「犯罪」

警察は駅に問い合わせをし、伯爵の邸を家宅捜索し、誕生パーティの客全員に事情聴取した。
ザビーネの行方は一向に知れなかった。
監察医が葉巻ケースのなかにあった目玉を調べた。羊の目玉だった。フィリップの衣服に付着していた血も動物のものだった。
フィリップが逮捕されてから数時間後、ひとりの農民がまた家の裏手で羊が殺されているのを発見した。
農民は羊を肩に担いで、雨のなか、野道を歩いて交番までやってきた。
毛皮が水を含んでずっしり重く、血と雨水が農民のジャケットからしたたっていた。

フェルディナント・フォン・シーラッハの、実話をもとにした短編集『犯罪』の一編、「緑」を。
妄想にとりつかれて羊を殺しつづける青年フィリップ。彼の友人であるザビーネが行方不明になったことから、フィリップは殺害容疑を向けられますが……。

ひつじ話

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