ニコラ・フロマン 「モーセと燃える柴」

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「モーセと燃える柴」 「モーセと燃える柴」(部分)
フロマンは15世紀のプロヴァンス絵画の様々な特徴を示している。
(略)
1475年から1476年にかけて、ルネ王の宮廷に関わり、現存する傑作《モーセ》の三連祭壇画をエクス・アン・プロヴァンスで描いた。

モーセは妻の父、ミデヤンの祭司エテロの羊の群れを飼っていたが、その群れを荒野の奥に導いて、神の山ホレブにきた。
ときに主の使は、しばの中の炎のうちに彼に現れた。
彼が見ると、しばは火に燃えているのに、そのしばはなくならなかった。
モーセは言った、「行ってこの大きな見ものを見、なぜしばが燃えてしまわないかを知ろう」。
主は彼がきて見定めようとするのを見、神はしばの中から彼を呼んで、「モーセよ、モーセよ」と言われた。

出エジプト記 第三章

15世紀プロヴァンスのニコラ・フロマンによる、「モーセと燃える柴」を。
イスラエルの人々をエジプトから導きだすよう、モーセが啓示を受ける場面です。
モーセを描いたものは、システィナ礼拝堂のフレスコ画をご紹介しています。

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あまんきみこ 「もういいよう」

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「もういいよう」表紙
「なにしてるの? ここで」
って、わたし、きいたの。
「おっこちた」
「どこから?」
子ひつじは、口をすぼめて、空を見あげた。
「あそこから」
「空からおちたの?」
つられて、見あげた。
青い空に、ひつじみたいな雲が、いくつもいくつもかさなって、ながれていた。

「ひつじぐものむこうに」をご紹介したことのある、あまんきみこ作の児童文学です。
おかあさんが入院して、ひとりぼっちで留守番をしていたみっこちゃんは、近くの野原で迷子の子羊と出会います。足をけがした子羊は、みっこちゃんの部屋で暮らし始めますが……。

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ブーシェ 「羊飼い」

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「羊飼い」 「羊飼い」(部分)

「ブーシェ、フラゴナール展」カタログ

「牧歌的情景」「フルートのレッスン」などをご紹介している、フランソワ・ブーシェの晩年の作、「羊飼い」です。

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ソポクレス 「アイアス」

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アテナ そのとおり、お前の話した一切のことはあの男の仕業なのです。
オデュッセウス ではこの無謀な振舞いは一体何のため。
アテナ アキレウスの武具のことで、怒り狂ったあげくのこと。
オデュッセウス ではなぜあのように羊の群れなどに躍りかかったのでしょうか。
アテナ これを殺してその実は、お前たちの血でその手をそめているとのつもりから。
(略)
オデュッセウス ではまたどうして、その血に飢えた手を下すのを思い止ったのでしょうか。
アテナ それはこのわたしがしたこと、破滅を喜ぶその思いを阻んだのは。容易に振り払うことのできない妄想をその眼に投げ込んで、羊の群れの方に、そしてまたまだ分配のすまぬままに番人たちが見張りをしている家畜の群れに向かうように、わたしが彼をそらせてしまったのです。するとあの男はその中に躍り込み、角もつ獣に斬りかかり、手当り次第に裂き殺す。

先日の「イリアス」つながりで、もうひとつ。トロイア戦争の英雄大アイアスを主人公とするソポクレスの悲劇から。
怨みのためにオデュッセウスらを殺そうとしたアイアスは、女神アテナの力によって狂気に陥り、敵と信じて羊の群れを襲ってしまいます。上の引用は、冒頭、皆殺しになった家畜を前に途方に暮れるオデュッセウスに、アテナ女神が呼びかける場面。

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馬王堆漢墓の黒地彩絵棺

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馬王堆一号漢墓の木棺
馬王堆1号棺墓の木棺。大小3つの棺を重ねている。外棺は黒地、中棺は赤地の漆絵が描かれ、内棺には錦が貼りつけてあった。出土時には外にもう一層の棺があった。

