『皇帝の閑暇』より、「「貞潔羊」と呼ばれる樹」

ひつじ話

「貞潔羊」と呼ばれる樹がございます。
もし眠り人の頭の下に、その枝を一本敷けば、眠っているあいだ中、幽霊の幻を夢見ることはないでありましょう。
ですから伝承によりますと、アブラハムが祭壇を建てたモリア山で、犠牲に供された獣たちの皮にくるまって眠っていたレベッカが、双生児が彼女の胎内でたがいにぶつかりあっていると主に相談したときに頭の下に敷いたのは、この樹の一本の枝であるということです。

12、3世紀のヨーロッパ、ティルベリのゲルウァシウスによって蒐集・編纂された驚異譚集、「皇帝の閑暇」から。
なにがどう貞潔で羊なのかわかりません。わかりませんが、なにかこう。
レベッカというのは、創世記に出てくるエサウとヤコブの母リベカのことですね。聖書の該当部分を下に。

主はその願いを聞かれ、妻リベカはみごもった。
ところがその子らが胎内で押し合ったので、リベカは言った、
「こんなことでは、わたしはどうなるでしょう」。
彼女は行って主に尋ねた。

 旧約聖書 創世記第二十五章 

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羊神社のお守り

地名・団体

ひさしぶりに、名古屋市の羊神社にお参りしてきました。
鳥居
場所は、名古屋市北区辻町の住宅街のなか。御祭神は天照大神と火之迦具土神。
名古屋市営地下鉄で、名城線平安通駅から上飯田線に乗り換えて、上飯田駅下車です。

社名及び地名の由来
群馬県多野郡吉井町にある「多胡碑」に刻されている「羊太夫」(多胡郡の領主)が、奈良の都へ上るときに立寄っていたゆかりの屋敷が、この地(現辻町)にあり、この土地の人々が平和に暮らせるため「人心を安らかに」という願いをこめて羊太夫が、火の神を祀ったといわれ、羊神社と呼び称えるようになったと伝えられている。
鎮座地辻町は、尾張志に「今、村の名を辻といえるは羊の省かりたるやとそ」、尾張国地名考に「往昔火辻村といひしを後世火の字を忌て単に辻村と書といふ」と記されている。

 「式内 羊神社 由緒略記」 

1945年の名古屋大空襲をさえ乗り切ったというので、火災除の神様として崇敬されているのだそうです。
これからの季節には、良いお参り先かと。
多胡碑の羊太夫については、何度かお話しておりますので、こちらで。
……ほんとは御朱印をいただきたかったのですが、神職さんがお留守だったので、断念。
かわりに(?)、金色のひつじが下がったお守りがたいへんかわいらしかったので、こちらをお受けしてまいりました。
お守り
ご縁があれば、ぜひ。

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新疆ウイグル自治区の闘羊

ひつじ春夏秋冬

新疆ウイグル自治区の沢普県の金胡楊国家森林公園で10月中旬、闘羊が開催されました。
付近の村の住民が自慢の雄の羊を連れて参加し、羊たちが勇ましく角をぶつけ合う闘う光景は、集まった観客を魅了しました。
闘羊は、新疆ウイグル自治区で長い歴史を持つ民間娯楽の一つ。お祭りや集会の際に開かれる人気の伝統行事です。

ak様から、新疆ウイグル自治区の闘羊の記事を教えていただきました。ありがとうございます。
牡羊が闘争的な生き物であることについては、これまでに思い知らされてきましたが、こちらは文化として昇華されている感じですね。

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ノリタケの森の子羊の置物

ひつじグッズ

散策の秋です。
というわけで、先日のミユキモールに続いて、また名古屋市内をうろついてまいりました。
今回は、名古屋駅を北へ徒歩15分ほどの場所にある、ノリタケの森です。
ノリタケの森
陶磁器メーカー、ノリタケカンパニーリミテドの運営する文化施設ですが、こちらで限定販売されている十二支の置物シリーズがこのたびの目的。
ノリタケ十二支未
十二支シリーズのうち、未です。子羊ですね。片手に乗せてほどよいサイズです。
ノリタケ十二支未背中
かわいいので、後ろ姿も。しっぽが断尾前のようです。

ノリタケの森公式HP 内 ライフスタイルショップ パレット 
及び ミュージアム企画展 「フィギュアリンの造形」

なお、ノリタケの森では、2013年9月8日まで、「フィギュアリンの造形」と題された小規模な企画展が開催されています。さりげなくひつじ度が高いので、こちらもご縁があればぜひ。

