司馬炎の羊車

統一は成った。だが、人びとはまだ半信半疑であった。
呉を降したとき、晋の武帝司馬炎がまっさきに命じたのは、
「江南には美女が多いときく。五千の美女を選んで、我が後宮にいれよ」ということだった。
晋の武帝司馬炎の後宮は、美女の数がついに一万を超えた。
その一人一人の顔などおぼえられるわけはない。
(略)
彼はこの問題を、いかにも不精者らしく解決した。
後宮のなかを、彼は羊のひく車に乗って行く。
女たちはそれぞれ個室をもっている。
羊がとまったところで降りて、その部屋にはいることにしたのである。
皇帝の寵愛を得ようとした、頭の良い女性が、自分の部屋の戸に竹の葉をさし、部屋のまえの地面に塩をまいたのである。
竹の葉や塩は、羊の好物だったので、かならずそこで車はとまった。
水商売の店のまえに塩を盛る習慣は、このエピソードに由来する。

陳舜臣十八史略「小説十八史略」から、司馬炎のエピソードを。

ひつじ話

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