チベット仏教のセテル儀礼

セテル儀礼
[1] さきほどゲルの外側で待機していた羊を、B氏は香と水で清め始める。
(略)
[2] その間に僧侶は読経する。しばらくしてから、ザラム(リボン)の用意を命じる。5色が必要だという。
(略)
[3] 僧侶は今度は水を要求する。(略) 僧侶は、女性がもってきた水の入った椀の中に、ゆっくりと米粒を入れる。度胸は続く。
[4] しばらくしてから僧侶は、羊をゲルの中に連れてくるようにB氏に命じる。それを聞いて女性は、すぐ小さな絨毯をすばやく僧侶の近くに敷いた。B氏はゲルの外で待機していた羊を、ゲルの中に連れて入ってくる。そこで、僧侶はさらに、バターを要求する。僧侶はまず、ザラムを羊の首に結びつける。それから女性がもってきたバターを、羊の額、鼻、両耳、四肢、背中、尾まで塗っておくように、B氏に命じる。
(略)
[5] 「では、これで、いい」と僧侶は言う。読経は終了した。「このセテルに名前をあげよう。立派な名前を」と僧侶は言う。そこで、B氏は、前から用意していたかのように、即答する。「では、バヤンサンという名前にしましょう」。僧侶は答える。「よし、バヤンサンとしよう」。それから僧侶は祈る。「バヤンサンという白いセテルは、多くのケシゲを呼び寄せるように」。

ずいぶん以前にお話したことのある、チベット仏教系の牧畜地域で行われる家畜の聖別儀礼「セテル」について、「人と動物、駆け引きの民族誌」に式次第が報告されていました。
家庭に不幸があったときなどに任意に行なうもので、セテルすることでケシゲ(福)を呼べるのだそうです。日本人でいうと、厄年に氏神様でお祓いをするような感覚でしょうか?
ちなみにバヤンサンは、その後普通に群れに戻されたようです。売ったり屠ったりしないのはもちろんですが、ペットにするわけでもないのですね。

ひつじ話

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