前涼の玉の臥羊

ひつじ話

臥羊
前涼(314─376)
長15センチ
(略)
羊は遊牧民族の生活には欠かせぬ家畜であり、ここでは誇張した表現もなく、脚を揃えて臥した羊が親しみ深く表される。
玉は古来漢民族がことのほか愛玩したものであり、従って五胡十六国時代の玉器の出土は極めて稀であるが、これも前涼の張氏が漢族出身のためであったろうか。

 「中国 美の十字路展」カタログ 

甘粛省出土の、五胡十六国時代の玉器です。甘粛省博物館蔵。
玉の羊は、台北の故宮博物院のものをご紹介したことがあります。

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毛刈りの季節がやってきました。

ひつじ春夏秋冬

akさまから、各地の毛刈り情報を送っていただきました。ありがとうございます。
ぼんやりしていたら、世の中はとっくにGWに突入ずみではないですか。うっかりしてました。
というわけで、以下、いただいた新聞記事を。

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ヒツジつるつる 大はしゃぎ 南足柄で園児ら毛刈り体験
南足柄市苅野の北幼稚園で20日、園児らがヒツジの毛刈りを体験した。羊毛で覆われていたヒツジが涼しい装いになると、園児らは体をなでながら「ツルツルだ」などと大はしゃぎしていた。
ヒツジは、近所に住む林業、杉山徹さん(44)が飼っているコリちゃんとチェビちゃんで、いずれも4歳の雄。同園によると、園児が体験を通じて毛刈りする意味を知り、動物への親しみを持ってもらうのが目的だという。
(略)

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ヒツジすっきり 六甲山牧場で毛刈り始まる
春らしい陽気に包まれた21日、神戸市灘区六甲山町の六甲山牧場では、夏に向けてヒツジの毛刈りが始まった。ヒツジたちは、職員の手によって瞬く間にすっきりとした姿に。5月中旬まで続き、生後1年以上の約120頭を刈るという。
高温や多湿による病気を防ぐためで、毎年実施。刈り取った毛は、汚れを取り除いて羊毛として販売するほか、同牧場内のワークショップなどでも使うという。
この日の市内の最高気温は23・5度で、5月中旬並み。ヒツジたちは、専用バリカンを持った職員に押さえ込まれ、おなかから足、頭と順番に刈られた。足をばたつかせて必死に抵抗するヒツジもいた。
(略)

ヒツジ 夏に備え毛を刈る  四日市/三重
四日市市波木町の南部丘陵公園小動物園の職員が19日、夏に備えてヒツジの毛を刈り取り、家族連れらが興味深そうに見守った。
同園は、サフォーク種2頭とコリデール種1頭のヒツジを飼育。夏を涼しく過ごしてもらおうと、毎年この時期に、1年間に伸びた毛を刈っている。
飼育係の小林香織さん(36)が専用のバリカンを使い、9歳になるサフォーク種の雌「モモ」の全身の毛を約20分かけ、きれいに刈り取った。体重約40キロで、刈られた毛は2・2キロ。モモはさっぱりと衣替えをし、気持ち良さそうだった。

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ティツィアーノ 「聖愛と俗愛」

ひつじ話

「聖愛と俗愛」 「聖愛と俗愛」(部分)

ティツィアーノの「聖愛と俗愛」です。遠景にこっそり羊の群れが。「ノリ・メ・タンゲレ」もこんな感じでしたね。ボルゲーゼ美術館所蔵。
これまでのティツィアーノは、こちらでぜひ。

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『ブラック・ジャック』より「道すがら」

ひつじグッズ

「道すがら」 「道すがら」2

羊の森さまに、手塚治虫の「ブラック・ジャック」に羊の出てくる回があると教えていただきました。ありがとうございます。
タイトルは「道すがら」。少年チャンピオンコミックス新装版8巻に収録と伺って本屋さんに探しに行ったのですが、見当たらなかったので、文庫版の5巻を買ってまいりました。
スペインはピレネー山脈を旅していたブラック・ジャックが、諸事情に巻き込まれて破傷風患者の治療をすることに……って、いや、なんかすごく楽しそうなんですが。

