アシモフ『黒後家蜘蛛の会』より「同音異義」

「どうするかというとですね、簡単な情況を設定して、それを同じ発音で意味の違う……ああ、つまり、同音異義の言葉で説明するんですよ。
例を挙げましょうか。ピクニックに行こうというときに、天気が快晴なら問題ありませんね。どしゃ降りの雨なら、これも話は簡単です。ところが、空はどんより曇っていて、天気予報が曇り後雨、ところにより晴れ間が出る見込み、というような場合はどうですか?」
(略)
答えが出そうもないと見て、ゴンザロは言った。「これはね、〈天気が転機(whether weather)〉だよ。天気(weather)がはっきりしなくて、ピクニックに行こうか、どうしようかと迷う。ここが判断の分かれ目(whether)だからね。分かれ目というのは、一つの転機だろう。それで、天気が転機、どうかね?」
(略)
ジェフリー・アヴァロンが七十四インチの高みからあたりを睥睨して言った。
「いいや、考えてみると結構あるものだよ。例えば、去勢した雄の羊を飼っているとするね。これが、天気のよい日は大いに活発に跳び回るけれども、雨の日はすっかりしょげ返って元気がない。じゃあ、曇りの日はどうかというと、元気があるようでもあり、ふさいでいるようでもあって、どうもはっきりしない。この羊の性質は、言ってみれば〈後天の好天はたまた荒天(whether wether weather)〉と」
一同は納得しかねて口々に不服の声を発した。
アヴァロンは言った。「つまりだね、去勢した羊(wether)だから、当然その性質は持って生まれたものではないね。すなわち後天的なものだよ。で、この羊は、天気のよい日と荒れ模様の日とで大いに気分が左右される、とこういうわけだ。ああ、そういう羊がいるのだよ。嘘だと思うなら、字引きを調べてごらん」

アイザック・アシモフのミステリシリーズ『黒後家蜘蛛の会』から、「同音異義」を。引用は、導入部兼伏線の会話です。同音異義語を使った言葉遊びが始まるのですが、その中に羊を使ったものがありました。
アシモフ自身のあとがきに、「翻訳者泣かせな作品」との一文が。さもありなん。

ひつじ話

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