「人間救済の鑑」の受胎告知とその予型

予型論
13世紀中葉の南ドイツ、あるいはオーストリアにおいて、旧約聖書と新約聖書の予型論的関係を図解する聖書が成立した。
予型論(Typology)とは、旧約聖書に登場する人物やそこで起こった出来事を、新約聖書で語られているキリストの行為を予表するものとして解釈する方法であり、それを豊富なイメージを添えて具体的に示したこの聖書は『貧者の聖書』(Biblia pauperum)として名高い。
ただし、この名称自体は、このような類型の聖書に対して後代の学者がつけたものである。
(略)
『貧者の聖書』からほどなくして(1300頃)、別のタイプの図版入りの書物が制作された。
これは『人間救済の鑑』(Speculum humanae salvationis)と呼ばれているもので、『貧者の聖書』と同様に、予型論に基づく書物であるが、ただし、旧約聖書からの予型は三つの場面に増やされており、それぞれの場面には詳しい説明が施されている。
図は1470年頃にオランダで刊行された木版本の一葉である。
『人間救済の鑑』は明らかに『貧者の聖書』の影響下に制作されているが、異なる箇所も見られる。

15世紀オランダ、聖母マリアへの受胎告知と、その予型である三つの場面を描いた木版画を。
左上が「受胎告知」。右上が「燃える柴」、左下が「ギデオンの羊毛」、右下が「リベカとアブラハムの従僕」を描いたもの。燃えつつも燃え尽きない柴や露の降りた羊毛が、聖霊によって身ごもった乙女に相当するようです。

ひつじ話

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