ロランについては、まとめてこちらで。
また、洗礼者ヨハネを描いたものを数多くご紹介しておりますので、こちらでぜひ。

記事を読む   パウル・ブリル  ...

シャルル=エミール・ジャック 「池畔で羊の番をする牧童」

ひつじ話

hitujinoban131128.jpg

 「ミレーとバルビゾン派の世界」展カタログ 

シャルル=エミール・ジャックの「池畔で羊の番をする牧童」です。水辺でこっちを見ている子羊がたまりません。
これまでにご紹介したジャックは、こちらで。

記事を読む   シャルル=エミー ...

カードゲーム 「ひつじがいっぴき」

ひつじグッズ

先日の「シェフィ」に引き続いて、カードゲームをもうひとつ。
繊細にして愛らしいことこの上ないイラストが楽しめる、「ひつじがいっぴき」です。

いっしょに、あそびたいの
「ひつじがいっぴき」は、ひつじの数を数えながら手札を出していき
手札がなくなったら勝ちになる、簡単なルールのカードゲームです。
カードには、ひつじの家族たちの3篇のお話が描かれています。
ゲームと一緒にお楽しみ下さい。

ippiki131126.jpg
絵柄や内容からしてファミリー向けですね。イラストにはなにも説明がついていませんので、小さなお子様と一緒にお話を作りながら楽しむのも素敵かと。ぜひ。

記事を読む   カードゲーム 「 ...

カードゲーム 「シェフィ」

ひつじグッズ

発売されたばかりのカードゲーム「シェフィ」を手に入れました。

このゲームはフリーゲームサイトの作者・ポーン氏がデザインした1人用のカードゲーム。
プレイヤーの目的は、ひつじを操り、様々なイベントを起こし、1匹のひつじを1000匹に増やすこと。
味のある絵柄で描かれたかわいいひつじたちと、容赦なくひつじの数を減らすイベントの取り合わせが魅力的な、シビアなソリティア・ゲームだ。

力とは、数が多いことだ。
数は、多いほどより増える。
数は、誰が数えても変わらない。
数はこの世を定める楔だとおもう。
産めよ。増やせよ。地に満ちよ。
諸方の大地に繁栄し、黄金の蹄で踏みならせ。
災厄の訪れを霊感で聞き、万能の運びをもて対策せよ。

 「シェフィ」あそびかた 

世界観の凝った一人用ゲームで、ヒツジがモチーフ。全面的に大好物です。というわけで、さっそくひろげてみました。
shephy131124.jpg
全カード絵柄が違うのが嬉しいですね。狼、嵐、落雷とシビアなカードが多いのは世界観的に納得できるんですが、メテオって。
ルールはシンプルですが、うっかりやめどきを失う魅力があります。秋の夜長に、ご縁があれば、ぜひ。

記事を読む   カードゲーム 「シェフィ」

アレクサンドル・アンティーニャ 「羊飼いの女」

ひつじ話

hitujikainoonna131119.jpg
産業革命が拍車をかけた社会の貧困に心を痛めたアンティーニャは、貧しくそして勤勉な大衆の姿を、忠実に断固たる姿勢で描いた。
(略)
1858年、ジョルジュ・サンドが特に好んだ、クルーズ県、ガルジレスに滞在する。
これは、画家が社会問題や田園地方に強い関心を抱いていたことと無関係ではない。

 「ブザンソン美術館展」カタログ 

19世紀フランス、ジャン=ピエール=アレクサンドル・アンティーニャの「羊飼いの女」です。ジョルジュ・サンドの「ジャンヌ」「魔の沼」のヒロインたちは、絵にすればこのような感じなのでしょうか。

記事を読む   アレクサンドル・ ...

装飾写本の中のフィリップ善良公

ひつじ話

tosinoseikatu131117.jpg
tosinoseikatu131117bubun.jpg
都市の生活
『エノー年代記』より  ロワゼ・リーデット制作
1461年頃 ブラッセル、王立図書館 蔵
ブルゴーニュ侯の宮廷は元来、フランス中部の都市ディジョンに置かれていたのだが、候領の一部であったフランドルの商業経済の発展とともにブリュッセル(現ベルギー)へと移っていく。
全盛期のブルゴーニュ候国は商業立国としての性格を強く持つに至っていたのである。
それ故都市の活況を描写する絵画がフランス本国に先がけて発展した。
これがすなわち、後のフランドル風俗画の源流である。

15世紀フランドルの装飾写本です。中央に金羊毛騎士団勲章をつけたフィリップ善良公が。
善良公は、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの肖像画をご紹介しています。
金羊毛騎士団のお話はずいぶんしておりますので、こちらで。

記事を読む   装飾写本の中のフィリップ善良公

「鏡の国のアリス」(続き)

ひつじ話

編み物をする羊
このとき、かたわらでしわがれた笑い声が聞こえたので、白のクイーンがどうかしてしまったのかとふり返って見てみると、白のクイーンではなく、ヒツジ肉がイスにすわっているのでした。
「わたしはここよ!」テーブル用のふた付きのスープ入れからさけび声がして、アリスがふり向くと、白のクイーンの人のよさそうな大きな顔がちょうどそのスープ入れのはしからニヤニヤッと笑うのがちらりと見えて、スーとスープのなかへ消えてしまいました。

