「ギリシア哲学者列伝」のエピメニデス

彼はクレタ人でクノソスの生まれであった。もっとも髪を長く垂らしていたので、姿はクレタ人のようではなかった。
彼はある日、父親の言いつけで羊を探すために原へやられたが、昼頃、道からそれてある洞穴のなかで眠りこみ、そのまま五十七年間眠りつづけた。
そのあと、彼は起き上がって羊を探しに行ったが、自分ではほんの短時間眠ったつもりだった。しかし羊は見つからないままで原へ行ってみると、何もかもが変わっており、その土地も他人の手にわたっているのを知った。
そこで彼はすっかり困惑して町へ引き返した。そしてそれから自分の家へ入って行くと、彼が誰であるか知りたがっている人たちに出会ったが、ついに彼は、いまはもう老人になっている弟を見つけて、その弟から事の真相をすべて知らされたのであった。

ディオゲネス・ラエルティオスの「ギリシア哲学者列伝」は、ギリシアの偉大な哲学者たちの人間味のあるエピソード集ですが、その中から、第一巻十章「エピメニデス」を。・・・黄初平

ひつじ話

Posted by


PAGE TOP