「ピエール・パトラン先生」

パトラン ここへ来いよな。てめえの一件は、見事うまくいったであろうが?
羊飼い  メエー!
パトラン 相手方は、退却しちまいやがったぜ。
      もう「メエー」なぞと言うな。その要はないぞ。
      どうじゃい、奴めを、ころりと負かしたろうが?
      うまいことを、ぴたりと教えてやったろうがな?
羊飼い  メエー!
パトラン へえ、畜生め、誰も聞いちゃおらんわい。
      気兼ねなどしねぇで口をきけよな。心配ないぞ。
羊飼い メエー!
パトラン わしも、そろそろ引き上げるとするからな。
      謝金をもらおう!
羊飼い メエー!

15世紀フランスの笑劇「ピエール・パトラン先生」の一場面です。本業は弁護士、実態はペテン師のパトラン先生は、主人から預かった羊たちを食べてしまった羊飼いを弁護するのに、「なにを聞かれてもメーと答えろ」と言い聞かせ、本当に無罪を勝ち取ってしまいます。さて閉廷の後、羊飼いに謝礼を要求する先生を待ち受けていたものは。
混乱を極める法廷シーンでの判官の台詞、「羊の話に戻ろう」は、「本題に戻ろう」という意味の慣用句にもなっているとか。

ひつじ話

Posted by


PAGE TOP