牧羊用石造サイロ(滝川)

重厚で存在感のある石造サイロ
 滝川市の丸加高原展望台そばに、石造りのサイロがひっそりと建っている。
 サイロは1923年(大正12年)に滝川種羊場に建設された「第一サイロ」。サイレージ容量は100トン、高さ11・5メートル、直径5・45メートルの円筒形。綿羊1000頭分の冬季用飼料庫として建てられ、札幌軟石が使用された。デントコーンなど飼料作物を貯蔵して発酵させ、サイレージに調製する。
 道内で現存する最古の石造サイロは、北海道大(札幌)にある。12年に建設された旧札幌農学校のサイロで、「大正時代の石造サイロは道内で数例しかなく、滝川のような巨大サイロは珍しい。本道酪農史でも貴重な遺構」(池上重康・北大大学院助手)という。
 滝川と羊のかかわりは、06年の農商務省月寒種牛牧場の創設に始まる。第1次世界大戦に伴い、国が軍需羊毛の確保を図るため、綿羊100万頭を増殖しようと18年、全国5か所に種羊牧場を設置。滝川は道内で月寒(現札幌市豊平区)とともに選ばれた。世界恐慌で計画が縮小され、実質的に滝川だけが存続(月寒は滝川の分場)した。
 その後、道への移管を経て、戦後、道立畜産試験場(畜試)になった。羊毛・羊肉の輸入で役割も縮小、2000年に十勝・新得町の道立畜試に統合されるまで、国内最大の研究施設だった。数千頭の羊がいて、放牧風景など、滝川を代表する観光地でもあった。
 畜試は農家への綿羊の払い下げや品種改良などの研究を行った。元畜試場長米田裕紀さん(64)は「滝川は頭数や羊舎の規模など、研究拠点としては全国でも有数だった。品種改良のほか季節外繁殖、飼養などの研究を行ったが、輸入に押され、羊の需要が減少した」とさみしそうに語る。
 畜試は道民生活にも大きな影響を与えた。手織り機などで衣類を作るホームスパンや味付きジンギスカンの普及を担った。味付きジンギスカンで有名な松尾ジンギスカンの滝川創業にもつながった。
 サイロは72年まで使用された。解体話が持ち上がったが、地域のシンボルであることから、市が譲り受けて丸加高原に移設した。当時、畜試の管財係長だった北照夫さん(77)は「石造りの大型サイロが作れるのは官庁か民間の大農場だけ。保存されてほっとした」と思い入れを語る。
 畜試が統合されて数年を経て、羊舎など羊の面影は市内にほとんど残っていない。「綿羊王国・滝川」を象徴する数少ない建物は、今、丸加高原に放牧される羊を静かに見守っている。
 滝川市内の羊は、丸加高原に放牧されている10頭程度。サイロには展望用階段が設置されており、内部見学の申し込みは丸加高原伝習館へ。有名な松尾ジンギスカンのほか、市内の別の販売店でも味付きジンギスカンを扱っている。

ひつじ話

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