みや こうせい 「羊と樅の木の歌」

さっきまで野に放たれていた計五百五十八頭の羊たちはすべて牧柵の裏側のたよりない檻に追いこまれてひしめき、鳴き続けている。明るく華やかな雰囲気が丘の頂きには溢れている。いよいよ、ポイエニの人びとが待ちに待った羊の祭典、牧羊祭がはじまるのだ。
(略)
司祭はすばやく金色の法衣を着ると、先に着いて祈祷儀式の準備をしていた輔祭とツイカ(プラムブランデー)を飲みかわす。祈祷文を唱えるため、彼はひとつ咳をして、香りがよく乾燥した聖なるブスイオク(和名メボウキ)を右手につかみ、羊たちの檻の裏側に回った。
司祭は羊が病気にかからぬように、乳がよく出るように、また神の加護の多からんことをと唱え、ブスイオクを水にひたし、それを羊たちの背に振りかけてやる。輔祭は香炉を十字に振って、司祭の祈祷に続いて厳かに歌唱する。羊たちは早く檻の外へ出たくて、押し合いへし合いしている。

著者が「民俗学の生きた博物館」と呼ぶ、ルーマニアはマラムレシュの生活誌から、ポイエニ村の祭りの場面を。
みやこうせいは、写真集「羊の地平線」をご紹介しています。

ひつじ話

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