ジョルジュ・サンド『フランス田園伝説集』より「火の玉婆」

リュードルは犬たちがおとなしくなって言うことを聞いたのを見ると、さあこれでよしと眠ろうとした。
ところが、彼らはまた立ちあがって、今度は野獣のように羊の群れにとびかかっていったのだ。
そこには約二百頭の羊がいたのだが、それがみんな狂ったようにおびえて、悪魔そのもののように柵囲いを跳びこえると、鹿にでもなったような勢いで野原に走り去ってゆく。
犬は犬で、狼のように狂暴に彼らを追いかけながら、脚に噛みついたり、毛を引きむしったりしたので、あたりの茂みがとびちった毛でまっ白になるくらいだった。
(略)
ようやく朝の光がさしそめてきた。
そのときになって見ると、彼が追いかけていたつもりの羊は細長くて白い小さな女たちだった。
(略)
そこで彼は、まちがいなしにサバトの宴に引っぱりこまれてしまったものと判断して、へとへとに疲れてしょげ返りながら柵囲いに戻ってみた。
すると驚いたことにそこには羊たちが犬たちに守られてすやすやと眠っているではないか。
犬たちも彼のところへ駆けよって身体をすりよせるのだ。
彼は寝床にとびこんで、ぐっすりと眠りこんだ。
そして翌朝、日の光のもとで羊を数えてみると、何度数えても一頭足りない。

19世紀フランス、ジョルジュ・サンドによる、民間伝承の集成から。
鬼火の妖怪との契約を反故にしようとした羊飼いが、怒った鬼火の婆に手ひどい仕返しを受けます。弱り切った羊飼いは、物知りの老羊飼いに相談し……?

ひつじ話

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