なぜナイチンゲールは夜啼くか

ウェストファーレン地方の伝説では、すべての小鳥が口をつぐむ夕暮れ時に、なぜ小夜啼鳥だけが囀り始めるのかが説明されている。
(略)
昔、羊飼いの娘が、素直で優しい羊飼いの若者と婚約を交わしていた。
しかし娘は、わがままで若者を冷たくあしらい、羊番の仕事も怠りがちで、そのくせ若者には夜遅くまで羊を草原に追いたてさせていた。
結婚の手筈も整えるわけでもなく、若者の話にも耳をかさず、娘は結婚の日どりを延ばすばかりであった。
若者の忍耐にも限度があった。度重なる延期の言葉に、たまりかねた若者は怒り狂ってこう叫んだ。
「最後の審判の日まで眠られぬよう、お前を呪ってやるぞ!」
するとたちまち娘は小夜啼鳥の姿となって夜も眠らず、嘆きつつ仕事の歌を響かせねばならなくなった。

「ドイツの民間習俗と太い根でつながっている植物や動物のいくつかを民俗学の立場から掘りおこし、ドイツ文学の理解に役立てよう」(「まえがき」より引用)との趣旨を持つこちらの『ヨーロッパの森から』より、「ナイチンゲール」の章を。
ドイツの羊伝説は、この他にグリムの「ドイツ伝説集」をご紹介しています。

ひつじ話

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