フランコ・サケッティ 「ルネッサンス巷談集」

「賢明なる羊毛商人並びに肉屋業者諸君。
本官は諸君のこの訴訟に関してつらつら熟考致しましたところ、人類の敵が諸君、つまり兄弟のごとく睦み合うべき諸君の間に争いと喧嘩の種子を蒔く工夫をこらしたのであることを発見しました。
羊毛組合と肉屋組合とは非常に相違しているように見えますが、本来は一つのものであります。
というのはどちらの業も羊に始まるといいうるからです。
諸君の一方はその毛で、他方はその肉で生業を営んでおられる。
そこで神の敵なるものが諸君の間に、さきに述べた事件をひきおこしたのです。
(略)
この呪われたる烏こそ、その子供になぞらえて神の子羊という言葉をまで生んだもの、あの羊という動物によって生業を営むこの二つの組合の間にやってき喧嘩の種を蒔いたのです。
したがってこの訴訟は烏対羊の訴訟であると言ってよいでしょう。

14世紀フィレンツェのフランコ・サケッティによる短篇小説集から。
カラスのいたずらがきっかけになって起こった羊毛商人と肉屋組合の紛争が、裁判官の強引な判決で、ともかくも大団円をむかえるというお話。強引すぎます。

ひつじ話

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