今昔物語集 「震旦韋慶植、殺女子成羊泣悲語」

  震旦韋慶植、殺女子成羊泣悲語(しんだんのゐのけいしょく、にょしのひつじとなれるをころしてなきかなしめること)
今昔(いまはむかし)、(略)韋ノ慶植ト云フ人有ケリ。一人ノ女子有リ。其ノ形チ美麗也。而ルニ、幼クシテ死ヌ。父母、此ヲ惜ミ悲ム事無限(かぎりな)シ。
其ノ後、二年許ヲ経テ、慶植、遠キ所ヘ行ムト為(す)ルニ、親シキ一家ノ類親等ヲ集メテ、遠キ所ヘ可行(ゆくべ)キ由を告グ。
食ヲ儲ケテ、此等ニ備エムト為ルニ、家ノ人、市ニ行テ、一ノ羊ヲ買ヒ取テ持来レリ。殺テ此レニ備ヘムトス。
其ノ母、前ノ夜ノ夢ニ、死ニシ娘、(略)「今、羊ノ身ヲ受タリ。来(きたり)テ其ノ報ヲ償ハムガ為ニ、明日ニ来テ被殺(ころさ)レムトス。願クハ母、我ガ命ヲ免(ゆる)シ給ヘ」ト云フト見テ、夢覚ヌ。哀レニ思フ事無限シ。

今昔物語集、巻第九 震旦付孝養第一八話、「震旦韋慶植、殺女子成羊泣悲語」です。
親不孝のために羊に転生してしまった娘が、あろうことか、かつての両親の台所に買われてきてしまいます。娘は母の夢枕に立って訴え、母は羊を助けようとするのですが、すれ違いが重なり、という悲劇。
これだけだと救いが無くてどうも、という感じなのですが、これに続く第一九話「震旦長安人女子、死成羊告客語」は、途中まではよく似たお話なのですが、最後に助かって寺に送られます。良かった……のかな?
ちなみに、震旦というのは中国のこと。

ひつじ話

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