ソポクレス 「アイアス」

アテナ そのとおり、お前の話した一切のことはあの男の仕業なのです。
オデュッセウス ではこの無謀な振舞いは一体何のため。
アテナ アキレウスの武具のことで、怒り狂ったあげくのこと。
オデュッセウス ではなぜあのように羊の群れなどに躍りかかったのでしょうか。
アテナ これを殺してその実は、お前たちの血でその手をそめているとのつもりから。
(略)
オデュッセウス ではまたどうして、その血に飢えた手を下すのを思い止ったのでしょうか。
アテナ それはこのわたしがしたこと、破滅を喜ぶその思いを阻んだのは。容易に振り払うことのできない妄想をその眼に投げ込んで、羊の群れの方に、そしてまたまだ分配のすまぬままに番人たちが見張りをしている家畜の群れに向かうように、わたしが彼をそらせてしまったのです。するとあの男はその中に躍り込み、角もつ獣に斬りかかり、手当り次第に裂き殺す。

先日の「イリアス」つながりで、もうひとつ。トロイア戦争の英雄大アイアスを主人公とするソポクレスの悲劇から。
怨みのためにオデュッセウスらを殺そうとしたアイアスは、女神アテナの力によって狂気に陥り、敵と信じて羊の群れを襲ってしまいます。上の引用は、冒頭、皆殺しになった家畜を前に途方に暮れるオデュッセウスに、アテナ女神が呼びかける場面。

ひつじ話

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