捜神記 「幽霊を売った男」

南陽(河南省)の宋定伯が若いころ、夜道を歩いていると幽霊に出会った。
「お前は誰だ」
と尋ねると、
「俺は幽霊さ」
と答える。幽霊も、
「ところでお前は誰だ?」
と尋ねるので、定伯はひとつかついでやろうと、
「俺も幽霊だよ」
と嘘をついた。
(略)
定伯が、
「俺は新米なんで、幽霊がなにを嫌いか知らないんだが?」
と尋ねると、幽霊は、
「人間の唾だけが嫌いなのだ」
と答えた。
(略)
やがてもうすぐ宛の町に着くというとき、定伯は幽霊を肩にかつぎあげて、きゅっとおさえつけた。幽霊は大声をあげてきいきいと騒ぎ、おろしてくれと頼んだが、耳をかさない。さっさと宛の町にはいって、地面におろすと、幽霊は一匹の羊に化けた。そこでそれを売り飛ばしてしまったが、あとでまた化けると困るので、唾をつけておき、千五百貫の金をもうけて立ち去った。

「消えた羊」「墳羊」をご紹介した「捜神記」から、さらにもう一話を。「消えた羊」に勝るシュールさです。

ひつじ話

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