羊と吸血鬼のおかしな関係

 コソヴォ地区とその周辺に定住するジプシーの「吸血鬼」を取り上げたヴカノヴィッチの報告によると、 (略) 「吸血鬼」になるのは、遺体の上を蛇・犬・猫・鶏・雄牛・雄羊などが越えたとき(一般的な規則だが、牛や羊、蛇をあげるところには彼らの生活がうかがえる。家の中に安置される農民の遺体の上は、ふつうこんなものは飛び越えない)、生前の願いがかなえられずに死んだ者、盗み騙りをした者、罪を犯し、許しを得ていない者、縁者や貧者に贈物や施しをしなかった吝嗇漢、自殺者、人に見取られずに死んだ者、傷を負った者、高齢の死者などである。「吸血鬼」になる死体は埋葬の前に黒くなる。
(略)
 その行動は、夜の安息を乱し、牛馬を痛めつけ、農作業に損害を与える、屋根や器物を壊し、馬を乗り回し、屋根裏を歩き回る、家畜を窒息させ殺してしまう、羊を小屋から牧場に追い出す。家畜が死んだら、それは「吸血鬼」に殺されたのだと考える。そしてそういう家畜の肉は食べない。雄牛や犬、雄羊などの動物の姿を取ることもある。その動物は白くて、大きさはさまざまである。

牛馬は痛めつけられ、家畜は殺され、馬は乗り回され、
なぜか羊は放牧です。
……迷惑ぐあいはだいたい一緒ですか。

 イスラム教徒のジプシーの間では動物の「吸血鬼」もあり、毒蛇、種馬、小羊、鶏、犬、猫、雄牛などの死体の上を他の動物が飛び越えたら「吸血鬼」になって、死後四〇日間夜道を行く人を悩ませると信じられている。姿は元のままである
(略)
 これらは、原文に vampire とあるから機械的に「吸血鬼」と置き換えたが、「生ける死体」としての性格は希薄で、むしろ霊的な怪異として亡霊のようなものである。わけても最後の動植物や物体の「吸血鬼」は、それらが妖怪変化に化したものであって、翻訳による混乱と言うべきである。

小羊の妖怪変化も。
蹄でアタック?

ひつじ話

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