黒地彩絵棺
棺蓋の上面に豹が羊の頭をした怪神の前に伏して、怪神が豹の頭をなでている図がある。
(略)
馬王堆の棺の頭側板の左上角と足側板の右上角にも半身の羊がおり、右側板には羊が鶴に騎っていたり、羊が鶴を牽いている図などがある。
いずれも福や祥を迎接する意味である。

湖南省長沙市の馬王堆漢墓。四重になった一号墓の棺のうち、黒地彩絵棺と呼ばれる第二棺の表面は、雲気文のすきまに大量の小さな怪物が配される図柄になっています。その怪物たちのなかに、羊っぽいなにかが。

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前漢の陶羊

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陶羊
陶羊
時代:前漢  材質:陶
長さ:43?  高さ:36.5? 重さ:5.12?

「兵馬俑と秦・漢帝国の至宝」展カタログ

前漢の副葬品です。中国の副葬品については、これまでに、古越州の青磁羊形器後漢の緑釉羊形器、ここでひとつにくくって良いのかどうか微妙ですが、揺銭樹などをご紹介しています。

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ゲインズバラ 「アンドルーズ夫妻」

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「アンドルーズ夫妻」 「アンドルーズ夫妻」(部分)
ゲインズバラの初期作品《アンドルーズ夫妻》は、イースト・アングリア地方サフォーク州サドベリー近郊の地主夫妻を描いたものだ。
背景に小さく見える教会などが特定の場所を示しており、この絵は夫妻の肖像であるとともに、彼らの誇る農地の肖像でもある。
実際、人物はおそらくモデル人形を使ったこともあっていささかぎこちなく見えるのだが、右手前景の束ねられた麦の穂に始まり、刈り入れのすんだ畑をへて羊が点在する牧場とその向こうへ続く風景描写は、新鮮な臨場感にあふれている。

水藻さまから、トマス・ゲインズバラの「アンドリューズ夫妻」について、「風景の中に羊がいます」とのお知らせをいただきました。ありがとうございます!
ゲインズバラは、これまでに、「田舎家の前の人々」「羊飼いのいる山の風景」などをご紹介しています。

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「絵画と写真の交差 印象派誕生の軌跡」展

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名古屋市美術館で2009年12月20日(日)まで開かれている、「絵画と写真の交差 印象派誕生の軌跡」展に行って参りました。

「草原の羊飼いの少女と羊の群れ」
写真の誕生から170年が経ちました。この展覧会では、タルボットダゲールなど写真草創期の作品に始まり、バルビゾン派や印象派に多大な影響を与えた写真、逆に絵画から影響を受けたピクトリアリズムと呼ばれる写真、そして、写真の独自性を追究しながら展開してきた現代の写真に至るまでの流れを辿ることにより、写真という芸術の多様性や広がりを感じていただけるものと思います。

19世紀半ばに生まれた写真技法は、反発と受容の両面で、画家たちに衝撃を与えるものでした。なかでも深い影響関係が示唆されるバルビゾンの画家たちの作品が、つまり羊の絵が、こちらの展覧会では複数展示されています。
引用したのは、ジャン=フェルディナン・シェニョー(シェノー)の「草原の羊飼いの少女と羊の群れ」ですが、この端正な羊たちの隣にシャルル=エミール・ジャックのファニーな羊が並んでいたりして、たいへん眼福です。お近くならばぜひ。
ところで、美術展つながりでもうひとつ。
京都国立近代美術館で2009年12月27日(日)まで開催されているボルゲーゼ美術館展に、カラヴァッジオの「洗礼者ヨハネ」が来ています。行かねば。

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森薫 「乙嫁語り」

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「乙嫁語り」1巻表紙

森薫の新作です。舞台は19世紀中央ユーラシア、ヒロインは騎射が得意な遊牧民。羊飼いです。カスピ海周辺とかテュルクとかいった言葉が出て来ますから、わりと西のほうでしょうか。
丁寧な手で描き込まれた羊たちを、ぜひとも単行本を手にとってご覧ください。五分の四くらい読み進んだあたりで、「あっ」というシーンがありますから。