先日、長浜のフィギュアミュージアムに展示されているティーカップにつかった「編み物をする羊」をご紹介したのですが、このフィギュアについて、ak様から、上に引用した場面との関連についてご指摘をいただきました。……おお! そういえば、編み物ヒツジは白の女王が変化した姿でした。
なお、フィギュアの元絵であるジョン・テニエルの挿絵をまだご紹介しておりませんでしたので、改めまして、こちらも一緒に。

記事を読む   「鏡の国のアリス」(続き)

「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」 3月

ひつじ話

sangatu131112.jpg
sangatu131112bubun1.jpg sangatu131112bubun2.jpg
三月、畑の耕作と葡萄の樹の手入れ
『ベリー侯の豪華時祷書』より
ランブール兄弟制作 1411─16年頃
シャンティイ、コンデ美術館 蔵
ベリー侯の豪華時祷書中の三月のカレンダーである。
天球には太陽の馬車が見え、星々のなかには、双魚宮(ピスケス、魚座)と白羊宮(アリエス、雄羊座)のしるしが見える。
(略)
左上の牧草地では二人の羊飼いと牧羊犬とが羊の群にたっぷりと草を食べさせている。

二月七月をご紹介したことのある、ベリー公のいとも豪華なる時祷書の暦から、三月を。
時祷書のお話は時々しておりますので、こちらで。

記事を読む   「ベリー公のいと ...

グリム『ドイツ伝説集』より「大口マルガレーテ・マウルタッシュ」

ひつじ話

チロル地方やケルンテン地方の人々は、マルガレーテ・マウルタッシュの幽霊の話をよく聞かせてくれる。
マルガレーテは遠い昔この国の領主だった。
たいそう大きな口をしていたので大口(マウルタッシュ)という綽名を頂戴していた。
(略)
オスターヴィッツの城からほど遠からぬところに一つの廃墟がある。
その傍らの草地で羊に草を食べさせていた羊飼で、ぼんやりしていて廃墟に近づいてしまい、鞭の一撃を食らった者は何人もいる。
そのためそこにはそれとわかる目印が立てられており、そこから先へは誰も羊を追って行くことはない。
羊の方も、何も知らない羊飼が目印を無視して追って行っても、そこに生えているよく茂った美味しそうな草を食べようとはしない。

先日の「人狼岩」につづいて、グリムの『ドイツ伝説集』から。14世紀のチロル女伯マルガレーテ・マウルタッシュにかかわる伝説です。

記事を読む   グリム『ドイツ伝 ...

フランシスコ・コリャンテス 「町の見える風景」

ひつじ話

matinomieru131107.jpg
matinomieru131107bubun.jpg
この画家の他の多くの風景と共に国王フェリーペ四世のために制作され、新築されたブエン・レティーロ離宮を飾ったものである。
(略)
また画面にはのどかで牧歌的な詩情が流れている。
それは、静穏かつ清澄な地誌的環境の描写を共通の特徴とする17世紀イタリア絵画の精神を何らかの形で継承した結果であろう。

 「16・17世紀スペイン絵画 エル・グレコ、ベラスケスの時代」展カタログ 

17世紀スペイン、フランシスコ・コリャンテスの「町の見える風景」です。

記事を読む   フランシスコ・コ ...

老女の小彫像

ひつじ話

roujo131105.jpg
ギリシャ、ヘレニズム時代後期、
紀元前1世紀 ブロンズ 高さ12.6センチ
かつてその手に持っていた物は現在失われているが、このひ弱そうな老女のポーズは、彼女が羊毛を紡いでいるところであることを示唆している。
(略)
さまざまな年齢や階級の人物をいろいろなポーズで表現することには、ヘレニズム時代(前323─30)に大きな関心が寄せられている。

古代ギリシャの彫像です。いっそ近代的と言いたいような現実味がありますね。

記事を読む   老女の小彫像

ジョルジュ・サンド 「魔の沼」

ひつじ話

「ジェルマンさんにうちの娘を連れていってもらえれば」
「一体どこへ? フルシュにですかな?」
「いいえ。フルシュじゃなく、レ・ゾルモまでですよ。そちらに今年いっぱいいることになったものだから」
「なんとまあ!」とモーリスのおかみさんが言った。「娘さんを手離しなさるとでも?」
「奉公に出て、いくらかでも稼いでもらわなきゃなりません。
(略)
レ・ゾルモの農家で羊飼いのいい働き口が見つかりましてね。先日、その農家の主人が市の帰りにここを通りなさって、村の共同牧場で三匹の羊の番をしている娘のマリを見かけて、『娘さん、ずいぶんと暇そうだね。一人の羊飼いに羊が三匹とはね。ところで百匹の羊の番をする気はないかね? あんたを連れて行ってあげよう。なに、うちで働いていた羊飼いの娘っこが病気になって、親もとへ帰ることになったのさ。一週間以内にうちに来てくれるならば、来年のサン=ジャンの祝日までということで、五十フラン払うとしよう』と言ったそうですよ。」

「ジャンヌ」「フランス田園伝説集」をご紹介しているジョルジュ・サンドの小説をもうひとつ。若くして妻を亡くした農夫ジェルマンと、純真無垢な羊飼いの娘マリの純愛を描く「魔の沼」です。引用は、物語冒頭、二人が連れ立って短い旅をすることになる場面。

記事を読む   ジョルジュ・サンド 「魔の沼」

PAGE TOP