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ジャン=フェルディナン・シェノー 「羊の群れ」

ひつじ話

「羊の群れ」
ジャン=フェルディナン・シェニョー
1830、ボルドー ─ 1906、バルビゾン
1858年、バルビゾン村に移居、フォンテーヌブローの森の風景を描く。
シャルル・ジャックに技法上の影響を受け、また主題も同様に、羊の群れを好んで描く。
1870年にはバルビゾン村に家を持ち、そのアトリエからは直接に羊の群れを見ることができた。

 「印象派とフランス近代絵画の系譜」カタログ 

19世紀フランス、ジャン=フェルディナン・シェノーの「羊の群れ」です。
シェノーは何度かご紹介しておりますので、こちらで。
また、影響を与えたシャルル=エミール・ジャックもご参考にこちらでぜひ。

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シュメルの論争詩 「羊と麦」

ひつじ話

シュメルの詩の一分野に「論争詩」と呼ばれるものがある。
『鳥と魚』「鷺と亀』『夏と冬』『羊と麦』などなど、題名を見るとまるでイソップ寓話の先祖が勢揃いしたかのようだ。
イソップの『北風と太陽』のようにシュメルの詩でも鳥や魚、夏や冬が擬人化され、各対決者がそれぞれ自分の利点をあげ連ね、相手の欠点をあげつらう。
たとえばドゥムジとエンキムドゥにも似た論争詩『羊と麦』のあらすじは次のようである。

(略)
エンキ神とエンリル神の計らいで、人類が神々の聖なる食卓のために創造された羊と麦の世話をすることになった。
あるとき、立派になった羊と麦姉妹は葡萄酒やビールを痛飲した挙げ句に口論をはじめた。
「羊というものは、肉も乳も毛も腸さえも有用なものだし、その皮は水の革袋やサンダルにもなるのよ」と羊が自慢すれば、麦も負けずに
「麦ならパンはもちろんのこと、ビール製造に欠かせないふすま(マッシュ)にもなり、そのうえ羊を飼育さえするのよ」と応酬する。
そこでエンキ神が調停に乗り出し「まあまあ、姉妹なんだから、そう突っかからずに。とはいえ、ここは麦の勝利ではなかろうか。なんとなれば、人類は金銀宝石や羊なしでも生きられるが、麦なしには生活できないのだから」とエンリル神にお伺いを立てた。

(略)
『羊と麦』では「麦の勝利」ということになっている。
イナンナ女神が夫として農夫を選ぼうとしたのも、そうした価値基準を踏まえているとも考えられる。

以前お話した、牧畜と農耕の対立を描くシュメル神話「ドゥムジ神とエンキムドゥ神」に関連して、「羊と麦」を。擬人化された「羊」と「麦」の論争によって、両者が比較されています。
シュメル文明のお話は時々しておりますので、こちらで。

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ミユキモールのモニュメント

ひつじ春夏秋冬

ずいぶん以前に、「ミユキ野球教室」スポンサー御幸毛織のTVCMをご紹介したことがあるのですが、このたび、ak様から、本社及び工場の跡地にして現ショッピングモール「ミユキモール」の一角に、この御幸毛織株式会社による羊の像があるとのこと、お知らせいただきました。ありがとうございます。

御幸毛織公式HP 及び ミユキモール公式HP

場所は、名古屋市西区です。小雨の降るなかを名古屋市営地下鉄鶴舞線に乗って、羊オブジェのもとまでやってまいりました。浄心駅と庄内通駅の真ん中あたりなので、どちらかで降りてあとは徒歩で、ええと、15分くらいでしょうか。
おお、ありました。飲食店に囲まれた中庭で、雨にぬれる銀色のひつじの一群。
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お父さんとお母さんと子羊三匹、だと思っていいのかな? 台座の形は、おそらくミユキの「M」かと。
足元に説明プレートがありました。
「「FUTURE」   このモニュメントは「クラフトマンシップ」を伝え、その根底に流れるダンディズム、未来につながる人類愛の精神を形にしました。」とのこと。
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お父さん羊がものすごく強そうです。子羊はちまちましてて愛らしいですし。
ご縁があれば、お立ち寄りを。

