ヨーロッパ史における羊と呪術

ゲルマン民族においては羊は収穫の際の生贄として用いられ、一八〇二年にもまだチューリンゲンで行われており、収穫の際に羊が一匹殺され捧げられた。
今日でもマルクグレーニンゲンでは八月二十四日に刈り畠で乙女たちが裸足で一匹の羊を追いかける行事が行われている。
羊の形をしたパンはかつての生贄と供物の残滓であるが、それは今でも各地に見られる。
それは繁殖力のシンボルであり、羊や子山羊の形をした雲からきたものと見なされている。
死者の軍勢と呼ばれる死者の行列の中にも羊が走っていることが伝えられている。
シュレージェンでは精霊降誕節の行列のあと焙られて皆で食された羊の骨を、翌日日が昇る前に畠に刺しておくと種子の発芽がよいといわれていた。
三角形の鎖骨は愛の魔術にしばしば用いられていた。

阿部謹也『「世間」への旅」』に収められた一章、「ヨーロッパ史の中の羊のイメージ」から、呪術における羊の役割の重要性についての部分を。

ひつじ話

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