「十二支の動物たち―和田誠 日高敏隆の動物断想」

 そもそもウサギはあまり人に馴れない。せいぜい人をこわがらなくなる程度で、ネコのようにまつわりついたり甘えたりする面白さはないようである。なぜだろうか?
 ウサギは草食動物である。親は出産期が近づくと草で巣を作って子どもを産む。子どもの発育はかなり早く、まもなく子どもは離乳する。そうなると、子どもはもう一人で食べていける。草はそこらじゅうにあるし、特別の努力をしなくても手に入る。(略) ウサギの子には甘えの構造がないのである。
 (略)
 子羊はかわいいが大人の羊は退屈だ、というのは大方の人々の印象であろう。それも致しかたのないことだ。つまり、ヒツジもウサギと同じく草食獣で親が子に餌を与えて育てるということがない。ふつう、家畜化された動物は大人になっても幼児的な性質を保つ(人間はその最たるものである)。けれど、幼時のときから親への依存度が低いヒツジのような動物では、多くの人が期待する幼時っぽさが、あまりそなわっていないからである。

和田誠のイラストと日高敏隆のエッセイの組み合わせが絶妙な、動物雑学本です。

ひつじ話

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