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「アンドロイドの夢の羊」

ひつじ話

「残念だがそれほど単純な話ではないのだよ、長官」
ナーフ=ウィン=ゲタグは身を乗りだし、ブリーフケースからタブレット端末を取り出すと、それをヘファーのデスクに置いた。
「どんな羊でもいいわけではない。ある特定の品種、それもきわめて希有な品種の羊でなければならない。実をいうと、アウフ=ゲタグ氏族が権力の座についたときに特別に開発された品種なのだ─毛の色にきわだった特徴がある」
ヘファーは手をのばしてタブレット端末を受け取った。
エレクトリックブルーの毛におおわれた一頭の羊の写真が表示されていた。
「〈アンドロイドの夢〉と呼ばれる品種だ」

ジョン・スコルジーの小説です。あとがきに「フィリップ・K・ディックが墓のなかで嘆いていなければいいのだが。」とかありましたが、なんというか、バカSFです。でも、ディックへのオマージュとして読むことは充分可能。
トカゲ似のエイリアンとの外交交渉のために希少な羊を探すことになった、戦争の英雄にして凄腕ハッカーの主人公。見つかった羊の正体がまた、色々とこう。

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オランダで羊泥棒頻発

ひつじ事件

オランダ各地の牧羊場で最近、ヒツジが群れごと盗まれる前代未聞の事件が相次ぎ、警察が「羊肉マフィア」の行方を追っている。
(略)
オランダ農業園芸組織連合会(LTO)のニコ・フェルトイン(Nico Verduin)氏によれば、ヒツジの盗難は同国東部、南部、中部で多発しており、4月以降、既に500匹以上の行方が分からなくなっているという。盗まれたヒツジたちは密輸出されたか、食肉用に違法解体されて国内各地の精肉店に卸されたのではないかという。
1度に大量のヒツジを盗んでいくのは容易ではないことから、警察やTLOでは、牧羊経験のある者たちによる組織的な犯行とみている。オーストラリアやニュージーランドといった牧羊国の羊肉生産が減少していることから、オランダではこの1年で羊肉の価格が15%も上昇している。
(略)

ak様から、オランダで大掛かりな羊泥棒が起きているとのニュースを教えていただきました。ありがとうございます。
元羊飼いの羊窃盗団とは、どうにもやりきれない話です。どうか早く解決しますように。

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「ねこのオーランドー」

ひつじグッズ

「ねこのオーランドー」
そこへ とつぜん、羊の番をしている犬が やってきて、ねこたちを見つけて ワンワンとほえかかりました。

以前、「ねこのオーランドー農場をかう」をご紹介しているキャスリーン・ヘイル作・画のオーランドーシリーズをもう一冊。
キャンプに出かけたオーランドー一家。テントをはって、釣りをして泳いで、山にのぼって犬にほえられて、夜にはキャンプファイアも炊いてます。猫なのに。

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ポラジンスカ 「白いひつじ」

ひつじ話

そのひつじは、ほかのひつじたちと、どこかちがっていました。
まるで雪をふりかけたように、まっ白で美しいそのひつじは、いつも先頭にたって、むれをみちびいていました。
そしてヤーネクがふえをふきはじめると、どんなにとおくはなれていても、ヤーネクのそばへかけよって、じっとふえの音にききいるのでした。
ヤーネクも、その白いひつじがかわいくてたまりませんでした。
白いひつじがいるので、みなしごのくらしも、まえのようにつらくはありませんでした。

ヤニーナ・ポラジンスカ文、ミーハウ・ブィリーナ絵、内田莉莎子訳のポーランド民話集『千びきのうさぎと牧童』より、「白いひつじ」です。
やとわれ羊飼いのヤーネクと美しい白いひつじは、しあわせな日々を過ごしていました。しかしある日牧場主が、子羊を産まない役立たずの白いひつじを処分しようと言い出して……。