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「イリアス」のオデュッセウス

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ついで老王はオデュッセウスに眼を留めていうには、
「可愛い娘よ、あそこにいる男は何者か、その名も聞かせてくれ。
アトレウスの子アガメムノンに背丈こそ及ばぬが、胸幅、肩幅は彼よりも広く見受けられる。
物の具はものみなを育む大地に置き、自分はさながら牡羊の如く隊伍の間を見廻っている。
あの姿は、雪白の羊の大群の間をわけて歩む、厚毛の先導羊にもなぞらえたらよかろうか。」
それに応えてゼウスの姫ヘレネがいうには、
「あれはラエルテスの一子、才気溢れるオデュッセウス、その生国は岩ばかりのイタケの島ながら、あらゆる策謀、ぬかりない知略に長けた人でございます。」

ホメロス「イリアス」より、トロイアの王プリアモスと美女ヘレネによる、英雄オデュッセウスを眺め見ての会話です。
オデュッセウスについては、ずいぶん以前に、「オデュッセイア」をご紹介しています。

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19世紀イギリスの羊料理

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イギリスの料理にとっては気の毒な時代だった。
ヴィクトリア女王の料理長、シャルル・エルメ・フランカテリは、1845年に『現代の料理』を出版したが、同書にはお定まりの亀のスープに加えて、羊の喉袋、耳、足だけでなく鹿肉とトナカイの舌のためのレシピまでが満載されていた。
(略)
リフォーム・クラブ(ロンドンの格式高いジェントルマン・クラブ)のシェフ、偉大なるアレクシス・ソーヤーには、それほどの霊感はなく、羊の首と頭の煮込みが、その『大衆のための一シリング料理集』の目玉だった。
(略)
当時の料理書の著者は、大衆の望むもの、つまり良質で簡素な食べ物のレシピを提供しているのだと主張していたかもしれない。
しかしそれらの料理は確かに簡素ではあったが、あいにくほとんど良質ではなかった。
食料品店は長年にわたって混ぜ物をして、不当な利益を上げていたのである。

世界史上の食物に関するエピソード集から、19世紀のイギリスで作られた羊料理についての部分を。

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古越州の青磁羊形器

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青磁羊形器
青磁羊形器 古越州 三国(呉)?西晋 高さ27.6?
有翼の羊をかたどった器。頭に丸い孔があけられているが、用途はよくわからない。
古越州の青磁
後漢の滅亡後、三国の呉(222?280)、および西晋(265?316)、東晋(317?420)時代になると、南京や浙江省一帯を中心とする江南地方の墳墓から特色ある様式をそなえた古様な青磁が盛んに出土するようになる。
これらはわが国では通常、古越磁(こえつじ)あるいは古越州の青磁とよばれている。
(略)
また、動物のモチーフがしばしばみられることも古越磁の著しい特色である。
羊形容器、獅子形容器など、器物全体を動物の姿にかたどった一群の容器類がある。
これらの多くが翼をもっていることからもわかるとおり、これらは実在の動物ではなく、一種の神獣として表現されている。

