ヴァトー 「田園の愉しみ」

ひつじ話

「田園の愉しみ」 「田園の愉しみ」(部分)
これら二点の構図は非常によく似ている。
全体的な色調と大きさは全く違うのだが、構図上の類似のため、論者はまずシャンティイにある小さな作品が描かれ、次いでベルリンにある大きな画面が描かれただろうということで大まかな一致をみている。

以前、ベルリンはシャルロッテンブルク城蔵のアントワーヌ・ヴァトー「羊飼いたち」をご紹介したのですが、構図の類似から並べて語られることの多い「田園の愉しみ」をあらためて。シャンティイ、コンデ美術館蔵。

記事を読む   ヴァトー 「田園の愉しみ」

花鳥茶屋

ひつじ話

花鳥茶屋
寛政年代から江戸の浅草と両国とに、孔雀茶屋を初め鹿茶屋や珍物茶屋、又大阪の下寺町と名古屋の末広町とに、孔雀茶屋を開場した。
是等の茶屋は、動物園の先駆をなすもので、(略)呼声に釣られて庭へ通ると、正面に金網を張つて、其中に孔雀や鹿を初め、種々の名鳥を飼つてゐるので、看客は其前に備付けた床机に腰をかけ、茶を飲みながら緩々と見物したのである。

江戸の見世物としての羊について引用した、朝倉無声の「見世物研究」からもうひとつ。
明治になって動物園ができるまで、日本の都市部には、花鳥茶屋と呼ばれる珍獣珍鳥の展示場がありました。説明を読むかぎりでは、美しい鳥を愛でながらのんびりお茶を飲むところらしいのですが、参考図に描かれているのは羊か山羊に見えます。羊を愛でながらお茶……?
見世物の羊関連で、平賀源内「放屁論」もあわせてどうぞ。

記事を読む   花鳥茶屋

シャルル=エミール・ジャック 「羊」

ひつじ話

「羊」
ジャック,シャルル=エミール(1813―1894)
バルビゾン派に属する動物画家、版画家。
(略)
ミレーとテオドール・ルソーの奨めによってバルビゾン周辺の田園風景を描き始めたが、羊の群れ、牛、馬、豚、鶏等の身近な動物画を得意とした。
彼の描く動物は版画技法で身につけた緻密な観察力と優れた技巧に裏付けられており、対象の本質が力強い筆致で生き生きと描出されている。

 「松方コレクション展 ―いま甦る夢の美術館―」カタログ 

ひさしぶりに、シャルル=エミール・ジャックを。これまでのご紹介ぶんは、こちらで。

記事を読む   シャルル=エミー ...

ペロー 「羊になった羊飼い」

ひつじ話

ある日ティルシスは、愛の島であがめられている神に言いました。
「(略)
ああ、あのつれない羊飼いの娘から、あれほど大切にされている羊たちよ!
おまえたちの幸せな群れの中に、私も入ることが許されたなら!
そうすればおまえたちと同じように、フィリスに気に入られる幸せが味わえるものを……。」

シャルル・ペローの昔話集から、「羊になった羊飼い」の一節を。
自分の飼う羊たち以外のものを愛そうとしない、美しくて冷たい女羊飼いに恋をした主人公は、愛の神に祈って、羊の姿を手に入れます。彼女に飼われ、幸せな日々が続くかと思われたのですが……。
ペロー童話は、以前に「グリゼリディス」をご紹介しています。

記事を読む   ペロー 「羊になった羊飼い」

フィリップ・シドニー 「アーケイディア」

ひつじ話

夜の間、憩いの家になってくれた木陰から身を起こし、彼らは旅を続けました。
ほどなく美しい景色が見えてきて(ラコニアの荒涼とした地に飽きた)ミュシドウラスの目を喜ばせました。
天をつく大木の森で覆われた高い山々、低きにあっても生き生きとした銀のせせらぎで気持ち良く感じられるささやかな谷間、目にも麗しいありとあらゆる種類の花々で五色に彩られた牧場があり、快い緑陰を抱く茂みは、多くのさまざまな喉自慢の小鳥たちの快活な歌声でそこが茂みであることが分かりました。
どの牧場にもゆったりと安心して草を食む羊たちが群れをなし、愛らしい子羊たちは、母羊に甘えてめえめえと鳴いておりました。
こちらでは、羊飼いの少年が決して老いを知らぬかのように笛を吹き、あちらでは、若い羊飼いの娘が編み物をしながら歌い、まるで歌声は手を慰めて仕事を捗らせ、手は歌声にあわせて拍子を取っているようでした。

16世紀イングランド、フィリップ・シドニーパストラル・ロマンスを。遭難し、羊飼いたちに救助された主人公が、彼らの出身地である理想郷アーケイディアに案内される場面です。
フィリップ・シドニーとほぼ同時代には、シェイクスピアクリストファー・マーロウエドマンド・スペンサーといった人々が。ご参考にぜひ。

記事を読む   フィリップ・シド ...

