羊と資本とイタリアルネサンス

投資の「資本」capitalという言葉は、羊などの家畜の頭を意味する‘caput’を語源とするcapitaleから来ている。この言葉が出来てからおそらく1000年以上も経ってから、「羊の頭数」capitaleが羊の毛の加工の仕事に投下されたのだった。
(略)
十二世紀フィレンツェでは、職業別の労働組合(アルティ arti)が作られた(略)が、そのアルティの中では、羊毛加工生産に関する組合が大半を占めていた。(略)彼ら自身の手で原毛と染料を輸入し、それを自らの手で完成品に仕上げて売り出す、という大規模な組織を組み上げて巨万の富を作った。(略)羊毛加工の産業が世界で最初の「投資家」というものを生み出し、ついで世界で初めての「銀行」業を誕生させたのであった。
(略)
十三世紀後半になると、これら資本家たち、つまりブルジョア市民たちが(略)蓄積した自分の富を都市の建物や広場の美化に投下しはじめた。こうして200年後には、この町は「花の都」と称せられるようになり、すぐれた芸術家たちがここに生まれ集まって、すばらしい作業の成果をこの町に残すことになった。(略)羊毛加工の産業や、そのための融資や投資で莫大に儲けたメディチ家などの富豪の富と見識とによって、十四世紀から十五世紀にかけて強力にイタリア・ルネッサンスの気運を押しひろげていって新しい文化を華麗に花開かせたのである。

ルネサンスは、ひつじの力で支えられていたのです。たぶん。

ひつじ話

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