ジョルジュ・サンド 「魔の沼」

「ジェルマンさんにうちの娘を連れていってもらえれば」
「一体どこへ? フルシュにですかな?」
「いいえ。フルシュじゃなく、レ・ゾルモまでですよ。そちらに今年いっぱいいることになったものだから」
「なんとまあ!」とモーリスのおかみさんが言った。「娘さんを手離しなさるとでも?」
「奉公に出て、いくらかでも稼いでもらわなきゃなりません。
(略)
レ・ゾルモの農家で羊飼いのいい働き口が見つかりましてね。先日、その農家の主人が市の帰りにここを通りなさって、村の共同牧場で三匹の羊の番をしている娘のマリを見かけて、『娘さん、ずいぶんと暇そうだね。一人の羊飼いに羊が三匹とはね。ところで百匹の羊の番をする気はないかね? あんたを連れて行ってあげよう。なに、うちで働いていた羊飼いの娘っこが病気になって、親もとへ帰ることになったのさ。一週間以内にうちに来てくれるならば、来年のサン=ジャンの祝日までということで、五十フラン払うとしよう』と言ったそうですよ。」

「ジャンヌ」「フランス田園伝説集」をご紹介しているジョルジュ・サンドの小説をもうひとつ。若くして妻を亡くした農夫ジェルマンと、純真無垢な羊飼いの娘マリの純愛を描く「魔の沼」です。引用は、物語冒頭、二人が連れ立って短い旅をすることになる場面。

ひつじ話

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