「甲子夜話三篇」より。

小鼓観世新九郎が家宝に、羊皮の鼓有り。
伝来を聞くに、台徳公より賜る所と云。
故新九郎(豊綿)語れるは、此鼓、時として不機嫌なること有り。
予問ふ。何をか不機嫌と云。
曰ふ。或とき、宮の御能の日、某脇能を打とき、調れども曾て鳴らず。
為方なく、代鼓を以て其能を打しが、不審晴ずして、御能畢ると楽屋に入て打みるに、其音亮亮として甚好し。
因て知る。此鼓不機嫌なることを。
頃日、当新九郎来る。就て復其ことを問ふに、違はず。
何にも前言の如し。又、此鼓皮黔色、尋常の鼓と異にして、見る所美ならずと。

江戸後期、松浦静山の随筆集「甲子夜話」のなかに、羊の皮の鼓のエピソードがありました。なんだかワガママな鼓ですが、皮の素材が珍しいことに関係があるのでしょうか。

ひつじ話

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