「サテュリコン」

その斬新な趣向がみんなの目を見張らせた。というのも、円形の盆の上に黄道十二宮の絵が配置され、その上に皿飾り職人がそれぞれの宮にふさわしい固有の素材で作った食物をおいていたのだ。
つまり、白羊宮の上に外形が牡羊の頭に似たエジプト豌豆。金牛宮の上には一片の牛肉。双子宮には牛の睾丸と腎臓。
(略)
このような安っぽい料理に、ぼくらはかなり失望した表情でいやいやとりかかろうとしたとき、トリマルキオンが言った。「いやでなかったら食べてくれ。それが宴会のしきたりだ」
こう言ったとき、四人の踊子が楽隊の調べに合せて足を踏み鳴らし駆けよると、運搬台の上の部分をとった。するとその下の台に、肥えた鶏と豚の乳房と、有翼神馬ペガソスと見てとれるように胴体に翼をつけた野兎が見つかった。
(略)
トリマルキオンは肘をついて上体を起こし、こう言ったのだ。
(略)
「先刻の料理であきらかになったように、わしに新しいことを教えられる者はおらんのだ。この天界は、そこに十二柱の神が住んでいるように、同じ数の十二の形象に変容する。まず天は白羊宮となる。するとその天象の下に生れた者はみんな、たくさんの羊と多量の羊毛を授けられ、その上に頑固一徹な頭と鉄面皮な額と鋭利な角を持つことになる。この天象の下に、多くの衒学者や屁理屈屋が生れるのだ」

先日古代ローマの羊料理をご紹介したのですが、せっかくなので、納得がいかないほうの古代ローマ料理も。たぶん、こういうののほうが一般的なイメージだと思うんですが。ペトロニウス「サテュリコン」より、トリマルキオンの饗宴の場面です。

ひつじ話

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