南宋の美食家

中国北部を女真族の金王朝に支配され、江南に避難した漢民族が立てた亡命政権南宋では、食文化が花咲いた。
とりわけ首都杭州の資産家はきそって、専門的訓練を受けた厨娘(チューニャン、女料理人)を雇い、贅沢な食事を作らせるのが常だった。
南宋末、引退して故郷に帰ったある老官僚は、食事のまずさに閉口し、杭州の知り合いの紹介で厨娘を雇い入れた。
老官僚はさっそく自慢たらたら、四人の友人を招いて宴会を催し、このお抱え厨娘に腕をふるわせることにした。
ところが厨娘は、羊の頭の部分を使った串焼きを五人分(五本)を作るのに、なんと十個の羊頭がいるという。
羊頭のうち彼女が使うのは両頬の部分だけ、あとは惜しげもなく捨ててしまうのである。

井波律子による中国文化、文学にまつわるエッセイ集の中から、「美食家たちの饗宴」の章を。
同時代の羊料理として、全羊席というのをご紹介したことがあるのですが、贅沢の度合いではこちらのほうが上ですね。上のお話では、贅沢が過ぎて、料理人が暇を出されてしまうという落ちがついています。

ひつじ話

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