オー・ヘンリー 「千ドル」

「ブライソン老人。君も説教さえしようとしなければ」とジリアンはほとんど眉ひとつ動かさないで言った、
「みんなから好かれるかもしれないがね。ぼくは君に教えてくれと頼んだんだよ。千ドルでぼくになにができるかと」
「君が?」とブライソンは穏やかに微笑して言った。
「それなら、ボビー・ジリアン、論理的に考えて君にできることはひとつしかないね。これからすぐその金でミス・ロッタ・ローリアにダイヤモンドのペンダントを買ってやって、君自身はアイダホ州に行って、牧場の厄介者になることだよ。それも羊の牧場がいいだろうな。ぼくは羊がとくに嫌いだからね」
(略)
ジリアンは千ドルの使途について報告書をつぎのように書いた。
厄介者(ブラックシープ)のロバート・ジリアンは、天に代って永遠の幸福のため、この世でもっとも善良でもっとも親愛な女性に千ドルを支払った。

オー・ヘンリーの短編、「千ドル」です。
遊び人のジリアン青年は、富豪の叔父の遺言で、弁護士へ使途を報告することを条件に、千ドルという多くも少なくもない微妙な金を受け取ります。そこには叔父の深謀遠慮がひそんでいたのですが、青年はそれに気づかないまま、結果的に不遇な女性を助けることになるのでした。
引用は、物語の冒頭で青年が友人に相談をする場面と、彼が出した結論。対応してますよね、これ。

ひつじ話

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