「シモンとクリスマスねこ」

ひつじグッズ

二十四ひきの羊
この羊飼いは、おとなにまけないくらい、りっぱいに仕事をこなす少年で、数をかぞえるくらい、わけはありませんでした。
けれども、この二十四ひきの羊の数をかぞえるのは、やっかいなことでした。
どうしてかというと、羊の群れのなかに、一ぴきの強情な羊がいたからです。
(略)
「メェー、メェー、やーだよ。かぞえてなんかほしくない!」
ほかの羊たちは、最初のうちは、おとなしく羊飼いにかぞえさせていました。
ところがそのうちに、もう一ぴきの、べつの羊もわがままをいいだしたのです。

レギーネ・シントラー文、ジータ・ユッカー絵の児童文学を。
クリスマスまでの二十四日が待てないシモンにおとうさんたちがしてくれる、小さな「おやすみのお話」がつまっています。わがままな羊たちのお話は、その九日目に。

記事を読む   「シモンとクリスマスねこ」

キーツ 「エンディミオン」

ひつじ話

羊飼いのあいだでは 昔からこんな話が信じられていた。
和毛(にこげ)のままの仔羊が 仲間たちから迷い出たなら、
そいつは必ず 猛り狂う狼や 獲物に目を凝らす豹に怯えつつ
人の通わぬ広野へ向かう。そこで仔羊は
牧神パーンの家畜となる。そのように羊をなくした者には
群れの繁栄が約束されていた。

ジョン・キーツの「エンディミオン」冒頭から。
エンディミオンの神話については、ブルフィンチの「ギリシア神話と英雄伝説」フラゴナールの「ディアナとエンデュミオン」をご紹介しています。

記事を読む   キーツ 「エンディミオン」

スウィフト 「ガリヴァー旅行記」

ひつじ話

ボートには百頭分の牛の肉と三百頭分の羊の肉の他、それに見合う分量のパンと飲み物、さらに四百人の料理人が調理してくれた、すぐに食べられる食料、を積み込んだ。
生きたままの雌牛六頭と雄牛二頭、及び同じ数の雌羊と雄羊も積み込んだ。
(略)
ずっと後の話になるが、次々と航海に出て最後に帰国してみて分ったことは、それらの繁殖ぶり、とくに羊の繁殖ぶりが相当なものであったことである。
その羊毛の繊細さは、今後わが国の羊毛加工業者にとって大いに利益となるだろうと思う。

ジョナサン・スウィフト『ガリヴァー旅行記』から、第一篇「リリパット国渡航記」を。
小人たちの国を出ることになったガリヴァーのために航海中の食料が用意される場面。もちろんひとり分です。
生きた家畜はそのまま連れ帰って(一頭は船中で「鼠にさらわれた」との描写あり)、繁殖させているようです。

記事を読む   スウィフト 「ガリヴァー旅行記」

バーネット 「秘密の花園」

ひつじ話

ディコンはコリンが座っているソファのところまで行って、生まれたばかりの子ヒツジをコリンの膝にそっと置いた。
すると、この小さな生き物はすぐに温かいベルベットの部屋着に顔を押しつけ、鼻先を布地にぐいぐいすりよせ、巻き毛の頭でコリンのわきばらをそっとつっついて、何かねだるようなしぐさを見せた。
これで口をきかずにいられる少年など、いようはずがない。
「この子、何してるの?」コリンが声を出した。「何をほしがってるの?」
「母親を探してるんだよ」ディコンの顔に笑みが広がっていく。「おれ、わざと少しはらぺこにして連れてきたんだ。こいつがミルク飲むとこ、見たいだろうと思って」
ディコンはソファのかたわらに膝をつき、ポケットからミルクびんを取り出した。

フランシス・ホジソン・バーネットの「秘密の花園」から。
病弱な少年コリンのもとに、主人公のひとりメアリと野生児ディコンが、母羊を亡くしたばかりの子羊を連れてくる場面です。

記事を読む   バーネット 「秘密の花園」

「空からきたひつじ」

ひつじグッズ

「空からきたひつじ」
クリスチーネは、ひつじのそばにひざをついて、やわらかい毛をなでました。
すると、ひつじがかぼそい声でいいました。
「まちがえたの。ここじゃ、だめなの。雲のひつじなんだもの。お空であそんでたのに、おっこちちゃったの」
ひつじは、かなしい顔でひつじ雲をみあげて、さびしそうに
「メエ!」と、なきました。

児童文学を。フレート・ロドリアン作、ヴェルナー・クレムケ絵の「空からきたひつじ」です。
空から落ちてしまったひつじ雲のひつじと出会ったクリスチーネは、ひつじを空にかえしてあげるために奔走するのですが……?

