裁判獣「獬豸(カイチ)」

南京・明孝陵の獬豸
古代中国の書物には、神でもなければ、妖怪でもない「非日常的な生き物」が多く記述されている。
(略)
角を一つしか持たない獣は麒麟のほかにも多くいる。古代の一角獣幻想においては、獬豸(かいち)も重要な存在の一つだった。
(略)
獬豸の外見についてはおおよそ三通りの説明がある。(略)三つ目は「神羊」説である。『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』続集巻八「支動(しどう)」には「開元二十一年(七三三年)、富平(ふへい)県に角が一本ある神羊が生まれた。肉の角が頂にあり、白い毛が上にさかだっていた。論者は、獬豸であるといった」(今村与志雄訳)とある。しかし、「神羊」にしては、あまり崇敬されていなかったようだ。
(略)
この幻想動物は(略)性格が実直で、正義心が強い。とくに注目すべきは、善悪を見分けることができることだ。世の中に争いごとが起きるときにあらわれ、まちがっている方を角で突く。それで「任法獣」の異名を持っている。「任法」とは法をおもんじ、法に拠って政を行うというほどの意味である。つまり、「任法獣」とは裁判官ならぬ「裁判獣」である。『後漢書』巻四十「輿服志」によると、法を執行する者は裁判官専用の帽子「獬豸冠」を被る、という。

以前ご紹介した羊を使った神判について、もう少し。本来は、羊というより、羊似の聖獣だったようですね。羊似とも限らないようですし。上の引用では略しましたが、牛や熊、鹿という説もあるようです。写真は南京・明孝陵の参道にいる石像ですが、そのどれにも似てないような・・・。
なお、羊似で一角獣というと、トウトウというのもご紹介してますので、ついでに。

ひつじ話

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