曲亭馬琴 「烹雑の記」

牛の性は、その死を聞ときはいたくおそるゝものなり。又羊の性は、その死を聞といへども、あへて懼れざるものなりといふ。
(略)
牛と羊と共に丑未(ちうび)の位に居れり。牛の色は蒼し、雑色(くさぐさのいろ)ありといへども蒼が多し。春陽の生気に近きが故に、死を聞ときは則ちコクソクす。羊の色は白し。雑色ありといへども白が多し。秋陰の殺気に近きが故に、死を聞ときは則ち懼れず。
(略)
孟子梁恵王篇に、斉宣王羊をもて牛に易よといひし段を按ずるに、王の意小をもて大に易るにあらず。又牛を見て未(いまだ)羊を見ざる故にあらず。牛は死を聞ていたく懼るゝが為に忍びず。

以前、孟子の「以羊易牛(羊をもって牛にかえる)」についてお話をしたことがあるのですが、この故事成語について、江戸の戯作者曲亭馬琴が、随筆「烹雑の記」の中で別の解釈をしています。つまり、羊は死を怖がらないように見えるので犠牲にふさわしい、というお話ですね。そんなー。

ひつじ話

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