オウィディウス 「祭暦」

さて、このとき、太陽にまなざしを上げれば、こう言うことができるでしょう。
「この太陽は昨日はプリクススの羊の毛皮を踏んでいた。」
穀物の種子を焼いた罪深き継母の奸計のせいで、苗が、いつもとは違い、芽をひとつも出しませんでした。
鼎のもとからたしかなお告げを聞いて帰るようひとが送られます。
不作の大地にデルピの神がどのような救いを教えるか知りたかったのです。
ところが、この使者も種子同様に腐り切っていて、ヘレと若殿プリクススの命をお告げは求めている、と伝えます。
ついには、種蒔きの時期も迫り市民とイノが王の反対を押し切って、非道な命令を認めさせました。
プリクススと妹の二人は、額を髪飾りでおおい、並んで祭壇の前に立つと分かち合う悲運を嘆きます。
これを、たまたま天から垂れ懸かっていた母親が目にし、驚愕した手でむき出しの胸を打ちました。
雲を引き連れ、大蛇から生まれた都へと飛び降りると、そこから自分の子供たちを救い出します。
そして、逃げおおせるよう、黄金の輝きまばゆい牡羊を授けます。
牡羊は二人をのせて長い海路を通ってゆきます。

ずいぶん前に、オウィディウスの「転身物語」金羊毛にかかわる物語をご紹介したことがあるのですが、こちらは同じくオウィディウスによる、日々の暦に従って万象を語る『祭暦』からの一章です。
「三月二十三日」の章に、「三月二十二日から太陽が牡羊座宮に入ったことの表現」(訳注より引用)である「プリクススの羊」の一文のあと、牡羊座のもとになった黄金の羊がプリクススとヘレの兄妹を救う伝説が語られています。

ひつじ話

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