「もの食う人びと」

気になったのは、「おまえは臭い」「野蛮な羊殺しめ」と言われ、いじめられたという経験談であった。
「臭い」はトルコ料理を、「野蛮」はクルバン・バイラム(イスラム教の犠牲祭)の際の調理法を指した妄言らしい。
トルコ料理は、ハシュラマ(煮物)、ケバプ(焼き物)、ドルマ(詰め物)類全般にわたり、バジリコ、コショウ、唐辛子、ニンニクなど豊富な香辛料を使う。
クルバン・バイラムでは、頸動脈を切って羊を殺す。ドイツ料理と香りがちがうだけで、別に野蛮ではないことは言わずもがなであるのだが。
(略)
アポのほうは「ドイツ人になろうとしたけど、なれなかった」男だ。
言葉はマスターしたが、食べものがだめだった。羊肉にしても、電気ショックで処理したのはまずく、やはりトルコ式に首を切って、しっかり血抜きしたのがうまいという。

「食」をテーマにしたルポルタージュの金字塔、辺見庸『もの食う人びと』の一章、ベルリンのトルコ人街で取材された「食とネオナチ」を。

ひつじ話

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