フランス民話 「目をつぶされたタタール人」

 昔、ひとりのタタール人がいたが、人間の顔をもつ巨人で、おそろしい力をもち、額のまんなかに目玉がひとつしかなかった。
 (略)
 やがて巨人がもどった。戸を閉めるなり、「ここにはキリスト教徒の肉があるぞ」と叫んだ。
 (略)
 ぐずぐずしてはいられないと思った若者は、敵の力をくじくのは今が絶好のチャンスだと判断した。炉端の焼き串を手にとると、真っ赤に焼いて巨人の目玉に突き通した。
 (略)
 巨人は手探りで追いかけたが、若者は羊の群れのなかにもぐりこんだ。むだな追跡に疲れた巨人は計略を思いついた。羊を一頭つかまえては外へ出すことにして、入り口に立って一頭ずつていねいにさわってから自分の両足のあいだをくぐらせて通すというやりかただった。身の危険を察した若者は、羊の皮をかぶって四つばいになり、群れのまんなかにもぐった。
 ●注釈
 1875年頃ピレネ=アトランティック県のエスキュールでティルーという名の76歳の羊飼いにより語られた。
 ホメロスの『オデュッセイア』の中の一つ目巨人ポリュペーモスの話で、『ドロパトス』や『千一夜物語』にも記されている。グリムの「強盗とその息子たち」がこのテーマで書かれており、口承ではスカンジナビア諸国からベルベル人の国まで広く分布し、しばしばもっと長く、こみいった話として語られる。

 フランスの民話集から。ほぼ「オデュッセイアー」なんですが、タタール人って・・・。

ひつじ話

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