フィリップ・シドニー 「アーケイディア」

夜の間、憩いの家になってくれた木陰から身を起こし、彼らは旅を続けました。
ほどなく美しい景色が見えてきて(ラコニアの荒涼とした地に飽きた)ミュシドウラスの目を喜ばせました。
天をつく大木の森で覆われた高い山々、低きにあっても生き生きとした銀のせせらぎで気持ち良く感じられるささやかな谷間、目にも麗しいありとあらゆる種類の花々で五色に彩られた牧場があり、快い緑陰を抱く茂みは、多くのさまざまな喉自慢の小鳥たちの快活な歌声でそこが茂みであることが分かりました。
どの牧場にもゆったりと安心して草を食む羊たちが群れをなし、愛らしい子羊たちは、母羊に甘えてめえめえと鳴いておりました。
こちらでは、羊飼いの少年が決して老いを知らぬかのように笛を吹き、あちらでは、若い羊飼いの娘が編み物をしながら歌い、まるで歌声は手を慰めて仕事を捗らせ、手は歌声にあわせて拍子を取っているようでした。

16世紀イングランド、フィリップ・シドニーパストラル・ロマンスを。遭難し、羊飼いたちに救助された主人公が、彼らの出身地である理想郷アーケイディアに案内される場面です。
フィリップ・シドニーとほぼ同時代には、シェイクスピアクリストファー・マーロウエドマンド・スペンサーといった人々が。ご参考にぜひ。

ひつじ話

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