『北方民族文化誌』より「羊」

雷は孤独な雌羊を流産させるが、群れをなしている羊は流産しない。
風が冷たく吹くときは、雄の子羊を孕むが、暖かい風のときにはこれに反し、雌の子を孕む。
(略)
羊は大群の中でも母羊の鳴き声をききわける。
それで、ききわける(agnoscit)ので子羊はagnus(子羊)と呼ばれる。
(略)
強力な打撃のため血がとどこおったら、その箇所に剥いだばかりの羊の皮をのせると、とどこおりは解消する。
それゆえ、鞭打たれ人に時に同情する刑吏は傷の上に暖かい羊皮をはる。
すると一昼夜でそれが治る。そのためこれは鞭打たれ人の薬と呼ばれている。

以前、オラウス・マグヌス「北方民族文化誌」から、羊の背にのって鶴と戦う小人のお話をご紹介したことがあるのですが、同書からもうひとネタを。「第十七巻 家畜」におさめられた、羊に関する伝承です。
小人の伝承はめぐりめぐって日本にも伝わっているらしい、というお話を、先日、「華夷通商考」のご紹介のさいに触れたところなのですが、この「華夷通商考」の、飲む水で毛色が変わるというお話のほうも、どうも元ネタがあるような気がします。アリストテレースの動物誌とか、プリニウスの博物誌とか。
「北方民族文化誌」の雷や風と出産の関係についての一文は、おそらくプリニウスの引用ですね。

ひつじ話

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