シュメルの論争詩 「羊と麦」

シュメルの詩の一分野に「論争詩」と呼ばれるものがある。
『鳥と魚』「鷺と亀』『夏と冬』『羊と麦』などなど、題名を見るとまるでイソップ寓話の先祖が勢揃いしたかのようだ。
イソップの『北風と太陽』のようにシュメルの詩でも鳥や魚、夏や冬が擬人化され、各対決者がそれぞれ自分の利点をあげ連ね、相手の欠点をあげつらう。
たとえばドゥムジとエンキムドゥにも似た論争詩『羊と麦』のあらすじは次のようである。

(略)
エンキ神とエンリル神の計らいで、人類が神々の聖なる食卓のために創造された羊と麦の世話をすることになった。
あるとき、立派になった羊と麦姉妹は葡萄酒やビールを痛飲した挙げ句に口論をはじめた。
「羊というものは、肉も乳も毛も腸さえも有用なものだし、その皮は水の革袋やサンダルにもなるのよ」と羊が自慢すれば、麦も負けずに
「麦ならパンはもちろんのこと、ビール製造に欠かせないふすま(マッシュ)にもなり、そのうえ羊を飼育さえするのよ」と応酬する。
そこでエンキ神が調停に乗り出し「まあまあ、姉妹なんだから、そう突っかからずに。とはいえ、ここは麦の勝利ではなかろうか。なんとなれば、人類は金銀宝石や羊なしでも生きられるが、麦なしには生活できないのだから」とエンリル神にお伺いを立てた。

(略)
『羊と麦』では「麦の勝利」ということになっている。
イナンナ女神が夫として農夫を選ぼうとしたのも、そうした価値基準を踏まえているとも考えられる。

以前お話した、牧畜と農耕の対立を描くシュメル神話「ドゥムジ神とエンキムドゥ神」に関連して、「羊と麦」を。擬人化された「羊」と「麦」の論争によって、両者が比較されています。
シュメル文明のお話は時々しておりますので、こちらで。

ひつじ話

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