金羊毛諸説

『イリアド』によると、ヤソンがひきつれたアルゴノート一行は快速船アルゴノートに乗り込んで、コルチス、すなわち、今の黒海の東海岸アルメニア地方に、金羊皮を求めて遠征している。
もちろんその目的が黄金色の羊皮を得るためだけではなくて、実際は黄金を獲得するためであったという説もある。
この説によると、古代には黒海の東海岸付近から多量の砂金が産出した、そしてその砂金を採取するときには、それを含んだ水を羊皮の上を通過させ、そしてその途中で羊毛の間に沈殿した砂金をとり出した。
そのことから黄金を含んだ羊皮という意味で金羊皮といわれていた。
したがって羊皮よりはむしろ黄金獲得が、アルゴノート遠征の目的であった。
(略)
ところで金羊皮そのものの獲得が目的であったとする説によると、当時前アジア地方の羊毛は未だ完全な白色ではなく、その毛の色はむしろ黄色であったため、この金羊皮の名が生れたという。
この両者の説のいずれが正しいかは、ここでは問題ではない。ただ黒海の東海岸、すなわちアルメニア地方に羊毛がすでに古い時代に産出されていた事実が明らかにされればよい。

加茂儀一「家畜文化史」より、人による羊毛利用の発生地についての考察のなかに、興味深い一文が。
アルゴノート遠征については、「転身物語」をご紹介しておりますので、ご参照ください。

ひつじ話

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