数年前に東晋の鉄斑文羊をご紹介した、古越州の青磁をあらためて。

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cafe Sheep

地名・団体

関西出没度の高い非関西人、ひつじnewsです。
このたびは、大阪府摂津市のカフェ、「cafe Sheep」さんにお邪魔していまいりました。
いや、その、迷いまして。ひつじだけに。
地図では大阪モノレール南摂津駅が最寄り駅かと思われたので、そこで下車したのですが、なぜか曲がり角を見逃して二十分ほど放浪。
その後お店でうかがったところ、お店の前にある新在家口バス停とJR千里丘駅を結ぶ阪急バスを利用するのがいちばん簡単だったようです。よし、つぎはバスだ。
ともあれ、つきました!
cafe Sheep入口 cafe Sheep看板
お店のオーナーさんは、しゃきしゃきとした感じの若い女性でした。道に迷って電話してくるし、お借りしたゲームにハマってチャイ一杯で長居するし、帰り際になって写真を撮ってないとか騒ぐし、おかしな客でご迷惑だったろうと思われます、が、でもまたきっと現れます。なぜなら、
これが例のカードゲーム。
オーナーさんがお持ちの高難易度カードゲーム「CRAZY SHEEP」で遊ばせてもらうのが、今回お邪魔した目的のひとつであり、しかも案の定解けなかったからです。雪辱を遂げねばなりません。
さらに。
ベンチの上には、ずらりとひつじ柄クッション。オーナーさんのお姉様手作りとのこと。
あああ、いいなぁいいなぁ。こういうの自分で作りたい。
さらにオーナーさん手作りのお店のロゴマークぬいぐるみが。口が、この口がどうしてくれようかともう。
そ、そういえば、ロゴマークのデザインはどなたが?
などなど。ほかにも、グラスの模様や飾り棚に並んだグッズなど、ひつじがあふれてます。ご縁があればぜひ。

cafe Sheep
大阪府摂津市鳥飼八防1-22-13
TEL 072-653-4120
営業時間 am9:00?pm7:00  
定休日  月曜日
駐車場有り

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ツヴァイク 「マリー・アントワネット」

ひつじ話

いうまでもなくいまやマリー・アントワネットは、「自然な」庭園、無邪気な風景を作ろうと思う。
しかも新奇な自然風庭園の尖端を行く一番自然な庭園である。
(略)
しかし流行はさらに生粋のものを求める。
自然をもっと極端に自然らしく見せかけ、舞台背景にもっと真に迫った生活そのもののお化粧をほどこすために、この古今東西を通じて最も金目のかかった田園喜劇の舞台に、正真正銘の役者が登場する。
すなわちほんとうの百姓にほんとうの農婦、正真正銘絶対にまがいものでない牝牛や、仔牛や、豚や、兎や、羊までつれたほんとうの搾乳婦、ほんとうに鎌をふり草を刈る人、ほんとうの羊飼いにほんとうの猟師、ほんとうの洗濯女にほんとうの乾酪作りが、ぞろぞろ登場してきて、芝を刈り、着物を洗い、畠を耕し、乳をしぼるという次第で、操り人形芝居が活溌不断に演ぜられる。
(略)
羊を牧場につれて行くのにも青いリボンを使い、女官に日傘をかざさせて、洗濯女が小川のほとりでリンネルを洗いすすぐさまを、女王が見惚れていらっしゃる。
ああ、この簡素のなんという素晴らしさであろう。

先日来、ブーシェの「牧歌的情景」ニコラ・ランクレ「鳥篭」など、ロココの田園趣味についてお話をしているのですが、このあたりでひとつ、その具体的な例を。
シュテファン・ツヴァイクによるマリー・アントワネットの評伝から、小トリアノン宮殿での王妃の暮らしぶりを描いた場面です。

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レールミット 「羊飼い」

ひつじ話

「羊飼い」 「羊飼い」(部分)
レールミット,レオン=オーギュスタン (1844―1925)
彼はバルビゾン派の影響の中で自己の芸術を開花させていったが、特にミレーに強く感化され傾倒していった。
しかし、働く農民の姿を写実的かつ宗教的ともいえる崇高さ、厳粛さをもって描いたミレーと比べると、物語的雰囲気があり、牧歌的で甘美な感傷性がレールミットの作からは漂っている。
そのため当時のブルジョワジーの牧歌的田園への憧れを満たし非常に人気を博した。
しかも、ミレーより一世代若くモネとほぼ同時代を生きていたため、印象主義による色彩と筆触の洗礼を受け、控え目ながらもその手法を採り入れ、色彩は明るく生彩に富んでいる。

「松方コレクション展 ―いま甦る夢の美術館―」カタログ

最後のバルビゾン派とも称すべきレールミットを。
バルビゾン派についてはこちら、影響を与えたミレーはこちらでぜひ。

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