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レオン、サン・イシドロ聖堂天井画

ひつじ話

「羊飼いへのお告げ」
明快なデッサンで形づくられた個々の形態は、いずれも軽妙で、生命感にあふれている。
構図と色彩、形態表現が相まって、全体に伸びやかで生き生きとした「牧歌的情景」を現出させたこの作は、スペイン・ロマネスクの成熟と洗練をありありと物語っている。

スペインはレオンのサン・イシドロ聖堂、王家墓廟の天井画のひとつである「羊飼いへのお告げ」です。
羊飼いへのお告げを描いたものは、時祷書をいくつかと、ブレイクレンブラントヤコポ・バッサーノなどをご紹介しています。

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MOA美術館所蔵 「洋人奏楽図屏風」

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洋人奏楽図屏風(部分)
貴族たちの田園での遊楽シーンはジョルジョーネの「田園の奏楽」を例にするまでもなく、文学でも古代ローマ時代からの主題であり、十六世紀には西欧各国で類似した文学作品も生れている。
(略)
そういうものに当時の日本人が親しむ機会があったとしたら興味ぶかいことであるし、そうでなくてもこのような主題は、日本画の「花下楽園図」「高雄観楓図」などとも共通する田園遊楽図として受入れられたと思われる。

ずいぶん以前になんどか触れたままになっている、日本画の小さな羊のお話をあらためて。MOA美術館所蔵の、桃山時代の屏風です。六曲一双のうち右隻の前景に、ミニサイズの羊たちがわらわらしてます。

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ハンス・メムリンクの三連祭壇画

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三連祭壇画 三連祭壇画(部分)

「聖カタリナの神秘の結婚」をご紹介したことのあるハンス・メムリンクの、ウィーン美術史美術館所蔵の三連祭壇画です。左側にいるのは洗礼者ヨハネですね。洗礼者ヨハネのお話はずいぶんしておりますので、まとめてこちらでぜひ。

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略奪美術品としてのヘント祭壇画

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その頃、ゲントの祭壇画やバウツの「最後の晩餐」を含む約2万点の絵画が消失しようとしていた。
戦争開始時にルーヴル美術館やその他の美術館の学芸員によって先導された美術品隠しのいたちごっこの大ゲームに影響されて、ドイツ軍は美術品保護の秘密の貯蔵庫を作った。
ゲントの祭壇画は、これらの中で最も大きかったザルツブルクの南東約75マイルにあるアルト・アウスゼーという小さなオーストリアの町の北方にある岩塩坑に隠されていた。
山中に1マイル以上入ったところにあるアルト・アウスゼーは、1年を通じて気温と湿度が低いために選ばれた。
(略)
1945年の春、連合軍がオーストリアに進攻したとき、地方のドイツ軍はアルト・アウスゼーの坑道に「大理石─落とすな」と書かれた梱包用の8つの箱を人知れず持ち込んだ。
その中には、実際には連合国の手に美術品が落ちることを防ぐために爆発させる予定だった爆弾が入っていた。

何度かお話をしているヘント(またはゲント)の祭壇画に関して。
いくども略奪や盗難の対象となったこの祭壇画の最後の災難は、ナチスドイツの略奪を受け、その敗北にともなっておそらくは処分されかけたことでした。よく無事でと思って見れば、感慨もひとしおです。

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ダン・シモンズ 「エンディミオン」

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とはいえ、〈教える者〉の年代記において、かつて彼女にいちばん近しかった使徒として名を記すには、やはり“羊飼い”の呼称がふさわしいにちがいない。
“羊飼い”ということばは、この年代記にバイブル的な趣きをもたらしてくれるだろう。
この呼び名に異存はない。だが、この物語において、ぼくは羊の群れではなく、かけがえのない大事な大事な一頭の羊だけを守護する羊飼いとして描かれるはずだ。
しかも、ちゃんと見張ることより見失うことの多い羊飼いとして。

以前ご紹介した、ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」の続編です。
タイトルロールであるエンディミオンの名前はジョン・キーツの同名の詩に由来しており、むやみに人生経験豊富な本編の主人公も、遊牧民出身者という一面を持っています。

