寺田寅彦 「先生への通信」

ローマへ来て累々たる廃墟の間を彷徨しています。
きょうは市街を離れてアルバノの湖からロッカディパパのほうへ古い火山の跡を見に参りました。
至るところの山腹にはオリーブの実が熟して、その下には羊の群れが遊んでいます。
山路で、大原女のように頭の上へ枯れ枝と蝙蝠傘を一度に束ねたのを載っけて、靴下をあみながら歩いて来る女に会いました。

 「寺田寅彦随筆集 第1巻」 

寺田寅彦の旅行記『先生への通信』より、「ローマから」の一章を。
「靴下をあみながら歩いて来る女」というのが、ちょっとミレーの描く少女羊飼いみたいで、想像をかきたてられます。
夏目漱石の高弟としても知られた人物なので、あるいは「先生」というのは漱石のことでしょうか。
漱石は「三四郎」を、
他の同時代の人々として、幸田露伴「羊のはなし」南方熊楠の「十二支考」和辻哲郎「イタリア古寺巡礼」をご紹介しています。

ひつじ話

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