夏目漱石 「三四郎」

 下宿へ帰って、湯にはいって、いい心持ちになって上がってみると、机の上に絵はがきがある。小川をかいて、草をもじゃもじゃはやして、その縁に羊を二匹寝かして、その向こう側に大きな男がステッキを持って立っているところを写したものである。
  (略)  
表は三四郎の宛名の下に、迷える子と小さく書いたばかりである。三四郎は迷える子の何者かをすぐ悟った。のみならず、はがきの裏に、迷える子を二匹書いて、その一匹をあんに自分に見立ててくれたのをはなはだうれしく思った。迷える子のなかには、美禰子のみではない、自分ももとよりはいっていたのである。それが美禰子のおもわくであったとみえる。美禰子の使ったstray sheepの意味がこれでようやくはっきりした。

夏目漱石の「三四郎」から。ヒロインの美禰子は主人公の三四郎に対して、謎かけをするように「ストレイシープ」という言葉を繰り返し、はがきにも書いてよこします。大事な場面ではあるのですが、どんな可愛らしい絵が描いてあったんだろうと想像すると、なんだかこう。

ひつじ話

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