初期キリスト教美術における彫刻

善き羊飼い
四世紀から六世紀までの時代の美術は、キリスト教主題については初期キリスト教美術、異教主題については古代末期美術と呼ばれる。
初期のキリスト教神学者たちは、一般的に言って、彫像に敵意を持っていた。彫像は画像と違って現実感が強いため、一般信者たちが異教徒たちのように偶像崇拝者とならないか、懸念を抱いていたからである。
(略)
イコノクラスム(聖像破壊主義)的底流は、初期キリスト教=古代末期以降、七世紀から十一世紀までの初期中世において、モニュメンタルな石彫芸術が実質的に不在であった理由を考える際に、無論、重要な要素であるが、しかし、これだけがその原因ではなかった。
(略)
オリエントおよび蛮族(バルバロイ)の影響といった外来の要素、そして、古代末期美術の展開自体における一般的傾向、これらすべてが同じ結果をもたらすのに貢献したわけであるが、しかし、これらの要因一つ一つだけでは、到底、独立彫像の生命を危うくするのに充分ではなかったであろう。

中世ヨーロッパの彫刻美術の変遷を論じる「中世彫刻の世界」冒頭の一章を。
初期中世に長い雌伏の時代を持つヨーロッパ彫刻史を語るにあたって、初期キリスト教美術の様式の変化を示す例として「善き羊飼い」の彫像が使われています。
初期キリスト教美術の重要なモチーフである「善き羊飼い」については、こちらでまとめてぜひ。

ひつじ話

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