記事を読む   「空からきたひつじ」

「馬小屋のクリスマス」

ひつじグッズ

「馬小屋のクリスマス」
むかしむかしの クリスマスの夜。
さいしょの クリスマスのおはなしです。

季節外れながら、クリスマス絵本を。アストリッド・リンドグレーン文、ラーシュ・クリンティング絵、「馬小屋のクリスマス」です。
クリスマス絵本は何冊かご紹介しておりますので、こちらでまとめてぜひ。

記事を読む   「馬小屋のクリスマス」

「ひつじのショーン」がかえってきた!

ひつじ画像・映像

アニメ『ひつじのショーン』
NHK教育テレビ
2010年10月3日より  毎週日曜 午前7時? 放送開始予定
原案: ニック・パーク
監督: リチャード・ゴルゾウスキー
製作総指揮: マイルス・バロウ/ピーター・ロード/ニック・パーク/ディビッド・スプロクストン
テーマ音楽「ひつじのショーン」
うたと演奏: 石井竜也とタトーシープス

もりもとさんから、「ショーンカムバック」とタイトルのついたタレコミメールをいただきました。
え、まさかと思いきや、3年前に大騒ぎをした「ひつじのショーン」が、ふたたびNHK教育テレビで見られるようです。これはもう、わくわく待つしかありません。

記事を読む   「ひつじのショー ...

「黄金伝説」より「聖アグネス」

ひつじ話

友人たちは、八日間聖アグネスの墓のそばで見張りをしていた。
八日目に、突然墓のほとりに乙女たちの輪舞があらわれた。
乙女たちは、かがやく金いろの衣裳をつけていた。
そのまんなかに、金いろの衣をまとい、右手に雪よりも白い子羊をつれたアグネスの姿が見られた。

13世紀イタリア、ヤコブス・デ・ウォラギネによる聖人伝「黄金伝説」から、聖アグネスの章を。殉教した聖女が、自らの墓に現れて人々をなぐさめる場面です。
聖アグネスについては、いくつかご紹介しておりますので、こちらで。
「黄金伝説」は、聖クレメンスの章をご紹介したことがあります。

記事を読む   「黄金伝説」より「聖アグネス」

雑草食べ、ヒツジが管理に一役 守山・バラ農園

ひつじ春夏秋冬

滋賀県守山市十二里町のバラ農園で飼われている2匹のヒツジが、園内の管理に一役買っている。
雑草を食べて草刈りの手間を省き、食用目的のバラの無農薬栽培にも病害虫対策になるのではとの期待も。
何より園内でのんびり草をはむ姿が関係者の心を和ませている。
ヒツジは、いずれも今春に生まれたメスで、名前は「ういろ」と「もなか」。
同園を経営する武田浩治さん(55)が、8月下旬に知人から譲り受けた。
2匹は毎日、朝夕に温室周辺の畑や空き地などで雑草を食べている。
武田さんは「根こそぎというほどではないが、雑草だらけの場所をきれいにしてくれる」と喜んでいる。

先日、滋賀の獣害対策記事をお知らせいただいたak様から、さらに雑草対策に活躍するひつじ記事をいただきました。ありがとうございます。こちらも滋賀ですね。ひつじたちの名前がかわいいです。
雑草対策のひつじといえば、ジュネーブの国連欧州本部という、いろいろと桁が違ってそうな場所をご紹介したことが。

記事を読む   雑草食べ、ヒツジ ...

「ゲーテとの対話」(続き)

ひつじ話

私は口にこそ出さなかったが、むしろ宗教問題についてのさまざまの異論が、昔から人間同士を仲たがいさせ、敵対させている、いやそれどころか、人類最初の殺人さえも、かたよった敬神がもとで起ったのだ、と考えていることに気づいた。
私は最近バイロンの『カイン』を読み、とりわけ第三幕と殺人の動機づけに感嘆した、と話した。
「そうだろう」とゲーテはいった、「あの動機づけは見事なものだ! あれにはこの世ではもう二度と書かれることがないほど、じつに類のない美しさがある」
「『カイン』も」と私はいった、「はじめはイギリスで禁止されたのですが、いまでは誰でも読んでいて、イギリス人でも若い人は旅に出るとき、大ていバイロン全集を携えていますね」
「それも馬鹿げた話だが」とゲーテはいった、「というのも、『カイン』全体のなかにあるのは、つまりはイギリスの僧正たち自身が教えているものにほかならないのだからね」

昨日のルーベンス「野良の帰り」についての対話にひきつづいて、エッカーマン「ゲーテとの対話」からもうひとつ。以前ご紹介したバイロンの「カイン」が、ゲーテによって絶賛されています。

記事を読む   「ゲーテとの対話」(続き)

PAGE TOP