おあつらえの羊
羊というのはどうやら背中の毛を刈り取られるのが嫌いらしく、剪毛するための作業場に連れていかれることが分かると、とたんに不機嫌になるのである。
そうなったら、その羊を小屋から作業場に移動させるのは至難の業で、連れていく人が怪我をするという事故も起こりやすい。
なにしろ牧羊の盛んなオーストラリアでは、羊の剪毛の職人が労働災害にあう割合が、ほかの職業の平均の六倍にも達するというのだ。
いったい、どうやったら、剪毛する羊を小屋から作業場に安全に連れていくことができるだろうか?
そのとおり! 羊を引っ張りやすいように、小屋と作業場をつなぐ廊下に傾斜をつけ、床の材質にも工夫を凝らせばよいのである。
いや、これはオーストラリアのバララット大学のジョン・カルヴナー教授が実際に考えたことで、教授は傾斜はどのくらいがいいのか、材質はどんなものにすればよいのか、試行錯誤を重ねて研究を行った(床の素材にはたとえば、木材やプラスチック、金属など、あらゆるものが試された)。
その研究の結果は、《応用動物工学》(33巻、523―31頁)に発表されているが、今日は特別に皆さんにも結果をお知らせしよう。
羊をいちばん引っ張りやすいのは寄木張りの床で、傾斜は10パーセントが最適である。
先日の人に角がはえる話に続いて、またしても雑学本から。まっとうな科学研究でありながら、なぜか一般人のツッコミ心をくすぐる研究例が集められた「変な学術研究」より、「おあつらえの羊」と題された一章を。
いやしかし、これは。ぜひこの著者には、バイオロジカル・ウール・ハーベスティングについても、一章を割いていただきたいところです。
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