奥本大三郎 「干支セトラ、etc.」

フランス語の辞書を引いてみると、羊に関連する語彙が彼の国にはきわめて豊富であることがわかる。(略)
そのうちでもっとも広く使われるのはmouton(ムートン)であって、これが英語のmutton(マトン)になったわけであるが、この名詞にそのまま動詞の語尾をつけてmoutonner(ムートンネ)としたりする。
この語は、海の波などが、あたかも羊の毛が縮れ波うつようにうねって、白く泡立つ様、あるいは羊の群がもくもくと移動するように波うつ様を表すのである。
(略)
広い場所といえば日本ではまず海原であるけれど、大陸ではそれは、見わたすかぎりの草原である。
広大な緑の草原に、侵蝕されて背の丸くなった白い石灰岩が点在している。
それを見て彼等は、もちろん羊の群が草を食うあり様を連想する。
羊背岩(ロッシュ ムートンネ)というのがまさにそれであろう。
中国でいえば黄初平の故事、「石を叱して羊と化す」は、やはりその風景から生まれたものに違いない。

奥本大三郎のエッセイ集「干支(エト)セトラ、etc.」から、「未」の章を。
羊の群れのような波、というと、ミレーの「牧養場の羊の群れ」で触れたことがありますね。
あと、昨日からひっぱっている白い石の話ですが、羊背岩……羊背岩ですか。

羊背岩
羊背岩とは、羊の背のような丸いコブ状の岩の突起のことです。固い岩盤が氷河時代に、氷河によって磨かれた結果できました。

なんか……羊と見まごうには大きすぎるような……。

ひつじ話

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