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『中世の秋』より「牧歌ふうの生のイメージ」

ひつじ話

田園詩(パストラル)は、一個の文学ジャンル以上のものであることを、その本来の意義とする。
素朴、自然の喜びに明け暮れる羊飼いの生活を、たんに描写するのみではない。
それを追体験しようとする志向がそこにはあった。
つまり、これは「模倣(イミタティオ)」なのだ。
羊飼いの生活にこそ、愛本然の姿がそのままに実現されている、これはひとつのフィクションであった。
ひとは、このフィクションにそって、羊飼いの世界に逃げこもうとした。
(略)
けれども、後期中世は、なお、極度に貴族主義的な時代であり、美の幻想に対しては、まったく無抵抗であったのだから、美しく飾ることをしない自然のままの生活を求める気持ちも、強力なリアリズムにまではついにいたらず、ただ、技巧をこらして宮廷風俗を飾るにとどまったのであった。
十五世紀の貴族は、たしかに羊飼い、羊飼いの女役を演じはした。
けれども、その演技の内容たるべき、真実、自然への尊敬、質朴と労働への讃嘆は、なお、きわめて微弱だったのである。
三世紀ののち、マリー・アントワネットは、ヴェルサイユ宮庭園内の小トリアノン館で、乳をしぼり、バターを作った。
すでにそのころには、重農主義者の本気の願いが、この理想にこめられていたのである。
自然と労働とは、この時代、眠れる大神たちであったのだ。
だが、なお、貴族主義的文化は、これを遊びと化してしまったのであった。

テオクリトスの時代から延々と続く、牧歌(田園詩、パストラル)の文化について、ホイジンガ『中世の秋』の一章、「牧歌ふうの生のイメージ」より。
牧歌的情景に関する記事は、ずいぶんご紹介しておりますので、まとめてこちらで。
この貴族主義的文化に対しては、すでに古代ローマにおいてホラティウス「農村讃歌」が皮肉な見方を示しているようです。
また、マリー・アントワネットの田園趣味については、ツヴァイクの評伝をご紹介しています。
『中世の秋』についても、少しだけお話したことがありますので、こちらを。

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スポーツ用品店に乱入する怒涛の羊たち

ひつじ事件


ak様ともりもとさんから、オーストリアのひつじ事件についてお知らせいただきました。ありがとうございます。

オーストリアで、ヒツジの群れが夏の牧草地から戻る途中で道を誤り、スポーツ用品店に入り込んだ。地元メディアが22日、報じた。
オーストリア西部の村サンクト・アントン・アム・アールベルク(Sankt Anton am Arlberg)で、1頭のヒツジが、スポーツ店「インタースポーツ(Intersport)」のスライドドアのガラスに自分の姿が映っているのを見て、そのまま店内に入り、群れの残りのヒツジもそれに続いた。
ヒツジたちは店内の自転車、靴、スキー用品、スポーツ用品の中をさまよい歩き、店内は大混乱となった。多数のヒツジの鳴き声が響く中、羊飼い2人はやっとの思いでヒツジたちを店外に出すことに成功した。

入りすぎです。

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ナショナル麻布のオリジナルトート

ひつじグッズ

K&T様から、東京広尾のスーパーマーケット「ナショナル麻布」で新しく売りだされたオリジナルエコバッグに、「ひつじのショーン」バージョンがあるとのこと、お知らせいただきました。ありがとうございます。
先日の「ビッグイシュー」といい、なんだか来てますね、「ひつじのショーン」。
ということで、実店舗は遠すぎるので、通販にて購入です。
ショーンバッグ
約縦41×横30×マチ17センチとのこと。収納力ありそうですね。手触りはごわごわしてます。
側面と裏はこんな感じ。
ショーンバッグ裏

ナショナル麻布公式HP
ナショナル麻布オンラインショップ 内 オリジナル EAT bag   エコ アート トート  【shaun】

ご縁があれば、ぜひ。

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ロシア民話 「とりかえっこ」

ひつじ話

百姓はとりかえて、牛の角をひっぱっていった。
すると羊の群れがいた。その牧童が百姓にこうたずねた。
「やあ、お百姓、どこへ行ってきたんだね」
「王さまのところさ、ゼリーをもってね」
「王さまから何をもらったんだい」
「金の山鳥だよ」
「その山鳥はどこにいるんだ」
「馬とかえたよ」
「その馬はどこだい」
「牛ととりかえたのさ」
「その牛と羊をとりかえっこしようじゃないか」
百姓が羊を追っていくと、豚の群れがいた。
牧童が百姓にこう言った。
「やあ、お百姓、どこへ行ってきたんだい」

先日の、「姉アリョーヌシカと弟イワーヌシカ」に続いて、アファナーシェフのロシア民話集からもうひとつ。
王さまにゼリーを献上して金の山鳥をもらったお百姓が、帰り道でとりかえっこを繰り返し、家に着いて女房に手ひどくぶたれるまでの一部始終。

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