中世の旅

《こうして彼と愛に対する世の讃美は次第に生まれていった。
彼と仲間はどこへ行っても村やちっぽけな場所に近づけば、羊飼いは羊の群れを放り出し、先立って急いで走り、人びとに彼の到着を告げた》。
この件りはニュースや噂の伝わり方をかい間見せてくれる。
(略)
羊飼いは使者に適していた。
彼らは逞しく、辛抱強く、食料、衣服、宿に関しても欲がなかった。
地理をよく心得ていた。毎年家畜を遠路平野から山脈へ、時には山越えまでして駆り立てるさすらいの羊飼いは―南仏ではピレネー山脈越えしてカタロニアへ行ったように―道も小径も知っており、数か国語に通じていたろうし、きっと途中の人とは知り合いだったろう。

中世ヨーロッパにおける旅行者たちのありようを網羅した「中世の旅」から、12世紀の遍歴説教師聖ノルベルトの旅に関する一章を。
羊飼いは旅行者たちからあてにされる存在だったようで、ほかにも、気候に関する章では、

陸の旅人は秋になると、二、三の状況によって恵まれていると感じた。
日はまだ長く、陽気も野宿できるほど暖かだし、道も乾き、高山の道でも夏の陽ざしで雪が融けたからである。
大勢の人びとが取り入れや葡萄摘みの仕事していたし、まだ羊飼いたちも彼らの群れとともに外にいたので、道路はかなり安全だった。

との記述が見られます。

ひつじ話

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