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中世ヨーロッパの羊のごちそう

ひつじ話

家禽類や肉や魚を切ったり準備したり盛りつけたりすることにかんして、おびただしい決まりとさまざまな専門用語がありました。
(略)
仔鹿や仔山羊や仔羊の腎臓は一番初めに供されるご馳走で、そのときだけ、あばら骨一本を添えます。
(略)
レバーや砂嚢や咽や腸や心臓のような臓物は、それらを取り出した元の動物の中に詰めものとして入れる材料となりました。
豚や羊や魚から取り出された胃には肉や卵やスパイスが詰められて、近代のソーセージをしのばせるようなそれだけで独立した料理になりました。
(略)
また飾り用に工夫したアーモンドは、細かく切って羊の胃袋をとげだらけにして“やまあらし”や“針ねずみ”に似せて作るのに使いました。

『ガウェイン卿と緑の騎士』『カンタベリー物語』などを引きつつ、中世ヨーロッパの宴席を活写する『中世の饗宴』から、羊の出てくる部分を。

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エドワード・ヒックス 「コーネル農場」

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「コーネル農場」 「コーネル農場」(部分)
この作品は、「ペンシルヴェニア州バックス郡ノーサンプトンにあるコーネル農場の小春日和の日の光景。1848年10月12日、農業協会の報酬を得る。69歳のヒックス描く」という表題のついたヒックスの最高傑作の一点である。
(略)
前景の青々とした草と、クエーカー教徒の納屋の赤い屋根は、この素朴派の画家の平板なパターンに整えられた世界に、アクセントを与えている。
繁栄と調和の時を描いたこの作品は、ある意味で、楽観主義の頂点を迎えた、当時のアメリカの繁栄と幸福を象徴しているとも考えられる。

「ノアの箱舟」をご紹介したことのある、エドワード・ヒックスの「コーネル農場」を。

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サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂のモザイク

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栄光のキリストと聖母

ローマはサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂にある、12世紀のアプシス・モザイク、「栄光のキリストと聖母」です。
モザイク画は、ラヴェンナのものなどをご紹介したことがありますので、こちらでぜひ。

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「皇帝マクシミリアン?世とその家族」

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デューラーの肖像画をご紹介したことのある神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世ですが、宮廷画家ベルンハルト・シュトリーゲルによる集団肖像画をあらためて。
左端がマクシミリアン1世、中央が以前ティツィアーノの肖像画をご紹介しているカール5世。ともに胸元に金羊毛騎士団勲章が下がっています。

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「にぐるまひいて」

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「にぐるまひいて」
10月 とうさんは にぐるまに うしを つないだ。
それから うちじゅう みんなで
この いちねんかんに みんなが つくり そだてたものを
なにもかも にぐるまに つみこんだ。
4月に とうさんが かりとった
ひつじの けを つめた ふくろ。
とうさんが かりとった ひつじの けを かあさんが
つむいて おった ショール。
かあさんが つむいだ いとで
むすめが あんだ ゆびなしてぶくろ 5くみ。

ドナルド・ホール・文、バーバラ・クーニー・絵、もき かずこ・訳の絵本「にぐるまひいて」です。
19世紀のニューイングランドを舞台にした、古き良きアメリカのお話。

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「シレジウス瞑想詩集」

ひつじ話

第一章 152 あなた自身が神の仔羊でなければならない。
キリスト者よ、あなた自身が神の仔羊にならねば、神が仔羊であることは何の役にも立たなくなってしまう。
第二章 95 仔羊にしてしかもライオン。
あらゆることを避け、あらゆることに立派に耐えている人は、その本質においては、仔羊であってしかもライオンであるにちがいない。
第三章 9 羊飼いたちに。
よき人々よ、あなたが馬小屋に入って神の子を見たとき、震える舌でいったい何を歌ったのか、神が子供になったのを見たのか、答えてくれ。幼児イエスが羊飼いの歌でもって、わたしからも讃美されますように。
第五章 164 神は仔羊だけを受け入れる。
神はすべての者が神の子になることを望んでいる。だがそれにもかかわらず、神に受け入れられるのは仔羊たちだけだ。

17世紀のキリスト教詩人、アンゲルス・シレジウスの「瞑想詩集」より、羊の出てくるいくつかを。

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