メリノ種

メリノ種
起源の時期に関する学説はまちまちであるが、いずれにしても、スペインという土地にすばらしいメリノ種ひつじの原産といえる羊が生まれたことは事実である。 (中略) 
この羊はあまり力を入れられることなく衰退していった。しかし八世紀初頭、イスラム人がスペインを征服するに及んで、この羊の一族は往年の繁栄と力とを取り戻すことができたのである。イスラムの征服者たちは、(中略)スペインという国を世界中で最大の羊飼養の国、最大の織師たちの国、という位置に高めてしまった。 (中略)
十四世紀に、イスラム人がスペインの国土からすべて追放されてしまうと同時に、スペインは次第に羊毛を中心とする世界貿易の力を失っていった。 (中略)
「ひつじ」はスペイン全土の富であった。このメリノ種ひつじの独占生産から得られる富が、世界のすみずみにまで航海をしてゆく遠征者たちを経済的に賄ったのであり、これによってスペインは、イスラム人追放のため衰微して行った国力を恢復し、ついに、世界各地にまたがる大スペイン帝国を樹立することができたのだった。 (中略)
1786年まで、スペインはメリノ種ひつじ輸出禁止、という厳しい制限をゆるめなかった。(中略)しかし、スペインにフランス軍が侵入したとき、(中略)フランス王ルイ十六世は386頭のメリノ種ひつじをスペイン国土から持ち帰らせ、これをランブイエの領地でフランス種の羊と交配させて新種を生み出させた。 (中略)
つづいて、1880年には、イングランドに2000頭、アメリカ合衆国にも英国をうわまわる数の羊をスペインは売り渡した。この羊によって、英国は最良質の羊毛を生産する大工業の国家となることができたのである。

くるくるでむくむくの可愛いやつの来歴をちょっと調べようと思っただけなのに、なんだかだんだん、ひつじは歴史の影の主役、とか、世界を動かす黒幕、みたいな気分になってきました。

ひつじ話

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